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第42話 アニ、迷う
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僕とオリヴィアは現在、この町のちょっと良い宿屋にいる。
これまでの経緯をドレースさんに話し、どうにかして誤解を解いてもらうことができたのだ。
そして、今はオリヴィアの足の手当てをし終えて、ドレースさんと三人で話している。
「……それにしても驚きましたわ。まさかオリヴィアとアニ様が姉弟で、おまけにそんな過去があっただなんて……!」
「ドレース、あなただから話すんですよ。アニ様は未だ命を狙われているかもしれません……他の誰かに話したら怒りますからねっ!」
「ぶひぃぃ……もう怒ってますわ……おかしな誤解をしてしまってごめんなさいオリヴィア……」
「別に、怒ってませんよ! ドレースのことはとても信頼してますッ!」
オリヴィアは明らかに怒りながらそう言った。
「……僕の方も……色々と勘違いしてたみたい。ごめんねオリヴィア……」
「…………許します! アニ様はまだ子供なので! 勘違いしても問題ありません! というか、まだ早すぎるので知ってはいけません! 破廉恥です! 刺激が強すぎます!」
……相変わらず言ってることの意味は分からないけど、怒っていることだけははっきりと伝わってきた。
「ご、ごめんなさい……」
僕はもう一度だけオリヴィアに謝っておく。
「あまりに潔癖すぎるのも良くありませんわよ……オリヴィア。アニ様ももうお年頃。……そろそろ、そういった事を学んでも良い頃合いですわ」
「えっちなのはいけません!」
「ぶひぃ……あなたもまだまだ子供ですわね……」
「子供なのはアニ様ですっ! だからだめなんですっ! だめったらだめなんですっ!」
「オリヴィア……前途多難ですわね……」
ドレースさんは、困った顔をしながら肩をすくめた。
――えっちなことってなんだろう……? 少しだけ気になる……!
「……そ、それはそうとドレース。リーン様は元気でいらっしゃいますか?」
「ぶひっ?! ええと……その……ですわね…………」
「もしかして……何か問題でも……?」
オリヴィアの問いかけに対し、目を泳がせるドレースさん。
「お、オリヴィアがヴァレイユ家の使用人を辞めたのなら……話してもいいのかしら……? いや、でも万が一ということも……!」
「そう言われると気になります」
「ぶひぃぃ……」
ドレースさんは、すごく気まずそうに僕の方を見る。
――二人だけでしたい話でもあるのかな? 僕は席を外した方が良さそうだ。
「えっと……僕、魔物狩りに行ってきます!」
そう言って、僕は立ち上がる。
「ブヒッ!? 大胆ですわね……!」
「お花摘みのことです」
「……なるほど……勉強になりましたわ」
二人がそんなやり取りをしている間に、僕は部屋を抜け出すのだった。
*
「ふぅ…………」
事を終えた僕は、手を洗った後、廊下に出てオリヴィア達が居る部屋へ戻ろうとする。
「…………あれ?」
そして、あることに気づいてしまった。
「ど……どこだっけ……?」
二人が居る部屋の場所を忘れてしまったのだ。
「あ、あれー……?」
見回りをしているオークの人達に聞こうかとも思ったけど、みんな忙しそうで話しかけづらい。
おまけに、大きくてちょっと怖いし……。
「どうしよう…………」
どうすることも出来ず、ただひたすら廊下を往復する。同じところをぐるぐる周ったせいで余計に分からなくなってしまった。
「……一つずつ……確認するしかないかな……」
そしてとうとう、僕はそう決心し、一番近くにあった扉へ近づいた。
――もし間違っていても、謝って許してもらおう。
そう思いながら扉の取っ手を掴み、ゆっくりとひねる。
どうやら鍵は開いているようだ。
もしかしたら当たりかもしれない。
「失礼しまーす……」
