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第8話:夏合宿3日目(完結)
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(※注意)BL描写があります。苦手な方はご注意ください。
夜中の露天風呂で、圭太は自身の体毛処理を行っていた。
何しろ沙由美から「首から下の毛はすべて処理すること」を命じられているので、
毎日のこまめな手入れが必要だ。全身に泡だらけにして
腕・脚・脇・下半身とまんべんなく剃刀をあてていく。
あらかた剃り終わったところで、シャワーで泡を流し、
剃り残しのチェックをして湯船へと入る。
無毛の裸体を晒せないと、この処理作業を人前で行えないのが、
彼が人気のないこの時間帯にしか入浴できない理由である。
面倒だがやり忘れるとすぐにチクチクしてくる。
(ツルツルキープは案外大変だよね・・・)
・・・なんかもう悩みの内容まで女の子のようになってしまっていた。
しかしここで(「だったらいっそ永久脱毛しちゃえばいいのに」)
という沙由美の冗談か本気かわからない発言を思い出してしまい
慌てて頭をぶんぶん降って打ち消した。(まったく冗談じゃない!)
ふぅ、と一息ついて湯に浸かりなおすと、
少し離れたところに人の気配を感じた。
こんな時間に誰だろう?そう思って振り向くとそこにいたのは・・・
なんとこの旅館の娘のユキさんだった!
しかも彼女は全裸で、タオル一枚も巻いていないではないか!!
(え!?ちょっ、待てよ!なんでここにいるんだ!?)
突然のことで混乱する僕に対して、ユキさんは無邪気に話しかけてくる。
どうやらお風呂に入りに来たらしい。その格好で・・・
圭太はとりあえず岩風呂の端の岩陰に身を顰める。
「だれかいらっしゃるんですか?」
湯船に向かって呼びかけられたそれは、間違いなくユキさんの声だった・・・
(うわぁあああっ、なんてこった!よりにもよって
一番見られたくない人に見つかってしまった!)
今更隠れても遅いのだが、つい反射的に身を隠してしまう。
このままじっとしているわけにはいかないが、しかしどうやってごまかすべきか・・・
考えあぐねている。
ラッキースケベ的な展開としてはアリなのだが、今の圭太は普通の体ではない。
こんな状態でユキさんの目に止まれば、ただでは済まない気がする。
(ああ神様、どうか彼女だけは勘弁して下さい・・・)
必死に祈っていると、いつの間にかユキさんは隣にいた。
どうやらこちらに気づいていないようだ。
(よし、今のうちにこっそり抜け出そう・・・)
と、そっとい移動し始めたその瞬間・・・
「あれ、圭太さん、奇遇ですね」
声をかけられた。それも背後から。
恐る恐る振り返るとそこには、 ユキさんがいた。
そしてなぜか彼女は僕の方を見ている。
つまり僕たちはお互いの姿が丸見えの状態だ。
・・・ヤバい。完全にアウトだこれ。
圭太は慌てて後ろを向いて
「すいません、俺女湯と間違えたようで・・・
すぐ出ていくんでちょっと後ろ向いててください!」
とやけくそ気味に叫ぶ。しかし彼女はそれを無視して近寄ってくる。
僕は観念して彼女の方に向き直り、彼女に背を向けたまま話を続ける。
すると、背中越しに彼女が語りかけてきた。
「あの、ひょっとして勘違いをされているようですが、大丈夫です。
僕・・・男なんで」
・・・へ?何言ってんのこの子?
一瞬何を言われたのか分からず呆然としてしまう。
いやまあ確かに胸とか全然ないし女の子みたいだけどさ。
そんなこといきなり言われても信じられない。
僕が困惑していると、今度はユキさんの方から話しかけて来た。
「混乱させてごめんなさい。ぼく、こんな見た目なんで、
よく女の子と間違われるんです・・・」
「え?じゃあ本当に男の子なの?」
思わず聞き返してしまった。まさかの展開だ。
「はい。」
あまりに衝撃な内容に圭太の頭が追い付かない。
「で、でも沙由美先生は君のこと『ユキちゃん』って呼んで・・・」
「ああ、あれは僕の本名が「優紀」なんで縮めて
『ユキちゃん』と昔から言われてます。」
な、なんだそりゃあ・・・
沙由美のネーミングセンスは相変わらずぶっ飛んでいた。
もうわけがわからない。
(でもなぁ・・・この子にはちょっとだけ「きれい」とか「かわいい」とかいう
感情持ち合わせてたんだよな)
それに今まで見た中でもトップクラスに美少女なのは間違いなかった。
こんな子が実は男のはずがない。
・・・などと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
しかし現実は非情である。
彼はれっきとした男子生徒だったのである。
そしてここで彼の方からある発言が飛び出す。
「そうだ・・・圭太さん!先ほどは商店街で助けていただいて、
ありがとうございました。」
「!!!???」
圭太の頭の中は真っ白になった・・・
(バレてる・・・あれが女装した俺ってバレてるやん!)
「あの時の勇気ある行動も、あの時の姿も、なんというか・・
・とても素敵でした!」
一人で盛り上がるユキさん・・・改め優紀君をよそに、
圭太の心は絶望の海に沈んでいた・・・。
(嘘だ嘘だ嘘だ・・・)
あまりにたくさんの情報が頭に入ってきて脳がパンク寸前のところに、
絶望的な事実がストレートパンチで入ってくる・・・
更に長風呂による湯あたりと・・・いろんなものが積み重なり・・・
バシャン!
