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第41話:君も気持ち良くなってほしい(その2)

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「ふふ、聞きましたわよ。あの下僕男、
何か悩んでいるんですってね?」
友麻がカフェテリアでお茶をたしなみながら、
一緒にいるすみれに話しかける。
「え?」
すみれが口をぽかんと開ける。

「黒川さんが茶木さんに相談されたらしいですわ。」
結衣がすみれに事の顛末を話す。
「そ、そうなの?」
と、すみれは答える。
「ええ、そうですわ。」と友麻が答える。


「ふーん・・・ユキヤがねぇ・・・」とすみれは呟く。
「まぁ、あの下僕男なりにすみれちゃんの事を
考えているみたいのですよ。」
「ふふ、奴隷としては殊勝な事ですわ。」
友麻と結衣はくすくすと笑う。
(奴隷って・・・この子ら容赦ないよなぁ・・・)
そんなことを思いながら、すみれはティーポットの紅茶を
自分のカップへと注ぐ。

「・・・うーん、そう言うのって私が話聞いてあげた方がいいのかな?」
すみれは首をかしげながら言う。
「いいえ、そのまま知らぬふりで
放置した方がいいと思いますのよ。」
友麻が即答する。

「え?」とすみれは驚く。
「ええ、そういう事は一人で考え悩んで答えを出した方が、
得られるものもより多いと思いますわ」と結衣も同意する。

「そ、そうなのかな?」とすみれは首を傾げる。
「ええ、そうですのよ。たまにはあいつも
すみれちゃんに頼らずに答えを出さないと。」と友麻が頷く。
(この子たちはこういう所妙に達観してるよなぁ・・・)
すみれは感心する。

「うーん、ユキヤが何か悩みを抱えてるのだったら、 
力になってあげたいとは思うけど・・・」とすみれは言う。
「ふふ、その気持ちだけで十分ですわ。」
「そっと見守っているのが良いと思いますのよ。」
と姉妹が交互にが言う。
「そうですわ。それに・・・
これは茶木さんの問題でもありますわ」

「そ、そっか・・・」とすみれは納得する。
(でも・・・)とすみれは思う。
(やっぱり気になるなぁ・・・)
「答えが出た時にじっくり話を聞いてあげるといいですのよ」
と友麻が言う。
「そうね、そうするわ」とすみれは頷いた。

***

(黒川の奴はああ言ってたけど・・・)
ユキヤはバイト先の喫茶店でまだ悩んでいた。
自分はすみれの欲求にきちんと答えられているのだろうか・・・?
ここ数日、そんな考えばかりが彼の頭の中を回っていた。
「はぁ・・・」とため息をつく。

「何をため息ついてるっスか?」
カウンターで『オニ盛り高層タワーパフェ』
を頬張りながら浅葱が聞いてくる。
「いや、別に・・・」とユキヤは誤魔化す。

「・・・さてはすみれちゃんの事っスね」
浅葱はニヤニヤしながら言った。
「?!」
ユキヤは図星を突かれて驚く。
「大方、日々旺盛になっていく彼女の性欲に
自分は応えられているかとか、
自分のせいですみれちゃんがSに目覚めたんじゃないか・・・
とかそんなところっスか?」
浅葱はパフェを食べながら言う。

「だから浅葱さん・・・あんまり露骨な表現は・・・」
とユキヤは赤くなりながら答える。
(なんでこの人、こんなに感がいいんだろうか・・・)
ユキヤはいつもながら不思議に思う。
「ふっふっふ、君は顔に出やすいっスからね」

浅葱は得意げな顔で言う。
「そ、そうですかね?」とユキヤは照れながら答える。
(俺ってそんなに顔に出やすいのかな・・・?)
彼は自分の頬を触りながら思った。
「まぁ、冗談はさておき・・・」と浅葱は話を続ける。

