ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

156.楽になった帰り道で-3

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「お前らはここらに何か用があったのか」
 話が俺たちを探る方向に移った。
 こっちに興味があるわけではなく、警戒されて探られている感じだ。
「何の用って……それは冒険者として稼ぐためとしか言いようがないんですけど」
「その割には、このバーサクウルフに興味を示さねえじゃねえか」
「まあ、俺たちは別の用で通りがかっただけなので」
「こんな半端な階層に? 随分大荷物みたいだし、装備も……お世辞にも充実しているとは言えないよな」
 バーサクウルフの皮や肝がどのぐらい高価なのかは知らないが、俺たちの持っている蜜が同等以上の価値があると勘繰られるのは、ちょっと面白くない。あと、装備の話をされるのも不快だ。
「そういう話はちょっと。仕事の具体的な内容って、お互いにしない方がいいと思いませんか」
「ちっ」
 盗賊風の男がでかい舌打ちをしつつ、吐き捨てるように言う。
「じゃあ、おめえらは、こいつらから剥ぎ取るもんな何もねえって事でいいんだな」
「ええ。御覧の通り大荷物なので、取っても運べませんし」
 通りがかりにいた死骸を誰の取り分にするかで、揉めると思われていたのか。
 まあ、見たところそれは理由の一つに過ぎないのだろう。
 取り分で揉めたくないなら、最初からそう持ち掛ければいいだけで、こっちの目的まで聞き出そうとする必要はない。
「そうかい」
 リーダー風の男が、諦めたように言った。
「もう一度聞くが、本当にたまたま通りすがっただけで、ここらに何か用があったわけじゃないんだな?」
「ええ」
 この辺に用があったわけではないし、たまたま通ることになったというのも、別に嘘ではないよな、と自分の中で確認する。
 下手な嘘を吐くと、それが原因でこじれることがある。常に言い訳はきくようにしておくに越したことはない。
 こういうのは、ほどほどに正直なのが無難だ。
「そうか。引き止めて悪かったな。行っていいぞ」
 一方的な物言いだが、とりあえず去っていいようなので、遠慮なくお言葉に甘えることにする。
「……どうも。行こう」
 俺はメリルに声を掛けて、歩き出した。
 彼女は不満を食べたように口をもごつかせていたが、何とか飲み込んでついてくる。
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