圭太は湯船に倒れこんだ。
「どうしたんですか圭太さん!しっかりしてください!」
圭太が朦朧とする意識の中で見た自分を助け起こす優紀君は・・・
完全に男だった・・・。
圭太が目を覚ますとそこは自室の布団の中だった。
けどまだ意識が朦朧としてる。
傍では優紀君が付き添ってうちわであおいでくれていた。
「あ、気が付きましたか!ただの湯あたりだそうですから、
しばらく横になってれば良くなるそうです。」
「うん・・・」意識はあるが頭が全然動いてない状態で返事をする。
「本当なら沙由美さんにお知らせしないといけないんですが、
なぜかどこにもいらっしゃらなくて・・・
仕方がないので代わりにぼくがここまで担いで付き添っていました。」
(ああ、なんかすごい迷惑かけたんだろうな。申し訳なさすぎる。)
まだ思考がはっきりしない。
「ありがとう・・・」とりあえずお礼を言う。
すると優紀君はにっこりとほほ笑みかけてくる。うーん、可愛い。
その笑顔を見て、圭太はふと自分の体を見る。
どうやら浴衣を着せられているようだ。
しかしなぜかパンツだけは穿いていない。
さすがにそこまで着せる余裕はなかったらしい。
(もしかしてこれ着せてくれたのが優紀君かな・・・だとしら・・・)
少し妄想してみる。
すると顔がどんどん熱くなってきた。
(確実に見られたことになるよな・・・今の身体を!)
今更ながらとんでもない失態を犯してしまったと自覚する。
恥ずかしさのあまり枕に顔を押し付けた。
(あかん、このままじゃあもう生きていけない・・・)
「大丈夫ですか?気分が悪いんですか?」
心配そうな声が聞こえてきた。僕は慌てて否定する。
「いや、体調は悪くないから安心してくれ。それより、
この浴衣とか着せてくれてありがとな。」
「いえ、それくらいのことなんてことないですよ。でも・・・圭太さんの身体、
ぼくとちがってちょっとすべすべしてて・・・
都会の人はやっぱりちゃんと手入れされてるんですね」
そんなことを言われると余計に恥ずかしくなった。
優紀君って意外と天然なのか?
「まあ、いろいろと事情があってデスネ・・・」
まさか女装のために剃ってますとは言えない・・・
「でもぼくにはちょっと羨ましいかも・・・」
「え?」
「だって・・・こんなに綺麗な肌をしているんですもん。」
優紀君の手が僕の頬に触れて来る。
ひんやりとした感覚が気持ちいい。
「な、何言ってんだよ。」「だって、夕方のあの姿もとてもキレイでしたし」
「!?」
「あの時の圭太さんは本当にかっこよかったです!
思わず見惚れちゃいました。それに・・・
あんな風に人を助けることってなかなかできることじゃないと思います。」
「そ、そうかなぁ・・・」なんだか照れてしまう。
そんな圭太を見つめていた優紀君は・・・
おもむろに唇へキスをしてきた・・・
カチ・・・
慣れてないらしく、お互いの歯が当たる
「!?」圭太は突然の出来事に驚いて
目を大きく開いたまま固まっていた。
「ごめんなさい、つい・・・」優紀君の顔は真っ赤になっている。
「いや、あの・・・なんでいきなり?」
普段なら男からのキスなんて激怒してもいいところなのになぜか怒れない。
「圭太さんっていつも優しくしてくれるし、
頼りになる先輩だし、一緒にいると楽しいし、
そして今はすごくかわいいなって思っちゃったんで、
気が付いたら体が動いちゃいました!」
そう言いながらも優紀君は圭太をぎゅっと抱きしめている。
「さっき抱えていた時も思ってたんですが・・・
ほら、抱き心地もこんなにいい・・・」
今度は背中を撫でてくる。
ゾクッという快感が背筋を駆け抜ける。
しかしそれは不快ではなくむしろ快感に近いものだった。
(あれ、おかしいぞ。男同士だろ?しかもお互いまだ高校生だぞ?)
頭の中では理解しているものの、身体は正直になり始めていた・・・
(おい、まて!大きくなるな!)
