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ドラゴンと独立宣言の章

トラックのお話

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トラックがこれだけあれば木材の供給も軌道に乗せられるだろうか。些かキツイかもしれないが数は適宜増やして行こう。

「迎えに行かせた連中はどうなってる?」
「は、今のところ上手くいっているようで・・・戦地帰りということで近衛隊が我々に遠慮してくれているようです」

なるほどな、サマルの兵士には魔物などとの戦闘はあっても人間同士の戦争などとは縁がない者も多い。リットリオなんかには少なからずいるだろうがそれも前回の粛清やマフィアの暗躍でどれだけが残っているやら。とくに虎の子の近衛隊の場合はおいそれと戦闘を経験できないので練度は高くとも実践経験は少ない。

「さて、それではアレクシアがやってくるまでに判子をついちまうか」

アレクシアから借り受けた判子を魔力を込めてポンポンと車体の正面や荷台など目立つ場所に決めて捺していく。

判子が一個しかないので時間がかかるなこりゃ。
しかも魔力が必要なのでそれなりに加減が難しい、下手するとオーバーヒートさせちまう。


「面白い道具ですな」
「判子が珍しいのか?」
「判子そのものは珍しくありませんが・・・その焼き印のように何処にでも捺せるものというのは珍しいですよ」

彼らにも判子をつく文化があり、文書の封印や誰宛かを示す名前代わりに使われていた。言うなれば他と変わらない普通な使用方法だ。
ただ最近は紙の普及が進んだのでスタンプとしての使われ方、印刷まではいかないが定型文を多数揃える・・・役所の公文書のための判子などもある。
もっともそれらは樹液や生物の油などを練って作ったインクなどを使っているのでそれほどインクののりも良くなく、紙以外には使えないのが現状だ。
それ故に焼き印のように場所を選ばず、それでいて綺麗に捺せる判子が珍しいのだろう。しかしそれは俺にとっても同じだ。

「とりあえず刻印場所は覚えとけよ、いずれ量産するだろうからな」
「了解です」

一時間とかからない内に捺印は完了、あとは運転手とアレクシア達の到着を待って本格的に行動開始だ。




「馬を必要としない馬車じゃと・・・?」

ところ変わってサマル王国の王宮ではヴォルカンのもたらしたサプライズによって国王と皇太子は首を傾げていた。

「謎かけでしょうか?」
「バカな、お前じゃあるまいに・・・」

この世界では当然というべきか、エンジンの概念などない。魔石などで稼働する道具もあることにはあったが車やその他電気製品がごとく普及しているわけでもなかったので言葉で言い表しにくかったのだ。

「えっと・・・馬車と言うのはあくまで喩えでして、挽獣を必要としない、自力で移動できる車輪着きの乗り物です」

ダークエルフも説明に些か苦戦しており、二人の頭の固さも手伝って説明をやや難解にしていた。

「父上、それにお祖父様も揃ってどうしたんだい?」

ダークエルフが説明に困り始めていた頃、二人の執務室をふらっとフランツ王子が訪ねてきた。

「おお、フランツか、ちょうど良い・・・馬の要らぬ馬車というものに我等では想像が及ばぬ」
「馬の要らぬ馬車?馬車が独りでに動くのかい?」
「簡単にいいますとそうです、やや訓練が必要ですが御者の意のままに動かせます」

フランツは頬指を当てて少しばかり考えたが二人より遥かに素早く理解した。

「なるほどね、ヴォル兄らしいや・・・また新しいことをおもいついたんだ?」

目を細め、笑みを浮かべている姿は歓談を楽しむ貴婦人と言った様相だが実際は剣の練達であり、同年代では負け無しの天才剣士でありやや迷子気味ではあるがれっきとした男性である。
最近は貴族としての世のわたり方を身に付けつつあり、飄々とした性格や立ち振舞いから周囲の貴族からは既に食えない奴と思われている。

「あはっ、どんなことが起きるのか楽しみだね」

そしてヴォルカン自身に好意を持っていると同時に彼が引き起こすドタバタに巻き込まれる人見て、なおかつ自分も巻き込まれるのが楽しくてしょうがないと言った困った所があった。
実のところ影で色々と動いているらしく撒かれた陰謀論の火消しをはかりつつ別の火種を見つけてはワクワクしている。

「笑い事ではない、これがあれば馬を使わなくとも良くなる・・・そうなると馬関係の産業は大打撃じゃ」
「そうだろうけど、馬車に似てるってことは通れない場所も同じ何じゃないかな」
「はい、それと・・・核心部分には魔導金属が不可欠です」

ダークエルフの言葉に国王は少し考える。魔導金属が希少なのはどの国も同じであるがそれ故に資金の潤沢な王家ならば所有できても可笑しくはない。

「そして軍用と位置付ければ民間に回せずとも文句はつけにくいと・・・」

実際、悪路での乗り心地は恐ろしく悪く旧型の馬車ほどではないにしろ旧型となりつつあるトラックはサスペンションも未改良のため悪路にはとことん弱い。また、重量が嵩むと泥などに足を取られやすい欠点もある。

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