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第27話 新たな出会い
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――翌朝
のんびり朝食を食べてからウォルターに案内してもらって、アリの巣穴の確認にみんなで出かける。
滝がある場所から断崖絶壁に沿って東へしばらく歩くと、目的の穴を発見することができた。穴のサイズはだいたい一メートルくらいで、こんな大きな穴から這い出して来るアリを想像すると背筋が寒くなってしまう。
見たくねえ……。
「出てくる前に塞いでしまうか」
「うむ。頼むぞ、良介」
俺の呟きに応じたウォルターが俺の肩にとまる。
んじゃま、やりますか。
穴は崖の岩肌と土の境目辺りに斜めに空いているんだが、そのまま穴を塞いだだけだと周囲の土を掘り返してまたアリが出てくるかもしれない。
もしかしてアリって……。
「ウォルター、ライラ、分かれば教えて欲しいんだけど、アリって岩も掘れたりするの?」
「岩に穴を開けることはできないと思います」
ライラが目で早くと訴えながらも、ちゃんと答えてくれた。
なら、こうするか。
俺はタブレットを手に出すと、周囲の木をブロック化する。まずは四十五センチのブロックを穴の真上に出すと、ブロックは穴の中にすっぽりと納まった。
続いて中に入るだけ小さなブロックを穴の中へ押し込むと、上から九十センチのブロックで穴そのものを塞ぐ。これでもまだ、穴の外周は埋まってないので、大きなブロックを繋げて周辺の土も含めて全てブロックで埋めつくした。
「こんなものでどうだろう?」
「もう少し広くブロックを敷き詰めてはどうでしょうか?」
「そうだの。きゃつらの諦めの悪さは想像以上だて」
俺の問いかけにライラとウォルターがアドバイスをくれた。
俺は彼女らの助言通り、穴を中心に左右五ブロック敷き詰め大きく息を吐き出す。
ふう、これでどうだ? ライラの顔へ目を向けると、彼女は無言で頷きを返した。
「ウォルター、これでしばらく様子を見たい」
「うむ。我が輩が朝晩ここまで監視に来る。異常があれば知らせるからな」
「ありがとう。助かるよ」
もう一つ気になることがある。
「ウォルター。この穴はできてからどれくらい経過しているんだろ?」
「長くて三日だろうな。良介。聞きたいことは分かった。アリどもの習性を教授しようではないか」
「おお」
珍しくウォルターの察しが良くて目を見開いてしまった。
そう、俺の知りたかったこととは、窪地の中にアリが何体出てきているのかってことなんだ。
俺がアリの数を予測するために、ウォルターは「習性」を教えると言ったのだった。
「アリの活動時間は日が出ている間だけなのだ。きゃつらは餌のある場所では食事はしない。餌を見つけると全て巣穴へ持って帰るのだよ」
「なるほど。アリの歩く速さってどんなもんなんだ?」
「良介が歩くくらいの速度だな」
意外に遅いな。
しかし、ウォルターからの情報では肝心のアリの数がどれくらいかまるで推測できないじゃないか。
ん、まてよ。あ、そういうことか。数を予想する必要なんかないんだ。
「その顔は気が付いたようだな」
「ああ、『アリはここに戻ってくる』そういうことなんだよな」
餌を発見したアリは巣穴に戻るが、ブロックで道が塞がっているからここで立ち往生するだろう。
そして、最終的に外に出ていたアリは夕暮れになると全部ここ戻ってくるってわけだ。なので、数を把握する必要なんてない。俺がやりたかったのは厄介そうなアリを全て窪地から駆除したかったことなのだから。