圭太は自分の体の変化を感じ焦り始めた。
(これ以上はまずい。なんとかしないと・・・)
そう思いつつも、体は言う事を聞いてくれない。
それどころか、無意識のうちに優紀君を抱き返していた。
(ダメだ・・・、理性が飛びそうだ・・・)
圭太がそんな葛藤を続けている中、
「ねえ、圭太さん・・・ぼく、あなたに会えて良かったです・・・」
優紀君は圭太の首元に顔を埋めながら囁いた。
(ああ、僕もだよ・・・)心の中で呟きつつ、
「あのさ・・・」
「はい?」
「僕のこと好きなの・・・?」
「えっ?あ、その・・・」
優紀君が少し困っているようだった。そりゃそうだろう。
相手が同性で・・・しかもキスの仕方すらよく知らない
羨ましいほどに純朴な子だ。だから僕はハッキリと言うことにした。
彼のためでもあるのだから・・・ 意を決して口を開く。
しかし、そこから出た言葉は・・・
自分の口から出てきたとは思えないほどの甘えた声色だった。
「僕は・・・君がとてもかわいいと思った。」
自分じゃ無いみたいだ・・・ 優紀君の顔がどんどん赤くなっていく。
僕はゆっくりと顔を近づけると、そのまま優紀君の口に軽くキスをした。
ほんの数秒だったが、それが長い時間のように感じた。
名残惜しかったが、圭太は唇を離す。
優紀君は目を丸くして驚いた表情をしていた。
そして圭太自身も気が付いていないが、
自分の一人称がある種の興奮状態の時に出る
「僕」に変化していた。
優紀君は何も言わず、しばらく呆然としていたが
やがて我に返り、慌てて起き上がった。
どうやら混乱しているようだ。
無理もない、優等生で真面目な彼にとって、
同性愛というのは想像もしなかったことだろうから。
「だけどわかっています・・・圭太さんが沙由美さんのものだってのは・・・」
「知ってたんだ・・・」
「でも、ぼくは圭太さんのことを諦められない・・・」
「・・・」
「だから、せめて・・・今日だけは、この瞬間だけでもいいんです・・・
あなたのことを独り占めしたいです。」
「優紀君・・・」
「お願いします、今だけ僕のものになってください!」
「わかったよ、今夜だけだからね・・・」
「ありがとうございます・・・」
そう言って優紀君は再び僕に覆いかぶさってきた。
「あっ・・・」
優紀君は圭太の下半身へと手を伸ばした。
既にそこははち切れんばかりに大きくなっていた。
恥ずかしいのか、圭太は両手で顔を隠している。
そんな圭太を見て、優紀君はさらに興奮した様子だった。
ズボンを脱がすと下着越しにそれを手で包み込むようにして触る。
その刺激だけで達してしまいそうになる。
「圭太さんのここ、大きくなってます・・・嬉しい・・・」
優紀君は圭太のパンツに手をかけると、一気に脱がした。
露わになった圭太のモノをまじまじと見つめている。
(知られているとはいえ、ツルツルなのを見つめられるのは
やっぱり恥ずかしいな・・・)
圭太のそんな考えをよそにおもむろにそれを口に含んだ。
温かくて柔らかい感触が伝わってくる。
(うぅっ、気持ち良すぎる!先生たちとはまた違った気持ちよさ・・・)
生まれて初めての男の子からのフェラチオに戸惑いつつも
快感には抗えない。
「…痛!」ふいに痛みが襲う。
「・・・痛かったですか?すいません歯が当たったみたいで」
「だ、大丈夫」(やっぱり慣れてないんだな・・・)
そしてその感覚に酔いしれているうちにいつの間にか絶頂を迎えていた。
「優紀君、もう・・・」
「あ、はい・・・いっぱい出ましたね・・・」
優紀君は口の中に出されたものをティッシュに吐き出している。
圭太はその光景にドキドキしながらも罪悪感を覚えていた。
(なんか僕が優紀君を汚したみたいだ・・・)
「次は・・・僕の番ですね?」
「えっ?」
優紀君が僕を押し倒すような形になる。
そして僕のアレを握ってきた。
「あ、ちょっと待って優紀君・・・本当にいいの?」
「圭太さん・・・」
「・・・」
「僕、初めてなので下手かもしれないけど、優しくしてくれますよね?」
「うん・・・」
そうして僕らはお互いを求め合った。
優紀君の中はとても狭く、僕のモノが入るかどうか不安だった。
しかし、僕の先走りのおかげもあってなんとか入ることが出来た。
挿入と同時に優紀君の顔が苦痛に歪む。
僕は優紀君が落ち着くまで、彼の頭を撫でながら待っていた。
やがて少し余裕が出てきたのか笑顔を見せてくれた。
そしてゆっくり腰を動かし始める。
最初は苦しそうだったが次第に声色も変わり、艶っぽい吐息を漏らし始めた。
僕は我慢できなくなり激しく動く。
「あ・・・ああん・・はぁはぁ・・・」
優紀君の喘ぎ声も大きくなっていった。
「優紀君の中・・・とっても温かい・・・そして気持ちいい・・・」
そしてついにその時が来た。
「出すよ!」
二人は同時に果てた。
その後、僕達は裸のまま抱き合って眠った。
ーーーーーーーーーーー
翌日ー
「そりゃあ、旅の恥はかき捨てっていいますけどぉー、
本当に一晩過ごしちゃうなんてねぇ、
可愛い顔して大したもんねぇ君も。」
朝っぱらかららしくない嫌味なセリフを言う沙由美がいた。
「・・・今までさんざん俺にそれ以上ひどいことをしてきた
先生がそれを言いますか?!」
「んで、初めての男の子との関係はどうでした~?」
「いい加減にしないと怒りますよ!てかここ食堂なんで
そういう発言は慎んでください!」
「はいは~い♪」怒る圭太に対して沙由美はのらりくらりとしている。
「大体昨夜はどこにいたんですか?」「教えませ~ん!」
「・・・どうせ部屋のどこかに隠れて俺たちの様子をうかがってたんでしょ?」
「う・・・でも私君の部屋の鍵持ってないし・・・」ちょっととぼける沙由美。
「とぼけても無駄ですよ!チェックインの時に
「生徒にもしものことがあったときために」とか言って
俺の部屋の鍵2本もらってましたよね?」
