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第30話:圭太の初恋(その1)
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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に
強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、
謎の女装男子youtuber・グレンと知りあったり、
異常ながらも賑やかな毎日を過ごす。
(あらすじここまで)
ある朝、圭太が保健室を訪ねると、一人の女生徒とすれ違った。
その姿を見た圭太はしばし呆然とする。
「おはよう。圭太君。何か御用かしら?」沙由美が奥から声をかける。
圭太は我に帰ると慌てて返事をする。
「今の人は?」
「1年E組の園田瑠璃さんよ。ちょっと相談に乗ってたの。」
沙由美は普段から生徒の相談にもよくのっている。
「いえ・・・その、あの子、俺のこの辺だったような・・・」と
自分の目の位置あたりに手首を水平にして見せた。
「なぁに?自分よりも背が低い子がお好み?」
「いや別にそういうわけじゃ・・・」
とはいえど圭太のコンプレックスは身長である。
自分より小柄な、しかも女子となればどうしても気になってしまう。
ましてそれが同級生ならなおさらだ。
そんな圭太の心中を知ってか知らずか、沙由美が言う。
そして何食わぬ顔で、先ほどの瑠璃の写真を圭太に見せてきた。
それを食い入るように見る圭太にはある感情が芽生えかけていた。
それは部の先輩たちに抱く感情とはまた違った感情であった。
部のみんなと体の関係は持っているものの、決して持ち合わせなかった感情。
いうなれば「初恋」というやつだ。
そんな様子を(おやおや)と思いながら見ている沙由美であった。
「あらあら、もしかして一目惚れでもしたのかしら?」
「えっ!あ、いや、そういう訳では……」
「いいじゃない、別に隠さなくても。あなたにもついに春が来たってことね。」
「ち、違いますよ……ただ、ちょっと気にかかったというか・・・」
少し照れくさそうにする圭太。
そんな様子に沙由美は満足げな表情を浮かべる。
(これじゃあまるきりただの15歳の少年じゃないのよ・・・)
ここ数ヶ月の異常な状態のせいで、
通常考えられない女性経験を幾度もしてきた圭太だったが、
こと恋愛方面に関しては普通の高校生と同じ反応であった。
(多少順番違ってるけど、こういう兆しがあるってのはいい事ね)
と自分が圭太の異常な状態を作り出していることを棚に上げて
沙由美はほくそ笑む。
そんなことは露ほども知らない圭太は、
保健室を出ると教室に向かうのであった。
その日の放課後、いつものように部活に行くと、
すでに他の部員たちは揃っていた。
そして例によって女装させられるまでは同じだが、
今日の圭太はちょっと違っていた。
(園山さんは・・・こんな異常な日々を送っている
僕を・・・好きになってくれるかな・・・)
などと考えながら机に頬杖を突くその姿は、
傍で見てると悩める少女そのものだった。
「どうしたの圭太君。今日はなんだか元気ないみたいだけど・・・」
隣に座っている葵が珍妙な顔をして話しかけてくる。
「葵さん・・・冬の空ってなんであんなに悲しいんでしょうか・・・」
「はぁ?!」流石の葵も若干驚いたような声をあげる。
「あー、いやなんでもありません・・・」
「本当に大丈夫なの?なんか心配事があるなら相談に乗るわよ?」
「ありがとうございます。でも、
これは自分で解決しないと意味がないんです・・・」
(どこの乙女よ、あなたは・・・)葵が心の中でツッコむ。
とはいえど、確かに今の圭太の身体は普通の状態ではない。
(いっつも部室で女装させらてる男子なんか僕だけだろうしなぁ・・・)
改めて自分の置かれている状況が(主に沙由美のせいで)
異常だということを思い知らされる。
「神さま・・・僕はどこまで汚されてしまった少年なんでしょうか・・・」
うなだれながら独り言をつぶやく。
「ちょ、ちょっと圭太君?!何言ってるか全然わからないんだけど・・・」
圭太の言動を怪しみつつも、あまり深く突っ込むのは危険だと
本能的に察知した葵は それ以上追及しないことにした。
