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第45話:面倒な二人の面倒を見る(その2)
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それから数日たった蒼汰の内定者研修の最終日。
その夕方にユキヤは呼び出されていた。
「よう。」
「・・・来てくれましたか。」
呼び出したのは密かに連絡先を交換していた蒼汰だった。
「てかさ、よく考えたら同い年なんだし敬語やめない?」
「えっと、じゃあ、うん。」
「じゃあ早速だけど、ここじゃなんだから移動しようか?
お前、酒飲めるの?」
「あ、ああ、6月で二十歳になってるし・・・」
「じゃあ居酒屋で飲みながら話すか」
「う、うん」
蒼汰はユキヤを連れて近くの個室の居酒屋に入った。
「とりあえず生2つ」
注文してすぐにビールが届く。
「じゃあ、乾杯」
「か、かんぱい」
(浅葱さんがよく使う手だが、上手く行くかな?)
「で、どうしたんだ?俺しか呼ばれなかったんだから、
すみれがいるとまずい内容の事だろ?」
「まぁ、そういう事になるね。」
「で、何があったんだ?」
「実は俺達、別れそうなんだ・・・」
(やっぱり・・・)ユキヤはそう思った。
実は前回の相談の後、すみれはくるみに連絡を取っていた。
その内容から、すみれたちはユキヤに連絡が来るのではと予想を立てていた。
「それで、原因はなんなんだ?」
「それは、ちょっと言いにくいんだけど、
こういう事相談できそうなのが君しかいなくて。」
蒼汰はうつむき加減で答える。
「どういうことだ?」
「俺の友達だと相談しづらい奴ばかりで・・・」「なんで?」
「なんというか、君の場合、結構遊んでそうというか・・・
経験豊富そうというか・・・彼女に不自由してなさそうというか、
女の扱い上手そうというか・・・」
「・・・相談したいのかバカにしてるのかどっちよ?」
ユキヤが苦々しい顔でツッコみを入れた。
「ごめん、そういう意味じゃなくて・・・」
「いやいいけどさ・・・」
(こいつのこういうところは流石すみれの幼馴染って感じだなー・・・)
ユキヤは呆れつつもちょっと感心する。
「それでさ・・・正直に言うけど、俺、くるみが初めての彼女なんだ。」
(まぁそうだろうな・・・)ユキヤは心の中で納得する。
「・・・とりあえず落ち着け。ほら酒でも飲んで」
勿論落ち着かせる気はみじんもない。「ありがとう」
蒼汰は素直に酒をあおった。蒼汰はみるみる真っ赤になっていく・・・
「で、初めての彼女ってことはつまり君らは初めて同士って事?」
蒼汰が酔ってきたのを見計らって、
ちょっと身も蓋もない質問をぶっこんで見る。
「・・・そうだよ。悪いかよ。」
「悪くないよ。ただ、なんで別れそうになってるの?」
「・・・あいつ、最近全然Hさせてくれないんだよ!」
「・・・は?」
「・・・そりゃあ、俺らお互い実家暮らしだし、
できる場所は凄い限られてたけど・・・」
「限られてったって?」
「ラブホとか、あとはお互いの家で親がいない時を狙って、
みたいな感じだった・・・。」
「ふーん。実家暮らしも大変なんだな」
(お、これはなにか掴めるかも!)