「・・・・優紀君が君を担いでる姿があんまり必死なんでつい・・・
気になって、ね」
「全く・・・」呆れるようにつぶやく圭太。
「まぁお陰でいいもん見れたらいいけど」
そう言うと沙由美はニヤリと笑みを浮かべる。
その表情に背筋が凍るような思いをしながら圭太は
この合宿中に何度思ったかわからない言葉をまた口にしたのだった。
(この人には絶対に勝てない)
朝食を食べ終えると荷物をまとめてチェックアウトなのだが・・・
圭太はまたまた女装されられていた。
しかも今回は下着の着用を禁止され、身にまとっているのは
昨日のサマーワンピースだけという非常に心細い状態であった。
「もう勘弁してくださいよ!こんな格好じゃ
風でも吹いたら色々おしまいじゃないですか!!僕が!」
ここにきての理不尽な仕打ちに抗議するも・・・
「勝手に浮気した罰」と、にべもない。
「今まで似たようなことがあっても何もなかったのに・・・」
「あの子たちは私が許可出したからいいの」
「・・・最低だもう!」
そんなやり取りをしていると優紀君がやってきた。
相変わらずのシャツとGパンだが
いつもの穏やかでしなやかな雰囲気は変わらない。
その様子はやはり女の子そのものにしか見えなかった。
「帰られるんですね・・・」
「うん、だからもう敬語はやめよう。」
「・・・わかりまし・・・わかった、圭太君。
これでいい・・・かな?」
「うんそれでいいよ、ありがとう。優紀君」
「ふふっ」
「あっそうだ、連絡先交換しようよ!後で必ず連絡するよ。」
「うん、友達として待ってるよ」
「大丈夫!男と男の約束だ。」
・・・今の自分の格好とは一番縁遠い言葉を交わして
圭太たちは旅館を後にした。
帰りの電車の中ー
「あのー…いつまで僕はこの格好を・・・」
「帰るまで。」
現実(というか沙由美)は非常である。
「うう・・・さっきから股がスースーして落ち着かない・・・」
そう言いながら内股をこすり合わせる仕草をする圭太。
その姿を見た沙由美は 突然何かをひらめいたような顔をすると、
おもむろにバッグの中から スマホを取り出した。
そしてカメラアプリを立ち上げて構えると シャッターを押した。
カシャッ!!
「ちょ!こんなところ撮らないでください!」
「うーん、なかなかいい絵になったんだけどなぁ・・・」
(きっとこの人のスマホには僕が直視したらショック死するような
恥ずかしい映像・画像が山ほど詰まっているんだろうなぁ・・・)
「あ、それと今撮った写真送るから、待ち受けにしてもいい?」
「ダメです!絶対!」
「え~いいじゃん、減るもんじゃないし。」
「僕のメンタル的なものが減っていきます!!」
「ケチ~!」
「あ、そういえば」
圭太は聞きたかったんですがと前置きして
「知ってて教えなかったんですよね?優紀君のこと。」
「だって紹介するのにいちいち性別なんか公表しないでしょ」
「そりゃそうかもしれませんけど・・・」
「ま、まさか君も男の子の方が良かった?」
「いやそういうわけでは!」
「まぁ・・・君がどうしてもって言うなら・・・」
「いいですよ!別に!!」
「むぅ~っ」
「でもさすがの沙由美先生でも、親戚の子の優紀君には
いくら可愛くても手出ししなかったんですね。」
「さすがのは余計よ!まぁあの子は繊細ちゃんタイプだからね。
下手にいじったら壊れちゃうわ」
「まぁ確かに・・・ってそれじゃまるで僕が何しても壊れない
頑丈なオモチャみたいな物言いですよそれ!」
「ふふん♪その通りじゃない」
「くっ・・・否定できないのが悔しいっ・・・
まぁでも可愛い子に女装させて悦に浸る
変態さんよりはマシだと思うけど」
「ぐぬぬっ・・・言うようになったわね。で
も頑丈ってのは評価してるのよ。
あなたぐらいメンタル強い子なかなかいないもん。」
「褒められてるのか貶されてるのかわからないですね・・・」
「あら、もちろん褒めてるのよ。私のお気に入りの玩具なんだから」
「やっぱりそうなんですね!もうちょっと優しくしてくれて
も罰は当たらないと思うんだけどな・・・」
などと話しているうちに二人は駅に到着した。
「さあ、あとは家に帰るだけね。」
「すいません・・・さすがにこれで自宅まで戻れというのは
いくら何でも非道が過ぎます・・・
家族にこの姿を見られたら、いくら僕でも生きていけません・・・」
圭太がなんだか妙にへりくだった言い回しになっているので、
沙由美が圭太の方を見るとちょっと涙目になっている。
すでに解散の空気が漂ってきているので、
不安になってきたらしい。
「・・・わかったわよ。学校にもよるからそこで着替えなさい。」
「はい・・・」
今回の旅行でなんだか圭太の本気の涙に弱くなってきている
沙由美と学校にたどり着くまで知り合いに会いませんようにと
祈る圭太だった。
PS:後日優紀君から来た連絡によると、
商店街での女装姿の圭太のことが
「置換から女の子を守った謎の美少女」として
商店街で噂になっているとかいないとか。
おしまい。
夜中の露天風呂で、圭太は自身の体毛処理を行っていた。
何しろ沙由美から「首から下の毛はすべて処理すること」を命じられているので、
毎日のこまめな手入れが必要だ。全身に泡だらけにして
腕・脚・脇・下半身とまんべんなく剃刀をあてていく。
あらかた剃り終わったところで、シャワーで泡を流し、
剃り残しのチェックをして湯船へと入る。
無毛の裸体を晒せないと、この処理作業を人前で行えないのが、
彼が人気のないこの時間帯にしか入浴できない理由である。
面倒だがやり忘れるとすぐにチクチクしてくる。
(ツルツルキープは案外大変だよね・・・)
・・・なんかもう悩みの内容まで女の子のようになってしまっていた。
しかしここで(「だったらいっそ永久脱毛しちゃえばいいのに」)
という沙由美の冗談か本気かわからない発言を思い出してしまい
慌てて頭をぶんぶん降って打ち消した。(まったく冗談じゃない!)
