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"全く興味がない"それだけだった
①①
しおりを挟むリマは金色に輝く豪華な装飾がついたアバン帝国特有の服に身を包んでいる。
手を合わせてお辞儀をするリマ‥これもアバン帝国ならではの挨拶だ。
そしてソフィーアに熱烈な愛情を示している暗黒の魔術師ルゼット。
名前だけで人々を恐怖に陥れる事ができるほどに有名な魔術師である。
人が住めないという過酷な環境である北の山を住処にしており、闇に住む異形の者たちと暮らしていると噂のルゼットは、ソフィーアと同じくらいの背の可愛らしい青年である。
ルゼットのオッドアイの瞳が、妖しく猫のように細められる。
『皆様、お掛けになって下さいな』
圧倒されているランドリゲス公爵とミケーレをよそに、平然と会話を続けるレンドルター伯爵と夫人。
リマに合わせてアバン語で話をしている為、部屋には異国語が飛び交っている。
ラバンジールもルゼットも当たり前のようにリマと話をしている。
ランドリゲス公爵家でアバン語を習得しているのは恐らくソリッドのみだ。
『ソフィーアの国は何語だっただろうか?其方に合わせよう』
『ラバンジール様の国と同じ、ラーフ語ですわ‥‥けれどリマ皇子に変えていただかなくとも、そのままでも構いませんのに』
『いや、理解出来ぬものもいるようだから』
「ああ‥」
そう言ったリマはランドリゲス公爵とミケーレを見てニコリと微笑んだ。
ミケーレと公爵は何が何だかと言った様子だ。
「ソフィーア様が婚約を破棄したと聞いて飛んできたのです。是非私とヘール王国へ。父と母も喜びます」
「俺と一緒にアバン帝国へ行こう?もうソフィーアの為に土地を買って城を建てているんだ。そこで俺達だけの楽園を作ろう」
「北の山で僕と‥‥一緒に、フフッ!」
「まぁ、とても魅力的なお話ですわ」
ソフィーアは手を合わせて嬉しそうに微笑んだ。
それだけで熱烈にアピールしていた3人は動きを止めて、うっとりとした視線を向ける。
ソフィーアはランドリゲス公爵達に向き直ると、笑顔で答える。
「わたくしったら、婚約破棄を告げられたことが嬉しくて皆様に連絡してしまいましたの‥‥ごめんあそばせ?」
「「「‥」」」
「でも、どうしましょう‥‥今、復縁を迫られておりますの。皆様に期待をさせておいて申し訳ないですわ」
ソフィーアの言葉に、先程まで和やかだった空気が一変する。
鋭い視線がランドリゲス公爵達‥主にソリッドに突き刺さる。
「ふむ‥その男がソフィーア様を苦しめていたと噂の元婚約者ですか」
「ソフィーアとの婚約を破棄するなんて、どうしてそんなことをしたの?正直言って失望だよ。見込みがありそうなのに」
「‥‥‥馬鹿なの?」
ソリッドは困惑した表情を浮かべながらも態度を崩さない。
これだけの圧をサラリと躱すのは、さすがソリッドといった所だろうか。
ミケーレは3人の言葉を聞いて、生まれたての子猫のようにプルプルと体を震わせているというのに。
「ふふ、違いますわ」
ソフィーアの視線の先、何を言おうとしたのか分かったランドリゲス公爵とソリッドは焦った様子で首を振る。
そんな2人を無視したソフィーアは、そのまま言葉を続けた。
「わたくしの元婚約者は、皆様が睨んでいたソリッド様ではございません」
「‥‥は?この男以外にこの場に誰がいるというのだ」
「確かにそうですね。もしかして今から来るのですか?」
「‥‥???」
ソフィーアは吹き出しそうになるのを耐えていた。
まるで認識されていないミケーレの存在に。
「わたくしの元婚約者は其方に座っていらっしゃいますミケーレ様ですわ」
3人の視線が一斉にミケーレに注がれる。
さらに縮こまってしまったミケーレは今にも泣き出しそうな顔でビクリと肩を震わせた。
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