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ドラゴンと独立宣言の章
バカにつける薬はないのだ
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とりあえず本国の貴族連中なんてどうでもいい。交流も何もない上に陛下達の頭痛の種でしかない。
「領民に罪はないが、ま・・・皺寄せに耐えてくれとしか言いようがない」
ごね得を狙っていたバカはご愁傷さまだし、おこぼれを狙っていた連中も軒並み肩透かしだろう。まさか俺たちだけで自給自足できるとは思っていなかっただろうしな。
「この食べ物美味しいですね」
数日後、中継基地建設の最中、再び視察の名目で訪れたアレクシアにクルム麦で作ったうどんを振る舞う。人数分用意したので護衛の面々もにっこり。麺類はどこでも人気だな。
「ああ、これ旨いだろ」
ずるずると箸を使って啜ると皆が俺の動きを真似して食べ始めるのがなんとも言えない可笑しさがある。扶桑の人ではうどんは既にポピュラーな食べ物になったので獣人でうどんの食べ方に悩むものは少ない。
「それで、うどんを食いに来たのか?」
「むぐっ・・・ごくん、そんなわけありません」
そう言うと彼女は一通の文書を手渡した。
「これがアルトリア王女から届きました」
こんな大っぴらな場所で取り出すなよと、言うべきだったのは内容に目を通す前だった。
「調停役が要るのか・・・また」
文書にはザンナル帝国皇女のアルトリア。その公文書だった。
「あんまり俺を便利屋扱いしてくれるな、無関係な事にまで首を突っ込みたくない」
アルトリアには悪いが権利のほとんどはサマルに委譲してる。俺に持ってこられても困るし、ザンナルの隣国までには伝もコネもない。
「わかってます、けど・・・良く見てください」
内容には隣国との関係悪化と、それに・・・。
「娘を迎えに行く?どう言うことだ?」
「扶桑国にいる獣人の女性がどうにも王族の子供らしいです、そうなると無関係とはいきませんよね?」
そう言われるとたしかにそうだ。しかし獣人の王族?どこの部族か知らないがどうしてまたそんな・・・いっちゃなんだが辺境へやってきたんだ?
「獣人達にそんなやんごとない血筋の子女はいなかったはずだが・・・」
「ほとんどがザンナル出身でしたっけ」
逃亡奴隷の面々とフィゼラー出身の獣人で構成されている扶桑国の獣人達。それ以外となると戸籍を調べ直さないといけない。
「まったく、そうなるとややこしい問題だ・・・すまないが復興事業からは一時抜けさせてもらうぞ」
「ええ、仕方ないです」
アレクシアはそう言うとお出汁を全部飲み干して器を机においた。なかなか強かになってきたんじゃないか?お代わりしようとして部下にとがめられていなきゃそろそろ一人前かともおもったが。
「あーあ、今度はどこの国が揉め事を持ち込んできたんだ?くそぅ・・・のんびりしてぇなぁ」
愚痴をこぼしながら俺は一路扶桑へと帰国する。
「おかえりなさい、旦那様」
屋敷に戻り、まずは一休みとベッドに腰かけると先に帰国していたアウロラが俺を出迎えてくれた。
「ただいま、アウロラ。可愛がってやりたいが面倒事でな・・・戸籍の一覧表を見せてくれ」
「どうかなさったんですか?」
「ザンナルの隣国にある国の事を聞いたことがあるか?」
そう言うとアウロラは少し考えた後、思い出したように手を叩いた。
「そう言えば・・・獣人族の部族で構成された国があると聞いたことがありますよ」
「今回の揉め事の発端はどうやらその国だ」
「うー・・・そうなると、えっとぉ・・・だれだったかなぁ・・・」
「知らないのか?」
「すみません、最近同胞が増えすぎてて・・・」
ダークエルフに同族意識が強いと言っても今ほど多人数で暮らした経験がなかったのか彼女も仲間の顔を覚えきれずにいるようだった。
仲間がたくさんできたと喜ぶべきなのかなんなのか・・・。
「獣人の事情に詳しいやつを教えてくれ、だれだ?」
「そうなるとハーフのダークエルフかエルフを探すべきでしょう」
そういわれてハッとなった。そういえば彼女達ダークエルフ達は様々な種族と婚姻を結んでいるんだったか。子供もたくさんいるんだな。
「しかし父親の元にいるんじゃないのか?母親も・・・」
「子供だけを設けて外に出るものも多いですが扶桑国ができてから国を出奔したり、所属する部族を抜けたハーフも多いです。元より居る場所のない者や継承者争いを嫌がって抜けて来たものばかりですがね」
継承者争いか・・・そうなると今回の獣人の国の話と合致するかもしれんな。
「そうなると獣人のハーフを探すべきか・・・アウロラ、悪いが目ぼしいダークエルフ全てに声を掛けてくれ」
「承知しました」
