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「荷物ないじゃないか…いったい、どこに……」
離れの中はシンとしてまるで人気がなく、何か空気まで今までと異なった空間に感じられた。どこかでこんな雰囲気を感じたことがある気がしたけれど、咄嗟にはそれがどこだったかどんな場所だったか思い出せない。
「まあいっか…」
とりあえずこの息苦しい着物を脱いでしまおう。荷物を見付けきれなくてイライラしたが、俺はまず身軽になる方が先だと思い立った。
「イテテ……ッ」
手始めにチャラチャラ煩い装飾品を外し、キツキツに結い上げられた髪を解いた。次に、ささやかな反抗と嫌がらせを込めて、高そうな着物の裾で顔の薄化粧を拭い取る。
「……………ッ」
俺は『ザマアみろ』と内心で溜飲を下げつつも、汚れた着物を見て『悪いことしちゃったかな』などと罪悪感を覚えてしまっていた。けど、他に拭うものが見当んないから仕方がないよね。と、必死になって自分を擁護し気持ちを誤魔化す。
それから気を取り直して、さっぱり脱ぎ方が解らない着物を、力任せに緩めながら解いていったのだけど、その時──
『やれやれ…なんて乱暴な花嫁だ……』
「…………えっ!?」
きつく締めつけられた帯をどうにか緩め、一息ついてさらに着物を脱ごうとしていた俺の背後から、突然、呆れた様な男の声が聞こえてきたのだ。
ここには他に、誰も居なかったはず。
荷物を探してあちこち部屋の中を見て回っていた俺は、他に人の居ないこともすでに確認していた。しかも入口は俺が入ってきた1つしかなく、そのドアが開いた音も気配もなかった。それなのに。
「だ、誰だ……ッッ!?」
「ほほう。今回の花嫁は童か…なるほどな……」
慌てて振り向いた俺の顎を、浅黒い長い指がしっかと捉えた。くいと顎を引かれて上を向かされると、そこには若い男の精悍そうな顔が、俺を面白そうに笑って見詰めていて。
えと、日本人??なのかな?
日に焼けた様な浅黒い肌と、背中で束ねられた銀髪──というか白髪の長い髪。ずいぶんと堀が深くて整った顔の、釣り上がった目の色は赤金色に光っていて、俺が言うのもなんだけど日本人には見えなかった。
あと、やたらと背が高い。いや、160cmしかない俺が低いだけかも知れないけど、首が痛くなるほど見上げなくちゃならないから、この男は少なくとも180cmは越えてるんじゃないだろうか。高さ的に親友の雄二と同じくらいだ。なんかムカつく。
「な……お前、誰だよ??どこから……」
「ふむ。なかなか可愛らしい花嫁じゃないか…」
花嫁??さっきから何を言ってるんだ、この男は。
「いい加減、離……っ!?」
「特にこの青い目が良い。気に入った」
見た目は良いのにおかしな男だ。よくよく見ると神主みたいな変わった白い着物を身に着けている。そう言えばこの建物、何となく神社とかのお社っぽく見えたけど、ひょっとしてこの男、本当にここの神主か何かなんだろうか??
