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第21話:けしからん噂(その4)(完結)

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「で・・・どうしてこうなるわけ?」

ユキヤは服を脱がされ首輪をはめられ、ベッドに座らされている。
そしてすみれはその目の前でパジャマ姿で枕を抱えてこちらを見ていた。
(確かに好きにしていいとは言ったけど・・・)
しかしこれでは意味が分からない。
いつもと違うのは手足の枷がない事だろうか・・・。
首輪はしているが。

「あの、すみれさん?これはいったい
どういう状況なんでしょうかね?」
ユキヤは恐る恐る聞いてみる。
「・・・」
すみれは何も答えずにじっと見据えている。
「てか俺はどうすればいいの?」
「好きにして見せて」
すみれは短く答える。

「え、何を?!」
「ユキちゃんの好きなことをユキちゃんにして見せて」
「えぇ~???!!!」
「私はそれを見てるから」
「・・・マジですか」
ユキヤはあまりの展開に頭がついていかない。

「ダメかな?」
すみれは少し不安げに首を傾げる。
「べ、別に駄目じゃないです・・・けど」
ユキヤは慌てて否定する。

「なら良かった」
すみれはほっとしたように息を吐く。
「でも、本当にこんなの見て楽しいの?」
ユキヤは改めて確認してみた。
「もちろん」
(即答かい)
「ユキちゃんの可愛いところいっぱい見れるし」
「はぁ・・・」
すみれの意外な返答にユキヤは戸惑う。

「というわけで、早速始めてくれる?」
すみれはワクワクしながら促す。
「はい・・・」
ユキヤは戸惑いながら了承するも、
その返事とは裏腹に身体の動きは固まってしまう。

「・・・・。」
「どうしたの?始めないの?」
すみれがじっと見つめながら訪ねる。
「し・・・視線が痛いです。」

ここまで来て何を今更?と思われてしまうかもしれないが、
改めてまじまじと見つめられると、やはり恥ずかしくなってくる。

「ユキちゃんの身体、とっても綺麗なのに・・・」
すみれはうっとりとして呟いた。
「そ、そんなにじろじろ見るなよ」
ユキヤは思わず目を逸らす。

「だって、本当に凄く素敵だし・・・」
すみれは目を輝かせている。
しかしそれがユキヤには余計に突き刺さる感覚だった。

「もうしょーがないにゃ~、わかった」
そんな彼を見かねたすみれはそう言うと
ユキヤにアイマスクをかける。「え・・・?」
ユキヤが動揺している間に 
すみれはユキヤを寝かせると自分も横になった。
そのまま抱きしめると頭を撫で始める。
「こうしてたら落ち着くでしょ?」
「あ、ああ・・・うん」
(そう言う問題じゃない気もするが・・・)

いくらすみれが視界から消えたといっても、実際は存在している。
何とも言えない気持ちになるのは仕方のない事だろう。
「ほら、こっち向いて」
すみれはそう言ってユキヤの顔を自分の方へ向けた。
そして優しくキスをする。

「んっ・・・」
「ユキちゃん、大好きだよ」
すみれは愛おしそうにユキヤの頬をなでる。
「俺も好きだよ」
ユキヤはすみれの手に手を添えた。
「嬉しい」
そんなすみれの嬉しそうな声が聞こえると、
ユキヤは胸の奥がきゅんとなるのを感じた。

「あ、ちょっと大きくなってきた」
すみれはユキヤの変化を目ざとく見つける。
「え、嘘!?」
ユキヤは慌てて股間を押さえた。
しかしそれは無駄な抵抗に終わる。
「じゃあ、ちょっと手伝っってあげる」
すみれはそういうと、ユキヤの耳にふっと息を吐いた。
「ひゃん!」
思わず変な声が出てしまった。
「耳弱いんだよね」
すみれは楽しそうに笑う。
確かに弱い場所だが、ここだってすみれに開発された場所だ。

「ちょ、ちょっとやめてくれよ」
ユキヤは身を捩らせる。
「大丈夫、怖くないから」
すみれはユキヤの髪をかきあげ、そのまま首筋に舌を這わせる。
「ひぃ・・・」
ユキヤはぞくりと背中を震わせた。

「こことかも感じるんじゃない?」
すみれはユキヤの首元に軽く歯を立てる。
「くぅ、痛いっ!そこ噛むなってば」
「ごめん、加減間違えちゃった」
すみれはペロリと唇を舐めた。