「いかにも。故に……(食材を)狩りに行こうではないか」
この食いしん坊カラスめ! しかし……ウォルターもなかなか頭が切れることが分かっていい意味で驚いた。
無駄口ばかり叩いていると思っていたけど、彼の長話に耳を傾けてもいいかもしれない。
なんて一瞬だけ考えたけど、やっぱり長話は聞いても仕方ないとすぐに考えを改める。受けごたえしている時はちゃんと言葉のやり取りができるのに、長話になるとまるで人の話を聞かないからな……。
「全く……ウォルターはブレないな。何を狩りたいんだ?」
俺は苦笑しながらも、役に立ってくれたウォルターに希望を訪ねた。
「そうだな……猪とかどうだ?」
「へえ、猪がいるのか。窪地の上かな?」
「うむ。いる場所に見当はついておる。毎日空から周辺を観察しているからな」
いつも何やっているのかなと思っていたけど、ちゃんと俺たちのために動いてくれていたんだな。ありがとう。ウォルター。
今日ばかりは君の胃袋を満足させるように動こうじゃないか。今日だけだけどな。
あ、でも……猪なら鹿よりおいしいかもしれない……。
◆◆◆
何というか、ウォルターの食べ物へ対する嗅覚は凄まじいものがあるな。空を飛んで生い茂る樹木の上から猪を探しているのにも関わらず、あっさりと猪を見つけてしまったのだ。
見つけてしまいさえすれば、後はポチにお任せだ。い、いや、俺だってもちろん手伝うさ。
窪地の上に登ると、ポチが巨大化して俺とライラが彼の背中に騎乗してウォルターが彼の頭の上にとまる。
しかし、今回は俺とライラの位置が逆なんだ……。決して嫌らしい気持ちで俺が前に乗ったわけじゃあない。猪のいるところまで移動するためと、俺がポチを手伝うために必要なことだったんだ。
決して、ライラの感触をたのし、
「どうされました? 良介さん」
「あ、いや。ポチに走ってもらうからしっかり捕まっていてくれよ」
「はい!」
「え?」
「どうされましたか?」
「あ、いや。行こう」
捕まってくれというのは、俺の体に後ろから密着することじゃあなくポチの毛をしっかり握りしめてって意味なんだが……。
俺の煩悩よ飛んでケー。あははははー。なんて考えていたらあっという間に猪の姿が確認できた。
「行くぞ! ポチ」
「わおん」
ワザと大きな声を立てて猪の気を引くと、猪の前方と後方に二段の高さがあるブロックを出現させた。
驚く猪をポチが横撃し、あっさりと猪を仕留める。
「うまくいっってよかった」
「さすがです。良介さん!」
「猪は久しぶりだ。早めの食事にしようではないか」
食いしん坊カラスの言う通り、早いうちに食事を済ませてアリの巣穴に張り付かないといけないからな。
ポチが仕留めた猪を口でくわえ踵を返した時、ウォルターが警告を発する。
「良介、ライラ。上に何か気配がするぞ」
「え? 上?」
耳を澄ませて意識を樹上に集中させるが、あいにく何の気配も感じない。
しかし、ライラの体に緊張が走り俺のお腹に回した腕に力が籠る。
「どんな気配なんだ?」
俺は声をなるべく押し殺して囁くように呟いた。
「ここまで接近しているのなら、見た方がはやい」
ウォルターは翼を羽ばたかせると一息に樹上まで飛び上がる。
「悪魔族だ。良介。気を失っているのか身動き一つせぬぞ」
「樹上で行き倒れって……」
「何でしょうか?」
つい首を後ろに回そうと捻ったら、ライラに機先を制されてしまった。
うん、有り得ないと思っていることだって、一度あったことは二度ある。その格言が今目の前で起こっているに過ぎない……それで納得できるのか俺……?