そんなユキヤの思惑をよそに酔っ払った蒼汰は続ける。
「でも、学生なんでラブホは金が続かないし、
実家だって早々家族全員が留守にすることなんてめったにない・・・
それで・・・」
「え?ちょっとまって?!お前らまさか・・・」
ユキヤが思わず声をあげる。
「・・・外だよ」
蒼汰は恥ずかしさで顔を赤くしながら答えた。
「外!?外ですんの?外でHすんの?まじで?!」
「だからうるさいってば!!」
蒼汰は周りを気にしつつ小声で叫ぶ。
(レベルが高いんだか低いんだか・・・)
ユキヤは呆れつつも話を続ける。
「じゃあ、外でするスリルにハマったとか?」
「違うよ!!確かに気持ちいい事は好きだから、
興味本位でしたこともあるけど・・・」
「じゃあ、なんで?」
「だって・・・好きな人となるべく一緒にいたいよ・・・」
「そんなことで・・・」ユキヤはため息を吐く。
「なんか、その、そんな事を繰り返していたら
くるみが行為そのものを嫌がるようになって・・・」
「外って具体的にどんなとこ?」
ユキヤが蒼汰のコップにビールを追加しつつ聞いてみる。
「えっと・・・公園のトイレやら、花壇の茂みとか、
駐車場、金があるときはラブホで・・・」
あまりと言えばあんまりな内容に、ユキヤはめまいを覚える。
(そりゃくるみちゃんも、同棲に憧れたり、
行為そのものを嫌悪するようになるわな・・・)
「お前な・・・もう少し彼女を大切にしてやれよ・・・」
「大切にしてるつもりなんだけど・・・」
「じゃあ聞くけど、それ楽しめてたのかお前らは?」「う・・・」
「それに、くるみちゃんは、そういう行為を楽しんでいたのか?」
「それは・・・多分楽しくはなかったと思う。」
「もしかして、初めての時までそんな有様だったのか?」
ユキヤは少し厳しい口調で尋ねる。
「いや、初めては普通にホテル行ったよ。」
「そっか、なら良かったよ。」
ユキヤはホッとした表情を浮かべる。
(初めての思い出までそんなんだったら可哀想すぎるわ)
「でも、くるみの奴、最近Hを断ってくることが多くなって・・・」
蒼汰がまた泣きそうになる。
「当たり前だ!馬鹿野郎!」
ユキヤが柄にもなく怒鳴りつける。
「ぐぅ・・・」
蒼汰は反論できないようだ。
「それで、どうしたら良いか分からなくなって、俺に相談してきたわけか?」
「うん・・・」「なるほどねー」
ユキヤは腕を組みながら考える素振りをする。
「まず、くるみちゃんに謝るべきだな。」
「・・・やっぱりそうかな?」
「ああ。現に行為そのものを嫌悪してるじゃねーか!」
他人事とはいえ、ユキヤも腹を立てる。
「でも、俺はあいつの事が好きなんだよ・・・」
蒼汰はテーブルに突っ伏しながら呟く。
(こんなときすみれだったら相手を凌辱しまくって
本音吐かせるんだけどな・・・)
とここで蒼汰がすみれに凌辱される様子を想像してしまう。
(いやいや俺のだし!)慌てて妄想を打ち消す。
「まぁとりあえず、今は結論を急がずに
まずはそっちの生活の事を謝るのが先じゃね?」
「そうだよね・・・」蒼汰はベロベロに泥酔しながら答える。
「おい、大丈夫か?もう飲まない方がいいぞ」
「だいじょうぶだよ~」
蒼汰はヘラヘラしている。
「しょうがねぇなまったく・・・」
「うう、くるみ・・・」
(飲ませすぎたかな・・・)
帰り道、ユキヤが蒼汰を背負っていく。
(まったく・・なんで俺が男をおんぶしてるんだよ)
蒼汰はユキヤの背中で寝息を立てている。
(まぁ、コイツも色々溜まっていたんだろうな・・・)
ユキヤは蒼汰の気持ちを考える。
(こいつもこいつなりに彼女の事が好きなんだろうな)
だから何とか二人だけの時間を作りたかったんだろう。だが、
やり方があまりに下手糞すぎた。
「なんで・・わかってくれないんだよぅ・・・」
蒼太はまだ寝言を言っている。
(すみれの友達でなかったら、今頃どっかに捨ててるところだぞ)
ユキヤは心の中で悪態をつく。
「お前さ、もっと彼女を大事にしてやれよ」
そう毒づくが、蒼汰に聞こえたかどうかは定かではない。
****
「ただいま」
結局ユキヤは蒼汰を背負ったまま、自分の部屋に帰ってきてしまった。
最初は宿泊先のホテルに送るつもりだったが、場所が分からなかった。
「おかえりなさい」
玄関で出迎えたのはすみれだ。
「ちょっと酔いつぶれちゃったんでな。少し寝かせてやろう」
(俺が潰しちゃったんだけど)
ユキヤは蒼汰をベッドに卸す。「あ、ありがとう」
「いいよいいよ、気にしないで」
「何か飲む?」すみれが尋ねる。
「んー、コーヒーもらえる?」
「わかったわ」
すみれはすぐにキッチンに向かい、手早く準備する。
「はい、どうぞ」
「サンキュー」
ユキヤはコーヒーを手に取る。
蒼汰はベッドで寝息を立てている。
「・・・・・。」ユキヤは蒼汰の寝顔を見てため息を吐く。
と同時にユキヤはちょっと何かを思いついたようだった。
「なぁ、すみれ。これはちょっとしたジョークの類として聞いてほしい。」
「何?」
「もしもさ恋人同士の男のせいで女がセックス嫌いになったらどう思う?」
「えっ?!」すみれは顔を真っ赤にする。
「ちょっとした冗談だって」
「そ、そうなの?」
すみれは「うーん、よっぽど男が下手糞か
自分のことしか考えてないか・・・かな?」と答えた。
「ま、そう思うよな」ユキヤはそう答えながら
眠っている蒼汰の方を見る。
心なしか眉がピクピクしている。(お、効いてるか?!)