「わざとやったくせに」
「バレたか」
ユキヤの指摘をすみれはあっさり認めた。
「やっぱりな。絶対そうだと思った」
ユキヤはため息をついた。

「でもさ、ユキちゃんの、随分元気になってきてるよ」
すみれはユキヤの下半身に視線を向ける。
「う、うぐ・・・」
その言葉でユキヤの顔は赤くなる。

「もっとして欲しかったりする?」
すみれが悪戯っぽく聞いてきた。
「別にそんな事は・・・」
ユキヤは否定しようとするが言葉に詰まってしまう。

「ふふ、じゃあここから一人で頑張ってみてね」
すみれはそう言ってユキヤの手を彼の股間に乗せる。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
「何を待つっていうのかなぁ?」
すみれは意地悪っぽく聞き返す。

「いや、だからその・・・」
「ユキちゃん、私にしてほしいんでしょ?」
すみれはユキヤの耳元で囁く。
「そ、そりゃそうだけどさ・・・」
ユキヤは口籠る。

「なら自分でやってみようよ。ほら、こうやってさ・・・」
すみれはユキヤの手を取って股間を握らせてスライドさせる。
「お、おい・・・」
ユキヤは戸惑いの声を上げる。
「ほら、私の手を思い出しながら動かして」
すみれはユキヤの手に自分の手を重ねるようにして動かす。

「・・あ、あのさ、本当に一人でしなきゃダメ?」
「駄目だよ。私が見たいの。ほらほら、早くしなさい」
すみれに急かされ、ユキヤは観念したのか、行為に没頭し始めた。

やがて彼の口から甘い声が漏れ始める。
「ん・・・んん・・・あぁ・・・」
それを見て、すみれは自分の胸の鼓動が高まるのを感じた。
ユキヤの痴態に興奮していたのだ。
「あ、ユキちゃん、もうイキそうなんだ。
早いな~。いいよ、イッても」
すみれはユキヤのモノを擦り上げる速度を上げた。

「あっ、ああんっ!」(・・・あれ?)
いつもならここで出して終わるのだが・・・達することが出来ない。
ユキヤの中にある感情が湧いて、イくことが出来ずにいた・・・。
その感情とは(物足りない・・・)だった。

二人で暮らすようになってから、
一人でする機会は殆ど無くなっていた。
それは言うまでもなくすみれがいるからだ。
(すみれなら・・・こんな時でもあらゆる手を使って
気持ちよくさせてくるのに・・・)
ユキヤは切なげな表情を浮かべた。

しかし今回はすみれが手を出してこない。
アイマスクをされて見えないが、すみれは目の前で、
今の自分の姿を、目を輝かせて眺めているのだろう・・・。

(すみれなら、こんな時どうしていただろう・・・)
ユキヤは思案を巡らせるが答えは出ない。
しかし無意識のうちに左手で乳首を弄り始めていた。
そして右手では相変わらずペニスをしごいている。

「んっ、ああ・・・くぅ・・・」
2か所の刺激で身体中を痺れるような快感が襲い、
声もどんどん大きくなる。
「へぇ、ユキちゃんってば結構大胆だね」
すみれは少し驚いた様子で言った。
しかし手は出さない。

(俺が1回イくまで・・・何もしてこないつもりかな・・・)
そう思うと、ユキヤはすみれが恋しくなってきた。
「すみれ・・・すみれ・・・」
思わず彼女の名前を呟いた。
するとそれに答えるかのように、
ユキヤの頭の中にすみれのイメージが流れ込んでくる。

(こんなとき・・・すみれなら・・・)
そして、いつの間にかすみれにされてる事を
妄想しながらしてしまっていた・・・。
「すみれ・・・すみれ・・・好きぃ・・・」
ユキヤは快楽に溺れた声で愛しい人の名前を呼び続けた。
「ユキちゃん、可愛い・・・」
すみれは顔を紅潮させて、ユキヤの痴態を眺めていた。

そして気付けば、すみれは自らの秘所を弄っていた。
「あぁ・・・ユキちゃん・・・ユキちゃん・・・」
いつしか、すみれは小声でユキヤの名前を連呼し、
彼を思い浮かべながら自慰に耽るようになっていた。
「あぁ、ユキちゃん・・・私だけの・・・あぁ」
ユキヤはそんなすみれの様子を知る由もなかった。