そんなやりとりをしていると、沙由美が入ってきた。
「先生、圭太君がさっきからおかしいんですが」と
葵が沙由美に近づいて耳打ちする。
「あちゃー、乙女モード入っちゃったか・・・」
と沙由美が苦笑いしながら頭を掻いている。
(やっぱり女装なんかしてるとバレたら変態扱いなんだろうなぁ・・・)
圭太は相変わらず脳内でポエムを生成していた。
***
数日後、部室。
「ええ!じゃあ圭太様、まだその子とは口すら聞いたことないんですかぁ!?」
と真由里が驚いた声をあげる。
「クラスも離れているから、合同授業もないし、
今まで話す機会がなかったようね。」
沙由美が困ったように返す。
「恋に悩む圭太様は見てていてとても尊いですが、
ちょっと痛々しさもありますからねぇ。」
「朝礼の時とかにもろに意識して、向こうをちろちろ眺めてるさまは、
痛々しいってもんじゃないわよ。ここまで恋愛に奥手だったのは意外だったわ・・・」
「それじゃあ、今度私がそれとなく接触の機会を作ってみましょうか?」
真由里が提案するが、
「真由里ちゃんはダメよ。余計なことしたら逆にこじれそうだもの。」
沙由美がやんわり却下する。
「それにしても、圭太様、普段女性とは普通に話せてるのに・・・」
真由里が不思議そうにしている。
確かに、普段の圭太であれば女友達もいるし、
男同士で馬鹿話をしたりもできる。
だが、相手が惚れた女の子となると勝手が違った。
ましてや、自分から話しかけるなど論外である。
更に自分がしょっちゅう部の女生徒と女装Hふけっているという事も
引け目になっていた。圭太自身女装することを受け入れつつあったが、
やはり世の中的にはかなり奇異な存在に映るだろう。
「まぁそんな変態的なことがバレたら振られるどころか
一生軽蔑されるとは思ってるんでしょうね。」
「はぁ~、私、圭太様に幸せになってもらいたいんですけど・・・
圭太様の女装姿はきらきらしてるのに・・・」
「そこはもうちょっと見守りましょう。
こればっかりは私たちがどうこうできることでもないわ。」
(なるべく早く事実を伝えた方がいいのかもしれないけど・・・
これもある意味人生の勉強ってやつかもね)
沙由美はちょっとだけ渋い顔をした。
つづく
主人公白石圭太は美人保険医が顧問の『服飾文化研究会』に
強引に入れられる。
しかしそこは服飾研究とは名ばかりのコスプレHを楽しむ場所であった。
そこで圭太は言われるがままに女装して、顧問の沙由美と先輩部員たちに
オモチャにされる日々を送っている中、
謎の女装男子youtuber・グレンと知りあったり、
異常ながらも賑やかな毎日を過ごす。
(あらすじここまで)
ある朝、圭太が保健室を訪ねると、一人の女生徒とすれ違った。
その姿を見た圭太はしばし呆然とする。
「おはよう。圭太君。何か御用かしら?」沙由美が奥から声をかける。
圭太は我に帰ると慌てて返事をする。
「今の人は?」
「1年E組の園田瑠璃さんよ。ちょっと相談に乗ってたの。」
沙由美は普段から生徒の相談にもよくのっている。
「いえ・・・その、あの子、俺のこの辺だったような・・・」と
自分の目の位置あたりに手首を水平にして見せた。
「なぁに?自分よりも背が低い子がお好み?」
「いや別にそういうわけじゃ・・・」
とはいえど圭太のコンプレックスは身長である。
自分より小柄な、しかも女子となればどうしても気になってしまう。
ましてそれが同級生ならなおさらだ。
そんな圭太の心中を知ってか知らずか、沙由美が言う。
そして何食わぬ顔で、先ほどの瑠璃の写真を圭太に見せてきた。
それを食い入るように見る圭太にはある感情が芽生えかけていた。
それは部の先輩たちに抱く感情とはまた違った感情であった。
部のみんなと体の関係は持っているものの、決して持ち合わせなかった感情。
いうなれば「初恋」というやつだ。
そんな様子を(おやおや)と思いながら見ている沙由美であった。
「あらあら、もしかして一目惚れでもしたのかしら?」
「えっ!あ、いや、そういう訳では……」
「いいじゃない、別に隠さなくても。あなたにもついに春が来たってことね。」
「ち、違いますよ……ただ、ちょっと気にかかったというか・・・」
少し照れくさそうにする圭太。
そんな様子に沙由美は満足げな表情を浮かべる。
(これじゃあまるきりただの15歳の少年じゃないのよ・・・)
