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「申し訳ないんだが、婚約を解消してくれないか?」と言われたので「はい、分かりました。さようなら」 と答えました。
⑤
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バレット様は二人を説得しようと試みたようですが、ミランダ様と添い遂げたい場合、公爵家から籍を抜くように言われたと噂で聞きました。
わたくしはその話を聞いた時、思わず吹き出してしまいました。
そして屋敷に帰り、侍女達と肩を揺らして笑いました。
学園にその噂が回り始めると、あんなに自信満々だったミランダ様が苛立っているのを目にするようになりました。
そして日に日にやつれていくバレット様を見ても、わたくしの心が痛む事はありませんでした。
公爵家を離れるという選択は出来ないがミランダ様と添い遂げたいバレット様と、絶対に公爵家に嫁ぎたいと思っているミランダ様……どうすればいいのか思い悩んでいるようです。
元々、わたくしはバレット様の事を嫌ってはおりませんが、何年も共に過ごして関係を作ってきたわたくしよりもミランダ様を選び、愚かな行動を取って周囲に迷惑を掛けたバレット様には愛想が尽きました。
お二人には最後まで"真実の愛"とやらを貫き通して頂きたいと思っております。
意地が悪いでしょうか?
ですが今後の為にも、しっかりと学んで頂けたら宜しいのではないかと思います。
「ヴァレンヌ……!待ってくれ」
わたくしが家に帰ろうと馬車に向かっていると、突然後ろから呼び止められました。
気分は最悪です。
「……ヴァレンヌ、急にすまない」
「何か、御用でしょうか」
バレット様が気不味そうに此方を見ていました。
いくら嫌いでも、公爵家の令息であるバレット様を堂々と無視する訳にはいきません。
いつもよりも少し低めの声で答えました。
「……その、すまないが今いいだろうか」
「一緒に居るところを見られたくありませんので、手短にお願い致します」
「卒業パーティーの事なんだが……」
「……」
「一緒に参加してくれないだろうか?」
「はい………?」
あまりにも想像もしていなかった言葉に、わたくしの声は裏返ってしまいました。
婚約破棄を告げた相手に、卒業パーティーに一緒に出席して欲しいなどと無神経にも程があります。
「御自分が、何を仰っているのか分かっているのですか…?」
「……勿論だ」
「ミランダ様と御出席なさるのではないのですか?」
「だが、父上と母上はミランダを認めなかったんだ」
「そうですか」
「……」
「………だからなんでしょう?」
「そ、それに君も相手が居なくて困っているのではないか!?僕達は幼馴染だろう!?君を助ける代わりに僕を助けてくれないか……?」
「………」
「ミランダの事はゆっくりと説得していこうと思うんだ……だから今回は共に参加するという事でどうだろうか!?」
その顔面に、固く握った拳をお見舞いしたいと強く思いました。
もしバレット様とパーティーに参加したら、わたくしはいい恥晒しです。
バレット様はわたくしを都合の良いように使いたいのだと思いました。
此方の事情など一切無視のようです。
でなければ、そんな無神経な言葉が出てくる訳がありません。
それに、もし卒業パーティーで相手がいなくとも、わたくしは堂々と一人で参加していたでしょう。
「お断り致します」
「………なっ」
「わたくしはもうバレット様とは無関係だと思っております。わたくしを御自分の為に利用しようとするのならば、バレット様の事は幼馴染とも思いません」
「ッ!!」
淡々と言うわたくしを見て、バレット様はグッと唇を噛みました。
「……ヴァレンヌの、そういうところが嫌いなんだ!いつも冷たくして僕の気を引こうとばかりする…!いい加減にしてくれ!!本当に僕の事が好きなのか!?」
「………」
「婚約破棄を告げた時だって、直ぐに了承するなんておかしいだろう!?僕の事を好きならば、もっと縋り付くべきだ!!だが、今ならばまだ間に合う!僕と共に卒業パーティーに参加すれば、婚約破棄を無かった事に出来るチャンスなんだぞ……!?」
わたくしはその話を聞いた時、思わず吹き出してしまいました。
そして屋敷に帰り、侍女達と肩を揺らして笑いました。
学園にその噂が回り始めると、あんなに自信満々だったミランダ様が苛立っているのを目にするようになりました。
そして日に日にやつれていくバレット様を見ても、わたくしの心が痛む事はありませんでした。
公爵家を離れるという選択は出来ないがミランダ様と添い遂げたいバレット様と、絶対に公爵家に嫁ぎたいと思っているミランダ様……どうすればいいのか思い悩んでいるようです。
元々、わたくしはバレット様の事を嫌ってはおりませんが、何年も共に過ごして関係を作ってきたわたくしよりもミランダ様を選び、愚かな行動を取って周囲に迷惑を掛けたバレット様には愛想が尽きました。
お二人には最後まで"真実の愛"とやらを貫き通して頂きたいと思っております。
意地が悪いでしょうか?
ですが今後の為にも、しっかりと学んで頂けたら宜しいのではないかと思います。
「ヴァレンヌ……!待ってくれ」
わたくしが家に帰ろうと馬車に向かっていると、突然後ろから呼び止められました。
気分は最悪です。
「……ヴァレンヌ、急にすまない」
「何か、御用でしょうか」
バレット様が気不味そうに此方を見ていました。
いくら嫌いでも、公爵家の令息であるバレット様を堂々と無視する訳にはいきません。
いつもよりも少し低めの声で答えました。
「……その、すまないが今いいだろうか」
「一緒に居るところを見られたくありませんので、手短にお願い致します」
「卒業パーティーの事なんだが……」
「……」
「一緒に参加してくれないだろうか?」
「はい………?」
あまりにも想像もしていなかった言葉に、わたくしの声は裏返ってしまいました。
婚約破棄を告げた相手に、卒業パーティーに一緒に出席して欲しいなどと無神経にも程があります。
「御自分が、何を仰っているのか分かっているのですか…?」
「……勿論だ」
「ミランダ様と御出席なさるのではないのですか?」
「だが、父上と母上はミランダを認めなかったんだ」
「そうですか」
「……」
「………だからなんでしょう?」
「そ、それに君も相手が居なくて困っているのではないか!?僕達は幼馴染だろう!?君を助ける代わりに僕を助けてくれないか……?」
「………」
「ミランダの事はゆっくりと説得していこうと思うんだ……だから今回は共に参加するという事でどうだろうか!?」
その顔面に、固く握った拳をお見舞いしたいと強く思いました。
もしバレット様とパーティーに参加したら、わたくしはいい恥晒しです。
バレット様はわたくしを都合の良いように使いたいのだと思いました。
此方の事情など一切無視のようです。
でなければ、そんな無神経な言葉が出てくる訳がありません。
それに、もし卒業パーティーで相手がいなくとも、わたくしは堂々と一人で参加していたでしょう。
「お断り致します」
「………なっ」
「わたくしはもうバレット様とは無関係だと思っております。わたくしを御自分の為に利用しようとするのならば、バレット様の事は幼馴染とも思いません」
「ッ!!」
淡々と言うわたくしを見て、バレット様はグッと唇を噛みました。
「……ヴァレンヌの、そういうところが嫌いなんだ!いつも冷たくして僕の気を引こうとばかりする…!いい加減にしてくれ!!本当に僕の事が好きなのか!?」
「………」
「婚約破棄を告げた時だって、直ぐに了承するなんておかしいだろう!?僕の事を好きならば、もっと縋り付くべきだ!!だが、今ならばまだ間に合う!僕と共に卒業パーティーに参加すれば、婚約破棄を無かった事に出来るチャンスなんだぞ……!?」
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