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第27話 服屋さんは勘弁してほしい
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魔の森へ行くと決めたら、まずは準備だ。
そんなわけで俺は、エステルと千鳥と一緒に街の道具屋を回っている。中層で生活するに当たって必要な道具を買い揃えようと思ってね。
中層の小屋には一通り道具が揃っているはずなんだけど、傷んできてるし、これまでにない大人数だから思わぬ抜けがないようにと二人にもついてきてもらったってわけなんだ。
俺だと使わないような思わぬアイテムを買ったりして、楽しい時間を過ごすことが出来ている。
しかし、だいたい買い揃えたところで、基本的なアイテムに目を向けていなかったことに思い至った。
「千鳥、ポーションとか毒消し系ってどこで売ってるんだろ?」
「そうでござるな。ストーム殿でしたら、魔術師ギルドでいいのでは?」
「売っていたっけ?」
「はい。学生棟の方に……あるです」
三年前に魔の森に行った時は、回復アイテムのことは頭にあっても買うつもりがなかったのだ。
というのは、それなりのお値段がするからに他ならない。
今はお金に余裕があるし、怪我をした時にポーションがあると無いじゃあ大違いだからな。
俺? 俺は森の薬草を煎じて小屋にストックしていたさ。すぐに腐ってダメになるからなかなか大変なんだぞ。薬草ってやつは……。
ポーションと違ってすぐに回復するわけじゃないし、高い効果が期待できないけど無いよりは全然マシだ……。あ、なんか暗い気持ちになってきたから思い出はこのへんで。
――魔術師ギルド
千鳥の言葉通り、学生棟の売店にはポーションが沢山並んでいる。聞くところによると、生徒の実習で作ったポーションを販売しているらしい。
魔術師ギルドの関係者しか購入できないらしいのだが、にゃんこ先生の顔パスがある俺はここで買い物をすることができるのだ。ふふん。
「どうです? 初級ポーションが殆どですが、手頃な値段です故」
「ポーションって傷の治療以外にもいろいろあるんだな……」
「そうでござる。ポーションの色によって効果が違うんです」
ふむ。色ごとにポーションが分けられているな。
どれどれ、青は傷薬、緑は毒……ここが基本だな。注意書きに低位のポーションだから、効果が無い傷や毒がありますとある。
毒に関してはお守り程度だと思っていた方がいい。一日くらい熱が出る程度の毒なら回復させる効果があるんだろうけど……死に至るような強力な毒には効果は望めないだろう。
傷も深さによって効果がないのだろうな……たぶん。腕が吹っ飛んでも生えてくるとかなら、大金をはたいてでも欲しい。無いよな、そんなポーションは。
「お、おお。こんな種類のポーションもあるのか」
「知らなかったんでござるか?」
俺は右手に紫色、左手に赤色のポーションを手に持つ。
紫はMPが回復。赤色はSPが回復すると書いてある! 低位ポーションだから回復量は多くないみたいだけど、腹がタプタプになるまではこいつを飲むことでSPを回復できるってことか。
これがドリンクじゃなきゃなあ。というのは紫と赤のポーションは用法に「必ず飲むこと」って記載があるのだ。怪我の回復系ポーションだと体に振りかける使い方なのにい。
でも、待てよ……。
「そ、そんな大量の紫色ポーションをどうするつもりなのでござるか……?」
「あ、うん。これさ、使えるかもと思ってね」
呆れる千鳥をよそに、俺はありったけの紫色のポーションをかきあつめる。
「エステル、千鳥、青色ポーション(傷の回復)と緑色ポーション(毒消し)を適当に買ってもらえるかな? 俺はもう持てないからさ」
「了解でござる」
「分かりました! ストームさん」
今までずっと後ろで俺と千鳥の様子を静かに眺めていたエステルが、テキパキと青色ポーションを袋に詰め始める。
その動きを見て、千鳥もようやく緑色ポーションを手に取り始めた。
◆◆◆
魔術師ギルドを出て、宿へ荷物を置きに行きまだ必要な物があるからと買い物に出たのはいい。
買ったものは、確かに必要と言えば必要なものだったから。タオルとかランタンとか生活を豊かにするものだ。生きるために必須ではないけど、健康で文化的な暮らしをするにはあったほうがいいアイテムだと言える。
しかしだな。
俺はとある店の扉の外で足先でトントンと落ち着きなく床を叩き、腕を組んで二人を待っている。
こういうことは俺を連れて来ないで二人で行けばいいのに……。あああ、ここに立っているだけでも不審者ぽく見えてないか?