ふぅ、と一息ついて湯に浸かりなおすと、
少し離れたところに人の気配を感じた。
こんな時間に誰だろう?そう思って振り向くとそこにいたのは・・・
なんとこの旅館の娘のユキさんだった!
しかも彼女は全裸で、タオル一枚も巻いていないではないか!!
(え!?ちょっ、待てよ!なんでここにいるんだ!?)
突然のことで混乱する僕に対して、ユキさんは無邪気に話しかけてくる。
どうやらお風呂に入りに来たらしい。その格好で・・・
圭太はとりあえず岩風呂の端の岩陰に身を顰める。
「だれかいらっしゃるんですか?」
湯船に向かって呼びかけられたそれは、間違いなくユキさんの声だった・・・
(うわぁあああっ、なんてこった!よりにもよって
一番見られたくない人に見つかってしまった!)
今更隠れても遅いのだが、つい反射的に身を隠してしまう。
このままじっとしているわけにはいかないが、しかしどうやってごまかすべきか・・・
考えあぐねている。
ラッキースケベ的な展開としてはアリなのだが、今の圭太は普通の体ではない。
こんな状態でユキさんの目に止まれば、ただでは済まない気がする。
(ああ神様、どうか彼女だけは勘弁して下さい・・・)
必死に祈っていると、いつの間にかユキさんは隣にいた。
どうやらこちらに気づいていないようだ。
(よし、今のうちにこっそり抜け出そう・・・)
と、そっとい移動し始めたその瞬間・・・
「あれ、圭太さん、奇遇ですね」
声をかけられた。それも背後から。
恐る恐る振り返るとそこには、 ユキさんがいた。
そしてなぜか彼女は僕の方を見ている。
つまり僕たちはお互いの姿が丸見えの状態だ。
・・・ヤバい。完全にアウトだこれ。
圭太は慌てて後ろを向いて
「すいません、俺女湯と間違えたようで・・・
すぐ出ていくんでちょっと後ろ向いててください!」
とやけくそ気味に叫ぶ。しかし彼女はそれを無視して近寄ってくる。
僕は観念して彼女の方に向き直り、彼女に背を向けたまま話を続ける。
すると、背中越しに彼女が語りかけてきた。
「あの、ひょっとして勘違いをされているようですが、大丈夫です。
僕・・・男なんで」
・・・へ?何言ってんのこの子?
一瞬何を言われたのか分からず呆然としてしまう。
いやまあ確かに胸とか全然ないし女の子みたいだけどさ。
そんなこといきなり言われても信じられない。
僕が困惑していると、今度はユキさんの方から話しかけて来た。
「混乱させてごめんなさい。ぼく、こんな見た目なんで、
よく女の子と間違われるんです・・・」
「え?じゃあ本当に男の子なの?」
思わず聞き返してしまった。まさかの展開だ。
「はい。」
あまりに衝撃な内容に圭太の頭が追い付かない。
「で、でも沙由美先生は君のこと『ユキちゃん』って呼んで・・・」
「ああ、あれは僕の本名が「優紀」なんで縮めて
『ユキちゃん』と昔から言われてます。」
な、なんだそりゃあ・・・
沙由美のネーミングセンスは相変わらずぶっ飛んでいた。
もうわけがわからない。
(でもなぁ・・・この子にはちょっとだけ「きれい」とか「かわいい」とかいう
感情持ち合わせてたんだよな)
それに今まで見た中でもトップクラスに美少女なのは間違いなかった。
こんな子が実は男のはずがない。
・・・などと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
しかし現実は非情である。
彼はれっきとした男子生徒だったのである。
そしてここで彼の方からある発言が飛び出す。
「そうだ・・・圭太さん!先ほどは商店街で助けていただいて、
ありがとうございました。」
「!!!???」
圭太の頭の中は真っ白になった・・・
(バレてる・・・あれが女装した俺ってバレてるやん!)
「あの時の勇気ある行動も、あの時の姿も、なんというか・・
・とても素敵でした!」
一人で盛り上がるユキさん・・・改め優紀君をよそに、
圭太の心は絶望の海に沈んでいた・・・。
(嘘だ嘘だ嘘だ・・・)
あまりにたくさんの情報が頭に入ってきて脳がパンク寸前のところに、
絶望的な事実がストレートパンチで入ってくる・・・
更に長風呂による湯あたりと・・・いろんなものが積み重なり・・・
バシャン!
