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剥がれたのは
しおりを挟む私の陳腐な計画なんてお見通しで、内心でほくそ笑んでいたに違いない。
全部、全部、全部。
すべては奴の手のひらの上。
転がされて踊る私はさぞ滑稽だっただろう。
なのに奴は毒を飲んだ。
ジュリエットが死んだと勘違いし、愛するが故に絶望し自害したロミオのように。
どうして、そこまで。
分からない。私には奴が何を考えて、何をしたいのかまったく理解出来ない。
毒は本物だった。
下手すれば、ふたりとも死んでいた。
運が良かったなんて事はなく、それすらも奴の計画の内なのだろうが、それでも奴は致死量の毒を躊躇いもなく飲み込み、共犯だと言わんばかりに私にも飲ませたのだ。
うつむき、こぶしを握りしめる私に何を思ったのか、奴はにっこりと笑って言った。
「全部、君が望んだことだよ」
張り付けた笑み。作られた表情。誰にも見せるその笑みに腹の奥でずっと燻っていた何かが爆発した。
「そんなの私は望んでない!私はただ、あなたが軽薄に嘯く愛の言葉がその程度のものなんだって思い知らせたかっただけ!いくら、私に付きまとったって、未来はないのだと、行動で示しただけ!どうして私なの?遊ぶ相手なんていくらでもいるはすだわ。あなたが望めば何だって思い通りでしょう。だから。お願いだから、もう私に」
“関わらないで”
何故か震える喉から絞り出した声は、奴に遮られた。
奴は片手で両目を覆うと深く深く嘆息し、ゆるく整えられた髪を崩すようにかき上げた。
そこには私に愛を囁く、微笑みの貴公子はいなかった。
常に浮かべていた微笑みを取り払い、感情の欠落した顔を私に向ける。美しい顔と相まって、精巧に作られた人形のようだ。
「君って、本当に面倒くさいよね」
……ほら。やっぱり。
誰にでも愛想良く、平等に振る舞うのは、誰にも関心がないから。
笑顔という仮面に嘲笑と侮蔑を覆い隠して、他人を欺く。
それが奴、ライオネル・ユーフィルムの本性だ。
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