21 / 75
第20話:けしからん噂(その3)
しおりを挟む
それから暫くしてユキヤは金谷を呼び出した。
場所は大学構内にあるカフェテリア。
金谷に会うのはあの飲み会以来だが、あの時と違うのは、
今回はすみれが同席していたことだ。
「よう、久しぶりじゃん」
金谷は気さくに話しかけてくる。「ああ」
ユキヤは短く返事をする。
「初めまして」すみれも挨拶する。
「どうも!俺は金谷雅史です!」
金谷は爽やかな笑顔を見せる。
「彼女同伴で人を呼びつけるとか、モテる男は男は違うねぇ」
「悪いか」
「いんや、別に。ただ羨ましいだけだぜ」
「そうかい」
「で、話っていうのは何だい?わざわざ呼び出すなんてさ」
金谷は興味津々といった様子で訊ねる。
「単刀直入に言うぞ。お前だろ?俺らへの変な噂流してるのは!」
ユキヤの言葉を聞いて、金谷は驚いた表情になる。
「あ・・・お前らの耳にまで届いてたのか」
「大体飲み会の時だって、俺ははっきり否定しただろ!」
「え?でも飲み会の時、失恋して傷心中の俺に
異様につっけんどんだったじゃん?
あれ見て、自覚ないだけで潜在的なドSなのかなーって・・・」
「あれはお前のあまりにアホな言動に腹が立っていただけだ!!」
ユキヤが苦々しく言い返す。
「そ、そうなんだ・・・」
「お前なぁ・・・」
ユキヤがそう言いかけたところで、すみれが横で耳打ちする。
「ねぇ・・・この人って、人を見る目が・・・」
「ああ、アホ程ないな・・・」
金谷のあまりの洞察力と観察力の無さに二人は呆れかえっていた。
「・・・だって君をSと間違えるだけで相当だよ?」
「おい、そりゃそういう意味だ?!」
「こら、俺放置して目の前でヒソヒソ夫婦喧嘩すんな!」
金谷に突っ込まれてしまった・・・。
「ああ、すまん・・・」ユキヤが合われて気を取りなおした。
「とにかくだ。変な噂流すなっていってるの!」
「うーん・・・俺も別に広めるつもりとかなくて、
ちょっとお前らが羨ましくて、ついポロっと言った事が
いつの間にか広がってたというか・・・」
金谷が気まずそうに話し出す。
「羨ましい?」
「うん、だって可愛いくて大人しくて優しそうな彼女といつもいるし・・・」
それを聞いたユキヤはすみれの方をちらっと見ると
(本当に絶望的なまでに人を見る目がないな・・・こいつは)
と心の中で思った。
すみれはそんなユキヤを見てにっこり笑い返す。
それを見て、ユキヤは背筋に一瞬だけ寒気を感じた。
「・・・で?『縄下着』ってのは何だ?」
ユキヤがかなりイラついた口調で尋ねる。
「それは・・・服の下を下着の代わりに縄で縛る・・・」
「そーでなくて!」
ユキヤは語気が強くなる。
「あー、まぁその・・・してたら面白いかなーって」
「・・・つまり話を盛って噂を広めたって事か?」
語気だけで鳴く声もどんどん低くなっていく・・・。
「そういう事に・・・なりますネ・・・」
金谷は申し訳なさそうに答える。
「・・・・」
金谷のあまりの言い分に二人はそろって無言になる。
「いや、ほんとは冗談のつもりだったんだよ!でも、
なんかみんな信じちゃったみたいでさ」
金谷は慌てて弁明を始める。
「お前な・・・言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!」
ユキヤの怒りは収まらない。
「悪かったよ、謝るからさ。俺もまさか
こんな事になるなんて思わなくってさ」
金谷は必死になって謝罪する。
「全く・・・」
ユキヤは怒りながらも、冷静になろうと努める。
「それと、謝る相手が違うぞ」
「え?誰に?」