圭太は湯船に倒れこんだ。
「どうしたんですか圭太さん!しっかりしてください!」
圭太が朦朧とする意識の中で見た自分を助け起こす優紀君は・・・
完全に男だった・・・。
圭太が目を覚ますとそこは自室の布団の中だった。
けどまだ意識が朦朧としてる。
傍では優紀君が付き添ってうちわであおいでくれていた。
「あ、気が付きましたか!ただの湯あたりだそうですから、
しばらく横になってれば良くなるそうです。」
「うん・・・」意識はあるが頭が全然動いてない状態で返事をする。
「本当なら沙由美さんにお知らせしないといけないんですが、
なぜかどこにもいらっしゃらなくて・・・
仕方がないので代わりにぼくがここまで担いで付き添っていました。」
(ああ、なんかすごい迷惑かけたんだろうな。申し訳なさすぎる。)
まだ思考がはっきりしない。
「ありがとう・・・」とりあえずお礼を言う。
すると優紀君はにっこりとほほ笑みかけてくる。うーん、可愛い。
その笑顔を見て、圭太はふと自分の体を見る。
どうやら浴衣を着せられているようだ。
しかしなぜかパンツだけは穿いていない。
さすがにそこまで着せる余裕はなかったらしい。
(もしかしてこれ着せてくれたのが優紀君かな・・・だとしら・・・)
少し妄想してみる。
すると顔がどんどん熱くなってきた。
(確実に見られたことになるよな・・・今の身体を!)
今更ながらとんでもない失態を犯してしまったと自覚する。
恥ずかしさのあまり枕に顔を押し付けた。
(あかん、このままじゃあもう生きていけない・・・)
「大丈夫ですか?気分が悪いんですか?」
心配そうな声が聞こえてきた。僕は慌てて否定する。
「いや、体調は悪くないから安心してくれ。それより、
この浴衣とか着せてくれてありがとな。」
「いえ、それくらいのことなんてことないですよ。でも・・・圭太さんの身体、
ぼくとちがってちょっとすべすべしてて・・・
都会の人はやっぱりちゃんと手入れされてるんですね」
そんなことを言われると余計に恥ずかしくなった。
優紀君って意外と天然なのか?
「まあ、いろいろと事情があってデスネ・・・」
まさか女装のために剃ってますとは言えない・・・
「でもぼくにはちょっと羨ましいかも・・・」
「え?」
「だって・・・こんなに綺麗な肌をしているんですもん。」
優紀君の手が僕の頬に触れて来る。
ひんやりとした感覚が気持ちいい。
「な、何言ってんだよ。」「だって、夕方のあの姿もとてもキレイでしたし」
「!?」
「あの時の圭太さんは本当にかっこよかったです!
思わず見惚れちゃいました。それに・・・
あんな風に人を助けることってなかなかできることじゃないと思います。」
「そ、そうかなぁ・・・」なんだか照れてしまう。
そんな圭太を見つめていた優紀君は・・・
おもむろに唇へキスをしてきた・・・
カチ・・・
慣れてないらしく、お互いの歯が当たる
「!?」圭太は突然の出来事に驚いて
目を大きく開いたまま固まっていた。
「ごめんなさい、つい・・・」優紀君の顔は真っ赤になっている。
「いや、あの・・・なんでいきなり?」
普段なら男からのキスなんて激怒してもいいところなのになぜか怒れない。
「圭太さんっていつも優しくしてくれるし、
頼りになる先輩だし、一緒にいると楽しいし、
そして今はすごくかわいいなって思っちゃったんで、
気が付いたら体が動いちゃいました!」
そう言いながらも優紀君は圭太をぎゅっと抱きしめている。
「さっき抱えていた時も思ってたんですが・・・
ほら、抱き心地もこんなにいい・・・」
今度は背中を撫でてくる。
ゾクッという快感が背筋を駆け抜ける。
しかしそれは不快ではなくむしろ快感に近いものだった。
(あれ、おかしいぞ。男同士だろ?しかもお互いまだ高校生だぞ?)
頭の中では理解しているものの、身体は正直になり始めていた・・・
(おい、まて!大きくなるな!)
