上 下
256 / 282
ドラゴンと独立宣言の章

日曜大工の最中に

しおりを挟む
リックス達と共に歯車を作り始めること一時間。こつこつと作っていた子供達も徐々に慣れてきたのかできの良いのがちらほら。特にリックスの作るのはかなり出来がよかった、聞いてみたがどうやらあのボロ家もリックスがコツコツ建てたものなんだそうだ。

「ほうほう、それはスゴいな」
「そ、そうかな・・・アンタに言われるとなんか照れ臭いよ」
「スゴいもんはスゴいさ、ただ規模の違いだけでな・・・必要なものを必要な時に用意するってのは思っている以上に大変なことなんだからな」

必要に迫られてという前置きがあったとしても普通は家がないから家を建てようなんて発送にはなかなかならないもんだ。小さいながらも屋根つきの建物をたてて見せたリックスは間違いなくその手の才能があるだろうな。
しかしこの手の発想といい、この顔立ちといい、リックスもどこぞの御落胤だったりしないだろうな。

「なんだよ、ジロジロ見て・・・」
「背も延びたし、男らしくなるかと思ったが・・・悪いな俺の見立て違いだ。女顔はたぶん治らんぞ」
「えっ!」

いっそ役者にでもなった方がいいかもしれん。ここまで女顔だとなぁ。顔立ちからみてもこれは骨格レベルだからな・・・、痩せてた方が男っぽかったかもな。

「そんなあ・・・」
「ま、諦めろ、俺がか弱いふりをしようとするようなもんだ。自分らしさを目指せ」

そうこうしている内に歯車が10個ばかり出来上がった。後はこれを組み立てていろいろと作れば良いわけだ。

「まずは脱水機からいこう」

まず桶とそれより一回りちいさい篭、そしてその篭を支えつつも回転させるギミックとして歯車と骨組みを作る。桶の底を抜いて代わりに篭を入れ、歯車のギミックと連結させればあら不思議。超簡素だが遠心力を利用した脱水機の完成である。

「運転テストといこう」

最初は空っぽの状態でクランクを回して見る。がらがらと音を立てて篭が回る。結構なスピードが出ているがこれが果たして中身入りでできるかが問題だな。

「ミニチュアのつもりが結構でかいもんだ」
「本当ですな、これは・・・五人分くらいの服は入りますかな?」

様子を見ていたエルビン老もそういうと機械の仕組みに関心を示しつつもその大きさに少し驚いた様子だ。

「おじさーん!たいへんたいへん!」

ためしに洗濯物でもと考えていたところ子供が一人俺のところに走ってきた。一体なんだってんだ?

「どうした?」
「知らないおじさんが倒れてるよ!しかもおえーってしちゃった!」
「なに!吐いたのか!仕方ねぇな」

家の前で吐くとかなんてはた迷惑な奴だ。とりあえず放ってはおけないよな。
脱水機のことで頭は一杯だったが俺は仕方なく孤児院の入り口へと向かう。すると門の前では門番となって久しいデカブツ君がおっさんを介抱していた。

「あ、ボス久しぶり!お菓子食べる?」

門の前にできた詰め所に件のおっさんは寝かされていた。何気にここの詰め所良い感じだな。気にしてなかったけどちょっとした家みたいな感じだ。

「お菓子はまた今度もらうよ、吐いたのはそのおっさんか?」
「そうだよ、吐いたのは掃除したからもう綺麗だよ」
「そうかい、良い仕事してくれて感謝するよ」

デカブツ君は自作のお菓子を作るのが趣味らしいがあのガタイで少食らしくお菓子を作っては子供達に配り歩いているそうだ。掃除好きでお菓子作りが趣味・・・なんというか、なんで門番なんかやってたんだ?今じゃここらへんの名物おじさんだ。

「おーい、生きてるかおっさん」
「うーむ・・・」

酸っぱい臭いさせてやがる。ああもう、最悪だな。服も新しいのを用意するか。

「おい、わるいけど新しい服を持ってきてくれるか、無いなら古着屋とかで買ってきてくれ」
「わかった、買ってくるよボス」

そういうとデカブツ君はそそくさと買い物に出掛けてくれた。

「さて、聞き耳をたてる大人はいなくなったから早く起きろ、あんたがアンジェリーノ侯爵か?」
「・・・一応吐いたのは本当なんだ、もう少し待ってくれ」
「知ってるよ、酸っぱい臭いがたまらん・・・、はやく口を濯いできてくれ」

コップに水を汲んで渡してやると豪快に口を濯いで窓から吐き出した。すると少しマシになったのか顔色を戻して椅子に座った。

「自己紹介がどれくらいいるかわからないんだが、一応名乗るところから・・・私はアンジェリーノ、アンジェリーノ・ヴィットーリオだ。この国では侯爵の爵位をいただいてはいるが・・・正直最近は疲れてるよ。治安が良くなって外敵がいなくなったからかまた内紛に備えて歩き回ってるバカが出てきてな。数は減ってもどういうわけかその手のバカは減らん」
「なるほど、それで?」
「兄貴と対立してるというのも意図的にながしたデマだ、兄貴に迷惑がかかるとは思ったが兄貴とはこういうときいつも協力しあってたんだ」
「なるほど、それじゃ野心家だというのも?」
「野心はたしかにあるが正直俺の娘が嫁いだ時点で完成してるさ、子もいて、次期皇太子だ、あとはこの国を豊かにして、その分だけこちらも儲けるというわけさ」