「決まってるだろ?すみれにだ」
「え?何で?!」
金谷は驚いて聞き返した。
「そもそもなんでこいつを連れてきたと思ってるんだ?」
そう言ってユキヤはすみれの方を見る。
「俺はともかくこいつだけは、今回の件に何も関わってないんだぞ。
それなのにお前のせいで変な噂に巻き込まれたんだ」
「あ、そうだったんだ・・・」
金谷は少しバツの悪そうな顔をする。
「そういうわけだから、まずはこいつに謝ってくれないか」
「分かった・・・ごめんなさい」
金谷は素直に頭を下げた。
「あ、そこまで深々と頭下げなくても・・・反省してくれてるなら。」
すみれは少し困惑気味に答えた。
「え?お前はそれでいいの?」
ユキヤがちょっと意外そうな顔をする。
(この前はあんなに怒ってたくせに・・・)
「だって、噂の内容が突拍子なさすぎるし。
にわかに信じる方がおかしいでしょ?」
「それもそうだな・・・」
ユキヤは納得したようにうなずいた。そして
「まぁそれでもだ。とりあえず火消だけはしてくれよ」と続けた。
「分かってるって。明日学校で友達にちゃんと説明しとくから」
金谷はそう約束した。
「頼むぜ。まったく・・・」
ユキヤはため息をついて、コーヒーをすすった。
「てか白石さん・・・ホントに優しいですね。」
金谷がすみれに話しかける。
「え?」
「普通ここまでされたら怒ると思うんですけど」
「うーん、確かに最初は怒ってましたけどね。
いつまで怒ってても仕方ないし」
すみれはそう答えた。
「しかし二人とも、本当に仲がいいですね。
・・・俺のところも、あんたらみたいにお互い思いやれてたらなぁ」
金谷がちょっと寂しそうにつぶやいた。「・・・」
ユキヤは黙って聞いている。
「いや、何でもないです。気にしないで!」
金谷は少し慌てた様子で話を打ち切った。
「あ、あの、金谷さん?」
すみれは何かを思いついたように口を開く。
「そう思うんだったら、次に好きな人が出来た時に
大事にしてあげてくださいね」
「はい、肝に銘じておきます」
金谷は神妙な面持ちで返事をした。
「じゃあ、帰ろうか」
ユキヤはそう言うと立ち上がった。
「うん」
「そうですね」
すみれと金谷は同時に立ち上がる。
会計を済ませ、外に出ると、金谷は足早に去っていった。
「一件落着・・・でいいのかな?」
「うん、ああ言っておけば、変な噂流そうとか思わないだろうし」
「だな。」
「でも、金谷さんもう少し女の子の事勉強した方がいいかも・・・」
「ほんとだよな。あの壊滅的な人を見る目の無さが、
彼女と長続きしない原因だろうし」
「だよね。」
「ま、俺らも人の事言えないんだけどな」
「それは言わないでよ」
二人は笑いながら家路についた。
***
「しかし縄下着か・・・」
その夜、ユキヤはふと思い出したように言う。
「どうしたの急に?」
「いや、お前らさ、よくそれがエロ用語って分かったなって・・・
俺最初に聞いたときピンとこなかったし」
ユキヤは例の女子会での顛末でその場にいた女性陣全員がその意味を
きちんと理解してることを思い出していた。
「・・・女の子は常に勉強してるの」
すみれは少し恥ずかしげに答える。
「へぇ~」
ユキヤは感心しながら相槌を打った。
そんなユキヤをすみれはじっと眺めていた。
「ま、まさか俺にやるつもりだったとか?!」
ユキヤは少し青ざめた表情で聞く。
「・・・やらないわよ!」
すみれがちょっと苦々しい表情をすして返す。
「え・・・あぁそうなんだ」
ユキヤがちょっと拍子抜けした顔をする。
「・・・・」すみれは相変わらず仏頂面で黙ったままだ。
(あれ?俺なんか怒らせるようなこと言った?)
