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集落をつくろうの章
どたばた帰郷
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ロバを引きながら俺はお嬢ちゃんを連れて御者と車を探す。当然ここいらにもあって可笑しくはないんだが・・・。
「おっかしいな、どうにも見当たらんぞ」
御者や馬車が詰めている駅に来て見たが空きの連中が人っ子一人居ない。どいつも契約済みと札を下げ、忙しなく荷を改めている。
「おじさん、やっぱりそのロバ頂戴」
「いや、そう言われてもこれ借り物だから・・・」
しかしこの騒ぎは一体全体どういうことだろうか。普段ならこの季節に御者達が全員駆り出されるなんて珍しい。とりあえずそこらへんの御者を捕まえて理由を聞いて見る事にした。
「おい、そこの・・・ああ、お前さんだよ。こりゃ一体なんの騒ぎだ?随分と景気が良いみたいじゃないか?」
「あー?・・・っと!大将じゃないですか!こりゃあどうも」
「おう、なんだお前ウチに来てた奴じゃないの・・・確かグルン商会の」
「いやあ、大将帰って来てたなら言ってくださいよー!」
世間話もそこそこに俺はグルン商会の連中からのこの慌しい荷物の運搬について尋ねる。するとどうやらこの付近で最近魔物の数が激減しているとかなんとか。
「減ること自体は問題ないんですが数が減りすぎてて・・・もしかすると『軍団』が出来ているのかもしれないんで皆防備を固めるために来る奴は武器や防具を此処に運んで、今此処に居る奴は女子供の避難や財産の避難でさ」
軍団とは小規模なグループしかないはずの魔物の群れが偶発的に大規模な群れを統率することである。大抵数がとんでもなく多くなるので小規模な討伐隊では焼け石に水なほどだ。規模は軽く見積もっても百倍に前後する。
「なるほどなあ・・・それなら俺も他人事じゃねえやな、それと話はついでだが金貨一枚でこの木材を運べる車と御者を探してくれないか?」
「値段はともかく何処に行くかによりますぜ、なんせ今は非常時ですからね」
俺はお嬢ちゃんに顔を向けると首を傾げている彼女を見る。そういや目的地も名前も聞いてなかったな。
「お嬢ちゃんは何処に行きたいんだったかな、それと悪いが名前も聞かせてくれ」
「マリーベル、職人都市ワーフに運んで欲しい」
「職人都市か・・・武器運搬の馬車に積めば何とかなるかもしれませんぜ」
「そうかい、ならそれで頼む・・・マリーはそれで構わないか?」
お嬢ちゃん改めマリーベルは御者の提案に乗ってくれたので俺は彼女を御者に任せて俺は一先ずロバと大八車を預け、一路実家を目指した。
「ただいまー、ちょいとヤボ用で帰ったぜー」
屋敷の裏口から入ると甲冑姿の親父とヴァルターが兵士達と話している最中だった。
「ヴォルカン!帰っていたのか?」
「ああ、ついさっきな。軍団がどうこう言ってたんで加勢に来た」
俺がそう言って首の関節を鳴らすと兵士達の気分が上向いたようだ。なんだかんだ言って頼りにされてるんだなぁ・・・俺。
「おお、若がいるなら心強い!」
「そんで軍団の内容は?」
「前回のゴブリン共が軍団化したようです」
「なるほどな、十年で力をつけたんで逆に侵攻を掛け様って腹か」
あの時の失敗、苦い思い出が蘇る。力が不完全で人間レベルだった為ゴブリンエリートの奇襲を受けて敗走したあの忌々しい思い出だ。
「ったく、大人しくしてりゃあいいモンを・・・」
ドラゴンになってからは蟻ん子みたいなモンだったがそろそろ引導を渡してやるか・・・。
「とりあえず適当に間引くわ、親父、俺今フィゼラー大森林の中腹で開拓やってるから余裕があったら来てくれよな」
「間引くって・・・それに大森林の中腹で開拓だと?!聞いてないぞ!おい!」
「言ってなかったからな、じゃあまたひと段落着いたらもう一回くるから!ヴァルター、お前も体に気をつけろよ!」
すばやくそれだけ言うと俺は急いで屋敷を飛び出した。今は仕事モードでまじめだったが親父に捕まると厄介だからな。素に戻られる前に逃げるが吉だ。
ちゃんとした帰郷にはアウロラ達を連れて帰りたいしもう少し後にしよう。
「ゴブリン共!今度という今度は貴様等を許さんぞ!」
木材売って儲けるつもりがいらん手間ばっかり増えるんだもんな。こうなったらスカッとするまでとことん付き合ってもらう!
