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第59話:君が私にくれたもの(その2)

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「んふふ、すみれちゃん、その後おかわりはありませんの?」
数日後昼昼休み、すみれは松葉姉妹と
大学のカフェテリアでお茶を飲んでいた。

「あの、ゆ、友麻ちゃん・・・?顔が近いよ」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと下品でしたわね」
友麻の態度に、すみれが顔を引きつらせる。
「そうですわよ友麻。なんですか?はしたない」
結衣が友麻を少し窘める。

「あ、お姉さま。な、何でもございませんわ」
友麻はそう言って誤魔化すように紅茶を口に運ぶ。
「でも、私に変わった事なんて何もないけど?」
すみれが不思議そうに聞き返してくる。

「・・・そうですか。ではあの下僕男の方はどうです?」
友麻は少し思案を張り巡らせると、すみれにそう尋ねる。
「ユキヤ?うーん・・・どうかな」
「・・・」
ユキヤの話題になった途端、
すみれが急にだんまりを決め込んだ。

「それで、何か変わったことは?!」
友麻がまた目を輝かせて顔を近付ける。
「だから友麻ちゃん、顔が近いってば」
「ご、ごめんなさい・・・」
友麻は我に返るとすぐに身を引いた。
「そうだね。なんか最近考え込んでることが多いような・・・」
すみれが思い出したようにそう話す。

(ふふ、思った通りですのよ・・・)
友麻は満足そうに頷く。
「友麻ちゃん・・・どうしたの?さっきからなんか変だよ?」
「い、いえ?何でもございませんわオホホホ」
友麻は慌てて取り繕う。
「そうかなぁ・・・」すみれは訝し気な顔をする。

「・・・コホン、と、とにかく、あの下僕男から
くれぐれも目を離してはいけませんよ」
「はい?」
すみれが目を丸くする。

「そして何か面白い事があったら報告・・・」
友麻がそこまで言いかけたところで
「友麻、何を考えておりますの?」
と結衣が口を挟む。
「あ、いえ、何でもございませんわお姉さま」
友麻は慌てて取り繕う。

「あ、お姉さま!もうすぐお花のお稽古の時間ですのよ!」
「え・・・?!」
突然の話題の切り替えに結衣は戸惑っている。
「花教室は今月お休みなのでは・・・」
「あ、今月は復習のために個別レッスンがありますのよ!」
友麻は慌てた様子で身振り手振りで話す。

「・・・まぁ、いいですけども」
その勢いに押されて結衣が渋々引き下がる。
(上手く誤魔化せましたわ・・・!)
そう心の中でほくそ笑む友麻であった。

「それではすみれちゃん、御機嫌よう!」
友麻はそう言うと姉の手を強引に引いて去っていった。
「ちょっと、友麻!待ちなさい!」

「友麻ちゃん?一体どうしたんだろう?」
すみれは狐につままれたような気分でその後ろ姿を見送った。

(これは・・・報告が物凄く楽しみですのよ!)
友麻は歩きながら笑みが止まらなかった。

***

更に数日後・・・。
「一応用意はしたけど・・・」
商品の入った袋を前にユキヤはまだ考えこんでいた。
(渡すタイミングが思いつかない)

誕生日でもクリスマスでもないとなると、
どういう理由で渡せばいいのかと悩んでいた。
(それもニコニコと気軽に渡すような物じゃないしな・・・)

「だたいまー」
そんな時、バイトを終えたすみれが帰ってきた。
「ああ、おかえり」
ユキヤはいつものように返事をする。

「ふぅ、今日も疲れたぁ・・・」
そう言いながらすみれがリビングに入ってくる。
「で?何をそんなに悩んでいたの?」
すみれが何気なく聞いてくる。

「え?」
「何そのキョトン顔」
「あー・・・」
ユキヤは決まりが悪そうに頭を搔く。
「いやさ、ちょっとプレゼントをな」
「プレゼント?」
すみれは首を傾げる。

「ああ、その・・・お前に」
ユキヤはドギマギしながら答える。
「私に?なんで?」
すみれは更に首を傾げる。

「いや・・・今月バイト代が少し多かったから・・・」
ユキヤは照れ臭さのあまり、そう言って誤魔化そうとする。
「へぇ、それは確かに珍しいね」
すみれはあまり気にせずに相槌を打つ。

