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14.緑の魔女
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「あ……」
「見えたか? それがお前の魔力だ。体内で生成された魔力は体の外に出て、溜まる。コップに水を注ぐとすぐに満タンになるだろ? 満タンになると水を注ぐのをやめる。まあ当然だよな。ところが、コップに穴が開いていたらどうだ? ずっと水を注ぎ続けるだろ?」
「コップの外で水は溜まり続ける……つまり、前みたいに魔力を使って魔力を回復するんじゃなく、使っても使わなくても魔力が増え続けるのね」
「そういうこと。自分の魔力を認識できたか? ならば、使えるはずだ。元々、魔法を使うことができたんだろ?」
「うん。やってみる!」
名残惜しいけどコアラさんを降ろして、両手を胸の前で組む。
体の中にある時と同じように魔力を手繰り寄せ、胸の中心に集め……あっさりとできた!
そ、それにしても、この魔力量。軽く集中しただけなのに、これまでの全力より多いんだけどお。
魔力に飲まれないように慎重に術式を編む。
光の魔法陣が浮かびあがり、緑の輝きを発する。輝きは古代種ユーカリの鉢を包み込んだ。
「お、おおおおお!」
コアラさんの歓声に導かれるかのように、ユーカリの若木が伸び、葉っぱが二十枚ほど生えてきた。
元がそれほど大きくないからだろうけど、30パーセントくらいは成長したかも。我ながら、こんなにあっさりと成長させることができるなんて驚きだわ!
これが、ウィザードの力……なのか。すごい、ウィザード。
「ふう。すごいよ! コアラさん!」
「お、おおおおおお。おうおう!」
大成功に嬉しくなってコアラさんを抱っこして小躍りする。
コアラさんも喜びの声を全力で発していた。
彼が前脚と後脚をバタバタさせていたから、ハッとなって彼を降ろす。
そうしたら、コアラさんがかくかくと踊り始めたの。これがまた可愛いのなんのって!
また抱きしめたくなっちゃったけど、グッと堪える。
「やっぱりお前……ええと、ルチルは固有属性持ちだったんだな!」
「固有? 私の属性は緑だよ?」
「緑! 緑属性がいたとは! 人間社会と接触すべきだったか……。ルチル、一つお願いがあるんだ」
「私も大賢……コアラさんにお願いがあってここに来たの」
「そうか。俺が生き残ることができれば、俺にできることなら協力する」
「ありがとう!」
「こ、こら。頭を……うぎゅう」
どさくさに紛れてコアラさんの頭をなでなでしちゃった。
やっぱり、キュンキュンする! コアラさんには悪いけど、我慢できなかったの、ごめんね。
「あ、あはは」
「笑って誤魔化しても誤魔化されないからな。ルチル。ユーカリの葉を五枚もらっていいか?」
「うん。コアラさんが魔法を使えるようにしてくれたんだもん。いっぱい、食べて!」
「もしゃ……もしゃ。何とかこれで多少は魔法が使える」
ユーカリの葉をきっちり五枚もしゃもしゃしたコアラさんは、ゆらゆらと前脚を揺らす。
続いて耳をピクリと動かした次の瞬間――。
森がざわめいた。
『にゃーん!』
猫? 鳴き声はお屋敷で飼っていた猫とそっくり。
で、でも。
私の背筋が総毛だつ。こ、この感じ……戦いの心得が殆どない私にだって分かる。
「コアラさん……」
「ん? 徒歩で行くのも何だと思ってな」
呑気なコアラさんにホッと胸を撫でおろす。
ことなんてできないよ! これはきっと魔獣ってやつに違いないわ。
ガサリ。
前方の草むらが揺れたと思ったら、ぬっと虎柄の猫頭が見えた。
猫頭は猫頭でも私の頭より大きい。コアラさんの全身よりも大きいよ?
食べられる! 本能的にそう感じた私はぎゅっと目を閉じ、コアラさんを抱きしめる。
立ち向かわなきゃならないのに。オートクロスボウガンを構えるどころか、よりによって目を瞑ってしゃがみこんでしまうなんて……。
「何してんだ?」
「ご、ごめんなさい。魔法が使えるようになっても、魔獣を目の前にすると」
「ん。トラシマのことか?」
「きゃ! あ、あああ」
あろうことか、あの一瞬で頭だけ見えた猫がもう足元まで来ていたの!
虎柄の猫をそのまま五メートルくらいまで大きくしたような、そんな感じの魔獣だった。
「まあ、中には凶暴な魔獣もいる。人間の国にはいないのか?」
「シルバークリムゾン王国は壁に護られているから、魔獣が入ってくることはできないの」
「そういや、そんなものがあったな。魔獣を見たことがないなら、足が竦んでも仕方ない。こいつは大人しいし、問題ないぞ」
「そ、そうなの?」
恐る恐る大きな猫の脚に触れると「にゃーん」と鳴き、私の腕をベロンとしてきた。
舌がザラザラしてる。猫とおんなじなんだね。
「君、何て名前なの?」
「にゃーん」
「コアラさんと違って喋らないんだね」
「そいつはケットシーのトラシマだ。こいつに乗せて行ってもらうぞ」
大きな猫はケットシーと言うらしい。名前はトラシマ。
もふもふ猫に乗ることができるなんて、すごい!
