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クラスメイト

カメさんの愉悦

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佐倉さんはガンモくんと同じ班だ
今朝の登校の件以降は特筆して何もない
というか平常運転で何もない


同じ班のアイアイも特に朝の挨拶をしたわけでもなく、何もない
というかクラスメイトだとか同じ班だとかで勝手に親近感を感じてるのは僕だけなんだな


水鳥川みどりかわさんがこっちを見て笑っている
いや、嘲笑わらってる、気がする


いつも通り可愛い
イヤな感じが帳消しになるのはやはり可愛いからだ


水鳥川さんがクラスの女子から一目置かれる存在なのははたから見ててわかる


本人も「あたしは特別よ」って感じの雰囲気を出している
クラスの女子で浮いているとかじゃないけど、ややそれに近い


敬遠はされてないが、クラスメイトの美少女達は腫れ物を扱うような感じで彼女に接する
そして本人がそれを受け入れているような節もある
財閥のお嬢様だからだろうか?


鈍感な僕にも読み取れる空気だ


このクラスの女子には目に見えた派閥みたいなのはない
多分ない


誰と誰が仲良しで、誰と誰はあまり絡みがないとかはある
そういうのはカメさんが把握してる


カメさんは情報収集能力に長けているだけあってコミュニケーション能力も実は高い
けどそれは一般的なものじゃなくて
いわゆる同類にだけ
それは男女問わずだけど通常のコミュニケーションを前提としていないし、信頼してる人間としか喋ろうとしない


だからクラスなんかでは余計自分の中にひきこもってしまう
だけど僕と違うのはそれを劣等感と感じていないとこだ


カメさんに聞いて分からない事は少ない
彼にとって収集した情報こそが友人であるから孤独ではない
カメさん自体は孤独そのものなのにな


共有できる情報はたいがい無害なものだ
他人が知る由のない情報は基本的に共有されないだろう
例えば今朝何を食べたか?


でももしそれが漏洩してしまったら?
食べたもの程度ならいい


知られたくない情報なら?
テストの点数
ファーストキスの日時場所
個人的な秘密
そして


カメさんは情報収集の結果そういう事を把握しすぎてしまった
だからってその情報を元に例えば誰かを強請ゆすろうなんて事はしない


これは一種の愉快犯だ
カメさんだけが正解を把握してる
一面真理だとしてもそれは優越感にもなるし、きっと神様のような気分なんじゃないかな


カメさんはブサイクの僕から見てもブサイクだけどなんかそういう性格の歪みもブサイク
だからこいつはきもい
嫌いじゃないけど


他の連中とはあまり喋らないのに僕にはちょいちょい話しかけてくる
まるで「何か聞けよ」と言わんばかりに


そして「お前の知りたがってる事は俺が全部知ってるよ」と言わんばかりに


なんかこわい


カメさんが言ってる事はテキトーじゃない
ちゃんと同類を使って調査している
だから証拠もある


面白いのは、事実から予見される可能性についても踏み込んでいる
つい面白いと言ってしまったが、カメさんの話を聞くとスパイ映画を観ているような気分になる
でも嘘の話じゃないんだよな
自分に関係なくてもそう考えると


だけど、好奇心には抗えない


僕の知るクラスメイトの情報は殆どカメさんからのものだ
僕は模範解答をチラ見する気持ちでカメさんから情報をつまみ喰いする


カメさんは愉しんでる
僕が理性と葛藤する様子を


そして分かっている
いずれそれが瓦解するという事を



 


 
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