それは置いておいて、すぐに樹上の悪魔族を助けないとこのまま放置しておいて猛獣に襲われたらひとたまりもない。
「ライラ、一度ポチから降りてくれ」
「はい」
俺は樹上に目を凝らし悪魔族の位置を……ってあれが足かな。足先だけ確認できたけど、体全体はここからじゃあ葉っぱに隠れて見ることは叶わない。
んー、この辺りかなあ。
「ポチ」
「わおん」
ポチの首元をわしゃわしゃとモフった後、彼を数歩進ませて伏せの体制を取ってもらう。
「じゃあ、これから落とすから」
俺はそう宣言すると、タブレットを出して悪魔族の人が引っかかっている木をブロック化する。
次の瞬間、大量の葉っぱと共に悪魔族の人が落ちてきてポチのふわっふわの背中にうまく不時着してくれた。
悪魔族の人は中学生くらいに見える少女で、ライラと同じ薄紫の髪で彼女と同じような服装をしていた。ライラは黒っぽい色だったけど、この少女はピンクを基調とした服だった。
俺が少女の様子を確認しようと一歩踏み出した時、ライラが少女をギュッと抱きしめて肩を揺する。
「フィア! 大丈夫!? フィア!」
ライラは彼女にしては大きな声で少女の名を叫んだのだった。
のんびり朝食を食べてからウォルターに案内してもらって、アリの巣穴の確認にみんなで出かける。
滝がある場所から断崖絶壁に沿って東へしばらく歩くと、目的の穴を発見することができた。穴のサイズはだいたい一メートルくらいで、こんな大きな穴から這い出して来るアリを想像すると背筋が寒くなってしまう。
見たくねえ……。
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もしかしてアリって……。
「ウォルター、ライラ、分かれば教えて欲しいんだけど、アリって岩も掘れたりするの?」
「岩に穴を開けることはできないと思います」
ライラが目で早くと訴えながらも、ちゃんと答えてくれた。
なら、こうするか。
俺はタブレットを手に出すと、周囲の木をブロック化する。まずは四十五センチのブロックを穴の真上に出すと、ブロックは穴の中にすっぽりと納まった。
続いて中に入るだけ小さなブロックを穴の中へ押し込むと、上から九十センチのブロックで穴そのものを塞ぐ。これでもまだ、穴の外周は埋まってないので、大きなブロックを繋げて周辺の土も含めて全てブロックで埋めつくした。
「こんなものでどうだろう?」
「もう少し広くブロックを敷き詰めてはどうでしょうか?」
「そうだの。きゃつらの諦めの悪さは想像以上だて」
俺の問いかけにライラとウォルターがアドバイスをくれた。
俺は彼女らの助言通り、穴を中心に左右五ブロック敷き詰め大きく息を吐き出す。
ふう、これでどうだ? ライラの顔へ目を向けると、彼女は無言で頷きを返した。
「ウォルター、これでしばらく様子を見たい」
「うむ。我が輩が朝晩ここまで監視に来る。異常があれば知らせるからな」
「ありがとう。助かるよ」
もう一つ気になることがある。
「ウォルター。この穴はできてからどれくらい経過しているんだろ?」
「長くて三日だろうな。良介。聞きたいことは分かった。アリどもの習性を教授しようではないか」
「おお」
珍しくウォルターの察しが良くて目を見開いてしまった。
そう、俺の知りたかったこととは、窪地の中にアリが何体出てきているのかってことなんだ。
俺がアリの数を予測するために、ウォルターは「習性」を教えると言ったのだった。
「アリの活動時間は日が出ている間だけなのだ。きゃつらは餌のある場所では食事はしない。餌を見つけると全て巣穴へ持って帰るのだよ」
「なるほど。アリの歩く速さってどんなもんなんだ?」
「良介が歩くくらいの速度だな」
意外に遅いな。
しかし、ウォルターからの情報では肝心のアリの数がどれくらいかまるで推測できないじゃないか。
ん、まてよ。あ、そういうことか。数を予想する必要なんかないんだ。
「その顔は気が付いたようだな」
「ああ、『アリはここに戻ってくる』そういうことなんだよな」
餌を発見したアリは巣穴に戻るが、ブロックで道が塞がっているからここで立ち往生するだろう。
そして、最終的に外に出ていたアリは夕暮れになると全部ここ戻ってくるってわけだ。なので、数を把握する必要なんてない。俺がやりたかったのは厄介そうなアリを全て窪地から駆除したかったことなのだから。
「いかにも。故に……(食材を)狩りに行こうではないか」
この食いしん坊カラスめ! しかし……ウォルターもなかなか頭が切れることが分かっていい意味で驚いた。