「う、あ・・・出る!イクッ!!」
絶頂を迎えた瞬間、ユキヤはすみれの姿を思い浮かべる。
「す、すみれ・・・愛してるよぉ・・・」
「えっ!?」
ユキヤの言葉を聞いたすみれは驚きの声を上げた。
次の瞬間、ユキヤは勢い良く射精した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
荒い息遣いで呼吸を整えるユキヤ。
やがて精液を出し終えたのか、彼は脱力してベッドに横たわった。
「ユキちゃん、可愛かったよ」
すみれはユキヤの頭を撫でた。そしてアイマスクを外すと
「ねぇ、今なんて言ってくれたの?」
すみれはユキヤに尋ねる。

「な、なんでもない・・・」
ユキヤは恥ずかしさのあまり布団を被ってしまった。
「もう、ユキちゃんのいじわる」
すみれは頬を膨らませて、そっぽを向いた。

「・・・ごめん、本当はお前の事・・・ずっと考えてた」
暫くして、ユキヤはおずおずとすみれの顔色を伺いながら言った。
「ふぅん・・・」
すみれは敢えて余計なことを言わずに聞いている。
「だけど・・・一人でするより、お前からされる方が・・・
ずっと気持ち良くて・・・」

ユキヤは少し照れ臭そうに、もじもじしながら言う。
恥ずかしいのか、布団は被ったままだ。
(やっぱ、可愛いな~。いじめたくなるなぁ・・・)
すみれの心の中が、一瞬黒い笑みに染まったが、
すぐに優しい微笑みに変わる。

「じゃあ、次はどうしたいの?」
「えっ?それは・・・その・・・」
「私は何をすればいいのかなぁ」
すみれは少し挑発的な口調で言った。

するとユキヤは再び顔を真っ赤にして、布団の中で黙り込んだ。
そして少しの沈黙の後、
「キス・・・して欲しい」
消え入りそうな声で呟いた。

「なるほどね、分かった」
すみれが返事をすると、二人は唇を重ねた。
(あれ?)
ただ触れるだけのつもりだったすみれだったが、
ユキヤの方から舌を入れてきた。
「ちゅぱ、ちゅるるる」
ユキヤはすみれに負けまいと、彼女の口内に自分の唾液を流し込んでいく。

「ちょ、ちょっと待って、落ち着いて!」
すみれはユキヤを引き剥がした。
そして一旦口を離すと
「どうしたの急に、そんな積極的になって」
すみれは尋ねた。

「いや、何かいつもと違うっていうか、変な気分になって」
「へぇ、どんな風に?」
「それが・・・うまく言えないんだけど、
すみれの事が愛おしくて仕方がないんだ」
ユキヤは素直に答える。

「私だって・・・ずっとそうだよ」
すみれも答えた。そしてユキヤに顔を近づける。
「俺をこんなにしたのはお前なんだからな・・・」
ユキヤは不貞腐れたように、ぷいっと視線を逸らす。
しかし内心はとても嬉しそうだった。

「うん、責任取ってあげる」
「約束だからな・・・絶対に破るなよ」
ユキヤの言葉を聞き、すみれは無言でコクリと頷いた。
(ちょっとした八つ当たりのつもりで、
一人でさせてみたんだけど・・・
意外な言葉が聞けてしまったかも・・・)
すみれも流石に何とも言えない気分になる。

「ねぇ、今度は何してほしいの?」
「俺は・・・もっと強く抱きしめて欲しい」「なるほど、了解♪」
すみれはユキヤをギュッと抱き締める。
すると、彼の鼓動の音が聞こえた。とても早い。

「ドキドキいってるの、聞こえる・・・」
すみれはわざとらしく囁く。そして首筋に息を吹きかけると、
「んぁっ」
ユキヤから吐息のような声が上がった。

「ふぅー」
さらに耳元でもう一度吹きかけた。
「うひゃあっ!?」
思わずユキヤは悲鳴を上げた。

「ホント、どこもかしこも弱点になっちゃたね」
「ばか、びっくりさせるな」
ユキヤの身体が小さく震えていた。
「ふふっ、ゴメンね」
ユキヤは拗ねたような表情をする。だがどこか甘える子犬のようだ。

「じゃあ続きしようか」
「ああ、頼む」
そうして、二人の時間はゆっくりと過ぎていった。

****

数日後、大学ですみれたちは金谷に声を掛けられた。
「よう、こないだはすまなかったな」
相変わらず金谷の態度は大きい。
「あ、いえ別に大丈夫です」
すみれがちょっと引き気味に返す。

