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第34話:初恋のあとで

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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に
強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、
同級生・園田瑠璃への初恋と失恋をダブルで喰らうが
異常ながらも賑やかな毎日を過ごす。
(あらすじここまで)

「さて、誰も来ないうちに片づけておかないと」
圭太は部室の掃除をしていた。
この部も最近は(主に葵たちの尽力で)コスプレH以外にも、雑談をしたり、
真面目な研究をしたりと、活動の幅が広がっている。
最も、圭太が部室で女装させられるのは変わらないが。

今日は珍しく全員が揃う日だったのだが……
みんな用事があるらしく、すぐに帰ってしまったのだ。
おかげで、部室の中はいつもより綺麗になっている。
そんな時部室を訪ねる者がいた。「よう!遊びに来たぜ!」
1年C組の園田瑠璃だった。彼女は学校では有名な美少女だ。
だが、それは表の顔に過ぎない。
その正体は百合趣味のある同性愛者なのだ。そして、圭太の初恋の人でもある。
(まさかこんな子だとは思わなかったなぁ・・・)
圭太の初恋騒動の後、学校では数少ない圭太の女装を知るものとして、
部に「体験入部」という名目でよく遊びに来るようになった。

「おーっす圭ちゃん♪元気?」
そう言いながら、瑠璃は興味津々といった感じで
圭太の衣装クローゼットを眺めている。
「まあね。瑠璃さんはどう?何か変わった事とかあった?」
「ん~特にないかな。相変わらず智花ちゃんはかわいいし。」
「そう、山吹先輩とは上手く行ってるんだね」
圭太は自分の知られずに終わった初恋の傷が少しうずいていた。
だが今は目の前にいる瑠璃との会話に集中しなければ……。
瑠璃は部室に散らばった衣装を見て目を輝かせていた。
「ふむふむ。今日はどんな服着てるの?」
「えっと、これだよ……」
圭太はスカートの裾をつまんで持ち上げた。

「ほぅどれどれ・・・」と瑠璃が興味深く観察し、
おもむろにスカートをめくる。
「・・・!ちょっと!何するんだよ!」

「ごめんごめん。つい出来心で。でも可愛いよ。似合ってる」
瑠璃は笑いながら謝りつつ、圭太のスカートから手を離した。
圭太は恥ずかしくなり顔を赤らめる。
「まったくもう・・・」
「しかし下着までちゃんと女の子のなんだね。さすが変態」
「好きでやってるわけじゃないんだけど!?」
瑠璃は圭太を女装が好きな変態と理解していた。
(だから先生、どんな説明したんだよ・・・)

「またまた~」
「ホントだってのに・・・」
「それにしても、どうして男の子なのにそんなに
女装が上手いの?前から不思議だったけど」
「そりゃ俺のせいじゃなくて沙由美先生の趣味だからね」
「あぁなるほど。あの人の趣味か」
瑠璃は納得したようにうなずく。
確かに沙由美の趣味は特殊だし、女装を強要してくるのも事実である。
しかし、圭太にとっては女装が特に好きだからというわけではない。
(でもなんか付き合わされちゃうんだよね・・・)
「ねぇ、圭太君ってさ、なんで女装するようになったの?」
「それは、僕にもわからない。気づいたらこうなってたから。
最初は抵抗したんだけど、沙由美先生に逆らえなかったっていうのもあるかも」
「へぇ。それで女装してたら楽しくなったとか?」
「違う。沙由美先生に無理矢理させられただけ。
最初は嫌だったのに、だんだん受け入れちゃってきたのは確かだけど。
それに部のみんなもいたしね」
「そっか。みんながいたからこそ、今があるのか」
「うん。みんなには感謝している」
「いい仲間を持ったじゃん」
「そうだね」
圭太は素直に同意した。実際圭太は恵まれていると思う。
女装させられて困る事は多いが、
それを上回るくらい楽しい事がたくさんある。
それに、部員のみんなの事は大切だと思っているのだ。
「ところで、今日は何しに来たの?」
「ん?遊びに来ただけだよ」
「そう……(汗)」
「あれれ、嬉しくないの?」
「嬉しいと言えば嘘になるかな」
「正直者~♪」
瑠璃は楽しげに笑っていた。