ユキヤはちょっと困惑する。
・・・これには訳があった。
これまで色々な事を試してたすみれだったが、
緊縛系だけにはほとんど手を付けていない。
その理由は、彼女がとてつもなく不器用だったからだ。
エロ系サイトに出てくるような綺麗な亀甲縛りは出来ない。
一応練習はしてみたが、見た事もない
奇怪な結び目が出来るばかりだった・・・。
なので拘束するときは、もっぱら簡単に拘束できる
手枷足枷を使っていたのだ。
そんなわけですみれにとって「縄」は
あまり触れられたくない、ちょっとした不機嫌ポイントだった。
(・・・だから縄下着なんて夢のまた夢なのよね)
すみれは心の中でつぶやく。
「・・・」
すみれは無言のままユキヤを睨みつける。
「な、何だよ?」
そんな事情を知らないユキヤは訳が分からず、
少し怯えた様子で聞き返した。
「・・・別に」
すみれはそっぽを向く。
「な、なんだよ一体・・・」
ユキヤは困惑しながらも、すみれに尋ねる。
「・・・私だっていつかは上手に出来るようになるもん」
「ん?」
「だからそれまで待ってなさいよ!ばかっ!!」
すみれは少し頬を赤らめて叫んだ。
「お、おう」
ユキヤはすみれが何を言いたいのかいまいち分からないが、
とにかくすみれが不機嫌になった事だけは理解していた。
「ごめん、俺また何か悪いことしちゃった?」
「ううん、そういうんじゃなくて・・・」
すみれは歯切れの悪い返事をする。
(流石におわけがわからないぞ、おい・・・)
ユキヤはそう思うと、ため息を吐いて捨て身の行動に出た。
「じゃあさ、俺の事、好きにしていい・・・
って言ったら、機嫌直してくれる?」
ユキヤはすみれの耳元で囁いた。
「!?」
すみれの顔が一気に真っ赤になる。
「い、いきなり変なこと言わないでよ・・・」
すみれは消え入りそうな声で抗議した。
「俺は本気だけどな」
(まぁ、いつも好きにされてるんけどさ)
ユキヤはそう思いながらも、すみれを真っ直ぐに見つめて告げる。
「ユキちゃん・・・」
すみれは少し潤んだ瞳でユキヤを見上げる。
「ほら、おいで」
ユキヤは優しく微笑んで、両手を広げた。
「うん」
すみれはユキヤの胸に飛び込むとそのまま唇を重ねた。
つづく
場所は大学構内にあるカフェテリア。
金谷に会うのはあの飲み会以来だが、あの時と違うのは、
今回はすみれが同席していたことだ。
「よう、久しぶりじゃん」
金谷は気さくに話しかけてくる。「ああ」
ユキヤは短く返事をする。
「初めまして」すみれも挨拶する。
「どうも!俺は金谷雅史です!」
金谷は爽やかな笑顔を見せる。
「彼女同伴で人を呼びつけるとか、モテる男は男は違うねぇ」
「悪いか」
「いんや、別に。ただ羨ましいだけだぜ」
「そうかい」
「で、話っていうのは何だい?わざわざ呼び出すなんてさ」
金谷は興味津々といった様子で訊ねる。
「単刀直入に言うぞ。お前だろ?俺らへの変な噂流してるのは!」
ユキヤの言葉を聞いて、金谷は驚いた表情になる。
「あ・・・お前らの耳にまで届いてたのか」
「大体飲み会の時だって、俺ははっきり否定しただろ!」
「え?でも飲み会の時、失恋して傷心中の俺に
異様につっけんどんだったじゃん?