彼女に頼んでダークエルフのハーフを探してもらい、目当ての人物がいればそいつをつれて隣国の揉め事に当たらないといけない。
さて、事情がどこまでその人物から聞けるかだ。
「領民に罪はないが、ま・・・皺寄せに耐えてくれとしか言いようがない」
ごね得を狙っていたバカはご愁傷さまだし、おこぼれを狙っていた連中も軒並み肩透かしだろう。まさか俺たちだけで自給自足できるとは思っていなかっただろうしな。
「この食べ物美味しいですね」
数日後、中継基地建設の最中、再び視察の名目で訪れたアレクシアにクルム麦で作ったうどんを振る舞う。人数分用意したので護衛の面々もにっこり。麺類はどこでも人気だな。
「ああ、これ旨いだろ」
ずるずると箸を使って啜ると皆が俺の動きを真似して食べ始めるのがなんとも言えない可笑しさがある。扶桑の人ではうどんは既にポピュラーな食べ物になったので獣人でうどんの食べ方に悩むものは少ない。
「それで、うどんを食いに来たのか?」
「むぐっ・・・ごくん、そんなわけありません」
そう言うと彼女は一通の文書を手渡した。
「これがアルトリア王女から届きました」
こんな大っぴらな場所で取り出すなよと、言うべきだったのは内容に目を通す前だった。
「調停役が要るのか・・・また」
文書にはザンナル帝国皇女のアルトリア。その公文書だった。
「あんまり俺を便利屋扱いしてくれるな、無関係な事にまで首を突っ込みたくない」
アルトリアには悪いが権利のほとんどはサマルに委譲してる。俺に持ってこられても困るし、ザンナルの隣国までには伝もコネもない。
「わかってます、けど・・・良く見てください」
内容には隣国との関係悪化と、それに・・・。
「娘を迎えに行く?どう言うことだ?」
「扶桑国にいる獣人の女性がどうにも王族の子供らしいです、そうなると無関係とはいきませんよね?」
そう言われるとたしかにそうだ。しかし獣人の王族?どこの部族か知らないがどうしてまたそんな・・・いっちゃなんだが辺境へやってきたんだ?
「獣人達にそんなやんごとない血筋の子女はいなかったはずだが・・・」
「ほとんどがザンナル出身でしたっけ」
逃亡奴隷の面々とフィゼラー出身の獣人で構成されている扶桑国の獣人達。それ以外となると戸籍を調べ直さないといけない。
「まったく、そうなるとややこしい問題だ・・・すまないが復興事業からは一時抜けさせてもらうぞ」
「ええ、仕方ないです」
アレクシアはそう言うとお出汁を全部飲み干して器を机においた。なかなか強かになってきたんじゃないか?お代わりしようとして部下にとがめられていなきゃそろそろ一人前かともおもったが。
「あーあ、今度はどこの国が揉め事を持ち込んできたんだ?くそぅ・・・のんびりしてぇなぁ」
愚痴をこぼしながら俺は一路扶桑へと帰国する。
「おかえりなさい、旦那様」
屋敷に戻り、まずは一休みとベッドに腰かけると先に帰国していたアウロラが俺を出迎えてくれた。
「ただいま、アウロラ。可愛がってやりたいが面倒事でな・・・戸籍の一覧表を見せてくれ」
「どうかなさったんですか?」
「ザンナルの隣国にある国の事を聞いたことがあるか?」
そう言うとアウロラは少し考えた後、思い出したように手を叩いた。
「そう言えば・・・獣人族の部族で構成された国があると聞いたことがありますよ」
「今回の揉め事の発端はどうやらその国だ」
「うー・・・そうなると、えっとぉ・・・だれだったかなぁ・・・」
「知らないのか?」
「すみません、最近同胞が増えすぎてて・・・」
ダークエルフに同族意識が強いと言っても今ほど多人数で暮らした経験がなかったのか彼女も仲間の顔を覚えきれずにいるようだった。
仲間がたくさんできたと喜ぶべきなのかなんなのか・・・。
「獣人の事情に詳しいやつを教えてくれ、だれだ?」
「そうなるとハーフのダークエルフかエルフを探すべきでしょう」
そういわれてハッとなった。そういえば彼女達ダークエルフ達は様々な種族と婚姻を結んでいるんだったか。子供もたくさんいるんだな。
「しかし父親の元にいるんじゃないのか?母親も・・・」
「子供だけを設けて外に出るものも多いですが扶桑国ができてから国を出奔したり、所属する部族を抜けたハーフも多いです。元より居る場所のない者や継承者争いを嫌がって抜けて来たものばかりですがね」
継承者争いか・・・そうなると今回の獣人の国の話と合致するかもしれんな。
「そうなると獣人のハーフを探すべきか・・・アウロラ、悪いが目ぼしいダークエルフ全てに声を掛けてくれ」
「承知しました」
彼女に頼んでダークエルフのハーフを探してもらい、目当ての人物がいればそいつをつれて隣国の揉め事に当たらないといけない。
さて、事情がどこまでその人物から聞けるかだ。
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