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予期せぬ場所で
しおりを挟む「なんであなたがこんな所にいるのかしら?ここはグランハート家の敷地だと思うのだけれど?」
「もちろん、君の隣が僕の居場所だからだよ」
奴は悪びれるどころか、素晴らしくいい笑顔でそう宣った。
白いシャツに黒いスラックス、首に緑色のスカーフを巻いているだけなのに、頭上に冠が見えそうな王子っぷりだ。
大抵のお嬢さんなら奴の一言二言で腰砕けになるだろう。もしくは視線ひとつで落とせるかもしれない。
アメジストのような瞳は私の目から見ても充分魅惑的で、紫という色をひとつの芸術に昇華させている。主観が入ると価値は暴落するが、客観的に見れば、奴の美貌というものを認めざるを得ない。
だからこそ、残念だ。
なぜ、奴は許可もなく我が家の裏庭にいるのだろう。
グランハート家の人間がユーフィルム家の血族を敷地に入れるはずがないため奴の不法侵入は確定している。
この間まで春だと思っていたが、もうそんな季節が来たのか。いったいどこから湧いて出ただろう。
庭の手入れをおろそかにするからこういった事態になるのだ。後で両親に文句を言わなければ。
兎にも角にも害虫駆除が先だ。
「私の隣よりもあなたにふさわしい場所を教えてあげる」
私はとびきりの笑みを貼り付けた。つられたのか、首を傾げつつ奴も唇に弧を描く。
私はすとんと表情を落として、淡々と言い放った。
「牢屋の中よ」
行き過ぎた行為を懺悔しろ。
けれど、私の言葉は通じなかったのか、奴の減らず口は留まるところを知らなかった。
「君と一緒ならどんな場所でも楽園に違いないね」
違う。そういう事を言いたいんじゃない。
その返しだと私まで牢屋に入ってるではないか。私は軽い目眩を覚え、欄干に寄りかかった。
両親公認の引きこもりで奴に会わなくて済むと喜んだのもつかの間、こんなにも早く奴と再会するなどと誰が予想できただろう。
この間のガーデン・パーティーから一週間も経っていない。
何だったら夜会などの頻度を考えて、これまでで一番早く再会を果たした事になる。
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