「そんなことで悩んでいるとは、
君もなかなか思い上がってるっスね。」
「お、思い上がりって・・・?」
浅葱の予想外の言葉にユキヤは少し動揺する。

「君はすみれちゃんが自分が原因で
Sに目覚めたと思っているみたいっスけど、
 そんなのは思い上がり以外の何物でもないっス」
浅葱はユキヤを諭すように話す。

(そ、そうなのか・・・?)
とユキヤは疑問に思う。
「そう、思い上がりッスよ」
浅葱は彼の心を見透かしたようにキッパリと言い放つ。
「・・・そう、ですか・・・」
ユキヤは少しうなだれながら答える。

「悩んでいたのは君だけではないという事っス。」
と浅葱は言う。
「え?」
ユキヤは驚きながら言う。
「すみれちゃんだって色々と考えていたっスよ」
「あいつが?!」
ユキヤは意外だという顔をする。

「・・・どうしたら君が気持ち良くなるか、って事をっス」

浅葱はパフェを食べながらさらに言う。
「そ、そうなんですか?」とユキヤは少し照れながら言う。
「そうっスよ」と浅葱が答える。

「ちょっと前も、ネットでその手のサイトを見て
色々と研究してたっスから。
それに、私にもいろいろと相談してきたっスよ」

浅葱はニヤリと笑いながら言う。
「え・・・?」とユキヤは少し動揺する。
(俺の知らないところでそんな事をしていたのか・・・)

「まぁ、君の事を思っての事っスよ」
「・・・そ、そうなんですか・・・」
ユキヤは顔を赤くしながら答える。
(俺のためにそんなことをしてくれていたなんて・・・)
嬉しい反面恥ずかしい気持ちになってくる。
そんな彼の様子を見て浅葱はニヤニヤと笑うのであった。

(それに、君の様子がおかしくなったときは、
一番に心配して、真っ先に私らに相談して、
対処法を色々と模索してたのもあの子っスよ)
浅葱はその子とも言おうかと思ったが、
ユキヤに自覚がなさげなので止める。

「きっかけはともかく、あの子は自分から
前に進んでいったと思うっス。」
浅葱はパフェを食べながら言う。
「そ、そうですか・・・」とユキヤは少し照れながら答える。

「だから君が『あの子をああしてしまった』なんて考えるのは、
それこそ思い上がりも甚だしいといったっスよ」
浅葱はズバッと言う。
「?!」ユキヤは驚く。
「あの子はそういう子なんスよ」と浅葱は言う。

「すみれちゃんの気持ちに応えたかったら、あの子のありのままを
きちっと受け止めてあげるのがきっと一番っスよ」
(そうか・・・そうだったんだな・・・。)
ユキヤは浅葱の言葉を聞き、
自分がすみれに対して何をすべきか 理解できた気がした。
(だったら俺がやることはただ一つだ。)と彼は思うのであった。

「ところで。」
一息ついた浅葱が顔を上げる。
「はい?」
「パフェのお代わりを頼むっスよ」
彼女のパフェはいつの間にか平らげられていた。

「ま、まだ食べるんですか?!」
ユキヤが呆れたように言う。
「当然っス!」
と、浅葱はドヤ顔で言った。

(まぁこの子らがいい関係だってのは、誰の目にも明らかっスから、
私らがとやかく言う必要もないとは思うっスが・・・)
ユキヤがおかわりのパフェの注文を受けて、奥に行く後姿を見て、
浅葱はそんな事を考えて、ひとりほくそ笑んだ。

***

「なぁ、すみれ・・・」
夕食後、シンクで後片付けをしているすみれに
ユキヤが話しかける。
「何?」
すみれは食器を洗いながら答える。
「いや、その・・・」ユキヤは少し言いにくそうに口籠る。

「私に何か言いたいことがあるんじゃない?」
とすみれはユキヤに聞く。
「そう・・・だな・・・」
ユキヤは少し躊躇いがちに言う。

「うん?」と首を傾げるすみれ。
(俺はあいつを受け止めるって言ったじゃないか!)
そうは思うがこういった事は、なかなか言葉にし辛い。

「どうしたのよ?何か言いにくいこと?」
すみれは手を止めてユキヤの方を見る。
「・・・いや、その・・・な」
ユキヤはなかなか切り出せないでいる。

そうしてしばらく間を置いた後、ようやく結審したように
大きく息を吸って口を開いた。

「俺、お前のすべてを受け止める!」

ユキヤはすみれの目を見て、はっきりと言った。
(・・・あれ?)
すみれはきょとんとした顔をする。
(俺、何か変な事言ったか?)とユキヤは戸惑う。
「ぷっ」突然すみれが笑い出す。
「な、何がおかしいんだよ?」と焦るユキヤ。