「しかしキミらは相変わらず仲がいいよなぁ」
金谷が感心したように言う。
「冷やかしならどっか行けよ」
「いや、褒めてんだよ」
「どうだかね」
ユキヤが不機嫌そうな声で言った。

すみれの方にチラッと目を向けると、
彼女は恥ずかしそうに俯いている。
すみれの頬には微かに赤みが差していた。

「まぁ、俺はしばらく独り者ライフを楽しむけど」
金谷は妙に浮かれている。
まだちょっと無理をしている感じがしなくもない。
「つまりこの先彼女が出来る予定はないという事か」
「身もふたもない事を言わないでくれよ・・・」
ユキヤの指摘に、金谷は苦笑いを浮かべる。

「あーあ、俺にも面倒見てくれる優しいお姉さんが現れないかなぁ」
「突然何言ってんだ?お前」
ユキヤが呆れ顔で突っ込む。
「いや、最近ちょっと寂しくなってきたというか」
「え、まさか本気で好きな人でも出来たんですか?」
すみれは驚いた様子で尋ねる。
「いや、そういう訳じゃないんだけどな」
金谷は苦笑いしながら続ける。
 
「俺さ、これまで彼女にわがまま言いすぎて上手くいかなかったんだよな。
だから次彼女出来たら、今度は徹底的に彼女に尽くそうかと・・・」
「尽くすって何をする気だよ?」
ユキヤの問いに、金谷は少し照れたように答える。

「料理とか掃除とか洗濯とか家事全般を頑張ってみるつもりなんだ」
「へぇ、それは良い心掛けですね」
すみれが感心したように呟く。
「だろ。だからもし俺が新しい彼女に巡り会えたら、尽くして尽くして、
彼女に養ってもらってもいいと思っている」
金谷は満足げに語った。

「おい、それ完全にヒモになる一歩手前の発言じゃないか」
ユキヤはドン引きしている。
「えー専業主夫として生きるのも一つの選択肢じゃ・・・」
「そんなわけあるか!」
金谷の言葉を遮るようにユキヤは叫んだ。

「お前なぁ・・・そんなこと言ってると、一生彼女なんかできんぞ」
「ぐっ・・・」
痛いところを突かれたのか、金谷は言葉を詰まらせた。
「なんでそう極端から極端に走るんだよ・・・」
ユキヤはため息をつく。

「・・・まぁ養ってもらうってのは大げさとして
俺は新しく彼女が出来たら尽くすって決めたんだ!」
「はいはい、分かったからもう帰れ」
ユキヤは適当にあしらう。
「ちっ、つれない奴め」
金谷は不満そうに舌打ちをした。
「じゃあな」
金谷は去っていった。

「・・・色々と間違った方向に歩きだしてるな、あれは」
「うん、そうだね」
ユキヤとすみれは並んで歩きながら話す。
「ただ一つ言えるのはあのままだと彼女が出来るのは
当分先だということかな。」
「だねぇ」
二人は微妙な表情を浮かべた。

***

「・・・まぁ、あの珍妙な噂の出どころはそんなところでしたのね。」
「おかしいと思いましたわ。」
「全くですわね。茶木さんがSだなんて、
絶対にありえないことですのに。」
あれからしばらく経った頃、すみれはユキヤのバイト先の喫茶店で
松葉姉妹と話していた。
話題はもちろん例の噂についてである。

普段はこういった店を訪れない姉妹だったが、
例の噂に関しての事をすみれに聞くためにやってきていた。
(あーやっぱりこの二人にも、
ユキヤにSをやるのは無理って思われてたか・・・)
すみれは内心で苦笑していた。
そして話題になっている当の本人は現在接客中だ。

「はい、こちらお水とおしぼりになります。
ご注文が決まりましたらお呼びください」
「ありがとうございます。」
ユキヤの丁寧な対応に客の女性は笑顔で応える。
ユキヤは女性に軽く一礼すると、カウンターに戻っていく。

「接客態度はなかなかですわね。」
「ふふ、うちの店に引き抜いてしまおうかしら?」
「もう、二人とも冗談はやめてくださいね」
すみれは笑って流す。「もちろん分かっていますよ。」
そんな会話を後ろで聞きながら、ユキヤはちょっと身震いした。