と思ったら、首元を咥えられひょいっと私の身体が宙に浮く。
ぼふん。
トラシマのフサフサの背中に私の身体が沈み込む。
「わああ」
「しっかりつかまっていろよ」
コアラさんが私の前に乗って、トラシマがのっしのっしと歩き始める。
◇◇◇
風のようとはまさにこのこと。トラシマは悪路をものともせず、馬の数倍のスピードで走り続けた。
森の景色がグルグルと切り替わり、突如、枯れ木ばかりの開けた土地に視界が切り替わる。
「着いたぞ」
「これ……全部、古代種ユーカリ?」
「そうだ。土、風、光、暗闇、熱、水、あらゆる手を尽くしたんだが、ユーカリの木は復活することはなかった」
「私の魔法で古代種ユーカリを元気にすればいいんだね!」
「試すだけでも、頼む」
両手を握りしめ、力強く頷きを返す。
コアラさんのおかけで使えるようになったこの力、少しでも彼に恩返しとなればいいのだけど。
まずは一本、一番近くにあるすっかり葉っぱが生えなくなってしまった大木に手をピタリとつける。
込める魔力は先ほどの倍くらいでいいかな?
魔力に飲まれないように慎重にやらなきゃ。
大木から手を離し、両手を胸の前で組む。
行くよ!
術式構築。光の魔法陣が私の真上に浮かび上がる。
あとは呼びかけるだけ。
「大木よ、かつての力を取り戻して! 緑の精霊ドリスよ。ビリジアンヒール!」
魔法陣から緑の光が降り注ぎ、大木を包み込む。
すると、幹が瑞々しさを取り戻し、枝から新芽が出てきて、みるみるうちに新緑の葉でいっぱいになった。
「せ、成功したよ! コアラさん!」
「お、おおおおお! ユーカリの木が!」
よおっし!
コアラさんも大喜びでカクカクした謎のダンスを踊り始めた。一方でトラシマは地面に伏せた状態でふああと大きな欠伸をする。
「この調子で枯木を全部、元に戻すね!」
「それは止めて置け。あと二本が限界だ。念のためあと一本にしておいた方がいい。自分の残魔力を把握しているか?」
「え、えっと。た、確かに。ごめんね、コアラさん。残りはまた今度必ず」
「いや、本当に本当にありがとう。感謝してもしきれない」
続いてもう一本、古代種ユーカリの木を復活させたところで、ペタンとお尻を地面につけた。
あ、あれ、何でだろ。体から力が抜けちゃったみたい。
「見えたか? それがお前の魔力だ。体内で生成された魔力は体の外に出て、溜まる。コップに水を注ぐとすぐに満タンになるだろ? 満タンになると水を注ぐのをやめる。まあ当然だよな。ところが、コップに穴が開いていたらどうだ? ずっと水を注ぎ続けるだろ?」
「コップの外で水は溜まり続ける……つまり、前みたいに魔力を使って魔力を回復するんじゃなく、使っても使わなくても魔力が増え続けるのね」
「そういうこと。自分の魔力を認識できたか? ならば、使えるはずだ。元々、魔法を使うことができたんだろ?」
「うん。やってみる!」
名残惜しいけどコアラさんを降ろして、両手を胸の前で組む。
体の中にある時と同じように魔力を手繰り寄せ、胸の中心に集め……あっさりとできた!
そ、それにしても、この魔力量。軽く集中しただけなのに、これまでの全力より多いんだけどお。
魔力に飲まれないように慎重に術式を編む。
光の魔法陣が浮かびあがり、緑の輝きを発する。輝きは古代種ユーカリの鉢を包み込んだ。
「お、おおおおお!」
コアラさんの歓声に導かれるかのように、ユーカリの若木が伸び、葉っぱが二十枚ほど生えてきた。
元がそれほど大きくないからだろうけど、30パーセントくらいは成長したかも。我ながら、こんなにあっさりと成長させることができるなんて驚きだわ!
これが、ウィザードの力……なのか。すごい、ウィザード。
「ふう。すごいよ! コアラさん!」
「お、おおおおおお。おうおう!」
大成功に嬉しくなってコアラさんを抱っこして小躍りする。
コアラさんも喜びの声を全力で発していた。
彼が前脚と後脚をバタバタさせていたから、ハッとなって彼を降ろす。
そうしたら、コアラさんがかくかくと踊り始めたの。これがまた可愛いのなんのって!