園田瑠璃こんな風に仲良く話してる。
ほんの数ヶ月前なら考えられないことだ。
(恋人でなく、完全に友達感覚だけど。)
正直彼女に関する気持ちが消えたと言えば嘘になる。
今でもあの時の事を思い出すと胸が痛くなってくる。
だが、今の彼女は自分にとって大切な友人なのだ。
でもやっぱりクラスメイトなどと話す時とは違う感覚があった。

「どうしたのボーッとして。考え事?」
「あ、ううん何でもない」
「ふーん」
瑠璃はジト目で見つめてくる。
圭太は思わず目を逸らす。
「なになに、私に見惚れてるのかい?照れるじゃないか」
「ち、違っ!」
「おや、図星みたいだねぇ」
「・・・」
「まぁいいさ。私は寛大だから許すよ。
それより、今日の部活は何をしようか?」
「えっと……」
「せっかく来たんだしさ何か面白いこととかない?」
「面白いことと言われても……」
圭太は考える。
しかし何も思いつかない。
そもそもここは学校であって遊ぶ場所ではない。
「無いのぉ?つまんなぁい」
瑠璃は頬を膨らませる。
その仕草はとても可愛らしい。
「うーん、そうだ僕の衣装着てみるとかどう?
さっきから随分興味あるみたいだし」
「あぁ!良いね。面白そう。是非とも見せてもらいたいものだ」
瑠璃の目がキラキラ輝いている。
圭太はため息をつく。
「はいはい、わかりましたよ」
圭太は立ち上がる。
そしてロッカーを開けて衣装を取り出す。
「はいこれ」
「わーい」
瑠璃は嬉々として受け取る。
「じゃあさっそく着替えようか」
瑠璃は自分のスカートを脱ぎ始める。
「ちょ!?ここで脱ぐの?」
「だってここ部室だし。別に問題なくない?」
確かに、今部室には圭太と瑠璃しかいない。
「・・・ってダメでしょ!普通に考えて!」
「なんだい、君は私の裸を見るのが恥ずかしいとでもいうのかね?」
「あのさあ・・・一応僕男なんだよ?」
「あ、そっか。ごめんね」
「わかってくれればいいんだけど」
「でも圭太君が男の子なのは知ってるから大丈夫だよ。
それに君の身体に興味ないし」
瑠璃はさらりと酷いことを言う。
瑠璃は圭太の事を完全に男として意識していないようだ。
それが圭太にとっては救いだったが・・・
「いや、君や良くても僕はよくない!」
圭太が慌てて言う。
「え?何赤くなってるの?」
「そりゃなるでしょうが!!」

「じゃあさ、圭太君が着替えてるとこみたい。」
「は?」
「・・だってこの衣装着方よくわからないし、
先にお手本を見せてくれたらなーって・・・」

「はあ。仕方ないなあ。わかったよ」
圭太は諦めたように言った。
「やったー!」
瑠璃は満面の笑みを浮かべていた。
「ほら、早く服渡して」
「は~い」
「まったくもう・・・」
圭太は呆れた様子だった。
(まぁいっか。どうせ誰も来ないだろうし)
圭太が着替えている間、 瑠璃が興味津々とばかりに見つめる
(ううう、男に興味ないのは知ってるけど・・・視線が痛い。)
「そんなにじっと見ないでよ」
「えぇ~いいじゃん減るもんじゃなし」
「いや、僕の精神力がガリゴリ削られてるんですけれども?」
「まぁまぁ気にしない気にしない」
「はぁ~」
瑠璃は相変わらず楽しげに見ている
「へぇ~足とかもちゃんときれいにしてるんだねぇ」
「うぅ、あんまりまじまじ見ないでくれるかなぁ」
「おぉ、なんか可愛い下着履いてるんだねぇ」
「ううう、お願いだから勘弁してくれ」
「あ、ブラも外せるようになってるんだね。
これはどうなっているのだろう
(・・・まさか全部脱げとか言い出さないよね?)
瑠璃は興味深そうに観察している。
「ちょっと、あまりじろじろ見ないでくれない?」
「ふむふむ、なるほど。胸の部分はこうなってて・・・」
「聞いてます?人の話?」
「おや、背中にチャックがあるねぇ。
お、開いた」
「ああ、そこはやめてよ」
「おやおや、かわいいパンツだねぇ。
しかも紐パンじゃないか」
「だからやめてくれってば!」
「えーいいじゃない。減るものでもないしさぁ」
瑠璃は悪びれることなく続ける。
むしろノリノリである。
圭太は羞恥心に耐えられず、 顔を真っ赤にしている。
その様子がまた可愛らしく、瑠璃を喜ばせる。
(何の拷問ですかこれは・・・)
圭太は涙目になりながら耐えている。
これが沙由美先生たちなら投げかけてくる視線の目的が
性的なものだと受け止められるが、
彼女の場合はそれがない。純粋な好奇心だけなので
どうしたらいいのか分からない。