「で、その男が二人の時間何とか作ろうと
ありえない場所でHしたいとか言ったらどう思う?」
「ありえない場所って?」
「例えば・・・外とか・・・公衆トイレとか」
「それは・・・ドン引きね」
「だろう?」
「それって見られるスリルを味わいたい性癖の人でもなくて、
『見られてもいいしどこでもいいからこの人と繋がっていたい!』
って気持ちの高ぶりでもないわけだよね?」
「ああ、そうだな」
「それって『なんでもいいから取り敢えず抜かせろ』
って言ってるのと変わらないよ」
ユキヤが蒼汰の方を見ると心なしか青ざめているように見えた。
(ちょっとは効いてるようだな・・・)
「ま、まぁ、そういう事だ」
「女の子の気持ちを一つも分かってないじゃん!」
すみれがちょっとヒートアップしてくる。
「ま、まぁ、そうだよな」
「それに、そんなせせこましいHじゃちっとも気持ちよくならないし!
そんなんで満足出来るってその男早〇じゃないの!!?」
すみれのテンションが上がっていく。
「確かに、男の方はイキやすいかもしれないけど、
女の方には全然良くないと思うし、
そもそも、好きな相手とのHはお互いに幸せになるものだし・・・」
「うん、ごめん。もう分かった。十分だ。」
ユキヤがすみれを制止しつつ蒼汰を見ると、
この世の地獄のような顔で、額に脂汗を浮かべて唸っていた・・・。
「それぐらいで勘弁してやれ。蒼汰が死にそうになってる。」
「え?なんで蒼ちゃんが・・・?」
「いや、お前があまりにも容赦のない毒舌を浴びせたからだ」
「えぇー?」すみれは困惑する。
つづく
その夕方にユキヤは呼び出されていた。
「よう。」
「・・・来てくれましたか。」
呼び出したのは密かに連絡先を交換していた蒼汰だった。
「てかさ、よく考えたら同い年なんだし敬語やめない?」
「えっと、じゃあ、うん。」
「じゃあ早速だけど、ここじゃなんだから移動しようか?
お前、酒飲めるの?」
「あ、ああ、6月で二十歳になってるし・・・」
「じゃあ居酒屋で飲みながら話すか」
「う、うん」
蒼汰はユキヤを連れて近くの個室の居酒屋に入った。
「とりあえず生2つ」
注文してすぐにビールが届く。
「じゃあ、乾杯」
「か、かんぱい」
(浅葱さんがよく使う手だが、上手く行くかな?)
「で、どうしたんだ?俺しか呼ばれなかったんだから、
すみれがいるとまずい内容の事だろ?」
「まぁ、そういう事になるね。」
「で、何があったんだ?」
「実は俺達、別れそうなんだ・・・」
(やっぱり・・・)ユキヤはそう思った。
実は前回の相談の後、すみれはくるみに連絡を取っていた。
その内容から、すみれたちはユキヤに連絡が来るのではと予想を立てていた。
「それで、原因はなんなんだ?」
「それは、ちょっと言いにくいんだけど、
こういう事相談できそうなのが君しかいなくて。」
蒼汰はうつむき加減で答える。
「どういうことだ?」
「俺の友達だと相談しづらい奴ばかりで・・・」「なんで?」
「なんというか、君の場合、結構遊んでそうというか・・・
経験豊富そうというか・・・彼女に不自由してなさそうというか、
女の扱い上手そうというか・・・」
「・・・相談したいのかバカにしてるのかどっちよ?」
ユキヤが苦々しい顔でツッコみを入れた。
「ごめん、そういう意味じゃなくて・・・」
「いやいいけどさ・・・」
(こいつのこういうところは流石すみれの幼馴染って感じだなー・・・)
ユキヤは呆れつつもちょっと感心する。
「それでさ・・・正直に言うけど、俺、くるみが初めての彼女なんだ。」
(まぁそうだろうな・・・)ユキヤは心の中で納得する。
「・・・とりあえず落ち着け。ほら酒でも飲んで」
勿論落ち着かせる気はみじんもない。「ありがとう」
蒼汰は素直に酒をあおった。蒼汰はみるみる真っ赤になっていく・・・
「で、初めての彼女ってことはつまり君らは初めて同士って事?」
蒼汰が酔ってきたのを見計らって、
ちょっと身も蓋もない質問をぶっこんで見る。
「・・・そうだよ。悪いかよ。」
「悪くないよ。ただ、なんで別れそうになってるの?」
「・・・あいつ、最近全然Hさせてくれないんだよ!」
「・・・は?」
「・・・そりゃあ、俺らお互い実家暮らしだし、
できる場所は凄い限られてたけど・・・」
「限られてったって?」
「ラブホとか、あとはお互いの家で親がいない時を狙って、
みたいな感じだった・・・。」
「ふーん。実家暮らしも大変なんだな」
(お、これはなにか掴めるかも!)