そう言いながら中へ入ると、そこには明らかに戦闘態勢のメイベルと、その背後に隠れているエリー、ベッドの上に大の字で寝ているソフィアの姿があった。
「え……?」
これまでの経緯をドレースさんに話し、どうにかして誤解を解いてもらうことができたのだ。
そして、今はオリヴィアの足の手当てをし終えて、ドレースさんと三人で話している。
「……それにしても驚きましたわ。まさかオリヴィアとアニ様が姉弟で、おまけにそんな過去があっただなんて……!」
「ドレース、あなただから話すんですよ。アニ様は未だ命を狙われているかもしれません……他の誰かに話したら怒りますからねっ!」
「ぶひぃぃ……もう怒ってますわ……おかしな誤解をしてしまってごめんなさいオリヴィア……」
「別に、怒ってませんよ! ドレースのことはとても信頼してますッ!」
オリヴィアは明らかに怒りながらそう言った。
「……僕の方も……色々と勘違いしてたみたい。ごめんねオリヴィア……」
「…………許します! アニ様はまだ子供なので! 勘違いしても問題ありません! というか、まだ早すぎるので知ってはいけません! 破廉恥です! 刺激が強すぎます!」
……相変わらず言ってることの意味は分からないけど、怒っていることだけははっきりと伝わってきた。
「ご、ごめんなさい……」
僕はもう一度だけオリヴィアに謝っておく。
「あまりに潔癖すぎるのも良くありませんわよ……オリヴィア。アニ様ももうお年頃。……そろそろ、そういった事を学んでも良い頃合いですわ」
「えっちなのはいけません!」
「ぶひぃ……あなたもまだまだ子供ですわね……」
「子供なのはアニ様ですっ! だからだめなんですっ! だめったらだめなんですっ!」
「オリヴィア……前途多難ですわね……」
ドレースさんは、困った顔をしながら肩をすくめた。
――えっちなことってなんだろう……? 少しだけ気になる……!
「……そ、それはそうとドレース。リーン様は元気でいらっしゃいますか?」
「ぶひっ?! ええと……その……ですわね…………」
「もしかして……何か問題でも……?」
オリヴィアの問いかけに対し、目を泳がせるドレースさん。
「お、オリヴィアがヴァレイユ家の使用人を辞めたのなら……話してもいいのかしら……? いや、でも万が一ということも……!」
「そう言われると気になります」
「ぶひぃぃ……」
ドレースさんは、すごく気まずそうに僕の方を見る。
――二人だけでしたい話でもあるのかな? 僕は席を外した方が良さそうだ。
「えっと……僕、魔物狩りに行ってきます!」
そう言って、僕は立ち上がる。
「ブヒッ!? 大胆ですわね……!」
「お花摘みのことです」
「……なるほど……勉強になりましたわ」
二人がそんなやり取りをしている間に、僕は部屋を抜け出すのだった。
*
「ふぅ…………」
事を終えた僕は、手を洗った後、廊下に出てオリヴィア達が居る部屋へ戻ろうとする。
「…………あれ?」
そして、あることに気づいてしまった。
「ど……どこだっけ……?」
二人が居る部屋の場所を忘れてしまったのだ。
「あ、あれー……?」
見回りをしているオークの人達に聞こうかとも思ったけど、みんな忙しそうで話しかけづらい。
おまけに、大きくてちょっと怖いし……。
「どうしよう…………」
どうすることも出来ず、ただひたすら廊下を往復する。同じところをぐるぐる周ったせいで余計に分からなくなってしまった。
「……一つずつ……確認するしかないかな……」
そしてとうとう、僕はそう決心し、一番近くにあった扉へ近づいた。
――もし間違っていても、謝って許してもらおう。
そう思いながら扉の取っ手を掴み、ゆっくりとひねる。
どうやら鍵は開いているようだ。
もしかしたら当たりかもしれない。
「失礼しまーす……」
そう言いながら中へ入ると、そこには明らかに戦闘態勢のメイベルと、その背後に隠れているエリー、ベッドの上に大の字で寝ているソフィアの姿があった。
「え……?」
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