「離せってば…!!」
なにはともあれ、俺は掴まれた顎を離させようと、男の大きな手に手を上げ掛ける。だが、男の手を払おうとした俺の手は、大男のもう片方の掌に手首を掴まれ、物凄い力で床の上に縫い付けられてしまっていた。
「うっ、な、何す…ん、やめっ、やめろっ、何すん…ッッ、んんっ、んんんん!?」
俺自身も仰向けに床へ押し倒され、逃れようとする暇もなく、男は巨体を上から覆い被せてきた。そして、怒鳴ろうとした唇を男のソレに塞がれ、呼吸もままならないほど深く長く口付けられる。
わあっ、なんで男にキスなんかされてんだよ!?と、俺は必死に抵抗するけど、
「やめ…んっ、ふっ、んんんっ、んあっ、ふっ、んんん―――ッッ」
顔を逸らして唇を逃そうとしても、男は執拗に追い駆けて来てその厚い唇で俺のソレを塞いでしまう。噛みついてやると俺がわざと口を開いても、男は察したようにするりと逃げてしまい、どうにもこうにもままならなかった。
「くっ………!!」
「イキの良い花嫁だ…名を何という?」
「ん…んっ、は、陽斗……月見里陽斗……」
誰が答えてやるかと頭では考えていたのに、何故か口が勝手に開いて男に名前を教えてしまう。
「そうか。陽斗か…良い名前だ」
「んあ…あっ……なんで、俺……俺…?」
おかしい。なんでだ。頭ははっきりしているのに、身体が言うことを利かなかった。指1本すら自由にならない。それを良いことに男は、俺の着物を手慣れた手付きで緩めると、徐々に脱がせながら全身を確かめるように弄り始めた。
「美しい肌だ……手触りも良い」
「やめ…やめろ…っ、何…何して…うっ、あ、あっ……」
「我が花嫁は清らかなる処女。どうやら、その約束だけは違えておらぬようだな…」
何を言ってるんだ。処女って女に対して使うものだろ。俺は女じゃない。それがセックスの経験のことを言っているなら、確かに間違いはないかも知れないけど。でも、花嫁だの、処女だの、約束だのと、本当に意味が解らない。
「陽斗…ハル、今宵よりお前は、我1人の花嫁だ」
「何、あ……あっ、やめ………ッッ!?」
はだけられた裸の胸に口付けられ、太腿を撫でる手が這い上がってきた。おぞましさに肌が粟立つが、男は構うことなく俺の身体をまさぐり続ける。
男の言うことはまったく意味不明だし、何がどうなってこうなるのかも解らない。何1つ解らないことばかりだったけれど、でも、1つだけ俺にも解ることがあった。
「我に純潔を捧げよ。贄の花嫁……」
「ひ……ひっ…いや…嫌だっ、嫌だああああッッ」
するすると着物を剥ぎ取られ、全裸を露わにされながら俺は、何も解らないなりにひとつだけ真実を悟っていた。
そう。俺は今からこの男に──『女として』犯されるんだ、と。
離れの中はシンとしてまるで人気がなく、何か空気まで今までと異なった空間に感じられた。どこかでこんな雰囲気を感じたことがある気がしたけれど、咄嗟にはそれがどこだったかどんな場所だったか思い出せない。
「まあいっか…」
とりあえずこの息苦しい着物を脱いでしまおう。荷物を見付けきれなくてイライラしたが、俺はまず身軽になる方が先だと思い立った。
「イテテ……ッ」
手始めにチャラチャラ煩い装飾品を外し、キツキツに結い上げられた髪を解いた。次に、ささやかな反抗と嫌がらせを込めて、高そうな着物の裾で顔の薄化粧を拭い取る。
「……………ッ」
俺は『ザマアみろ』と内心で溜飲を下げつつも、汚れた着物を見て『悪いことしちゃったかな』などと罪悪感を覚えてしまっていた。けど、他に拭うものが見当んないから仕方がないよね。と、必死になって自分を擁護し気持ちを誤魔化す。
それから気を取り直して、さっぱり脱ぎ方が解らない着物を、力任せに緩めながら解いていったのだけど、その時──
『やれやれ…なんて乱暴な花嫁だ……』
「…………えっ!?」
きつく締めつけられた帯をどうにか緩め、一息ついてさらに着物を脱ごうとしていた俺の背後から、突然、呆れた様な男の声が聞こえてきたのだ。
ここには他に、誰も居なかったはず。
荷物を探してあちこち部屋の中を見て回っていた俺は、他に人の居ないこともすでに確認していた。しかも入口は俺が入ってきた1つしかなく、そのドアが開いた音も気配もなかった。それなのに。
「だ、誰だ……ッッ!?」
「ほほう。今回の花嫁は童か…なるほどな……」
慌てて振り向いた俺の顎を、浅黒い長い指がしっかと捉えた。くいと顎を引かれて上を向かされると、そこには若い男の精悍そうな顔が、俺を面白そうに笑って見詰めていて。
えと、日本人??なのかな?