そんなユキヤの思惑をよそに酔っ払った蒼汰は続ける。
「でも、学生なんでラブホは金が続かないし、
実家だって早々家族全員が留守にすることなんてめったにない・・・
それで・・・」
「え?ちょっとまって?!お前らまさか・・・」
ユキヤが思わず声をあげる。
「・・・外だよ」
蒼汰は恥ずかしさで顔を赤くしながら答えた。
「外!?外ですんの?外でHすんの?まじで?!」
「だからうるさいってば!!」
蒼汰は周りを気にしつつ小声で叫ぶ。
(レベルが高いんだか低いんだか・・・)
ユキヤは呆れつつも話を続ける。
「じゃあ、外でするスリルにハマったとか?」
「違うよ!!確かに気持ちいい事は好きだから、
興味本位でしたこともあるけど・・・」
「じゃあ、なんで?」
「だって・・・好きな人となるべく一緒にいたいよ・・・」
「そんなことで・・・」ユキヤはため息を吐く。
「なんか、その、そんな事を繰り返していたら
くるみが行為そのものを嫌がるようになって・・・」
「外って具体的にどんなとこ?」
ユキヤが蒼汰のコップにビールを追加しつつ聞いてみる。
「えっと・・・公園のトイレやら、花壇の茂みとか、
駐車場、金があるときはラブホで・・・」
あまりと言えばあんまりな内容に、ユキヤはめまいを覚える。
(そりゃくるみちゃんも、同棲に憧れたり、
行為そのものを嫌悪するようになるわな・・・)
「お前な・・・もう少し彼女を大切にしてやれよ・・・」
「大切にしてるつもりなんだけど・・・」
「じゃあ聞くけど、それ楽しめてたのかお前らは?」「う・・・」
「それに、くるみちゃんは、そういう行為を楽しんでいたのか?」
「それは・・・多分楽しくはなかったと思う。」
「もしかして、初めての時までそんな有様だったのか?」
ユキヤは少し厳しい口調で尋ねる。
「いや、初めては普通にホテル行ったよ。」
「そっか、なら良かったよ。」
ユキヤはホッとした表情を浮かべる。
(初めての思い出までそんなんだったら可哀想すぎるわ)
「でも、くるみの奴、最近Hを断ってくることが多くなって・・・」
蒼汰がまた泣きそうになる。
「当たり前だ!馬鹿野郎!」
ユキヤが柄にもなく怒鳴りつける。
「ぐぅ・・・」
蒼汰は反論できないようだ。
「それで、どうしたら良いか分からなくなって、俺に相談してきたわけか?」
「うん・・・」「なるほどねー」
ユキヤは腕を組みながら考える素振りをする。
「まず、くるみちゃんに謝るべきだな。」
「・・・やっぱりそうかな?」
「ああ。現に行為そのものを嫌悪してるじゃねーか!」
他人事とはいえ、ユキヤも腹を立てる。
「でも、俺はあいつの事が好きなんだよ・・・」
蒼汰はテーブルに突っ伏しながら呟く。
(こんなときすみれだったら相手を凌辱しまくって
本音吐かせるんだけどな・・・)
とここで蒼汰がすみれに凌辱される様子を想像してしまう。
(いやいや俺のだし!)慌てて妄想を打ち消す。
「まぁとりあえず、今は結論を急がずに
まずはそっちの生活の事を謝るのが先じゃね?」
「そうだよね・・・」蒼汰はベロベロに泥酔しながら答える。
「おい、大丈夫か?もう飲まない方がいいぞ」
「だいじょうぶだよ~」
蒼汰はヘラヘラしている。
「しょうがねぇなまったく・・・」
「うう、くるみ・・・」
(飲ませすぎたかな・・・)
帰り道、ユキヤが蒼汰を背負っていく。
(まったく・・なんで俺が男をおんぶしてるんだよ)
蒼汰はユキヤの背中で寝息を立てている。
(まぁ、コイツも色々溜まっていたんだろうな・・・)
ユキヤは蒼汰の気持ちを考える。