「開けてもいい?」
「あ、ああ。」
そう言ってすみれは袋から
四角い包みのプレゼントを取り出していく。
そして開封して中身を確認する。
「あれ・・・これって・・・」
中身を見たすみれは一瞬固まった・・・。

「あの・・・どういう意味かなこれ?」
「えっと・・・その・・・プレゼント?」
「あはは・・・」
乾いた笑いしか出ない。

中に入っていたのは・・・黒いボンテージだった。

「で、どういう意味なの?」
すみれは再度尋ねる。
「いや、その・・・」
ユキヤはバツが悪そうに頭を搔く。
「あははっ、何これ?私に着てほしいの?」
「えっと・・・その・・・」
ユキヤはまたも言い淀む。

「怒らないから正直に言いなさい・・・」
(お母さんかお前は!)
思わずそんな言葉がユキヤの頭に浮かんでしまう。
「お前に・・・似合いそうだと思って・・・」
ユキヤは観念して白状し始める。

「・・・お前はさ、Hの時に俺に散々その、道具とか・・・
用意してくれてるけど、俺の方はそういうの全然だなって思ってさ」
ユキヤは恥ずかしさのあまり真っ赤になり俯きながら淡々と話す。
「だからさ、その・・・俺からお前にも何かって思ってさ」

「・・・」
すみれは黙ったままだ。
(ああ、やっぱり引かれたかな・・・)
ユキヤがそんな風に考えていると・・・。
「・・・ぷっ!あはははっ!」
突然すみれが笑い出した。
「え?」
ユキヤは思わず顔を上げる。

「ご、ごめん・・・君があんまりマジになってるからつい」
すみれは笑いながら口を押える。
「いや、だって・・・」
ユキヤはまだ顔を赤らめたままだ。

「でもなんでこれ・・・」
すみれが袋を手で持ち上げる。
「いや、その・・・お前に似合いそうだなって思って」
ユキヤはまたも恥ずかしそうに答える。

「ぷっ!」
すみれが再び吹き出す。
「いや、だから・・・」
「あははっ、ごめんごめん!
だってこれすごいセクシーなデザインだよ?」
そう言ってすみれは袋から中身を取り出すと広げて見せる。
(確かに)
黒いボンテージの上下セットで、
胸元が大きく開いていて谷間が見えている。

「確かに通販サイトとかで売っているのはよく見たけど・・・
でも、君こういうのは趣味じゃないと思ってた」
すみれが意外そうに言う。
「いや、別にそういうわけじゃないけど・・・」
ユキヤは少し恥ずかしそうに答える。

「嫌なら別に着なくてもいいよ・・・」

「え?嫌なんて言ってないよ」
すみれはにこりと笑う。
「え・・・?!」
ユキヤは驚く。

「ちょっと着てみてもいいかな?」
そう言ってすみれは自分の部屋に消えていく。
「・・・ええっ?!」
今度はユキヤが驚く番だった。

(え・・・着てくれるの?! )

***

暫くして、ユキヤの目の前に
セクシーな格好をしたすみれが現れた。
黒いボンテージが彼女の白い肌を引き立てている。
「どう・・・かな?」
すみれは恥ずかしそうに聞いてくる。
「あ、ああ・・・」
ユキヤは言葉を失う。

今すみれが来ているボンテージは
やたらに露出度が高いものではないが、
上半身のビスチェには胸元にベルトがあり
彼女の豊かな胸元を強調してるように見えた。
下半身はレザーパンツにガーターベルトと黒いストッキングで
すみれのすらりとした足を強調している。

「ねぇ、どう・・・?」
「ああ、すげぇかわいい」
ユキヤが思わず本音を漏らす。
(可愛いというか・・・エロいというか・・・)