また抱きしめたくなっちゃったけど、グッと堪える。
「やっぱりお前……ええと、ルチルは固有属性持ちだったんだな!」
「固有? 私の属性は緑だよ?」
「緑! 緑属性がいたとは! 人間社会と接触すべきだったか……。ルチル、一つお願いがあるんだ」
「私も大賢……コアラさんにお願いがあってここに来たの」
「そうか。俺が生き残ることができれば、俺にできることなら協力する」
「ありがとう!」
「こ、こら。頭を……うぎゅう」
どさくさに紛れてコアラさんの頭をなでなでしちゃった。
やっぱり、キュンキュンする! コアラさんには悪いけど、我慢できなかったの、ごめんね。
「あ、あはは」
「笑って誤魔化しても誤魔化されないからな。ルチル。ユーカリの葉を五枚もらっていいか?」
「うん。コアラさんが魔法を使えるようにしてくれたんだもん。いっぱい、食べて!」
「もしゃ……もしゃ。何とかこれで多少は魔法が使える」
ユーカリの葉をきっちり五枚もしゃもしゃしたコアラさんは、ゆらゆらと前脚を揺らす。
続いて耳をピクリと動かした次の瞬間――。
森がざわめいた。
『にゃーん!』
猫? 鳴き声はお屋敷で飼っていた猫とそっくり。
で、でも。
私の背筋が総毛だつ。こ、この感じ……戦いの心得が殆どない私にだって分かる。
「コアラさん……」
「ん? 徒歩で行くのも何だと思ってな」
呑気なコアラさんにホッと胸を撫でおろす。
ことなんてできないよ! これはきっと魔獣ってやつに違いないわ。
ガサリ。
前方の草むらが揺れたと思ったら、ぬっと虎柄の猫頭が見えた。
猫頭は猫頭でも私の頭より大きい。コアラさんの全身よりも大きいよ?
食べられる! 本能的にそう感じた私はぎゅっと目を閉じ、コアラさんを抱きしめる。
立ち向かわなきゃならないのに。オートクロスボウガンを構えるどころか、よりによって目を瞑ってしゃがみこんでしまうなんて……。
「何してんだ?」
「ご、ごめんなさい。魔法が使えるようになっても、魔獣を目の前にすると」
「ん。トラシマのことか?」
「きゃ! あ、あああ」
あろうことか、あの一瞬で頭だけ見えた猫がもう足元まで来ていたの!
虎柄の猫をそのまま五メートルくらいまで大きくしたような、そんな感じの魔獣だった。
「まあ、中には凶暴な魔獣もいる。人間の国にはいないのか?」
「シルバークリムゾン王国は壁に護られているから、魔獣が入ってくることはできないの」
「そういや、そんなものがあったな。魔獣を見たことがないなら、足が竦んでも仕方ない。こいつは大人しいし、問題ないぞ」
「そ、そうなの?」
恐る恐る大きな猫の脚に触れると「にゃーん」と鳴き、私の腕をベロンとしてきた。
舌がザラザラしてる。猫とおんなじなんだね。
「君、何て名前なの?」
「にゃーん」
「コアラさんと違って喋らないんだね」
「そいつはケットシーのトラシマだ。こいつに乗せて行ってもらうぞ」
大きな猫はケットシーと言うらしい。名前はトラシマ。
もふもふ猫に乗ることができるなんて、すごい!
と思ったら、首元を咥えられひょいっと私の身体が宙に浮く。
ぼふん。
トラシマのフサフサの背中に私の身体が沈み込む。
「わああ」
「しっかりつかまっていろよ」
コアラさんが私の前に乗って、トラシマがのっしのっしと歩き始める。
◇◇◇
風のようとはまさにこのこと。トラシマは悪路をものともせず、馬の数倍のスピードで走り続けた。
森の景色がグルグルと切り替わり、突如、枯れ木ばかりの開けた土地に視界が切り替わる。
「着いたぞ」
「これ……全部、古代種ユーカリ?」
「そうだ。土、風、光、暗闇、熱、水、あらゆる手を尽くしたんだが、ユーカリの木は復活することはなかった」
「私の魔法で古代種ユーカリを元気にすればいいんだね!」
「試すだけでも、頼む」
両手を握りしめ、力強く頷きを返す。
コアラさんのおかけで使えるようになったこの力、少しでも彼に恩返しとなればいいのだけど。
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あとは呼びかけるだけ。
「大木よ、かつての力を取り戻して! 緑の精霊ドリスよ。ビリジアンヒール!」
魔法陣から緑の光が降り注ぎ、大木を包み込む。
すると、幹が瑞々しさを取り戻し、枝から新芽が出てきて、みるみるうちに新緑の葉でいっぱいになった。
「せ、成功したよ! コアラさん!」
「お、おおおおお! ユーカリの木が!」
よおっし!
コアラさんも大喜びでカクカクした謎のダンスを踊り始めた。一方でトラシマは地面に伏せた状態でふああと大きな欠伸をする。
「この調子で枯木を全部、元に戻すね!」
「それは止めて置け。あと二本が限界だ。念のためあと一本にしておいた方がいい。自分の残魔力を把握しているか?」
「え、えっと。た、確かに。ごめんね、コアラさん。残りはまた今度必ず」
「いや、本当に本当にありがとう。感謝してもしきれない」
続いてもう一本、古代種ユーカリの木を復活させたところで、ペタンとお尻を地面につけた。
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