(こいつもこいつなりに彼女の事が好きなんだろうな)
だから何とか二人だけの時間を作りたかったんだろう。だが、
やり方があまりに下手糞すぎた。
「なんで・・わかってくれないんだよぅ・・・」
蒼太はまだ寝言を言っている。
(すみれの友達でなかったら、今頃どっかに捨ててるところだぞ)
ユキヤは心の中で悪態をつく。
「お前さ、もっと彼女を大事にしてやれよ」
そう毒づくが、蒼汰に聞こえたかどうかは定かではない。
****
「ただいま」
結局ユキヤは蒼汰を背負ったまま、自分の部屋に帰ってきてしまった。
最初は宿泊先のホテルに送るつもりだったが、場所が分からなかった。
「おかえりなさい」
玄関で出迎えたのはすみれだ。
「ちょっと酔いつぶれちゃったんでな。少し寝かせてやろう」
(俺が潰しちゃったんだけど)
ユキヤは蒼汰をベッドに卸す。「あ、ありがとう」
「いいよいいよ、気にしないで」
「何か飲む?」すみれが尋ねる。
「んー、コーヒーもらえる?」
「わかったわ」
すみれはすぐにキッチンに向かい、手早く準備する。
「はい、どうぞ」
「サンキュー」
ユキヤはコーヒーを手に取る。
蒼汰はベッドで寝息を立てている。
「・・・・・。」ユキヤは蒼汰の寝顔を見てため息を吐く。
と同時にユキヤはちょっと何かを思いついたようだった。
「なぁ、すみれ。これはちょっとしたジョークの類として聞いてほしい。」
「何?」
「もしもさ恋人同士の男のせいで女がセックス嫌いになったらどう思う?」
「えっ?!」すみれは顔を真っ赤にする。
「ちょっとした冗談だって」
「そ、そうなの?」
すみれは「うーん、よっぽど男が下手糞か
自分のことしか考えてないか・・・かな?」と答えた。
「ま、そう思うよな」ユキヤはそう答えながら
眠っている蒼汰の方を見る。
心なしか眉がピクピクしている。(お、効いてるか?!)
「で、その男が二人の時間何とか作ろうと
ありえない場所でHしたいとか言ったらどう思う?」
「ありえない場所って?」
「例えば・・・外とか・・・公衆トイレとか」
「それは・・・ドン引きね」
「だろう?」
「それって見られるスリルを味わいたい性癖の人でもなくて、
『見られてもいいしどこでもいいからこの人と繋がっていたい!』
って気持ちの高ぶりでもないわけだよね?」
「ああ、そうだな」
「それって『なんでもいいから取り敢えず抜かせろ』
って言ってるのと変わらないよ」
ユキヤが蒼汰の方を見ると心なしか青ざめているように見えた。
(ちょっとは効いてるようだな・・・)
「ま、まぁ、そういう事だ」
「女の子の気持ちを一つも分かってないじゃん!」
すみれがちょっとヒートアップしてくる。
「ま、まぁ、そうだよな」
「それに、そんなせせこましいHじゃちっとも気持ちよくならないし!
そんなんで満足出来るってその男早〇じゃないの!!?」
すみれのテンションが上がっていく。
「確かに、男の方はイキやすいかもしれないけど、
女の方には全然良くないと思うし、
そもそも、好きな相手とのHはお互いに幸せになるものだし・・・」
「うん、ごめん。もう分かった。十分だ。」
ユキヤがすみれを制止しつつ蒼汰を見ると、
この世の地獄のような顔で、額に脂汗を浮かべて唸っていた・・・。
「それぐらいで勘弁してやれ。蒼汰が死にそうになってる。」
「え?なんで蒼ちゃんが・・・?」
「いや、お前があまりにも容赦のない毒舌を浴びせたからだ」
「えぇー?」すみれは困惑する。
つづく
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