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ドラゴンと独立宣言の章

王宮でのお話 その3

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(思えばあの後農場に戻った時にアレクシアに見つかったんだったか)

人間の姿になって農場をうろついていたところドラゴンを探してウロウロしていたアレクシアに見つかったのだ。しかもドラゴンに変身するところバッチリと。あの時アレクシアは正体を偽っていた事よりもなによりも俺が無事である事を喜んでくれた。そして人化できるようになってからは農場を離れて実家に帰ってきたのだ。

「おーい、そろそろ離してくれ」
「なんですか?遂に決心を?」
「俺というよりお前の決心が本物なら先に打ち明けないといけない事がたくさんある」

幾ら身長が高いといっても自分よりも身長の高い大男を引き摺って歩く様は非常に目立った。俺が死んだ魚の様な目で引き摺られていくので皆も俺を可哀想なものを見る目だったのがひどく傷ついた。

「なんですか?もしかして奥さんが既にいるとかですか?」
「・・・」

早速である。誤魔化そうとか考えていた俺がバカらしくなるほど直球な質問がきた。

「いいですよ、一人や二人くらい。なんせ貴方はドラゴンさんなんですから」
「三人なんだが」
「さ、三人でも一緒です!」

どうあっても諦めるつもりは無い様だ。そうなるともう俺に断る理由はない。可愛くて努力家で、さっぱりとした彼女の魅力は長い農場での生活で知っている。ただ、此処まで逞しくなるとは思ってなかったけどな。

「解った解った・・・俺の負けだよ、とりあえず彼女達の所へ行こう」
「ふふ、解ってくれればいいんです。皆さんのところへご挨拶しましょうヴォルカン兄さん」
「兄さんは可笑しいだろ、昔からそう呼んでくれてたが。嫁さんとしての自覚持てよー」
「じゃあこれからは呼び捨てにしますか、それとも愛称のヴォルで行きますか」
「愛称でいいだろ」

さて、国王陛下にも話さないといけないが先ずは身内に話を通さないと。

「えっと・・・アウロラ達が居る部屋は何処だ・・・っと」
「私でしたら此処に」
「おおっ!何と素早い・・・気配も感じませんでした」

剣の柄に手をかけていたアレクシアを宥めてアウロラに彼女を紹介する。

「サマル王国の王女アレクシアだ、此方が一人目の妻のアウロラだ」
「アウロラです、どうぞよろしく王女殿下」
「アレクシアです、貴方が正室の?不束者ですが末席に加えさせていただきます」
「・・・」
「・・・」

しばらく剣戟の応酬のような謎のやり取りが無言の内に交わされた後・・・。二人は互いに握手を交わした。

「頑張りなさい」
「ええ、存分に」

先ほどのやり取りの中に意気投合する何かがあったのだろうか。女の世界は謎である。とりあえずはアウロラとは仲良くなってくれたようで嬉しい。

「旦那様、彼女は確かに期待できます。体付きも身のこなしも一流に近いです、旦那様の手ほどきを受けたのでしょうがそれを差し引いても鍛錬の密度が素晴らしい」
「そこまで見てたのか」

アウロラは頷くとアレクシアのそっと抱き寄せる。彼女は少し驚いた様子だったが直にそれを受け入れて嬉しそうに目を細める。

「ふむ、話はまとまったかのう」
「ええ、まだ一人目ですが」
「いえ、旦那様これはみなの総意ですよ」
「ふむ、それは何故かね?」

突然の質問に振り返ると陛下が歩いてきていた。

「何時からそこに?」
「いや、普通に追いかけてきたからずっと居たけど?して、何故かね?」
「王家の人が居たほうが外交やセレモニーもやりやすいですから」
「ほっほっほ、奥方は現実的な視野もお持ちであるか」
「正直な話我等は裏方が専門でして・・・それでは旦那様、私はこれで。早いお帰りをお待ちしています」

そう言うと彼女の姿が掻き消え、何もない空間になる。

「ほほぅ、神出鬼没か・・・。凄まじい業じゃのう」
「アレは真似できる気がしませんね」

二人は関心した様子で彼女が居た場所を見つめている。

「しかしその凄まじい業を秘匿する為にも彼女を表には出せんか」
「正直他の仕事もありますからね、アレクシアが嫁いでくれるならそちらの仕事を任せられるから安心です」
「私で大丈夫でしょうか・・・」

アウロラの技巧の一端を見てアレクシアは少しだけ不安げな表情を見せる。彼女の剣技も大したものだと聞いてはいるが人間の技だからな。超人の技となるにはもう少し鍛錬が必要か。

「不安なら技を磨けばいい。飾りといえば聞こえは悪いが其れにも役割はちゃんとある。それに軍を表立って率いることの出来る人材も欲しかったから丁度いいんだよ。頼りにしてるぞ、将軍よ」
「ほっほっほ、責任重大じゃのう」
「うぅ・・・そんな他人事みたいに・・・」
「ま、ワシにはフソウの軍事はほとんどわからんし何かあったときの亡命先が出来て万々歳じゃ。ほっほっほ」
「亡命か・・・結婚したら俺の祖父でもあるわけだからいい場所をとっておきましょうかね」

二人で笑うのをあわあわしながら聞くアレクシアに俺と陛下は更に笑みを深めるのだった。
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