圭太は自分の体の変化を感じ焦り始めた。
(これ以上はまずい。なんとかしないと・・・)
そう思いつつも、体は言う事を聞いてくれない。
それどころか、無意識のうちに優紀君を抱き返していた。
(ダメだ・・・、理性が飛びそうだ・・・)
圭太がそんな葛藤を続けている中、
「ねえ、圭太さん・・・ぼく、あなたに会えて良かったです・・・」
優紀君は圭太の首元に顔を埋めながら囁いた。
(ああ、僕もだよ・・・)心の中で呟きつつ、
「あのさ・・・」
「はい?」
「僕のこと好きなの・・・?」
「えっ?あ、その・・・」
優紀君が少し困っているようだった。そりゃそうだろう。
相手が同性で・・・しかもキスの仕方すらよく知らない
羨ましいほどに純朴な子だ。だから僕はハッキリと言うことにした。
彼のためでもあるのだから・・・ 意を決して口を開く。
しかし、そこから出た言葉は・・・
自分の口から出てきたとは思えないほどの甘えた声色だった。
「僕は・・・君がとてもかわいいと思った。」
自分じゃ無いみたいだ・・・ 優紀君の顔がどんどん赤くなっていく。
僕はゆっくりと顔を近づけると、そのまま優紀君の口に軽くキスをした。
ほんの数秒だったが、それが長い時間のように感じた。
名残惜しかったが、圭太は唇を離す。
優紀君は目を丸くして驚いた表情をしていた。
そして圭太自身も気が付いていないが、
自分の一人称がある種の興奮状態の時に出る
「僕」に変化していた。
優紀君は何も言わず、しばらく呆然としていたが
やがて我に返り、慌てて起き上がった。
どうやら混乱しているようだ。
無理もない、優等生で真面目な彼にとって、
同性愛というのは想像もしなかったことだろうから。
「だけどわかっています・・・圭太さんが沙由美さんのものだってのは・・・」
「知ってたんだ・・・」
「でも、ぼくは圭太さんのことを諦められない・・・」
「・・・」
「だから、せめて・・・今日だけは、この瞬間だけでもいいんです・・・
あなたのことを独り占めしたいです。」
「優紀君・・・」
「お願いします、今だけ僕のものになってください!」
「わかったよ、今夜だけだからね・・・」
「ありがとうございます・・・」
そう言って優紀君は再び僕に覆いかぶさってきた。
「あっ・・・」
優紀君は圭太の下半身へと手を伸ばした。
既にそこははち切れんばかりに大きくなっていた。
恥ずかしいのか、圭太は両手で顔を隠している。
そんな圭太を見て、優紀君はさらに興奮した様子だった。
ズボンを脱がすと下着越しにそれを手で包み込むようにして触る。
その刺激だけで達してしまいそうになる。
「圭太さんのここ、大きくなってます・・・嬉しい・・・」
優紀君は圭太のパンツに手をかけると、一気に脱がした。
露わになった圭太のモノをまじまじと見つめている。
(知られているとはいえ、ツルツルなのを見つめられるのは
やっぱり恥ずかしいな・・・)
圭太のそんな考えをよそにおもむろにそれを口に含んだ。
温かくて柔らかい感触が伝わってくる。
(うぅっ、気持ち良すぎる!先生たちとはまた違った気持ちよさ・・・)
生まれて初めての男の子からのフェラチオに戸惑いつつも
快感には抗えない。
「…痛!」ふいに痛みが襲う。
「・・・痛かったですか?すいません歯が当たったみたいで」
「だ、大丈夫」(やっぱり慣れてないんだな・・・)
そしてその感覚に酔いしれているうちにいつの間にか絶頂を迎えていた。
「優紀君、もう・・・」
「あ、はい・・・いっぱい出ましたね・・・」
優紀君は口の中に出されたものをティッシュに吐き出している。
圭太はその光景にドキドキしながらも罪悪感を覚えていた。
(なんか僕が優紀君を汚したみたいだ・・・)
「次は・・・僕の番ですね?」
「えっ?」
優紀君が僕を押し倒すような形になる。
そして僕のアレを握ってきた。
「あ、ちょっと待って優紀君・・・本当にいいの?」
「圭太さん・・・」
「・・・」
「僕、初めてなので下手かもしれないけど、優しくしてくれますよね?」
「うん・・・」
そうして僕らはお互いを求め合った。
優紀君の中はとても狭く、僕のモノが入るかどうか不安だった。
しかし、僕の先走りのおかげもあってなんとか入ることが出来た。
挿入と同時に優紀君の顔が苦痛に歪む。
僕は優紀君が落ち着くまで、彼の頭を撫でながら待っていた。
やがて少し余裕が出てきたのか笑顔を見せてくれた。
そしてゆっくり腰を動かし始める。
最初は苦しそうだったが次第に声色も変わり、艶っぽい吐息を漏らし始めた。
僕は我慢できなくなり激しく動く。
「あ・・・ああん・・はぁはぁ・・・」
優紀君の喘ぎ声も大きくなっていった。
「優紀君の中・・・とっても温かい・・・そして気持ちいい・・・」
そしてついにその時が来た。
「出すよ!」
二人は同時に果てた。
その後、僕達は裸のまま抱き合って眠った。
ーーーーーーーーーーー
翌日ー
「そりゃあ、旅の恥はかき捨てっていいますけどぉー、
本当に一晩過ごしちゃうなんてねぇ、
可愛い顔して大したもんねぇ君も。」
朝っぱらかららしくない嫌味なセリフを言う沙由美がいた。
「・・・今までさんざん俺にそれ以上ひどいことをしてきた
先生がそれを言いますか?!」
「んで、初めての男の子との関係はどうでした~?」
「いい加減にしないと怒りますよ!てかここ食堂なんで
そういう発言は慎んでください!」
「はいは~い♪」怒る圭太に対して沙由美はのらりくらりとしている。
