上 下
7 / 12

逆ハーエンドを迎えたその後でモブはしぶしぶ舞台に立ちました①

しおりを挟む





「貴殿の友人だと?」

 二人の前に進み出た俺を第二王子は訝しげに見た。それはあれか? お前に友達なんていないだろ、嘘つくなって言いたいのか? うっせーわ。友達くらい……。あれ? とも、だち? 俺、いたっけ? いやいや。そもそも俺にはアレクがいるし。主人と従者っていう対外的な立場はあれど、心の友と書いて親友と呼ぶ、身分を超えて繋がった固い絆が……って、それは今問題じゃないや。

「この者と関わりがあるというなら、お前も共犯か!! こいつも捕まえて……!」
「やめろ!」

 第二王子に続いて復活したガゼル・ロンドが俺を拘束せんとズカズカと近づいてくる。あと一歩というところで第二王子が鋭く命令した。ガゼル・ロンドはその一言でぴたりと制止する。止めてくれてありがとう第二王子。ついでに怖い顔して至近距離から俺を見下してくるガゼル・ロンドをもう少し遠ざけてくれないかな。
 第二王子は何事かを考えるように間を開けると、緩やかに口元に笑みを作った。もちろん目は笑っていない。めっさ怖い。

「衆目を厭い、静かな学園生活を送るために身分を伏せていたと記憶しているが卒業を機に公表なさるのか。カーマイン帝国第三皇子ユーステス・ヒルメルダ殿?」

 あーあ。言っちゃった。まあ、そのつもりで前に出たから良いんだけどさ。人が嫌がるポイントを的確に抑えてくるよね。さすが攻略対象。腐っても第二王子!

「は!? カーマイン帝国の皇子殿下!? こいつ……このお方が!?」

 ガゼル・ロンドがギョッと目を見開いて凝視してくる。だから、もうちょっと離れてくんないかな。いや俺が離れた方が早いわ。横に三歩移動するとヒロインに押しのけられたショックで微動だにしなかった他二名の攻略対象の顔が見えた。目と口をあんぐりと開けている。これが俗に言う間抜け面。せっかくイケメンなのに残念だ。
 観客の間にもごく一部を除いて騒めきが広がっていく。そりゃあ、驚くよな。こんな平凡を絵に描いた男が偉大なる帝国の第三皇子なんて。

 あらためまして。
 俺の名前はユーステス・ヒルメルダ。ハルハドール王国も位置するアゼンダ大陸で最も広大な土地と圧倒的な軍事力を誇る絶対的覇者カーマイン皇国の第五子にして三番目の皇子だ。

 兄姉たちが優秀すぎて霞んだ俺の存在は他国ではあまり知られていない。それを良いことにこっそり留学しこっそり学生生活を送っていた訳だが、最後の最後にばれてしまった。
ふっ、仕方がないさ。俺の高貴さを隠し通すなど土台無理な話だったのだ。

 だから、そんな嘘だろ信じられないみたいな顔いい加減やめてもらえませんか? あなた方の王子がちゃんと俺の身分を保証してくれてるんだぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

【改稿版】婚約破棄は私から

どくりんご
恋愛
 ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。  乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!  婚約破棄は私から! ※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。 ◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位 ◆3/20 HOT6位  短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...