道行く人が俺にチラリと目をやっている気がするんだよ。
「ストーム殿? 何故外にいるのでござるか?」
店の扉から千鳥が顔だけを出し、俺を呼ぶ。
「さすがに中に入るのはちょっと……」
「ストーム殿がそこに立っている方が目立つでござるよ? そのローブ……」
そういえばそうだった。
俺はいつもの黄金獅子の毛皮でできた派手なローブをまとっている。
「し、しかしだな。二人もいらないだろ? 千鳥がいるじゃないか」
「拙者……よく分からぬ故……黒装束以外着ませぬし?」
行くと言ってないのに千鳥が俺の手を引き、店の中に引きずり込まれてしまった。
店の中は所狭しとスカートやブラウスが所狭しと展示してあって、胸だけを覆う女性用の革鎧やブーツなんて冒険者向けのものまで置いてある。
更には、入り口からは見えないところに下着まで……。
こんな女子ばかりのところ、ソワソワして落ち着かないだろ。分かってくれよ。
なんて頭を抱えそうになった時、エステルがフィッティングルームから出てきた。
ほう、これはなかなか……。
青地の袖先にレースがあしらわれたシャツの上からこげ茶色の胸だけを覆う革鎧。太ももの真ん中辺りまでの白色のスカートに膝上までのソックス。足には革鎧と同じ色をした編みこみブーツか。
腰には革のポーチを装着し、手には革手袋。
おお、これなら野外活動をするにピッタリだな。
「ど、どうでしょうか?」
俺の姿に気が付いたエステルは、上目遣いで俺を見つめてくる。
「うん、その装備なら外でも動きやすいと思う。あとはナイフを腰の後ろ側へ装着できるようにフォルダーをつけたいところかな」
「ありがとうございます! あ、あの、その……」
「ん?」
何やら口ごもるエステル。何か抜けがあったかな……首を捻る俺へ彼女は俺から顔を逸らし呟く。
「へ、変じゃないでしょうか?」
「あ、う、うん。えっと……」
「はい」
じーっと見つめて来ないでもらえるかな。面と向かって言うのは少し恥ずかしい。
今度は逆に俺がエステルから目を逸らしボソッと。
「似合ってて、可愛いと思うよ」
「良かったです!」
「じゃあ、俺はこれで……」
背を向けたが、エステルにむんずと肩を掴まれる。
「ま、まだ何かあるの?」
「は、はい。服の予備とできれば下着の色も選んでいただきたいのですが……」
「そ、それは自分で選んでくれえ!」
エステルの手を振りほどき、俺はそそくさと外へ出る。
千鳥が俺の後を追うが、彼はこの店の中にいたというのにまるで動じた様子がない。
お、俺が変なのか? い、いや、そんなはずは。
外に出た所で千鳥が声をかけたきた。
「ストーム殿も服を買われないのですか? もうかなり年季が入っているように見えるでござるが」
「あ、そうだな。シャツとズボンは買い替えと予備を買っておこうか。千鳥も買っておく?」
「いえ、拙者は予備の黒装束があります故……」
「黒装束かあ。そういや千鳥、君の下着ってふんどしなの? 使い心地はどうかな?」
「……知らないでござる!」
千鳥はぷううとほっぺを膨らませ、頬を僅かに朱に染め店に入って行ってしまった。
残された俺はエステルが出てくるまで待つことになる……。千鳥に俺も服を買いに行くとエステルへ伝えて欲しかったのに。
そんなわけで俺は、エステルと千鳥と一緒に街の道具屋を回っている。中層で生活するに当たって必要な道具を買い揃えようと思ってね。
中層の小屋には一通り道具が揃っているはずなんだけど、傷んできてるし、これまでにない大人数だから思わぬ抜けがないようにと二人にもついてきてもらったってわけなんだ。
俺だと使わないような思わぬアイテムを買ったりして、楽しい時間を過ごすことが出来ている。
しかし、だいたい買い揃えたところで、基本的なアイテムに目を向けていなかったことに思い至った。