「いや、だって・・・」
と言いながらもまだクスクスと笑うすみれ。
そんな姿を見てユキヤは少しムッとする。
「・・・なんだよ」と言う声が少し低くなる。
「いや、ごめん。でもおかしいんだもん!」
とすみれはまだ笑っている。
(何がそんなに面白いんだ?)
とユキヤは疑問に思うが、 それを口に出さずにいる。

「だって・・・すっごい真面目にそんなセリフって・・・
なんかプロポーズみたいなんだもん」
すみれは目に涙を浮かべながら言う。

「?!」
そんな様子の彼女を見てユキヤは少しドキッとする。
(そ、そうなのか?!)
確かに言われてみればそう聞こえるかもしれないと彼は思った。
そして自分の言ってしまった事を改めて考えていくうちに、
その顔はみるみる真っ赤になっていった・・・。

「いや、その・・・つまりさ、お前が気持ちいいと思う事を、
全部・・・とは言えないかもしれないけど、受け止めようと・・・」
ユキヤは恥ずかしさと照れ臭さで、しどろもどろになりながら言う。

「ぷっ!」すみれは再び吹き出す。
「な、何がおかしいんだよ?!」とユキヤは少しムッとして聞く。
「いや、だって・・・」とすみれはまだ笑いを堪えている様子だ。

「だって、それ・・・もうやってるし」
とすみれはクスクス笑いながら言う。
「え?」
ユキヤはきょとんとした顔をする。
「だ、だから・・・もうやってるんだってば」とすみれは言う。
「へ?いつ?」ユキヤが戸惑いながら聞く。

「私はいつも、私が最高に気持ちいいと思う事、
もうずっと君にしているもの!」
すみれは自信満々に言う。
「そ、そうなのか?」とユキヤは少し動揺する。
(ま、まぁ・・・確かにいつもそうだったな・・・)
と彼は思う。
「うん!」とすみれは大きく頷く。
「だからね、君はもう私のすべてを
受け止めてるのと一緒なんだよ」
すみれはそう言ってユキヤの頭を撫でる。

「君が可愛く鳴いてる姿を見て・・・それでだけでもう・・・」
すみれは俯き顔を赤らめて言った。
(あれ、珍しいな?こいつが照れ臭がってる・・・)

「それだけで、私はもう・・・!」すみれはボソッと言う。
「え?」ユキヤにはよく聞こえず聞き返す。
「な、なんでもない!」とすみれは慌てて言う。

(い、今なんて言ったんだ?)
と疑問に思いつつも口に出すのをやめたユキヤであった。

「・・・それはともかくとして」
すみれは少し咳払いをして話題を変える事にしたようだ。
「君にそういう事を言ってくれるとか、ちょっと嬉しいかも」
と少し頬を赤くして答える。

「いや・・・いつもさ、俺だけが先に
気持ち良くなってる気がして・・・
それって俺がお前に応えきれてるのかってさ・・・」
そんなすみれに対して、ユキヤもようやく
行為中にいつも思っていたことを口に出した。

「ああ、なるほどね・・・」
とすみれは少し納得のいった顔をする。
そして彼女は再び手を洗い食器を拭き始める。

「私もちゃんと言っておかなきゃね」
食器を吹き終わると、すみれは言うとユキヤの方に向き直る。
「私は君のそういうところも含めて全部が大好きなんだから、
心配しないでいいのよ」
と笑顔で言うのだった。

そんな彼女の笑顔にユキヤは思わず見惚れてしまう。
(か・・・勝てないな。これは)
元から勝つつもりもないくせに彼はそう思った。

つづく
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