上 下
206 / 282
ドラゴンと独立宣言の章

パーティでのあれこれ その4

しおりを挟む
既存の価値観と言う奴は思いのほか人間の行動パターンを限定してしまう。この様なヤツの場合プライドが死ぬほど高い割りに自分ひとりで出来る事が少ないので余計にプライドが傷つき易い、なので常に相手に攻撃的になる。いうなれば劣等感が強いのだ。

「決闘する勇気も無いのか?」
「そ、それは・・・」

身内なら教育してやりたい所だが生憎とそんな義理もない。向かってくるなら潰してやるぞ。

「なら大人しくしているんだな。お前なんぞ眼中にない」
「が、眼中にない・・・?」
「本来此方から決闘を提案してやるのも過剰なサービスなんだぞ?それなのにそれを受ける勇気もない、情けないと思わないのか」

情けないツラしてやがる。ま、喧嘩して勝てるかどうかくらいはわかるんだろうが・・・。どうにも説教臭くなっていけない。あんまりにも駄目なヤツだとな・・・まるでいつぞやの俺のような。結局俺は他人の手を取る事も、許す事も、忘れる事もできず、ただ過去の栄光に縋って生きていた俺のような。

「パーティが辛気臭くなる、情けないツラをしているなら他所へ行ってくれ」

アウロラを連れて別の場所へと移動する俺の背中を恨めしげに見つめるタウゼント家のバカ息子。アイツがまともになれるかは解らないがそれも気にする必要はない。何事も最後は自分の力しかないのだ。手助けを受ける事はできても立ち上がるには自分の力でやるしかない。

「く、くそぅ・・・」
「何をしてるんだ?こんな所で・・・」
「ドルト!いい所にきた・・・ヤツをどうにかしてしまいたい・・・」

逃げ出すように訪れたテラスでヒッグスは声を掛けてきたドルトに詰め寄った。

「何を言われたか知らんが止めとけ、あの人はお前が如何こう出来る人じゃない」
「なぜだ!俺とお前の権力があればどうとだって出来るだろう」
「そこがまず間違っているんだ、女性のスキャンダルをもみ消すのとは次元の違う話なんだ」

ドルトには解っている。すくなくとも数万の人口を有する都市か領地を所有し、それだけでなく王女殿下から絶大な信頼を得ている以上彼が持つ権力が如何程のものか想像も出来ない。

「アレだけの兵力、経済力、そして王家からの覚えも目出度くダークエルフの妻がいるんだろ?勝てる理由がないじゃないか」
「しかしヤツは所詮田舎者ではないか!何故俺達が遠慮する必要がある!」
「がなるな、ヒッグス」
「しかしだな!」
「いい加減にしろ、お前は何時からそこまでバカになった?勝てる相手と勝てない相手の区別くらいつけろ、あの人が本気になったら俺達の命はおろか爵位なんか何の役にも立たんぞ」

そう言うとヒッグスは力なくテラスの手すりに寄りかかり、真っ青な顔を見せる。

「どういうことだ?侯爵である父よりも、公爵であるお前の父よりもそんなに凄いのか?」
「そんな次元じゃないってことだ、腕力だけでどれだけ強いかもわからんが王女殿下に剣を教えたのはあの人らしいぞ?それに経済力だって・・・」
「くそぅ・・・そんな事が・・・あるもんか」
「ヒッグス・・・」

頭を抱えて蹲るヒッグスを憐れむような視線で見つめていたがやがてドルトもかける言葉が無くなりテラスを後にした。

(俺はこんなヤツに良い様に使われていたのか・・・いくらなんだってあんまりだ、もう少しは見所のあるヤツだと思っていた自分が浅はかだったのか)


「あ、アダムスター伯爵!」

パーティも佳境になり料理も堪能しつくした俺達の元にアレクシアが訪れる。

「主賓様の登場か」
「うふふ、ようやく声を掛けることができました」

登場した時はもみくちゃにされてたものな。美姫であることもそうだが凛々しい姿に女性からの人気も高く女性からの声かけも多かったんだよな。しかし笑うと兄貴にそっくりだ。

「ザンナルに向かう準備はできたのか?」
「ええ、心構えもできました。それで・・・その、お願いがあるんですが」
「なんだ?」
「パーティの後、王宮にきて欲しいんです。お願いできますか?」
「構わない、楽しみにしてるぞ」

俺がそう答えてやるとアレクシアは笑顔で頷いた。一体なにをするんだろうか?楽しみにしておこう。

「何をするんでしょうね?」
「わからん、だが断る理由も無い」

その後パーティは恙無く進んでいき、皆は満足とザンナル領開拓がもたらす利益の皮算用に皆は勤しんでいくのだった。ザンナルは元々は穀倉地帯を多く抱える農業地帯が多く、騎兵を育てる為の牧畜や酪農を行う技術なども多かった。なので食肉の安定供給などを予想している者も多いのではないだろうか。

「ま、実際は戦いと飢饉でメタメタなんだがな」

戦争というのはホントにキツイ。建て直しも不十分な状態で王宮のほうへと向かったので今はどうなっているのか・・・少なくとも食料を供給しているのでこれ以上餓死者は出ていないと信じたいが・・・。
本音を言うとさっさと帰ってちょっとでも農地の回復具合をみたいところだ。警察隊の本隊が上手くやっていけているかも併せて気になる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。

ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
 猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。  しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。  その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!

チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司
ファンタジー
28才、彼女・友達なし、貧乏暮らしの桐山頼人(きりやま よりと)は剣と魔法のファンタジー世界に"ヨリ"という名前で魔王を倒す勇者として召喚される。 しかしそこでもギフトと呼ばれる所謂チート能力がなかったことから同じく召喚された仲間たちからは疎まれ、ついには置き去りにされてしまう。 「ま、良いけどね!」 ヨリはチート能力は持っていないが、お金無限増殖というバグ能力は持っていた。 大金を手にした彼は奴隷の美少女を買ったり、伝説の武具をコレクションしたり、金の力で無双したりと自由気ままに暮らすのだった。

ギャルゲーの悪役子息に転生しましたが、主人公の邪魔をする気はないです。 それよりも領地に引きこもってのんびり魔道具開発を行いたいです。

みゅう
ファンタジー
ギャルゲーオタクな友達がはまってたゲームの極悪非道な悪役子息に転生した主人公 宮野涼。 転生した涼は主人公(ヒーロー)をいじめれるようなメンタルなどない。 焦った涼が見つけた趣味は魔道具開発?! これは超マイペースな涼が最高級の暮らしを送るため魔道具開発にいそしむ話である。

【1章完結】経験値貸与はじめました!〜但し利息はトイチです。追放された元PTメンバーにも貸しており取り立てはもちろん容赦しません〜

コレゼン
ファンタジー
冒険者のレオンはダンジョンで突然、所属パーティーからの追放を宣告される。 レオンは経験値貸与というユニークスキルを保持しており、パーティーのメンバーたちにレオンはそれぞれ1000万もの経験値を貸与している。 そういった状況での突然の踏み倒し追放宣言だった。 それにレオンはパーティーメンバーに経験値を多く貸与している為、自身は20レベルしかない。 適正レベル60台のダンジョンで追放されては生きては帰れないという状況だ。 パーティーメンバーたち全員がそれを承知の追放であった。 追放後にパーティーメンバーたちが去った後―― 「…………まさか、ここまでクズだとはな」 レオンは保留して溜めておいた経験値500万を自分に割り当てると、一気に71までレベルが上がる。 この経験値貸与というスキルを使えば、利息で経験値を自動で得られる。 それにこの経験値、貸与だけでなく譲渡することも可能だった。 利息で稼いだ経験値を譲渡することによって金銭を得ることも可能だろう。 また経験値を譲渡することによってゆくゆくは自分だけの選抜した最強の冒険者パーティーを結成することも可能だ。 そしてこの経験値貸与というスキル。 貸したものは経験値や利息も含めて、強制執行というサブスキルで強制的に返済させられる。 これは経験値貸与というスキルを授かった男が、借りた経験値やお金を踏み倒そうとするものたちに強制執行ざまぁをし、冒険者メンバーを選抜して育成しながら最強最富へと成り上がっていく英雄冒険譚。 ※こちら小説家になろうとカクヨムにも投稿しております

辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三
ファンタジー
前世の知識を保持したまま転生した主人公。彼はアルフォンス=テイルフィラーと名付けられ、辺境伯の孫として生まれる。彼の父フィリップは辺境伯家の長男ではあるものの、魔法の才に恵まれず、弟ガリウスに家督を奪われようとしていた。そんな時、アルフォンスに多彩なスキルが宿っていることが発覚し、事態が大きく揺れ動く。己の利権保守の為にガリウスを推す貴族達。逆境の中、果たして主人公は父を当主に押し上げることは出来るのか。 主人公、アルフォンス=テイルフィラー。この世界で唯一の契約魔法師として、後に世界に名を馳せる一人の男の物語である。

魔力ゼロの出来損ない貴族、四大精霊王に溺愛される

日之影ソラ
ファンタジー
魔法使いの名門マスタローグ家の次男として生をうけたアスク。兄のように優れた才能を期待されたアスクには何もなかった。魔法使いとしての才能はおろか、誰もが持って生まれる魔力すらない。加えて感情も欠落していた彼は、両親から拒絶され別宅で一人暮らす。 そんなある日、アスクは一冊の不思議な本を見つけた。本に誘われた世界で四大精霊王と邂逅し、自らの才能と可能性を知る。そして精霊王の契約者となったアスクは感情も取り戻し、これまで自分を馬鹿にしてきた周囲を見返していく。 HOTランキング&ファンタジーランキング1位達成!!

過保護な兄達とその他攻略者

閖播野
恋愛
前世では事故で死んでしまった美月(みつき)。今世は異世界で生活!の前に家族が過保護なのと本人がインドアな為、家の庭以外外に出たことがなかった。 兄と弟の間に挟まれてミア(美月)は14歳にして初めての外(王都)に行く (新たに物の名前を考えるのが億劫な為あるものをちょいちょいと使います) そんなこんなのお話しです

処理中です...