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第1話:今日も彼女に抱かれていく(前編)

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「はぁぁ~・・・」大学の構内で白石すみれはため息を吐く。
「どうしたのすみれ?」そんなすみれを見て友人の黄瀬が声をかけた。
「うん、実はね、彼氏に浮気されたみたいでさ」
「えっ!? またぁ・・・」
すみれの彼氏である茶木ユキヤは外見こそイケメンではあるが、浮気癖があった。
「どんなにこっちが注意してもこっそりやってるみたいなのよね・・・」
そう言ってすみれは再度深いため息を吐いた。
「もう別れちゃえばいいじゃない。そんな男」
「うーん、なぜか嫌いになれないんだよね・・・」
「惚気かよ!」黄瀬はそう言いながらすみれのお尻を叩いた。
「ひゃあ! 何すんだよもぉ!」
「まあまあ落ち着いて。でもその話を聞く限りじゃあんまりダメージ無いんじゃないの?」
「う~ン・・・何とか浮気をやめさせる方法ないかなぁ」
すみれは頭を悩ませていた。

・・・というのが半年前までの話。

現在、ユキヤの浮気はぴたりと止んでいる。
それどころかすみれに妙に優しく接している。
周囲では「本命彼女の大切さにやっと気付いたか」と噂されているが、
それには理由がいろいろあった。

それはズバリ夜の生活の変化である。
浮気防止にとある人物の入れ知恵で、
ユキヤの下の毛をすべて脱毛したのをきっかけに、
主導権がすみれになってしまった事にある。
元々攻められるより攻めたい派のユキヤであったが、
今では完全に逆転してしまっている。

「いくら浮気されたくないからってこれはないだろ!」
「でもね、私もドキドキしたんだよ!ユキヤが寝静まったところを見計らって・・・
布団から下半身だけ出して、起きないようにそっとクリームを塗って・・・
『もうすぐこの毛、溶けちゃうんだ・・・』ってじっと見てたの。」
「自分の彼氏の毛を勝手に除毛する様子をそんな少女漫画みたいに語るなぁ!」
相変わらずどこかズレている彼女に怒りが止まらない。
「じゃあ逆に聞くけど、私以外に見せるあてあるの?」
「ぐぬぅ・・・」ユキヤは言葉に詰まる。
「ほれ見なさい」
そうしてユキヤは観念し、大人しくすみれにされるがままになった。
更にいつの間にかHの主導権もすみれのものになってしまっていた。

***

「さぁ、あなたは誰とHしてるのかなぁ?
ユキヤはアイマスクを掛けられている。
そして視覚を奪われた状態ですみれに全身を愛撫される。
当然触覚しか頼るものがないユキヤは敏感になり、すぐに達してしまう。
しかしすみれはそれを許さず、「まだイっちゃだめだよ」と言って寸止めを繰り返す。
そしてユキヤのペニスを根元まで飲み込み、喉奥を使って締め上げる。
その快感に耐えられず、ユキヤはすみれの口の中に射精してしまった。
「うふふっ♡今日はお仕置きだから、全部飲んじゃうね」
そう言ってすみれは精液を飲み干し、その後何度も絶頂を迎えた。
「手が使えないの辛いもんね」
ユキヤの手には手錠が掛けられている。
「ねぇ、今どんな気持ち? 目隠しされて拘束されてるのに、
こんなにビンビンにしてるなんて」
すみれはそう言ってユキヤの乳首を舐める。
「くっ・・・」
「あら、ちょっと反応したわね。ここ感じるのかしら」
そう言ってすみれはユキヤの胸板を指先でなぞる。
「くはっ・・・やめろ・・・」
「何言ってるの?こんなに嬉しそうな顔してるのに」
そう言ってすみれはユキヤの耳元で
「変態さん」と囁く。
するとユキヤの身体はビクンッと跳ね上がる。
「あぁ・・・」ユキヤは自分の情けなさに涙を流す。
「泣くほど嬉しいの?」「おねがい・・・やめて」
ユキヤの口調も弱気なものになってくる。
「ダーメ♪」そう言ってすみれはユキヤの亀頭を責め立てる。
ユキヤの口からは悲鳴にも似た喘ぎ声が漏れる。
「ほら、イッていいよ」すみれはそう言うと、今までで一番強く吸い付く。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ユキヤは白目を剥いて痙攣しながら果てた。
「うふふ、ごちそうさまでした」すみれはユキヤの股間から口を離す。
「子供みたいなのにいつもすごい沢山出るよね」
ユキヤはその言葉に羞恥心を煽られ、顔を真っ赤にする。

・・・そんな夜の生活が二人の日常となっていた。
SMとも呼べないライトな責めだが、Hの間だけはすみれが完全に支配している。

『あんまりやり過ぎると病みつきになっちゃうから程々にね』
「うーん、叩いたり痛めつけたりしてないから大丈夫だと思うんだけど・・・」
すみれは電話をしていた。相手は沙由美だっだ。
従弟である圭太の学校の先生だが、なぜか仲良くなっている。
沙由美はユキヤの件について話していた。
『それにしても、すみれちゃんって意外とSだったのね』
「私・・・そうなんでしょうかね?最初は冗談半分で始めた事なのに」
『・・・あんまり深入りすると取り返しがつかなくなるから気を付けてね』
「分かってます」
『でも、ユキヤくん可愛かったでしょう?』
「それはもう!めっちゃ可愛い声で鳴くんです!」
すみれはやや興奮気味になる
 『・・・それならよかったけど、あまりいじめすぎないようにね』
「もちろんです。これ以上嫌われたくないし」
『あと、あの子M気質もあるみたいだから、ちょっとした事で喜ぶかもね』
「・・・そうですね。ちょっと試してみる事にします」

この会話からお察しの通り、すみれのこの手の知識の殆どが
沙由美からのものである。例の下の毛脱毛も彼女の入れ知恵だ。
『じゃあそろそろ切るね。また何かあったら連絡するわ』
「うん。ばいば~い」
(まぁお互い幸せそうだからいいんだけどね)
電話を切った後沙由美はそう思った。

一方そのころのユキヤは・・・一人悩んでいた。
(毎回毎回、泣くまで責められて・・・男としてどうなんだろうか)
「はぁ・・・」ユキヤはため息をつく。
実際外見もイケメンの部類に入るし、ファンの女性も多い。
しかし実際は彼女であるすみれに支配されている・・・。
「・・・」
正直、ユキヤ自身は自分の事をMではないと思っている。
どちらかというとサディスト寄りだとすら思っている。
しかし、すみれに調教されて以降はすみれに逆らえなくなっている。
それがたまらなく嫌なのだ。というよりそれで興奮している自分に対して
嫌悪感があった。「あぁ・・・」
今日もまた、すみれに責められる自分を想像してしまう。
「ダメだ・・・」
ユキヤは頭を振って妄想を振り払う。
「とにかくエスカレートさせたらダメだ・・・俺の役割が完全に決まってしまう」
ユキヤは再び頭を抱えた。
「あれ?ユキヤじゃん!最近来ないけどどうしたの?」
声の主はユキヤの所属する飲みサーの女性だった。「いや、ちょっといろいろあって・・・」
「なにかあったの?悩みがあるなら聞くよ」
彼女は心配そうな顔で言う。
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」
「ほんとにぃ?無理しないで相談してね。いつでも乗るから」
その言葉を聞いたユキヤの顔が少し緩む。「ありがたいな・・・」

確かに彼女の言う通り、飲みサーにはしばらく顔を出していない。
以前なら、飲み会に参加して、酔った勢いで一緒にいる女の子をお持ち帰り・・・
という事も少なくかなかった。
世に言う「草食系」や「尻に敷かれる」や「M男」なんてものは
自分には縁がない別世界の存在だ・・・と思っていた。
彼女だっておっとりして優しいかわいい系の子で、この俺がリードして、
引っ張ってやらないと駄目なんだ・・・そう信じていた。
なのに今は何だ?何だこの状況は。完全に立場が逆転してないか。

よく関係を持つことを「女を抱く」というが抱かせてすらくれない。
何故なら常に後ろ手に手錠が掛けられているからだ。
(彼女を「抱く」んじゃない。俺が彼女に「抱かれて」るんだ・・・)
ユキヤはその現実に改めて絶望した。
そしてふと思うのだ。
こんな生活がいつまで続くのか。自分はどうなるのか。
もしかすると一生このままかもしれない。そんな恐怖に怯えた。

「ユキヤ、おはよう」
ユキヤは朝起きてリビングに向かう。すると既にすみれがいた。
「お、おう。早いね」
「そうかな?」
「いつも俺が起きるの待ってるもんね」
「別にユキヤを待ってるとかじゃないから。私が早く起きるだけ」
「はいはい」
最近、ユキヤはこのやり取りに慣れつつあった。
慣れてしまう事が怖いとも思いつつ。
(いかん。流されちゃだめだ)
そう思っても結局すみれに言いくるめられてしまう。
というか、夜以外は二人の関係は何ら変わっていない。
本当に変わったのは夜の行為の内容くらいなのだ。

「ユキヤくん、ご飯食べよう」
すみれが笑顔でユキヤを呼ぶ。「あ、ああ」ユキヤは気のない返事をする。
「どうしたの?」とすみれが聞き返すと
「いや・・・こうしてると普通に恋人同士みたいだなって。」
ユキヤは苦笑いしながら答える
。「みたいじゃなくて、私達はもう立派なカップルだと思うけど?」
「そ、そうだけどさ」ユキヤは口ごもりながら答える。
「ほら、冷めちゃう前に食べるよ」
「そうだね」
二人は食卓につき、朝食を食べ始める。
「そういえば今日はバイトあるの?」
「いや、今日は休みだよ」
「じゃあ今日はゆっくりできるね」
「まぁ、特に用事もないし家でのんびりしようかな」
「ねぇ、せっかくだしどこか遊びに行かない?」
「えっ!?いいけど・・・どこにいくつもり?」
「映画とかどう?二人で」
「二人きりで行くわけ?それだとなんかデートっぽくないっていうか・・・」
「でも付き合ってるんでしょ?私たち」
「それはそうなんだけど・・・」

そしてなんだかんだで出かけることになった。
場所は近くのショッピングモール。映画館もあるし買い物にも困らない場所だ。
「ユキヤくんは何か見たいのある?」
「えーっと、俺はなんでもいいよ」
「何でもって一番つまらない答えだよね」
「いやいや、ほんとになんでもあるじゃん、てか俺あんまり映画詳しくないし」
「だから言ってるの!一緒に見る人がいないの!」
「なんだよ、その言い方は・・・」
「はい!文句言わない!とりあえず恋愛ものとかどう?泣けるやつあるよ」
「・・・わかったよ」
「やった♪」
こんな時のすみれの笑顔は本当に可愛い・・・ユキヤはそう思った。
そして上映中。隣を見るとすみれが真剣に見入っている。
横顔が綺麗で思わずドキッとする。
(やっぱ美人なんだよな・・・)
そんな事を考えているうちに映画は終わり、エンドロールが流れる。
「面白かったね~」
「うん、まさかあんな大どんでん返しがあるとは」「ほんとにびっくりしたね」
帰り道では映画の感想で盛り上がった。「あのラストシーンよかったわ」
「だろ?あれは泣くしかないって」
「あ、でも最後のキスシーンは微妙だったかも・・・」
「あーわかる。俺もそう思う」
「やっぱり?」
「ああ、もっと濃厚にしてほしかったかな」
「そうそう、それにさ・・・」
(あ・・・しまった)
つい熱く語ってしまった事に気づく。
すみれの顔を見るとニヤリと笑っている。
「へぇ、ユキヤくんはそういう風に思ってたんだ」
「いや、違うんだ。これはあくまで一般論としてであって」
「はいはい、わかってるよ」
(絶対、馬鹿にされてるよこれ)
「ところでさっきの話、ユキヤくんもそう思わない?」
「さっきのって?」
「だから、ラストシーンでのキスについて」
「あ、ああ。そうだね。俺もその方がいいと思うよ」
「だよね、私も同じ意見。だって・・・」
「・・・?」
「まだ、足りないんだもん」
「えっ?」
ユキヤは一瞬すみれが何を言っているのか理解できなかった。
「こんなふうに・・・ね」すみれはユキヤの唇を奪うようにキスをした。
「んむぅ!?」
ユキヤは驚いてすみれを引き離そうとする。
しかし、すみれはしっかりとユキヤを抱きしめている。
「ぷはぁ」すみれが息継ぎをするように口を離す。
「何するんだよ、いきなり!」
「ふふん、ユキヤくんが言ったんじゃない。こういうのがいいって」
「いや、確かにそうだけどさ・・・」
「じゃあいいでしょ?」
「うっ・・・」ユキヤは言葉に詰まる。
そしてまた、すみれはユキヤの唇を奪った。今度は舌を絡めてくる。
「ちゅぱ、れろぉ・・・じゅる、んんん・・・」
「ちょ、ちょっと待て、すみれ!」
「んっ、んんんっ・・・」すみれはユキヤの言葉を無視してさらに激しくしてくる。
「んぐ、んんんっ・・・」
(これは・・チャンスかもしれない)
そう思うとユキヤはすみれをぎゅっと抱きしめる。そして、口づけを続ける。
「・・・」すみれは何も言わずそれを受け入れていた。
そして二人は長い時間、キスをしていた。
「ぷはぁ・・・」お互い顔を真っ赤にしている。
「ユキヤ・・・大胆になったね」
「俺だって、たまにはこうしたい・・・」「そっか、嬉しいよ」
そしてもう一度、軽くキスをする。
「ねぇ、ユキヤくん」
「うん?」
「私の家こない?」
「ええっ!?」
突然の誘いに驚く。
「な、なんで急に?」
「ユキヤだっておさまってないんじゃないの?」「それは・・・まあ・・・」
「だからだよ。ほら、おいで」
すみれはユキヤの手を引いて歩き出す。

つづく
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