あれ見て、自覚ないだけで潜在的なドSなのかなーって・・・」
「あれはお前のあまりにアホな言動に腹が立っていただけだ!!」
ユキヤが苦々しく言い返す。
「そ、そうなんだ・・・」
「お前なぁ・・・」
ユキヤがそう言いかけたところで、すみれが横で耳打ちする。
「ねぇ・・・この人って、人を見る目が・・・」
「ああ、アホ程ないな・・・」
金谷のあまりの洞察力と観察力の無さに二人は呆れかえっていた。
「・・・だって君をSと間違えるだけで相当だよ?」
「おい、そりゃそういう意味だ?!」
「こら、俺放置して目の前でヒソヒソ夫婦喧嘩すんな!」
金谷に突っ込まれてしまった・・・。
「ああ、すまん・・・」ユキヤが合われて気を取りなおした。
「とにかくだ。変な噂流すなっていってるの!」
「うーん・・・俺も別に広めるつもりとかなくて、
ちょっとお前らが羨ましくて、ついポロっと言った事が
いつの間にか広がってたというか・・・」
金谷が気まずそうに話し出す。
「羨ましい?」
「うん、だって可愛いくて大人しくて優しそうな彼女といつもいるし・・・」
それを聞いたユキヤはすみれの方をちらっと見ると
(本当に絶望的なまでに人を見る目がないな・・・こいつは)
と心の中で思った。
すみれはそんなユキヤを見てにっこり笑い返す。
それを見て、ユキヤは背筋に一瞬だけ寒気を感じた。
「・・・で?『縄下着』ってのは何だ?」
ユキヤがかなりイラついた口調で尋ねる。
「それは・・・服の下を下着の代わりに縄で縛る・・・」
「そーでなくて!」
ユキヤは語気が強くなる。
「あー、まぁその・・・してたら面白いかなーって」
「・・・つまり話を盛って噂を広めたって事か?」
語気だけで鳴く声もどんどん低くなっていく・・・。
「そういう事に・・・なりますネ・・・」
金谷は申し訳なさそうに答える。
「・・・・」
金谷のあまりの言い分に二人はそろって無言になる。
「いや、ほんとは冗談のつもりだったんだよ!でも、
なんかみんな信じちゃったみたいでさ」
金谷は慌てて弁明を始める。
「お前な・・・言っていい冗談と悪い冗談があるぞ!」
ユキヤの怒りは収まらない。
「悪かったよ、謝るからさ。俺もまさか
こんな事になるなんて思わなくってさ」
金谷は必死になって謝罪する。
「全く・・・」
ユキヤは怒りながらも、冷静になろうと努める。
「それと、謝る相手が違うぞ」
「え?誰に?」
「決まってるだろ?すみれにだ」
「え?何で?!」
金谷は驚いて聞き返した。
「そもそもなんでこいつを連れてきたと思ってるんだ?」
そう言ってユキヤはすみれの方を見る。
「俺はともかくこいつだけは、今回の件に何も関わってないんだぞ。
それなのにお前のせいで変な噂に巻き込まれたんだ」
「あ、そうだったんだ・・・」
金谷は少しバツの悪そうな顔をする。
「そういうわけだから、まずはこいつに謝ってくれないか」
「分かった・・・ごめんなさい」
金谷は素直に頭を下げた。
「あ、そこまで深々と頭下げなくても・・・反省してくれてるなら。」
すみれは少し困惑気味に答えた。
「え?お前はそれでいいの?」
ユキヤがちょっと意外そうな顔をする。
(この前はあんなに怒ってたくせに・・・)
「だって、噂の内容が突拍子なさすぎるし。
にわかに信じる方がおかしいでしょ?」
「それもそうだな・・・」
ユキヤは納得したようにうなずいた。そして
「まぁそれでもだ。とりあえず火消だけはしてくれよ」と続けた。
「分かってるって。明日学校で友達にちゃんと説明しとくから」
金谷はそう約束した。
「頼むぜ。まったく・・・」
ユキヤはため息をついて、コーヒーをすすった。
「てか白石さん・・・ホントに優しいですね。」
金谷がすみれに話しかける。
「え?」
「普通ここまでされたら怒ると思うんですけど」
「うーん、確かに最初は怒ってましたけどね。
いつまで怒ってても仕方ないし」
すみれはそう答えた。
「しかし二人とも、本当に仲がいいですね。
・・・俺のところも、あんたらみたいにお互い思いやれてたらなぁ」
金谷がちょっと寂しそうにつぶやいた。「・・・」
ユキヤは黙って聞いている。
「いや、何でもないです。気にしないで!」
金谷は少し慌てた様子で話を打ち切った。
「あ、あの、金谷さん?」
すみれは何かを思いついたように口を開く。
「そう思うんだったら、次に好きな人が出来た時に
大事にしてあげてくださいね」
「はい、肝に銘じておきます」
金谷は神妙な面持ちで返事をした。
「じゃあ、帰ろうか」
ユキヤはそう言うと立ち上がった。
「うん」
「そうですね」
すみれと金谷は同時に立ち上がる。
