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第25話 三姉妹の優雅な家出3

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「はい、私の勝ち……」
「ぐぬぬぅ……また負けたわ……っ!」
「まさか、二人がかりでやってもソフィアに勝てないなんて…………」

 初めての家出に興奮していた三人は、しばらくの間眠らずに、ソフィアがなぜか持ってきたボードゲームをしてはしゃぎ回っていた。

「も、もう一回よ!」
「……何度やっても……結果は同じ」
「ねえねえ、そろそろ別のことしよーよぉ……」

 こうして、次第に夜は更けていくのであった。

 *

「……さてと、そろそろ寝ましょうか」

 やがてメイベルがそう言い出す。

「えー?    もうちょっと起きてようよ。だって夜更かししても誰にも怒られないんだよ?!」
「だめよ、明日からは早く起きてお兄ちゃんを探すの。それにモタモタしてると追っ手がかかかるかもしれないわ」
「うーん……それもそっか。じゃあ仕方ないね」
「――そういうわけだからお休み。あんた達も早く寝なさいよ」

 メイベルはそう言うと、ベッドの真ん中に倒れこんで寝息を立て始めた。

「もしかして自分が眠かっただけ……?」

 エリーの問いかけに返事はない。メイベルは既に夢の中だ。

「……ふふ、よっぽど疲れてたんだね。あたし達も早く寝よっかソフィア」
「…………ぐぅ」
「す、座ったまま寝てる……!」

 どうやら、ソフィアは既に限界を迎えていたらしい。

「起きてソフィア。ベッドで寝ないとだめだよ……!」
「うごくの……面倒だわ……。エリーがそこまで抱っこしてくれれば……問題ない……」
「ムリだよ!」
「じゃあ……引きずって……」
「そ、そんなことできないよぉっ!」

 ソフィアに無理難題を突きつけられ、涙目になるエリー。

「ふわぁ…………わがまま言わないの……まったく……仕方のない子ね……」
「あたし、なんかすごく理不尽なこと言われてる気がするよ……?」
「おやすみなさい……エリー」
「お、おやすみ……」

 ソフィアはスッと立ち上がり、よろめきながらベッドまで歩いていく。

 そして、メイベルの右隣へ倒れ込んだ。

「調子狂っちゃうなぁ……」

 ソフィアに散々振り回されたエリーは、疲れた様子で呟く。

「――――さてと、あたしも寝よ」

 目をこすりながら立ち上がるエリー。

「でも、三人で一つのベッドに寝るなんて……なんか楽しそう!」

 そう言いながら、エリーはメイベルの左隣へ横になるのだった。

 こうして、メイベルにとって受難の夜が始まる。

 *

 しばらくの間心地よく眠っていたメイベルだったが、不意に窮屈さを感じて目を覚ます。

「うーん………せまい……わね……」

 そしてそのまま体を起こそうとしたが、身動きが一切とれなかった。

「すー……すー……」
「むにゃむにゃ」

 メイベルの右手にはソフィアが抱きつき、右足にはソフィアの両足が絡みついていて、左手にはエリーが抱きつき、左足にはエリーの両足が絡み付いていたのである。

「何よ……どんな寝相してたらこうなるわけ……?」

 どうやら、メイベルの身体は完全に拘束されているようだ。

「ちょ、ちょっとあんた達!    わたしは抱き枕じゃ――」

 刹那、二人のほっぺたが両頬に押し当てられ、無理やり黙らされるメイベル。

「むぐっ……あぅっ……っ?! な、何これ……や、柔らかい……!」

 そしてメイベルは、二人の頰が柔らかくて、とても気持ちいいことを発見した。

「な、なにこれぇ…… あっ……しゅごい…………もちもちぃ……!」

 互いに反発し合うもちもちの頬たち。その快感にもだえるメイベル。

 ――この時、彼女の身体にはとある異変が起きていた。

 実は、三人ともまだ魔法が上手く制御しきれておらず、常時発動していたのである。

 その為、真ん中で寝ていたメイベルの身体には強化と幻惑と治癒の魔法が絶妙な強さでかかり続けていたのだ。

 今のメイベルは、わずかな風の動きの変化を肌で感じ取れるほど感覚が研ぎ澄まされている。

 一時的ではあるが、長い長い修行の果てに足を踏み入れることができる達人の領域に到達したのだ。

 しかし、そんなことを知る由もないメイベルは、身体を駆け巡る電流のような感覚にただ耐えることしか出来ない。

「ひうっ、きゃうううううんっ?!」

 身体の自由を奪われ抵抗できない状態で何度も頬ずりされ、身悶えするメイベル。

「あぁっ……しゅき……これしゅきぃ……!」

 ――ともかく、彼女は今とても幸せだった。
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