82 / 89
第81話:厄介なお仕事11「アフターケア」(完結)
しおりを挟む
2か月後。
結衣たちは『CatStar』に来ていた。
「デビュー日が決まったそうですわね。おめでとうございますわ」
「まぁ、まだもう少し先だけどな」
樺島は少し照れ臭そうに言った。
「ふふ、少しは真面目になりましたのね。」
友麻がそう言って樺島の頭を撫でる。
彼の髪はベリーショート程の長さになっていた。
「・・・あの頭、あとでバンドのメンバーに
見られて大爆笑されたんだぞ」
樺島は坊主にされた時の事を思い出し苦々しい顔をする。
「あら、悪い事をしたら坊主にして反省を促すのは定番でしょう?」
「でも悪戯っ子みたいで可愛かったですわよ」
「あのなぁ・・・!」
今日は姉妹たちが樺島を店に招待していた。
これは彼の現在の様子をチェックするためであった。
「所謂アフターケアというやつですわ」
「ふーん」
樺島は興味なさそうに答える。
「まぁ、これからも精進なさいませ」
結衣はそう言うと彼の肩をポンと叩く。
「社長さんにもよろしく言っておいてくださいな」
「おう!」
樺島はそう言って元気よく返事をした。
そんな事を話していると、店員である砂原が飲み物を運んでくる。
「お待たせしました~」
そう言って砂原は飲み物の入ったグラスを
テーブルに置いていった。
彼は色々あって、現在姉妹たちの叔母にあたる
優里恵の下で調教されている。
そして彼女が留守の間はこの店で働いていた。
(なんでこの店員、エプロンの下がビキニパンツ一丁で
接客してるんだよ・・・?!)
樺島の視線は別の意味で砂原に釘付けになる。
このSMバー独特の空気には流石になれていないようだ。
「お!こちらはお二人の新しい犠牲者の方ですか?」
砂原はそう言うと樺島の方をチラリと見る。
(犠牲者て・・・)
樺島は心の中で突っ込む。
「お前がここにいるという事は、優里恵さんは
まだ帰ってきていませんの?」
友麻が砂原に尋ねた。
「ええ、今頃仕事で海外を飛び回っていますよ。」
彼が少し寂しそうに笑って答える。
「あら残念、今回の依頼に関しては言いたいことが
それはもう沢山ありましたのに」
そう言って結衣が少し皮肉っぽく笑った。
(これは・・・文句の一つでも言いたそうな感じだな)
黒川は彼女の様子を見てそんな事をひとりビリビリと感じ取る。
「それにしても・・・話には聞いてましたけど、
2人とも本当によく似てますね」
砂原は反対側のテーブルに座る樺島と黒川を思わず見比べてしまう。
「ふふ、私達もびっくりしましたわ」
「まさに奇跡的な他人の空似ですのよ」
結衣たちはそう言って笑った。
「そうかぁ・・・?」
樺島は訝しげに黒川の方を見るが、彼の方は目を逸らす。
「いや正直双子でもないのにここまで似てるのは
かなり珍しいですって!」
砂原が更にまくしたてるように言う。
「俺の方がイケメンだと思うんだけどなぁ・・・」
樺島は不満げに呟いた。
(どうでもいいわ!)