「あら、どうかなさいまして?」
「いえ、何でもありません。」
ユキヤは慌てて仕事に戻る。

「しかし・・・縄下着とは・・・くくっ」
結衣が言いながら笑いをこらえる。
「えぇ、本当に可笑しいですわね。うふふ」
友麻もそれに同意する。
「まぁ、その点に関しては私も同感ですけど」
すみれも苦笑しつつ答える。
「されるのなら、どちらかというと茶木さんにですわよね。」
「・・・・!」
結衣が冗談ぽく返すが、すみれが引きつり笑いのまま固まる。

「あら、どうかなさいました?」
「い、いえ、別に・・・」
すみれは笑ってごまかす。

「もしかして・・・上手く縛れないからですの?」
「ちっ、違いますって!」
図星を突いた友麻の言葉を慌てて否定する。

「いえ、別に恥ずかしがることではございませんわ。
あれはかなりの熟練と慣れが必要ですから、
素人にはなかなか難しいのですよ」
結衣はフォローするように優しく声をかける。

「あ、そうだ!ねぇお姉さま、今度うちの店でやるあれに
すみれちゃんをご招待するのはいかがかしら?」
「あら、それはいい考えですわね。」
友麻も結衣の提案に同意する。
「へ?あれってなんですか?」
すみれはキョトンとした顔で尋ねる。

「ええ、今度うちの店『CatStar』で開催する、
そのものズバリ、『緊縛講座』ですわ」
「は?!」
『CatStar』とは姉妹が社会勉強のために経営している
フェティッシュバーである。

「最近見よう見まねでやってみても上手くいかないって
お客様からの要望が多くて・・・
思い切って教室として
開催しようと思いましたの。」
「そ、そんな教室あるんですか・・・」
すみれは呆然としている。

「最近ネット動画とかで得た中途半端な知識だけで
プレイを軽々しく真似して、お怪我をされる人が多いというので、
これからはこういった講座を積極的に開催して
注意喚起をしようかと」

「そんな人いるんですねぇ・・・」
初めてのプレイの時は大体事前に知識と情報を集めて、
安全性をまず確かめるすみれにはちょっと信じられない。
「まったく困ったものですわ・・・」
結衣はやれやれといった様子でため息をつく。

「そんなわけで、白石さんもご参加いたしませんこと?」
「うーん、でも大丈夫なんですか?私すんごい不器用で・・・」
「ちゃんとプロの縄師の方を読んで指導してもらうので安心ですわ」
「縄師って・・・プロがいるんだ・・・」
「ね、悪いお話ではございませんわ。」
ここまで聞いてすみれの心も動きかけるが
1点引っかかるところがあった。

「でもあのお店、確か会員制って聞きましたけど・・・その、
お値段って、お高いんでしょうか・・・」
「あぁそれなら・・・」

すみれ達がそこまで話していると、
着替えたユキヤが席までやってきた。
「何盛り上がってるんだお前ら?」
「あれ何でもう着替えてるの?」
「・・・今日早上がりだって言ったろ」
「あ、そうだった」
ユキヤは着替えた私服の状態で席に座る。

「で、何の話してたんだ?」
「あぁ、今度うちでやる『緊縛講座』に白石さんを
ご招待しようかってお話ですわ。」
「なんだそりゃ?」
『緊縛教室』という単語にユキヤは若干訝しい顔をする。

「お前がすみれちゃんの役に立てるチャンスですのよ!」
そう言って友麻がユキヤの肩をポンとたたく。
「痛ってぇな、なんだよそれ・・・」
ユキヤは顔をしかめる。

「今回、縛られる方のモデルも募集してますの。1時間も頑張れば、
講義代とすみれちゃんの飲み代ぐらいなら賄えるの思いますのよ」
ここまで友麻が説明すると、ユキヤが渋い顔をする。
「・・・で、俺に何をしろと?」
嫌な予感がしつつも敢えて聞いてみる。
「はい、ステージ上で縄師さんに延々と縛られてもらう役を・・・」

そう結衣が途中まで言いかけたところで、
ユキヤは脱兎のごとく走り去った・・・。

「あ、逃げた」
「ふふっ、相変わらずですこと」
結衣と友麻はクスクスと笑う。
「・・・当日には、私が責任もって店まで連れて行きますから」
「あら、よろしくお願いいたしますわ」
結衣は笑顔で答える。

後日、ユキヤはすみれにより店に連れて行かれることになる・・・

しかし講習を受けても、すみれの縄の腕は上達しなかった。

おわり
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