無駄口ばかり叩いていると思っていたけど、彼の長話に耳を傾けてもいいかもしれない。
なんて一瞬だけ考えたけど、やっぱり長話は聞いても仕方ないとすぐに考えを改める。受けごたえしている時はちゃんと言葉のやり取りができるのに、長話になるとまるで人の話を聞かないからな……。
「全く……ウォルターはブレないな。何を狩りたいんだ?」
俺は苦笑しながらも、役に立ってくれたウォルターに希望を訪ねた。
「そうだな……猪とかどうだ?」
「へえ、猪がいるのか。窪地の上かな?」
「うむ。いる場所に見当はついておる。毎日空から周辺を観察しているからな」
いつも何やっているのかなと思っていたけど、ちゃんと俺たちのために動いてくれていたんだな。ありがとう。ウォルター。
今日ばかりは君の胃袋を満足させるように動こうじゃないか。今日だけだけどな。
あ、でも……猪なら鹿よりおいしいかもしれない……。
◆◆◆
何というか、ウォルターの食べ物へ対する嗅覚は凄まじいものがあるな。空を飛んで生い茂る樹木の上から猪を探しているのにも関わらず、あっさりと猪を見つけてしまったのだ。
見つけてしまいさえすれば、後はポチにお任せだ。い、いや、俺だってもちろん手伝うさ。
窪地の上に登ると、ポチが巨大化して俺とライラが彼の背中に騎乗してウォルターが彼の頭の上にとまる。
しかし、今回は俺とライラの位置が逆なんだ……。決して嫌らしい気持ちで俺が前に乗ったわけじゃあない。猪のいるところまで移動するためと、俺がポチを手伝うために必要なことだったんだ。
決して、ライラの感触をたのし、
「どうされました? 良介さん」
「あ、いや。ポチに走ってもらうからしっかり捕まっていてくれよ」
「はい!」
「え?」
「どうされましたか?」
「あ、いや。行こう」
捕まってくれというのは、俺の体に後ろから密着することじゃあなくポチの毛をしっかり握りしめてって意味なんだが……。
俺の煩悩よ飛んでケー。あははははー。なんて考えていたらあっという間に猪の姿が確認できた。
「行くぞ! ポチ」
「わおん」
ワザと大きな声を立てて猪の気を引くと、猪の前方と後方に二段の高さがあるブロックを出現させた。
驚く猪をポチが横撃し、あっさりと猪を仕留める。
「うまくいっってよかった」
「さすがです。良介さん!」
「猪は久しぶりだ。早めの食事にしようではないか」
食いしん坊カラスの言う通り、早いうちに食事を済ませてアリの巣穴に張り付かないといけないからな。
ポチが仕留めた猪を口でくわえ踵を返した時、ウォルターが警告を発する。
「良介、ライラ。上に何か気配がするぞ」
「え? 上?」
耳を澄ませて意識を樹上に集中させるが、あいにく何の気配も感じない。
しかし、ライラの体に緊張が走り俺のお腹に回した腕に力が籠る。
「どんな気配なんだ?」
俺は声をなるべく押し殺して囁くように呟いた。
「ここまで接近しているのなら、見た方がはやい」
ウォルターは翼を羽ばたかせると一息に樹上まで飛び上がる。
「悪魔族だ。良介。気を失っているのか身動き一つせぬぞ」
「樹上で行き倒れって……」
「何でしょうか?」
つい首を後ろに回そうと捻ったら、ライラに機先を制されてしまった。
うん、有り得ないと思っていることだって、一度あったことは二度ある。その格言が今目の前で起こっているに過ぎない……それで納得できるのか俺……?
それは置いておいて、すぐに樹上の悪魔族を助けないとこのまま放置しておいて猛獣に襲われたらひとたまりもない。
「ライラ、一度ポチから降りてくれ」
「はい」
俺は樹上に目を凝らし悪魔族の位置を……ってあれが足かな。足先だけ確認できたけど、体全体はここからじゃあ葉っぱに隠れて見ることは叶わない。
んー、この辺りかなあ。
「ポチ」
「わおん」
ポチの首元をわしゃわしゃとモフった後、彼を数歩進ませて伏せの体制を取ってもらう。
「じゃあ、これから落とすから」
俺はそう宣言すると、タブレットを出して悪魔族の人が引っかかっている木をブロック化する。
次の瞬間、大量の葉っぱと共に悪魔族の人が落ちてきてポチのふわっふわの背中にうまく不時着してくれた。
悪魔族の人は中学生くらいに見える少女で、ライラと同じ薄紫の髪で彼女と同じような服装をしていた。ライラは黒っぽい色だったけど、この少女はピンクを基調とした服だった。
俺が少女の様子を確認しようと一歩踏み出した時、ライラが少女をギュッと抱きしめて肩を揺する。
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