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集落をつくろうの章
鍛冶師のあれこれ
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とりあえず農地の大まかな開墾は今の内にやってもらうとして農業はゴブリン達にやってもらい、工業をコボルト、外交と交渉をエルフ、諜報と国防をダークエルフとそれぞれに役割を与えて行きたい。
というわけで人足として彼女達を使う事はあっても出来ることなら責任者は彼等に任せたいのだが・・・。
「カロッゾ、農業を体系だって行うことは可能か?」
「そうですなぁ・・・村の規模ならなんとか・・・」
「ならそれでいい、農業はこの集落でゴブリン達の専売として与えるから少なくともチビ達の代で独力で管理できるように仕込んでやってくれ」
そう言うとカロッゾは驚いたように俺を見つめる。
「どうした?不満か?」
そう尋ねるとカロッゾは手をぶんぶん振って否定した。
「とととんでもない!我らにそのような過分なお役目を頂いてもよろしいのですか?」
「かまわんよ、将来ならいざ知らずコボルトは炭鉱や鉱山に住む亜人で、エルフ達は都会や旅育ちで農業ができる者が居ないのだ」
国の食料自給率は兵力や財力と並んで欠かせない物の一つであり、食料は売るほどあってようやく備えができる。今は工業として鉄鋼業と木工業による軽工業に従事しているが規模が上がれば林業だけでは辛くなるだろうし魔導金属も何時まで買ってもらえるかわからん。
で、ある以上食料を片手に引きこもって居られるくらいの食料生産能力を有してしかるべきだろう。
「そうなると次は金属を加工できる奴が欲しいな・・・ドワーフか鍛冶に心得のある者をどっかから引き抜きたいが・・・」
そう思ってふと考えを巡らせていると・・・ふと思い出した。
「いっけねえ!注文したっきりだった!」
キャサリンの紹介で剣が欲しくなり細かい注文までつけたにも関わらず結局今の今までほったらかしになってしまっていた。鉈のような剣を受け取ったがそれも彼女達との死闘により失ってしまっている。
「あーあ、なんて言ったら良いだろうなコレ」
一応拾っておいたが鉈のような剣は中ほどで折れており、黒龍の牙と相打ちという壮絶な最期を遂げている。
とりあえず時間を見つけて謝りに行こう、そうしよう。
そんなわけで俺は農業の指導兼開墾の指揮をカロッゾに任せゲイズバー商会が商品を補充する為に帰るのに便乗してリットリオを目指した。
「イヤーすまないな無理言っちゃって」
帳簿係とリタを残してナガラ達は一旦リットリオに戻るらしい。売るものの算段が凡そついている辺り流石というべきか。馬車に便乗するのも快く許可してくれたので楽チンだ。
「いいんですよ、馬車の運賃以上に稼がせてもらってますから」
営業スマイル全開だったがダークエルフやマフィアとの抗争で生き残ってきた実力を買ってくれたのだろう。すくなくとも途中の村まで護衛もいるだろうしな。
しかし山賊の類も現れることなく中継地点の村に到着し、村でゲイズバー商会子飼いの護衛が居合わせたので俺は馬を借りて一足先にリットリオを目指すことにした。
「おー、こりゃあ随分と様変わりしたなあ」
商店や色町をざっと見回ってみると多少閑散とはしていたものの治安が悪い場所にありがちなギラギラした視線を向けるものは少なくなり、朝方と言うことも手伝って一般人でも歩けるようになっていた。
商店はそれ以上に良くなり、活気に溢れていたし新規の店も増えただろう。
巡回している騎士団の人間もちらほら居るので少しばかり窮屈に感じるがそれもあの騎士団長ならおいおい調整してくれるだろう。
「さてさて、ここだな・・・」
『鍛冶屋 Wホットショット』
俺が偶然訪れた鍛冶屋はあの日からあんまり変わっていない様子だった。それどころか・・・ちょっと寂れてないか?