ここ数ヶ月の異常な状態のせいで、
通常考えられない女性経験を幾度もしてきた圭太だったが、
こと恋愛方面に関しては普通の高校生と同じ反応であった。
(多少順番違ってるけど、こういう兆しがあるってのはいい事ね)
と自分が圭太の異常な状態を作り出していることを棚に上げて
沙由美はほくそ笑む。
そんなことは露ほども知らない圭太は、
保健室を出ると教室に向かうのであった。
その日の放課後、いつものように部活に行くと、
すでに他の部員たちは揃っていた。
そして例によって女装させられるまでは同じだが、
今日の圭太はちょっと違っていた。
(園山さんは・・・こんな異常な日々を送っている
僕を・・・好きになってくれるかな・・・)
などと考えながら机に頬杖を突くその姿は、
傍で見てると悩める少女そのものだった。
「どうしたの圭太君。今日はなんだか元気ないみたいだけど・・・」
隣に座っている葵が珍妙な顔をして話しかけてくる。
「葵さん・・・冬の空ってなんであんなに悲しいんでしょうか・・・」
「はぁ?!」流石の葵も若干驚いたような声をあげる。
「あー、いやなんでもありません・・・」
「本当に大丈夫なの?なんか心配事があるなら相談に乗るわよ?」
「ありがとうございます。でも、
これは自分で解決しないと意味がないんです・・・」
(どこの乙女よ、あなたは・・・)葵が心の中でツッコむ。
とはいえど、確かに今の圭太の身体は普通の状態ではない。
(いっつも部室で女装させらてる男子なんか僕だけだろうしなぁ・・・)
改めて自分の置かれている状況が(主に沙由美のせいで)
異常だということを思い知らされる。
「神さま・・・僕はどこまで汚されてしまった少年なんでしょうか・・・」
うなだれながら独り言をつぶやく。
「ちょ、ちょっと圭太君?!何言ってるか全然わからないんだけど・・・」
圭太の言動を怪しみつつも、あまり深く突っ込むのは危険だと
本能的に察知した葵は それ以上追及しないことにした。
そんなやりとりをしていると、沙由美が入ってきた。
「先生、圭太君がさっきからおかしいんですが」と
葵が沙由美に近づいて耳打ちする。
「あちゃー、乙女モード入っちゃったか・・・」
と沙由美が苦笑いしながら頭を掻いている。
(やっぱり女装なんかしてるとバレたら変態扱いなんだろうなぁ・・・)
圭太は相変わらず脳内でポエムを生成していた。
***
数日後、部室。
「ええ!じゃあ圭太様、まだその子とは口すら聞いたことないんですかぁ!?」
と真由里が驚いた声をあげる。
「クラスも離れているから、合同授業もないし、
今まで話す機会がなかったようね。」
沙由美が困ったように返す。
「恋に悩む圭太様は見てていてとても尊いですが、
ちょっと痛々しさもありますからねぇ。」
「朝礼の時とかにもろに意識して、向こうをちろちろ眺めてるさまは、
痛々しいってもんじゃないわよ。ここまで恋愛に奥手だったのは意外だったわ・・・」
「それじゃあ、今度私がそれとなく接触の機会を作ってみましょうか?」
真由里が提案するが、
「真由里ちゃんはダメよ。余計なことしたら逆にこじれそうだもの。」
沙由美がやんわり却下する。
「それにしても、圭太様、普段女性とは普通に話せてるのに・・・」
真由里が不思議そうにしている。
確かに、普段の圭太であれば女友達もいるし、
男同士で馬鹿話をしたりもできる。
だが、相手が惚れた女の子となると勝手が違った。
ましてや、自分から話しかけるなど論外である。
更に自分がしょっちゅう部の女生徒と女装Hふけっているという事も
引け目になっていた。圭太自身女装することを受け入れつつあったが、
やはり世の中的にはかなり奇異な存在に映るだろう。
「まぁそんな変態的なことがバレたら振られるどころか
一生軽蔑されるとは思ってるんでしょうね。」
「はぁ~、私、圭太様に幸せになってもらいたいんですけど・・・
圭太様の女装姿はきらきらしてるのに・・・」
「そこはもうちょっと見守りましょう。
こればっかりは私たちがどうこうできることでもないわ。」
(なるべく早く事実を伝えた方がいいのかもしれないけど・・・
これもある意味人生の勉強ってやつかもね)
沙由美はちょっとだけ渋い顔をした。
つづく
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