黒川は心の中で毒づく。
「・・・にしても、あんたにはホント騙されたぜ!」
樺島は黒川を見ながらため息を吐く。
「あんなヤクザみたいな格好してたくせに
ただの大学生で俺と大して年が変わらないとかさ・・・」
そう言って口を尖らせる。
「まぁ、それを狙っての事でしたわ」
結衣はクスリと笑う。
「・・・こっちは何も言ってないのに
そっちが勝手に勘違いしたんだろ?」
黒川が樺島を睨みつける。
「う・・・!」
その顔に樺島が一瞬怯んだ。
「まぁまぁ・・・落ち着いて下さいよ」
砂原が慌てて仲裁に入る。
(文月ったら、哲ちゃん相手だと無意識に辛辣になりますのね・・・)
友麻が眺めながら感心する。
「大丈夫、俺は落ち着いてますよ。
そっちが勝手に怖がってるだけで」
黒川は更に冷ややかなまなざしで 樺島を見る。
「ぐ・・・!」
樺島は顔を引きつらせて、後ずさる。
「文句があるなら堂々と言ってみたらどうだ?」
「・・・・!」
樺島は蛇に睨まれたカエルの様に黙り込んでしまう。
(これは・・・パワーバランスが決まったようですわね)
(というか・・・哲ちゃんの中に条件反射的に
文月への恐怖心が刷り込まれてるようですのよ)
姉妹たちはその様子を楽しそうに見つめる。
「ふふ、どうやらお前が一番この子に恐怖を与えて
しまったようですわね」
結衣がそう言って黒川の肩をポンと叩く。
「え・・・!?」
黒川は驚いて思わず樺島の方を見ると、
樺島はその視線にビクッとして、怯えた目で黒川の方を見る。
「えぇ・・・だって今は格好も普通だし正体もばらしたのに?」
黒川は不思議そうに首を傾げる。
「それでも怖いもんは怖いんだよ!」
樺島が思わず叫ぶ。
「・・・?」
(あぁ・・・これは文月に自覚が無いパターンですわ)
友麻は思わず苦笑する。
「まぁ、この子にはこれくらいで丁度良いのかもしれませんわね」
結衣はそう言ってクスリと笑う。
「うぅ・・・」
樺島は涙目になりながら頭を抱える。
(しかしこの二人、相性はいいみたいですけど)
(お互いへの恐怖心と嗜虐心が上手く噛みあっているようですわ)
(良い意味で、お互いに相性ばっちりですわね)
結衣と友麻は二人の様子を見てニヤニヤしていた。
「・・・!」
樺島は苦々しげに姉妹たちを見る。
「あのさぁ、今更になって俺脅して何が楽しいわけ?」
樺島は不服そうに言う。
「あら、別に脅しているわけではありませんよ」
結衣は不敵な笑みを浮かべる。
(それにしても・・・)
結衣は黒川の方を何気なく見た。
(今回はこの子の中にも結構なS属性があったと判明しましたわね)
結衣はそんな事を考える。
(とはいってもそのS属性が私たちに向かう可能性は
万に一つもあり得ないですが)
結衣は心の中でそう呟く。
「結衣様?」友麻が結衣の顔を覗き込む。
「いえ、何でもありませんわ」
結衣は何事も無かったかのように微笑んだ。
(・・・だってそんな可能性はこの私が潰すからです)
結衣は心の中でそう呟き、黒川に微笑みかかる。
「・・・・!」
(どうしただろう?こんなに優しい笑顔なのに、
見てるだけで背中が寒くなる・・・)
黒川は背筋に冷たいものを感じていた。
おわり
結衣たちは『CatStar』に来ていた。
「デビュー日が決まったそうですわね。おめでとうございますわ」
「まぁ、まだもう少し先だけどな」
樺島は少し照れ臭そうに言った。
「ふふ、少しは真面目になりましたのね。」
友麻がそう言って樺島の頭を撫でる。
彼の髪はベリーショート程の長さになっていた。
「・・・あの頭、あとでバンドのメンバーに
見られて大爆笑されたんだぞ」
樺島は坊主にされた時の事を思い出し苦々しい顔をする。
「あら、悪い事をしたら坊主にして反省を促すのは定番でしょう?」
「でも悪戯っ子みたいで可愛かったですわよ」
「あのなぁ・・・!」
今日は姉妹たちが樺島を店に招待していた。
これは彼の現在の様子をチェックするためであった。
「所謂アフターケアというやつですわ」
「ふーん」
樺島は興味なさそうに答える。
「まぁ、これからも精進なさいませ」
結衣はそう言うと彼の肩をポンと叩く。
「社長さんにもよろしく言っておいてくださいな」
「おう!」
樺島はそう言って元気よく返事をした。
そんな事を話していると、店員である砂原が飲み物を運んでくる。
「お待たせしました~」
そう言って砂原は飲み物の入ったグラスを
テーブルに置いていった。
彼は色々あって、現在姉妹たちの叔母にあたる
優里恵の下で調教されている。
そして彼女が留守の間はこの店で働いていた。
(なんでこの店員、エプロンの下がビキニパンツ一丁で
接客してるんだよ・・・?!)