「千鳥、ポーションとか毒消し系ってどこで売ってるんだろ?」
「そうでござるな。ストーム殿でしたら、魔術師ギルドでいいのでは?」
「売っていたっけ?」
「はい。学生棟の方に……あるです」
三年前に魔の森に行った時は、回復アイテムのことは頭にあっても買うつもりがなかったのだ。
というのは、それなりのお値段がするからに他ならない。
今はお金に余裕があるし、怪我をした時にポーションがあると無いじゃあ大違いだからな。
俺? 俺は森の薬草を煎じて小屋にストックしていたさ。すぐに腐ってダメになるからなかなか大変なんだぞ。薬草ってやつは……。
ポーションと違ってすぐに回復するわけじゃないし、高い効果が期待できないけど無いよりは全然マシだ……。あ、なんか暗い気持ちになってきたから思い出はこのへんで。
――魔術師ギルド
千鳥の言葉通り、学生棟の売店にはポーションが沢山並んでいる。聞くところによると、生徒の実習で作ったポーションを販売しているらしい。
魔術師ギルドの関係者しか購入できないらしいのだが、にゃんこ先生の顔パスがある俺はここで買い物をすることができるのだ。ふふん。
「どうです? 初級ポーションが殆どですが、手頃な値段です故」
「ポーションって傷の治療以外にもいろいろあるんだな……」
「そうでござる。ポーションの色によって効果が違うんです」
ふむ。色ごとにポーションが分けられているな。
どれどれ、青は傷薬、緑は毒……ここが基本だな。注意書きに低位のポーションだから、効果が無い傷や毒がありますとある。
毒に関してはお守り程度だと思っていた方がいい。一日くらい熱が出る程度の毒なら回復させる効果があるんだろうけど……死に至るような強力な毒には効果は望めないだろう。
傷も深さによって効果がないのだろうな……たぶん。腕が吹っ飛んでも生えてくるとかなら、大金をはたいてでも欲しい。無いよな、そんなポーションは。
「お、おお。こんな種類のポーションもあるのか」
「知らなかったんでござるか?」
俺は右手に紫色、左手に赤色のポーションを手に持つ。
紫はMPが回復。赤色はSPが回復すると書いてある! 低位ポーションだから回復量は多くないみたいだけど、腹がタプタプになるまではこいつを飲むことでSPを回復できるってことか。
これがドリンクじゃなきゃなあ。というのは紫と赤のポーションは用法に「必ず飲むこと」って記載があるのだ。怪我の回復系ポーションだと体に振りかける使い方なのにい。
でも、待てよ……。
「そ、そんな大量の紫色ポーションをどうするつもりなのでござるか……?」
「あ、うん。これさ、使えるかもと思ってね」
呆れる千鳥をよそに、俺はありったけの紫色のポーションをかきあつめる。
「エステル、千鳥、青色ポーション(傷の回復)と緑色ポーション(毒消し)を適当に買ってもらえるかな? 俺はもう持てないからさ」
「了解でござる」
「分かりました! ストームさん」
今までずっと後ろで俺と千鳥の様子を静かに眺めていたエステルが、テキパキと青色ポーションを袋に詰め始める。
その動きを見て、千鳥もようやく緑色ポーションを手に取り始めた。
◆◆◆
魔術師ギルドを出て、宿へ荷物を置きに行きまだ必要な物があるからと買い物に出たのはいい。
買ったものは、確かに必要と言えば必要なものだったから。タオルとかランタンとか生活を豊かにするものだ。生きるために必須ではないけど、健康で文化的な暮らしをするにはあったほうがいいアイテムだと言える。
しかしだな。
俺はとある店の扉の外で足先でトントンと落ち着きなく床を叩き、腕を組んで二人を待っている。
こういうことは俺を連れて来ないで二人で行けばいいのに……。あああ、ここに立っているだけでも不審者ぽく見えてないか?