日に焼けた様な浅黒い肌と、背中で束ねられた銀髪──というか白髪の長い髪。ずいぶんと堀が深くて整った顔の、釣り上がった目の色は赤金色に光っていて、俺が言うのもなんだけど日本人には見えなかった。
あと、やたらと背が高い。いや、160cmしかない俺が低いだけかも知れないけど、首が痛くなるほど見上げなくちゃならないから、この男は少なくとも180cmは越えてるんじゃないだろうか。高さ的に親友の雄二と同じくらいだ。なんかムカつく。
「な……お前、誰だよ??どこから……」
「ふむ。なかなか可愛らしい花嫁じゃないか…」
花嫁??さっきから何を言ってるんだ、この男は。
「いい加減、離……っ!?」
「特にこの青い目が良い。気に入った」
見た目は良いのにおかしな男だ。よくよく見ると神主みたいな変わった白い着物を身に着けている。そう言えばこの建物、何となく神社とかのお社っぽく見えたけど、ひょっとしてこの男、本当にここの神主か何かなんだろうか??
「離せってば…!!」
なにはともあれ、俺は掴まれた顎を離させようと、男の大きな手に手を上げ掛ける。だが、男の手を払おうとした俺の手は、大男のもう片方の掌に手首を掴まれ、物凄い力で床の上に縫い付けられてしまっていた。
「うっ、な、何す…ん、やめっ、やめろっ、何すん…ッッ、んんっ、んんんん!?」
俺自身も仰向けに床へ押し倒され、逃れようとする暇もなく、男は巨体を上から覆い被せてきた。そして、怒鳴ろうとした唇を男のソレに塞がれ、呼吸もままならないほど深く長く口付けられる。
わあっ、なんで男にキスなんかされてんだよ!?と、俺は必死に抵抗するけど、
「やめ…んっ、ふっ、んんんっ、んあっ、ふっ、んんん―――ッッ」
顔を逸らして唇を逃そうとしても、男は執拗に追い駆けて来てその厚い唇で俺のソレを塞いでしまう。噛みついてやると俺がわざと口を開いても、男は察したようにするりと逃げてしまい、どうにもこうにもままならなかった。
「くっ………!!」
「イキの良い花嫁だ…名を何という?」
「ん…んっ、は、陽斗……月見里陽斗……」
誰が答えてやるかと頭では考えていたのに、何故か口が勝手に開いて男に名前を教えてしまう。
「そうか。陽斗か…良い名前だ」
「んあ…あっ……なんで、俺……俺…?」
おかしい。なんでだ。頭ははっきりしているのに、身体が言うことを利かなかった。指1本すら自由にならない。それを良いことに男は、俺の着物を手慣れた手付きで緩めると、徐々に脱がせながら全身を確かめるように弄り始めた。
「美しい肌だ……手触りも良い」
「やめ…やめろ…っ、何…何して…うっ、あ、あっ……」
「我が花嫁は清らかなる処女。どうやら、その約束だけは違えておらぬようだな…」
何を言ってるんだ。処女って女に対して使うものだろ。俺は女じゃない。それがセックスの経験のことを言っているなら、確かに間違いはないかも知れないけど。でも、花嫁だの、処女だの、約束だのと、本当に意味が解らない。
「陽斗…ハル、今宵よりお前は、我1人の花嫁だ」
「何、あ……あっ、やめ………ッッ!?」
はだけられた裸の胸に口付けられ、太腿を撫でる手が這い上がってきた。おぞましさに肌が粟立つが、男は構うことなく俺の身体をまさぐり続ける。
男の言うことはまったく意味不明だし、何がどうなってこうなるのかも解らない。何1つ解らないことばかりだったけれど、でも、1つだけ俺にも解ることがあった。
「我に純潔を捧げよ。贄の花嫁……」
「ひ……ひっ…いや…嫌だっ、嫌だああああッッ」
するすると着物を剥ぎ取られ、全裸を露わにされながら俺は、何も解らないなりにひとつだけ真実を悟っていた。
そう。俺は今からこの男に──『女として』犯されるんだ、と。
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