それはそれで辛いものがある。
瑠璃の知的好奇心を満たすためにひたすら弄ばれ続けたのであった。
しばらくして満足したようでようやく解放される。
瑠璃はご機嫌な様子だった。
圭太にとってはただの辱めの時間でしかなかったが。
圭太はぐったりしていた。
だがまだ終わりではない。
「さ、次は私の番かな! 私の身体を隅々まで見てもらうからね!」
瑠璃は目を輝かせていた。
そして圭太の目の前で躊躇なく服を脱ぎ始めたのだった。
瑠璃は制服の下に体操服を着込んでいたようだ。
スカートの下からは紺色の短パンが出てきた。
上はブラウスの下にに体育着の上を着ていたようだ。
それをするすると脱いでいく。
「ちょっ、なんでここで脱ぐの!?」
とめる間もない行動だったので圭太が慌てる。
「ん~?だって圭太君が着替えるところ見せてくれたし。
私も着替えないとな~と思って」
瑠璃は平然と答えるので圭太の方が恥ずかしくなってきた。
彼女はこういうことを恥じらいもなくやってのけるのだ。
(いや、異性に興味なさすぎだろ?!)
「と、とにかくそれ以上脱がなくていいから!」
圭太が慌てて止めに入る。
これ以上はまずいと本能的に察したからだ。
しかし瑠璃は止まらない。
「え~別に減るもんじゃないし」
と言いつつさらに上も脱ごうとする。
「だからこれ以上脱ぐなって!」圭太は必死になって止める。
「僕の精神力が減るんだよ!!」
「大丈夫だよぉ。圭太君は男の子なんだから。
女の子の裸なんて慣れっこでしょ?」
「そういう問題じゃないってば!! 」
「じゃあどういう問題があるの?」(うぅ、言葉に詰まる・・・)
確かに女子の裸など幾度も見ている圭太であるが、
瑠璃の行動は理解不能なものである。
(こんな変な子だと思わなかった・・・)
とはいえ瑠璃の場合、 
男として見られてない感が強いのは確かであり、
そのせいで圭太としては複雑な心境なのだ。
「ほらほら、遠慮しないでじっくり見ていいから!」
瑠璃はそう言いながらブラジャーを外そうとする。
「わー!!!わかったよ見るから!だからもう勘弁してぇ!!」
結局、圭太は折れた。
瑠璃は嬉々としながら、 下着姿になった。
ちなみに上下ともにスポーツ用のものだ。
色気はない。
だがそれでも十分に扇情的な格好ではあるのだが。
瑠璃は少し背が低いもののスタイルは良い方である。
胸は大きくはないが形が良く、ウエストはくびれている。
お尻はやや小ぶりではあるが引き締まっており、 脚はすらっとしている。
肌は白く透き通っており、 顔立ちは幼さが残っているが整っている。
そんな美少女が目の前にいるわけで、 圭太はドキドキしてしまう。
(落ち着け僕!相手はただの友達だぞ?)