道行く人が俺にチラリと目をやっている気がするんだよ。
「ストーム殿? 何故外にいるのでござるか?」
店の扉から千鳥が顔だけを出し、俺を呼ぶ。
「さすがに中に入るのはちょっと……」
「ストーム殿がそこに立っている方が目立つでござるよ? そのローブ……」
そういえばそうだった。
俺はいつもの黄金獅子の毛皮でできた派手なローブをまとっている。
「し、しかしだな。二人もいらないだろ? 千鳥がいるじゃないか」
「拙者……よく分からぬ故……黒装束以外着ませぬし?」
行くと言ってないのに千鳥が俺の手を引き、店の中に引きずり込まれてしまった。
店の中は所狭しとスカートやブラウスが所狭しと展示してあって、胸だけを覆う女性用の革鎧やブーツなんて冒険者向けのものまで置いてある。
更には、入り口からは見えないところに下着まで……。
こんな女子ばかりのところ、ソワソワして落ち着かないだろ。分かってくれよ。
なんて頭を抱えそうになった時、エステルがフィッティングルームから出てきた。
ほう、これはなかなか……。
青地の袖先にレースがあしらわれたシャツの上からこげ茶色の胸だけを覆う革鎧。太ももの真ん中辺りまでの白色のスカートに膝上までのソックス。足には革鎧と同じ色をした編みこみブーツか。
腰には革のポーチを装着し、手には革手袋。
おお、これなら野外活動をするにピッタリだな。
「ど、どうでしょうか?」
俺の姿に気が付いたエステルは、上目遣いで俺を見つめてくる。
「うん、その装備なら外でも動きやすいと思う。あとはナイフを腰の後ろ側へ装着できるようにフォルダーをつけたいところかな」
「ありがとうございます! あ、あの、その……」
「ん?」
何やら口ごもるエステル。何か抜けがあったかな……首を捻る俺へ彼女は俺から顔を逸らし呟く。
「へ、変じゃないでしょうか?」
「あ、う、うん。えっと……」
「はい」
じーっと見つめて来ないでもらえるかな。面と向かって言うのは少し恥ずかしい。
今度は逆に俺がエステルから目を逸らしボソッと。
「似合ってて、可愛いと思うよ」
「良かったです!」
「じゃあ、俺はこれで……」
背を向けたが、エステルにむんずと肩を掴まれる。
「ま、まだ何かあるの?」
「は、はい。服の予備とできれば下着の色も選んでいただきたいのですが……」
「そ、それは自分で選んでくれえ!」
エステルの手を振りほどき、俺はそそくさと外へ出る。
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外に出た所で千鳥が声をかけたきた。
「ストーム殿も服を買われないのですか? もうかなり年季が入っているように見えるでござるが」
「あ、そうだな。シャツとズボンは買い替えと予備を買っておこうか。千鳥も買っておく?」
「いえ、拙者は予備の黒装束があります故……」
「黒装束かあ。そういや千鳥、君の下着ってふんどしなの? 使い心地はどうかな?」
「……知らないでござる!」
千鳥はぷううとほっぺを膨らませ、頬を僅かに朱に染め店に入って行ってしまった。
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