「おーい、開いてるか?」
そう言いつつドアを開けると中からは暗い雰囲気を纏った店主が一人カウンターに突っ伏していた。
「おい、生きてるか?」
「誰だ・・・?」
蚊の鳴くような声で呟くおっさん。どういうこったこれは。
「なんでそんな状態になってんだ?」
「・・・ウチはもうお仕舞いだ・・・」
「?」
そう言うとドワーフのおっさんはつらつらと語りだした。
「実は・・・育ててた弟子に裏切られちまったんだ」
ドワーフのおっさんことゴンゾはリットリオに店を構えた二十年から弟子を取り、暖簾分けしてたりと徐々に仲間を増やしていったがその中で若い弟子の面倒を見ていたのだが徐々に経営方針や品物の有り様の変遷をへてゴンゾは何時の間にか少数派になっていたらしい。
より良い物を作り上げる高級品志向のゴンゾと消費品としてそこそこで一般向けの安価な品を目指す昔の仲間達との商売方法に軋轢があったようだ。
そしてそれでもゴンゾは彼等に鍛冶師としてのプライドがあると信じていたようだったが結局彼等にとって鍛冶は商売のステップアップの一部でしかなかったらしく薄利多売かつ宣伝上手の彼等に負けてしまい客も弟子も奪われてしまったらしい。
「より良い物を作り上げる芸術家では食っていけないんだなあ・・・」
悲しげにそう言うゴンゾの姿はかつて日本で見た時代に取り残された職人の哀愁が漂っていた。
というわけで人足として彼女達を使う事はあっても出来ることなら責任者は彼等に任せたいのだが・・・。
「カロッゾ、農業を体系だって行うことは可能か?」
「そうですなぁ・・・村の規模ならなんとか・・・」
「ならそれでいい、農業はこの集落でゴブリン達の専売として与えるから少なくともチビ達の代で独力で管理できるように仕込んでやってくれ」
そう言うとカロッゾは驚いたように俺を見つめる。
「どうした?不満か?」
そう尋ねるとカロッゾは手をぶんぶん振って否定した。
「とととんでもない!我らにそのような過分なお役目を頂いてもよろしいのですか?」
「かまわんよ、将来ならいざ知らずコボルトは炭鉱や鉱山に住む亜人で、エルフ達は都会や旅育ちで農業ができる者が居ないのだ」
国の食料自給率は兵力や財力と並んで欠かせない物の一つであり、食料は売るほどあってようやく備えができる。今は工業として鉄鋼業と木工業による軽工業に従事しているが規模が上がれば林業だけでは辛くなるだろうし魔導金属も何時まで買ってもらえるかわからん。
で、ある以上食料を片手に引きこもって居られるくらいの食料生産能力を有してしかるべきだろう。
「そうなると次は金属を加工できる奴が欲しいな・・・ドワーフか鍛冶に心得のある者をどっかから引き抜きたいが・・・」
そう思ってふと考えを巡らせていると・・・ふと思い出した。
「いっけねえ!注文したっきりだった!」
キャサリンの紹介で剣が欲しくなり細かい注文までつけたにも関わらず結局今の今までほったらかしになってしまっていた。鉈のような剣を受け取ったがそれも彼女達との死闘により失ってしまっている。
「あーあ、なんて言ったら良いだろうなコレ」
一応拾っておいたが鉈のような剣は中ほどで折れており、黒龍の牙と相打ちという壮絶な最期を遂げている。
とりあえず時間を見つけて謝りに行こう、そうしよう。
そんなわけで俺は農業の指導兼開墾の指揮をカロッゾに任せゲイズバー商会が商品を補充する為に帰るのに便乗してリットリオを目指した。
「イヤーすまないな無理言っちゃって」
帳簿係とリタを残してナガラ達は一旦リットリオに戻るらしい。売るものの算段が凡そついている辺り流石というべきか。馬車に便乗するのも快く許可してくれたので楽チンだ。
「いいんですよ、馬車の運賃以上に稼がせてもらってますから」
営業スマイル全開だったがダークエルフやマフィアとの抗争で生き残ってきた実力を買ってくれたのだろう。すくなくとも途中の村まで護衛もいるだろうしな。
しかし山賊の類も現れることなく中継地点の村に到着し、村でゲイズバー商会子飼いの護衛が居合わせたので俺は馬を借りて一足先にリットリオを目指すことにした。
「おー、こりゃあ随分と様変わりしたなあ」
商店や色町をざっと見回ってみると多少閑散とはしていたものの治安が悪い場所にありがちなギラギラした視線を向けるものは少なくなり、朝方と言うことも手伝って一般人でも歩けるようになっていた。
商店はそれ以上に良くなり、活気に溢れていたし新規の店も増えただろう。
巡回している騎士団の人間もちらほら居るので少しばかり窮屈に感じるがそれもあの騎士団長ならおいおい調整してくれるだろう。
「さてさて、ここだな・・・」
『鍛冶屋 Wホットショット』
俺が偶然訪れた鍛冶屋はあの日からあんまり変わっていない様子だった。それどころか・・・ちょっと寂れてないか?
「おーい、開いてるか?」
そう言いつつドアを開けると中からは暗い雰囲気を纏った店主が一人カウンターに突っ伏していた。
「おい、生きてるか?」
「誰だ・・・?」
蚊の鳴くような声で呟くおっさん。どういうこったこれは。
「なんでそんな状態になってんだ?」
「・・・ウチはもうお仕舞いだ・・・」
「?」
そう言うとドワーフのおっさんはつらつらと語りだした。
「実は・・・育ててた弟子に裏切られちまったんだ」
ドワーフのおっさんことゴンゾはリットリオに店を構えた二十年から弟子を取り、暖簾分けしてたりと徐々に仲間を増やしていったがその中で若い弟子の面倒を見ていたのだが徐々に経営方針や品物の有り様の変遷をへてゴンゾは何時の間にか少数派になっていたらしい。
より良い物を作り上げる高級品志向のゴンゾと消費品としてそこそこで一般向けの安価な品を目指す昔の仲間達との商売方法に軋轢があったようだ。
そしてそれでもゴンゾは彼等に鍛冶師としてのプライドがあると信じていたようだったが結局彼等にとって鍛冶は商売のステップアップの一部でしかなかったらしく薄利多売かつ宣伝上手の彼等に負けてしまい客も弟子も奪われてしまったらしい。
「より良い物を作り上げる芸術家では食っていけないんだなあ・・・」
悲しげにそう言うゴンゾの姿はかつて日本で見た時代に取り残された職人の哀愁が漂っていた。
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