「ふむふむ。圭太くんどうだい私の身体は?」
瑠璃は自信満々に聞いてくる。
「ど、どうと言われても。綺麗だと思うけど」
「いやいや圭太君だって負けてないと思うよ」
「・・・一応言っとくけどね僕は男なんで。」

「知ってるよ。でも可愛いんだもん」
「か、かわっ!?」
「うん。可愛くて食べちゃいたいくらい」
瑠璃は圭太に抱きつき、顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっと待ったぁ!何するのさ?!」
「えへへ~♪圭太君を食べちゃおうかと」
「やめてやめてくださいお願いします。」
圭太は懇願するが瑠璃は止まらない。
「だ~いじょうぶ。痛くないように優しく食べるから」
「ひぃっ!?」
「いやーしかしツルツルだね君の身体は」
瑠璃は圭太の身体を撫で回す。
「あ、あのさ、本当にこれっきりにしてくれないかな?」
「え?どうして?せっかくのチャンスなのに。もっと触らせてよ!」
「嫌だよ!恥ずかしいし!それに・・・」
「ん?」
「友達同士でこういうことするのはおかしいでしょ?」
圭太の言葉を聞いた瑠璃は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、
すぐに笑い出した。
「アハハッ、圭太君は真面目なんだねぇ。
私は全然気にしないのに。」
「・・気にしなよ!女の子なんだから!」
「女の子って言っても私達まだ高校生だよ? 
この程度の事で騒いでたらやっていけないって」
「それはそうかもしれないけど、少なくとも僕には無理だよ!」
「そっか。なら仕方ないか。じゃあ今日はこの辺にしとこう」
「あ、ありがとうございます」
圭太はようやくこの状況から解放されると安堵した。

一方、部室の外では・・・
「真由里ちゃん、何してるの?」
遅れてやってきた沙由美が、
部室の窓の前に立ち尽くしている真由里に声をかける、
見ると真由里はスマホを持って鼻血を出している。
「沙由美先生・・・無茶苦茶尊い音声が撮れましたけど、あとで聞きます?」
そう言っているその顔はとても満足げなものであった。
「もちろん!後でデータ送ってくれるかしら?」沙由美は即答する。
「了解です!今すぐ送りましょうか?」
「いえ、家帰ってゆっくり聞きたいわ。楽しみは後に取っておきたいのよね」
「分かりました!ではまた明日学校で!」
二人は秘密裏に約束を交わした。

数日後。
「・・・俺にああいう事して山吹先輩怒らないの?」
休み時間の学校の廊下で圭太が瑠璃に聞く。
「智花ちゃんなら大丈夫だよ。智花ちゃんは私を信じてくれてるからね!」
「そうなの・・・」
結局あの後、二人はコスプレしてツーショット写真まで
カメラに収めてしまっていた・・・。
(『信じている』か・・・)
圭太は瑠璃の言葉を反すうしながら、複雑な気持ちになる。
やはり二人の絆は強いということか。

「・・・やっぱり山吹さんにも普段からああいう事するの?」
圭太はふと疑問に思ったことを口に出す。すると、
瑠璃の顔はたちまち真っ赤になり
「バ・・・バカ!そんな事するわけないでしょ!」
「えぇっ?でもこの間はあんなに楽しそうに
俺に色々してきたじゃないか」
「智花ちゃんにはできないよ・・・恥ずかしいし!」
瑠璃はますます真っ赤になる。
「え?恥ずかしくて出来ない事を俺にやったのか!?」
「違うの!智花ちゃんは・・・別なの!この話おわり!」
瑠璃は本当に恥ずかしそうに言う。
(え・・・まさか恋人の前では奥手になるタイプ?!)
これもまた意外な一面だった。
(うわ、じゃああの時のキスは本当に一大決心だったんだな・・・)
そう思った圭太はそれ以上言及するのはやめた。

「ほら、もう休み時間終わるから、教室戻ろう!」
瑠璃がごまかすようにせっついた。
「そうだね。授業遅れるとまずいし」
圭太と瑠璃はそれぞれ自分のクラスに戻っていった。

おわり
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