俺たちは農家みたいなもんさと侯爵は言う。面白いおっさんだな。

「俺としてもリットリオが富むのは嬉しい、正直なとこ孤児院が繁盛するのは嬉しい反面、複雑でな」
「まあ、な・・・それは俺もずっと思ってたさ、だが奴等の手は俺が思っていた以上に長くてな・・・感謝してるよ」

そういうとアンジェリーノ侯爵はポケットから小さな瓶を取り出して一口煽った。吐いたくせにまだ飲む気か。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。

ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
 猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。  しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。  その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!

チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司
ファンタジー
28才、彼女・友達なし、貧乏暮らしの桐山頼人(きりやま よりと)は剣と魔法のファンタジー世界に"ヨリ"という名前で魔王を倒す勇者として召喚される。 しかしそこでもギフトと呼ばれる所謂チート能力がなかったことから同じく召喚された仲間たちからは疎まれ、ついには置き去りにされてしまう。 「ま、良いけどね!」 ヨリはチート能力は持っていないが、お金無限増殖というバグ能力は持っていた。 大金を手にした彼は奴隷の美少女を買ったり、伝説の武具をコレクションしたり、金の力で無双したりと自由気ままに暮らすのだった。

ギャルゲーの悪役子息に転生しましたが、主人公の邪魔をする気はないです。 それよりも領地に引きこもってのんびり魔道具開発を行いたいです。

みゅう
ファンタジー
ギャルゲーオタクな友達がはまってたゲームの極悪非道な悪役子息に転生した主人公 宮野涼。 転生した涼は主人公(ヒーロー)をいじめれるようなメンタルなどない。 焦った涼が見つけた趣味は魔道具開発?! これは超マイペースな涼が最高級の暮らしを送るため魔道具開発にいそしむ話である。

【1章完結】経験値貸与はじめました!〜但し利息はトイチです。追放された元PTメンバーにも貸しており取り立てはもちろん容赦しません〜

コレゼン
ファンタジー
冒険者のレオンはダンジョンで突然、所属パーティーからの追放を宣告される。 レオンは経験値貸与というユニークスキルを保持しており、パーティーのメンバーたちにレオンはそれぞれ1000万もの経験値を貸与している。 そういった状況での突然の踏み倒し追放宣言だった。 それにレオンはパーティーメンバーに経験値を多く貸与している為、自身は20レベルしかない。 適正レベル60台のダンジョンで追放されては生きては帰れないという状況だ。 パーティーメンバーたち全員がそれを承知の追放であった。 追放後にパーティーメンバーたちが去った後―― 「…………まさか、ここまでクズだとはな」 レオンは保留して溜めておいた経験値500万を自分に割り当てると、一気に71までレベルが上がる。 この経験値貸与というスキルを使えば、利息で経験値を自動で得られる。 それにこの経験値、貸与だけでなく譲渡することも可能だった。 利息で稼いだ経験値を譲渡することによって金銭を得ることも可能だろう。 また経験値を譲渡することによってゆくゆくは自分だけの選抜した最強の冒険者パーティーを結成することも可能だ。 そしてこの経験値貸与というスキル。 貸したものは経験値や利息も含めて、強制執行というサブスキルで強制的に返済させられる。 これは経験値貸与というスキルを授かった男が、借りた経験値やお金を踏み倒そうとするものたちに強制執行ざまぁをし、冒険者メンバーを選抜して育成しながら最強最富へと成り上がっていく英雄冒険譚。 ※こちら小説家になろうとカクヨムにも投稿しております

辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三
ファンタジー
前世の知識を保持したまま転生した主人公。彼はアルフォンス=テイルフィラーと名付けられ、辺境伯の孫として生まれる。彼の父フィリップは辺境伯家の長男ではあるものの、魔法の才に恵まれず、弟ガリウスに家督を奪われようとしていた。そんな時、アルフォンスに多彩なスキルが宿っていることが発覚し、事態が大きく揺れ動く。己の利権保守の為にガリウスを推す貴族達。逆境の中、果たして主人公は父を当主に押し上げることは出来るのか。 主人公、アルフォンス=テイルフィラー。この世界で唯一の契約魔法師として、後に世界に名を馳せる一人の男の物語である。

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

過保護な兄達とその他攻略者

閖播野
恋愛
前世では事故で死んでしまった美月(みつき)。今世は異世界で生活!の前に家族が過保護なのと本人がインドアな為、家の庭以外外に出たことがなかった。 兄と弟の間に挟まれてミア(美月)は14歳にして初めての外(王都)に行く (新たに物の名前を考えるのが億劫な為あるものをちょいちょいと使います) そんなこんなのお話しです

処理中です...