すると・・・。
「よかった!」
そう言ってすみれはユキヤに抱き着いた。

「もう、私にこんなもの着させて・・・!」
そう言ってすみれが抱きつく力を強める。
「こ、こら・・・あんまりくっつくなって」
ユキヤが照れて頬を染める。

「でも、ちょっと嬉しいかな」
すみれがニコッと微笑みかける。
「なんだよ、嬉しいって?」
「だってさ、こういうのって好きな人にしか贈らない物だよ?」
そう言ってすみれが嬉しそうにはにかむ。

「そう、かな・・・」
ユキヤは少し照れ臭そうにして笑う。
(そうだよ、俺にとってお前は・・・)
大切な存在・・・そんな言葉が喉まで出かかる。

すみれの方はユキヤを嬉しさと恥ずかしさが
入り混じった顔で抱きしめている。
(とはいえ・・・刺激が強いよなやっぱ)

今すみれが着ている衣装は通販サイトのリストの中でも
比較的おとなしいデザインのものを選んだつもりだった。
しかし用途が用途なので、やはりセクシーなものだ。
ユキヤはゴクリと生唾を飲み込む。

「やっぱり、こういうのって好き?・・・むらむらしちゃう?」
すみれが探るように聞いてくる。
「・・・いや、まぁ・・・うん」
ユキヤは少し恥ずかしそうに頷く。

「そっか・・・」
(目のやり場に困る・・・)
ユキヤはドキドキしながら視線を逸らす。

「ねぇ・・・したいの?」
すみれは甘えた声でそう言うと、 
ユキヤの耳元に口を近づけて囁いた。

(ああもう!)
ユキヤは心の中で叫ぶ。
「あ、ああ」
そして二人は寝室へと消えていった・・・。

***


(しかしこうして改めて見ると・・・)
ベッドに座ったユキヤはすみれの姿を見る。
(やっぱりこう、いつもとは違うエロさがあるというか)
何かいつもと違う感覚が彼の中に生まれていた。

「もう!恥ずかしいからジロジロ見ないで!」
すみれは照れながらも少し不機嫌そうに顔を背ける。
「あ、ごめん・・・」
ユキヤは慌てて謝る。
「あ、いや、あ、謝らなくていいから・・・ねぇ」
すみれが切なげな声で促す。
「あ、ああ」
ユキヤはまたごくりと生唾を飲み込む。

「ねぇ、やっぱり君だって好きなのかな?こういうの」
すみれは少し嬉しそうに言うと、ベッドに横になる。
「あ、いや・・・」
ユキヤは言葉を詰まらせる。

「・・・正直、嫌いじゃないかも」
ユキヤはベッドに上がりながら小さな声で答えた。
「ふふ、ほらやっぱり好きなんじゃない」
すみれが楽しそうに笑う。

「私にこんな格好させるって事はつまり・・・
君をそういう風に可愛がってほしいって事だよね?」
すみれは身に着けているボンテージ衣装を手で触りながら
顔を赤らめてそう言った。「あ、ああ・・・」
ユキヤは照れ隠しに頭を搔きながら答える。
「・・・可愛い」
そう言ってすみれはユキヤを抱きしめた。

「おい・・・ちょっと待てって!」
そしてそのままベッドの上に仰向けに倒れた。
「はい、今日は特に念入りに君を可愛がってあげる」
すみれはそう言うと、ユキヤの上に馬乗りになり、
自分が彼をを押し倒す体制になる。

「お、おい・・・!」
ユキヤが驚いていると・・・。
「んふ♡」
すみれは妖艶な笑みを浮かべると、ユキヤの唇を奪った。
「ん・・・♡」
そしてそのまま舌を差し入れ、ディープキスを始める。
「ん・・・♡んん・・・」
すみれは時折甘い吐息を漏らしながら
夢中でユキヤと舌を絡め合う。
(やべえなこれ)
ユキヤも次第に興奮し始める。
「・・・ぷはっ!」
しばらくして唇を離すと、二人の唾液が糸を引いた。

「どう?気持ちよかった?」
すみれがいたずらっぽく笑う。
「ああ・・・」
ユキヤは照れながら答える。
「ふふっ、じゃあもっとしてあげる」
そう言うとすみれは再び唇を重ねた。

つづく
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