会計を済ませ、外に出ると、金谷は足早に去っていった。
「一件落着・・・でいいのかな?」
「うん、ああ言っておけば、変な噂流そうとか思わないだろうし」
「だな。」
「でも、金谷さんもう少し女の子の事勉強した方がいいかも・・・」
「ほんとだよな。あの壊滅的な人を見る目の無さが、
彼女と長続きしない原因だろうし」
「だよね。」
「ま、俺らも人の事言えないんだけどな」
「それは言わないでよ」
二人は笑いながら家路についた。
***
「しかし縄下着か・・・」
その夜、ユキヤはふと思い出したように言う。
「どうしたの急に?」
「いや、お前らさ、よくそれがエロ用語って分かったなって・・・
俺最初に聞いたときピンとこなかったし」
ユキヤは例の女子会での顛末でその場にいた女性陣全員がその意味を
きちんと理解してることを思い出していた。
「・・・女の子は常に勉強してるの」
すみれは少し恥ずかしげに答える。
「へぇ~」
ユキヤは感心しながら相槌を打った。
そんなユキヤをすみれはじっと眺めていた。
「ま、まさか俺にやるつもりだったとか?!」
ユキヤは少し青ざめた表情で聞く。
「・・・やらないわよ!」
すみれがちょっと苦々しい表情をすして返す。
「え・・・あぁそうなんだ」
ユキヤがちょっと拍子抜けした顔をする。
「・・・・」すみれは相変わらず仏頂面で黙ったままだ。
(あれ?俺なんか怒らせるようなこと言った?)
ユキヤはちょっと困惑する。
・・・これには訳があった。
これまで色々な事を試してたすみれだったが、
緊縛系だけにはほとんど手を付けていない。
その理由は、彼女がとてつもなく不器用だったからだ。
エロ系サイトに出てくるような綺麗な亀甲縛りは出来ない。
一応練習はしてみたが、見た事もない
奇怪な結び目が出来るばかりだった・・・。
なので拘束するときは、もっぱら簡単に拘束できる
手枷足枷を使っていたのだ。
そんなわけですみれにとって「縄」は
あまり触れられたくない、ちょっとした不機嫌ポイントだった。
(・・・だから縄下着なんて夢のまた夢なのよね)
すみれは心の中でつぶやく。
「・・・」
すみれは無言のままユキヤを睨みつける。
「な、何だよ?」
そんな事情を知らないユキヤは訳が分からず、
少し怯えた様子で聞き返した。
「・・・別に」
すみれはそっぽを向く。
「な、なんだよ一体・・・」
ユキヤは困惑しながらも、すみれに尋ねる。
「・・・私だっていつかは上手に出来るようになるもん」
「ん?」
「だからそれまで待ってなさいよ!ばかっ!!」
すみれは少し頬を赤らめて叫んだ。
「お、おう」
ユキヤはすみれが何を言いたいのかいまいち分からないが、
とにかくすみれが不機嫌になった事だけは理解していた。
「ごめん、俺また何か悪いことしちゃった?」
「ううん、そういうんじゃなくて・・・」
すみれは歯切れの悪い返事をする。
(流石におわけがわからないぞ、おい・・・)
ユキヤはそう思うと、ため息を吐いて捨て身の行動に出た。
「じゃあさ、俺の事、好きにしていい・・・
って言ったら、機嫌直してくれる?」
ユキヤはすみれの耳元で囁いた。
「!?」
すみれの顔が一気に真っ赤になる。
「い、いきなり変なこと言わないでよ・・・」
すみれは消え入りそうな声で抗議した。
「俺は本気だけどな」
(まぁ、いつも好きにされてるんけどさ)
ユキヤはそう思いながらも、すみれを真っ直ぐに見つめて告げる。
「ユキちゃん・・・」
すみれは少し潤んだ瞳でユキヤを見上げる。
「ほら、おいで」
ユキヤは優しく微笑んで、両手を広げた。
「うん」
すみれはユキヤの胸に飛び込むとそのまま唇を重ねた。
つづく
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
甘い誘惑
さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に…
どんどん深まっていく。
こんなにも身近に甘い罠があったなんて
あの日まで思いもしなかった。
3人の関係にライバルも続出。
どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。
一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。
※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。
自己責任でお願い致します。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる