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第40話:据え膳食わぬは・・・(その1)

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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に
強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、
手痛い失恋なども経験してしまうが、
異常ながらも賑やかな毎日を過ごす。
(あらすじここまで)

「え?俺に家庭教師?」
ある日圭太は両親に呼ばれこんなことを言われる。
「でも俺そこまで成績悪くないと思うけど・・・」
成績は落第を心配するレベルではないし、特に問題はないはず。
なのにどうして家庭教師なんだろう。
「ちょとな・・・俺の兄さんに頼まれたんだ。」と父が言う。「伯父さんに?」
「従姉妹のすみれちゃん、覚えてないか?」
と母が言った。
そういえば前に一度会ったことがある気がする。
確かその時も何か頼み事をされたような記憶がある。
「あぁ!あの綺麗なおねえさんだよね!」と言った後少し考えてからこう続けた。
「でもその人がどうかしたの?」
「大学に入ってからずっと一人暮らしなんだがバイトがしたいと言い出してな」
と父は腕組みしながら答える。
「それでどうせならお前の勉強を見てもらえればと思ってな」
「なるほどね~」と言ってから少し考える。
確かにこの前会った時はとても優しくしてくれた。
それに勉強を教えてくれるという事だし断る理由もないかなと思った。
「いいよ別に」と答えると両親は安心した様子だった。
そして数日後、早速勉強会が始まることになったのだが……

***
「・・・それで家庭教師が付くことになったの?」
翌日部室でそのことを話すと沙由美が食いついてくる。
「はい、まぁそういうことになりますかね……」
「ふーん……ねぇそれって女の子じゃないわよね?」
沙由美は眉間にシワを寄せながら聞いてきた。
「それがなにか?」「いえなんでもないんだけどさ……」
沙由美は目をそらす。
「先生、もしかしてヤキモチですか?」葵がツッコむ。
「そんなわけ無いでしょ!?」「じゃあなんで顔赤いんですか?」
「赤くなってなんかいないわよっ!!」
沙由美はさらに顔を真っ赤にする。
「ただの従姉妹ですよ・・・何かあると思うんですか?」
と言うと沙由美の顔色は元に戻っていく。
「べ、べつにぃ? ただの興味本位だけどぉ?」
沙由美は明らかに動揺していた。
(年の近い従姉妹、家庭教師、二人きり・・・何か起こると言わんばかりなんだけど)
沙由美の頭の中では嫌な予感が渦巻いていた。
「大丈夫ですって、何も起こりませんから。」
沙由美の不安を察したのか圭太がフォローを入れる。
「そ、そう? 本当に何も無いの?」
「はい、ありません。だって会うのだって久々ですし。」
(いやそれ、もっと悪い奴・・・)その場にいる圭太以外の全員がそう思った。
「そっか、そうだよね。うん。」(うぅ・・・天然かこいつは。)
「???」
「はぁ・・・もういいわ。」
沙由美は諦めたようにため息をつく。
こうしておびただしい数のフラグを立てて、家庭教師生活がスタートした。

***
「お邪魔しまーす……」
今日から家庭教師として来ることになっている、従姉妹のすみれが部屋に入る。
「ごめんなさいね、急にお願いしてしまって」
「いえいえ全然平気ですよ」
「ありがとうございます。助かります。」
「とりあえずお茶入れてくるから座っていてください」
「はい、わかりました」
圭太の母は台所へ向かう。
「あぁ緊張するなぁ……。」
すみれはそう言って深呼吸をする。
「へぇ~男の子の部屋ってこんな風なのね」
部屋の中をキョロキョロと見回す。
「あんまりジロジロ見ないで下さいよ」
「あら、失礼しました」
圭太は恥ずかしくなってつい敬語になってしまう。
「でも圭太君、スキンケア用品沢山持ってるのね」
すみれはなにげにベッドの横にある棚に目をやる。
「!!?」
圭太は一瞬動揺した。なぜならそれらは
「責任もって圭ちゃんのキレイは維持してあげる」と沙由美に渡されたものだからだ。
「えっとこれはですね……」
「あ、もしかして彼女さん用とか?」
「いやその……」
「ふふふ、冗談だよ。圭太くんだもんね、そんなわけないか。」
「いやまぁその通りなんですけど……」
本当の使い道は流石に言えない。
圭太が返答に困っていると ガチャリとドアが開く音がした。
圭太の母だ。

トレイの上には人数分の紅茶とケーキが載っている。
「どうぞ。口に合うといいんだけど。すみれさんは何が好きなのかしら?」
「私はコーヒー派なのですが紅茶も好きです。どちらにも合いますし。」
「そうなの? それは良かったわ。」
「すみませんわざわざ用意してもらっちゃって」
「じゃあよろしくお願いしますね。」そう言うと母は部屋を出ていった。

「じゃあ始めましょうか。まず何を教えればいいのかしら?」
「えーと取り敢えず宿題でも見てもらえれば・・・」
圭太はカバンから教科書を取り出す。
すみれはそれを手に取り中身を確認する。「これなら大丈夫そうかな。」
「あとは数学の問題集があるんですが、それも見てもらってもいいですか?」
「もちろん!」
すみれは笑顔で答える。
「ここがこうなるので、これがああなりまして……だから答えはこれになるんですよ。」
すみれはすらすらと答えを導き出す。
「おお!凄いなぁ。」
「高校生の問題ぐらいできなくてどうするの。」
すみれは得意気に胸を張る。「いやー面目ないです。」
圭太は頭を掻きながら苦笑いをする。
「私にできる事があったら何でも言ってね。圭太君は大事な弟みたいなものなんだから」
「はい、頼りにしてます。」
圭太は微笑む。すみれもつられて笑う。
そして二人は和やかな雰囲気で勉強を始めた。

数時間後
「ん~疲れたぁ~」
すみれが伸びをする。
「すみれ姉さんの教え方分かりやすいですね」
「まぁこれでも成績はいいほうだったからね。」
「でも圭太君の理解力が早いから教えるのが楽しかったよ」
「それほどでも。」
褒められた圭太は少し照れる。
「んじゃ、今日はここまでね」
「はい、ありがとうございました。」
「またわからない所があればいつでも聞いてちょうだい」
「助かります。」
圭太は頭を下げる。
「それじゃあ今日はこの辺で失礼するわ」
すみれは立ち上がる。
「駅まで送りますよ」
「ありがと」
圭太も立ち上がり、玄関へ向かう。
靴を履いている最中、すみれが口を開く。
「圭太君ってさ、笑うと可愛いよね」
「えっ!?」
圭太は思わず振り返る。すみれの顔を見るとニコニコしている。
「なんだよいきなり」
圭太は恥ずかしくなって顔を背ける。
「だって本当のことじゃない」
「うぅ……」
圭太は何も言い返せない。「でも笑った顔も好きだな」
「へぇ?」
突然の告白(?)に圭太は素頓狂な声を上げる。
「な、な、な、何を言っているんですか」
「ふふ、圭太君面白い反応してくれるなぁ」
すみれはくつくつと笑って圭太を見ている。
「ほら早く帰らないと電車来ちゃいますよ」
圭太は赤くなった頬を隠すようにそそくさと歩きだす。
「あ、待ってよ圭太くん!」
すみれも慌ててついていく。
圭太はすみれを家まで送る。
「本当にここで大丈夫なんですか?」
「うん、ここからならすぐだしね」
すみれは駅の改札で圭太の問いに答える。
「じゃあまた明日ね。」そう言うとすみれはホームに行った。

****

2週間後
「んで、その家庭教師とは上手く行ってるわけ?」
「なんでそんな引っかかる言い方するんですか?」
「別にぃ?」
部室にて沙由美がジト目で見てくる。
「順調ですよ。今のところ問題はないです」
「あっそ。」沙由美は不機嫌そうな声で答える。
沙由美は机に突っ伏して不貞腐れている。
「だから何を拗ねてるんですか?」
すると沙由美はガバッと起き上がり圭太に詰め寄る。
圭太は驚いて一歩下がる。
そして沙由美は圭太の耳元で囁いた。(もしその子に手を出したらわかっているでしょうね)
沙由美の声色は真剣そのもので圭太はゾッとした。
「すぐさま裸にひん剥いて全身にワサビ塗りたくって、生きたままわさび漬けにしてやるから」
沙由美は脅しになってるんだか、なってないんだかよく分からないことを言う。
「いえ・・・そういう食べ物を粗末にするプレイはちょっと・・・」
圭太はドン引きしながら答えた。
「あんた、私のことを何だと思っているのよ」
沙由美はムスーっとした表情で睨みつける。
「いや、冗談に聞こえなかったものですから」
「ふん!とにかく気を付けなさいよ」
(先生、何を怒ってるんだ・・・?)圭太は取り敢えず話題を変えようとあたりを見回す。
そして自分がうつる姿見に目を落とし、愕然とする。

女装した自分のその姿が、あまりにもすみれに似ていたからだ。
「どうしたの?急に鏡なんか見て」沙由美が問いかけてきた。
「あ、いえ。なんでもないです」
「そう。それじゃあ今日はこれで終わりにするわよ」
沙由美の言葉で今日の部活は終了した。
帰り道で圭太はすみれのことを考えながら歩いていた。
すみれと女装した自分の顔を思い出す。
(従姉妹とはいえ・・・あれはたしかにそっくりだった。)
圭太の中に何ともいえない気持ちが湧いた。
そして同時にある好奇心も芽生えてしまった・・・。

「どうしたの?圭太君、さっきから私の事見て?」
すみれとの勉強中もつい彼女の顔を見てしまう。
(すみれさんと俺は身長も体格もほぼ同じだ・・・)
「いえ、何でもないです・・・。」圭太はごまかすように視線を逸らす。
「ふふ、お姉さんの魅力に参っちゃった?」と冗談めかして言う彼女に、
圭太は笑ってごまかして見せた。
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