「大体昨夜はどこにいたんですか?」「教えませ~ん!」
「・・・どうせ部屋のどこかに隠れて俺たちの様子をうかがってたんでしょ?」
「う・・・でも私君の部屋の鍵持ってないし・・・」ちょっととぼける沙由美。
「とぼけても無駄ですよ!チェックインの時に
「生徒にもしものことがあったときために」とか言って
俺の部屋の鍵2本もらってましたよね?」
「・・・・優紀君が君を担いでる姿があんまり必死なんでつい・・・
気になって、ね」
「全く・・・」呆れるようにつぶやく圭太。
「まぁお陰でいいもん見れたらいいけど」
そう言うと沙由美はニヤリと笑みを浮かべる。
その表情に背筋が凍るような思いをしながら圭太は
この合宿中に何度思ったかわからない言葉をまた口にしたのだった。
(この人には絶対に勝てない)
朝食を食べ終えると荷物をまとめてチェックアウトなのだが・・・
圭太はまたまた女装されられていた。
しかも今回は下着の着用を禁止され、身にまとっているのは
昨日のサマーワンピースだけという非常に心細い状態であった。
「もう勘弁してくださいよ!こんな格好じゃ
風でも吹いたら色々おしまいじゃないですか!!僕が!」
ここにきての理不尽な仕打ちに抗議するも・・・
「勝手に浮気した罰」と、にべもない。
「今まで似たようなことがあっても何もなかったのに・・・」
「あの子たちは私が許可出したからいいの」
「・・・最低だもう!」
そんなやり取りをしていると優紀君がやってきた。
相変わらずのシャツとGパンだが
いつもの穏やかでしなやかな雰囲気は変わらない。
その様子はやはり女の子そのものにしか見えなかった。
「帰られるんですね・・・」
「うん、だからもう敬語はやめよう。」
「・・・わかりまし・・・わかった、圭太君。
これでいい・・・かな?」
「うんそれでいいよ、ありがとう。優紀君」
「ふふっ」
「あっそうだ、連絡先交換しようよ!後で必ず連絡するよ。」
「うん、友達として待ってるよ」
「大丈夫!男と男の約束だ。」
・・・今の自分の格好とは一番縁遠い言葉を交わして
圭太たちは旅館を後にした。
帰りの電車の中ー
「あのー…いつまで僕はこの格好を・・・」
「帰るまで。」
現実(というか沙由美)は非常である。
「うう・・・さっきから股がスースーして落ち着かない・・・」
そう言いながら内股をこすり合わせる仕草をする圭太。
その姿を見た沙由美は 突然何かをひらめいたような顔をすると、
おもむろにバッグの中から スマホを取り出した。
そしてカメラアプリを立ち上げて構えると シャッターを押した。
カシャッ!!
「ちょ!こんなところ撮らないでください!」
「うーん、なかなかいい絵になったんだけどなぁ・・・」
(きっとこの人のスマホには僕が直視したらショック死するような
恥ずかしい映像・画像が山ほど詰まっているんだろうなぁ・・・)
「あ、それと今撮った写真送るから、待ち受けにしてもいい?」
「ダメです!絶対!」
「え~いいじゃん、減るもんじゃないし。」
「僕のメンタル的なものが減っていきます!!」
「ケチ~!」
「あ、そういえば」
圭太は聞きたかったんですがと前置きして
「知ってて教えなかったんですよね?優紀君のこと。」
「だって紹介するのにいちいち性別なんか公表しないでしょ」
「そりゃそうかもしれませんけど・・・」
「ま、まさか君も男の子の方が良かった?」
「いやそういうわけでは!」
「まぁ・・・君がどうしてもって言うなら・・・」
「いいですよ!別に!!」
「むぅ~っ」
「でもさすがの沙由美先生でも、親戚の子の優紀君には
いくら可愛くても手出ししなかったんですね。」
「さすがのは余計よ!まぁあの子は繊細ちゃんタイプだからね。
下手にいじったら壊れちゃうわ」
「まぁ確かに・・・ってそれじゃまるで僕が何しても壊れない
頑丈なオモチャみたいな物言いですよそれ!」
「ふふん♪その通りじゃない」
「くっ・・・否定できないのが悔しいっ・・・
まぁでも可愛い子に女装させて悦に浸る
変態さんよりはマシだと思うけど」
「ぐぬぬっ・・・言うようになったわね。で
も頑丈ってのは評価してるのよ。
あなたぐらいメンタル強い子なかなかいないもん。」
「褒められてるのか貶されてるのかわからないですね・・・」
「あら、もちろん褒めてるのよ。私のお気に入りの玩具なんだから」
「やっぱりそうなんですね!もうちょっと優しくしてくれて
も罰は当たらないと思うんだけどな・・・」
などと話しているうちに二人は駅に到着した。
「さあ、あとは家に帰るだけね。」
「すいません・・・さすがにこれで自宅まで戻れというのは
いくら何でも非道が過ぎます・・・
家族にこの姿を見られたら、いくら僕でも生きていけません・・・」
圭太がなんだか妙にへりくだった言い回しになっているので、
沙由美が圭太の方を見るとちょっと涙目になっている。
すでに解散の空気が漂ってきているので、
不安になってきたらしい。
「・・・わかったわよ。学校にもよるからそこで着替えなさい。」
「はい・・・」
今回の旅行でなんだか圭太の本気の涙に弱くなってきている
沙由美と学校にたどり着くまで知り合いに会いませんようにと
祈る圭太だった。
PS:後日優紀君から来た連絡によると、
商店街での女装姿の圭太のことが
「置換から女の子を守った謎の美少女」として
商店街で噂になっているとかいないとか。
おしまい。
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