樺島の視線は別の意味で砂原に釘付けになる。
このSMバー独特の空気には流石になれていないようだ。
「お!こちらはお二人の新しい犠牲者の方ですか?」
砂原はそう言うと樺島の方をチラリと見る。
(犠牲者て・・・)
樺島は心の中で突っ込む。
「お前がここにいるという事は、優里恵さんは
まだ帰ってきていませんの?」
友麻が砂原に尋ねた。
「ええ、今頃仕事で海外を飛び回っていますよ。」
彼が少し寂しそうに笑って答える。
「あら残念、今回の依頼に関しては言いたいことが
それはもう沢山ありましたのに」
そう言って結衣が少し皮肉っぽく笑った。
(これは・・・文句の一つでも言いたそうな感じだな)
黒川は彼女の様子を見てそんな事をひとりビリビリと感じ取る。
「それにしても・・・話には聞いてましたけど、
2人とも本当によく似てますね」
砂原は反対側のテーブルに座る樺島と黒川を思わず見比べてしまう。
「ふふ、私達もびっくりしましたわ」
「まさに奇跡的な他人の空似ですのよ」
結衣たちはそう言って笑った。
「そうかぁ・・・?」
樺島は訝しげに黒川の方を見るが、彼の方は目を逸らす。
「いや正直双子でもないのにここまで似てるのは
かなり珍しいですって!」
砂原が更にまくしたてるように言う。
「俺の方がイケメンだと思うんだけどなぁ・・・」
樺島は不満げに呟いた。
(どうでもいいわ!)
黒川は心の中で毒づく。
「・・・にしても、あんたにはホント騙されたぜ!」
樺島は黒川を見ながらため息を吐く。
「あんなヤクザみたいな格好してたくせに
ただの大学生で俺と大して年が変わらないとかさ・・・」
そう言って口を尖らせる。
「まぁ、それを狙っての事でしたわ」
結衣はクスリと笑う。
「・・・こっちは何も言ってないのに
そっちが勝手に勘違いしたんだろ?」
黒川が樺島を睨みつける。
「う・・・!」
その顔に樺島が一瞬怯んだ。
「まぁまぁ・・・落ち着いて下さいよ」
砂原が慌てて仲裁に入る。
(文月ったら、哲ちゃん相手だと無意識に辛辣になりますのね・・・)
友麻が眺めながら感心する。
「大丈夫、俺は落ち着いてますよ。
そっちが勝手に怖がってるだけで」
黒川は更に冷ややかなまなざしで 樺島を見る。
「ぐ・・・!」
樺島は顔を引きつらせて、後ずさる。
「文句があるなら堂々と言ってみたらどうだ?」
「・・・・!」
樺島は蛇に睨まれたカエルの様に黙り込んでしまう。
(これは・・・パワーバランスが決まったようですわね)
(というか・・・哲ちゃんの中に条件反射的に
文月への恐怖心が刷り込まれてるようですのよ)
姉妹たちはその様子を楽しそうに見つめる。
「ふふ、どうやらお前が一番この子に恐怖を与えて
しまったようですわね」
結衣がそう言って黒川の肩をポンと叩く。
「え・・・!?」
黒川は驚いて思わず樺島の方を見ると、
樺島はその視線にビクッとして、怯えた目で黒川の方を見る。
「えぇ・・・だって今は格好も普通だし正体もばらしたのに?」
黒川は不思議そうに首を傾げる。
「それでも怖いもんは怖いんだよ!」
樺島が思わず叫ぶ。
「・・・?」
(あぁ・・・これは文月に自覚が無いパターンですわ)
友麻は思わず苦笑する。
「まぁ、この子にはこれくらいで丁度良いのかもしれませんわね」
結衣はそう言ってクスリと笑う。
「うぅ・・・」
樺島は涙目になりながら頭を抱える。
(しかしこの二人、相性はいいみたいですけど)
(お互いへの恐怖心と嗜虐心が上手く噛みあっているようですわ)
(良い意味で、お互いに相性ばっちりですわね)
結衣と友麻は二人の様子を見てニヤニヤしていた。
「・・・!」
樺島は苦々しげに姉妹たちを見る。
「あのさぁ、今更になって俺脅して何が楽しいわけ?」
樺島は不服そうに言う。
「あら、別に脅しているわけではありませんよ」
結衣は不敵な笑みを浮かべる。
(それにしても・・・)
結衣は黒川の方を何気なく見た。
(今回はこの子の中にも結構なS属性があったと判明しましたわね)
結衣はそんな事を考える。
(とはいってもそのS属性が私たちに向かう可能性は
万に一つもあり得ないですが)
結衣は心の中でそう呟く。
「結衣様?」友麻が結衣の顔を覗き込む。
「いえ、何でもありませんわ」
結衣は何事も無かったかのように微笑んだ。
(・・・だってそんな可能性はこの私が潰すからです)
結衣は心の中でそう呟き、黒川に微笑みかかる。
「・・・・!」
(どうしただろう?こんなに優しい笑顔なのに、
見てるだけで背中が寒くなる・・・)
黒川は背筋に冷たいものを感じていた。
おわり
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる