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"全く興味がない"それだけだった
⑤
しおりを挟むミケーレと会った日には、大抵荒れているソフィーアがとても嬉しそうに笑っている姿を見て、2人は首を傾げた。
「分かったぞ!アイツが事故に巻き込まれて暫く顔を合わせずに済むのだな」
「いいえ」
「もしかして怪我をしたのかしら?暫くうちには来ないとか」
「残念ながら違いますわ」
「チッ‥」
「クソが」
ミケーレが絡むと口が悪くなるのは、いつもの事である。
「今日はご報告がありますわ」
「嫌な報告ならば後にしてくれ‥‥あの男の顔を思い出すと具合が悪くなる」
「はぁ‥‥本当ね」
重たい溜息が漏れる。
どうやらミケーレの存在に拒否反応が出ているようだ。
ミケーレがソフィーアの婚約者になってからレンドルター伯爵家は迷惑ばかり掛けられている為、我が家にミケーレが来る時は厳戒態勢である。
悪戯好きのミケーレは散々レンドルター伯爵家を苦しめた。
「ソフィーア、頬が赤く腫れているような気がするのだけれど‥」
「その頬はまさか、あの馬鹿に!?」
「えぇ、そうですけれど」
「ッ、信じられないわ!!今すぐランドリゲス公爵に抗議文を!!」
「落ち着いてくださいませ。報告したら全てが台無しになってしまいます」
「けれど!!」
「それよりも、とても良いお話がありますの」
このままでは両親の気が収まらないだろう。
ソフィーアは2人を落ち着かせる為に、先程ミケーレがサインした紙を見せる。
「なんと、わたくしとの婚約を破棄して下さいました」
ソフィーアは曲がった眼鏡をゴミ箱に捨てて、固く結んでいた髪を解いた。
バサリとソフィーアのミントグリーンの髪を掻き上げる。
ポカンとしている両親は一時停止したように動かない。
ソフィーアはもう一度、同じ台詞を吐く。
「やっと婚約を破棄して下さいましたよ?ご自分から」
「ばっ‥!?」
「そ、それは‥本当か!?」
「ソフィーア、貴女‥ッ」
「サインも母印もゲット致しました。魔法でボイスも映像も記録しております」
「「‥‥」」
「今までの我慢が報われる時が来たのです」
こちらを向いてゴクリと喉を鳴らした2人は目を丸くしている。
―――そして
「フゥーー!!」
「今夜はパーティーよ!!今すぐシェフを呼んで頂戴ッ」
「ふふ、お父様とお母様ったら。彼の方から頂いたシャンパンを開けて頂戴、今日は飲むわよ」
「かしこまりました」
「我々は自由だッ!!さぁ、飲み明かそうじゃないか!!!」
レンドルター伯爵家で夜通し続いた宴。
この行為からレンドルター伯爵家はランドリゲス公爵家を好いてはいない事は分かっていただけただろう。
正しく言うならばランドリゲス公爵家に半ば強制的に結ばされたミケーレとソフィーアとの婚約自体が不満で仕方なかった。
確かにランドリゲス公爵家との関係を作ればレンドルター伯爵家にとってはプラスになる部分もあるだろう。
けれどそれはソリッドに嫁いだ場合で、ミケーレではない。
ソリッドは完璧な令息で令嬢達からの人気も高い。
見目も爽やかで好青年。
物腰も柔らかく、何より誠実で優しかった。
そして礼儀正しい為、社交界でも評判がよく娘を結婚させたい令息ナンバーワンであった。
そして次男のマルフォ、彼は有能な魔法学の研究者である。
彼の婚約者は幼馴染で同じ公爵令嬢であるヤナである。
自他ともに認める気難しい性格であるマルフォ。
そんなマルフォには幼い頃からずっと一緒に居られる人物はヤナしか居なかった。
マルフォはヤナと結婚できなければ、この国から出て行くと宣言している。
マルフォの頭脳は国の財産になる。
ランドリゲス公爵もソフィーアとの婚約を勧めたくとも不可能であった。
そしてランドリゲス公爵が悩んだ挙句、ソフィーアの婚約者として仕方なく充てがわれたのがミケーレである。
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