「おい!馬鹿息子!・・・逃げおった・・・」
嵐のように帰ってきてまた居なくなった兄を前に呆れた様子の父さんと皆。兄さんらしいと言えばらしいんだけどね。
「ったく!まあ、おらん奴をアテにしても始まらん、出兵は計画通りだ」
「若が助力してくださるなら我々の邪魔になることは間違ってもありますまい、これは10年前の雪辱を果たせるかもしれませんな」
兄が顔を出しただけでこの騒ぎ様、これだけで兄が10年前より以前にどれだけ領民の為に走り回っていたのかが窺える。僕はそんな兄に代わって将来この領地を治めていけるだろうか?
「ヴァルター、お前はあんなハチャメチャな奴にならんでくれよ?ワシの身がもたないから」
「なりたくてなれるものじゃないでしょう、アレは・・・」
真似してなれるなら苦労はしない。それと、ハチャメチャなのは貴方もなんですが・・・父さん。
「おっかしいな、どうにも見当たらんぞ」
御者や馬車が詰めている駅に来て見たが空きの連中が人っ子一人居ない。どいつも契約済みと札を下げ、忙しなく荷を改めている。
「おじさん、やっぱりそのロバ頂戴」
「いや、そう言われてもこれ借り物だから・・・」
しかしこの騒ぎは一体全体どういうことだろうか。普段ならこの季節に御者達が全員駆り出されるなんて珍しい。とりあえずそこらへんの御者を捕まえて理由を聞いて見る事にした。
「おい、そこの・・・ああ、お前さんだよ。こりゃ一体なんの騒ぎだ?随分と景気が良いみたいじゃないか?」
「あー?・・・っと!大将じゃないですか!こりゃあどうも」
「おう、なんだお前ウチに来てた奴じゃないの・・・確かグルン商会の」
「いやあ、大将帰って来てたなら言ってくださいよー!」
世間話もそこそこに俺はグルン商会の連中からのこの慌しい荷物の運搬について尋ねる。するとどうやらこの付近で最近魔物の数が激減しているとかなんとか。
「減ること自体は問題ないんですが数が減りすぎてて・・・もしかすると『軍団』が出来ているのかもしれないんで皆防備を固めるために来る奴は武器や防具を此処に運んで、今此処に居る奴は女子供の避難や財産の避難でさ」
軍団とは小規模なグループしかないはずの魔物の群れが偶発的に大規模な群れを統率することである。大抵数がとんでもなく多くなるので小規模な討伐隊では焼け石に水なほどだ。規模は軽く見積もっても百倍に前後する。
「なるほどなあ・・・それなら俺も他人事じゃねえやな、それと話はついでだが金貨一枚でこの木材を運べる車と御者を探してくれないか?」
「値段はともかく何処に行くかによりますぜ、なんせ今は非常時ですからね」
俺はお嬢ちゃんに顔を向けると首を傾げている彼女を見る。そういや目的地も名前も聞いてなかったな。
「お嬢ちゃんは何処に行きたいんだったかな、それと悪いが名前も聞かせてくれ」
「マリーベル、職人都市ワーフに運んで欲しい」
「職人都市か・・・武器運搬の馬車に積めば何とかなるかもしれませんぜ」
「そうかい、ならそれで頼む・・・マリーはそれで構わないか?」
お嬢ちゃん改めマリーベルは御者の提案に乗ってくれたので俺は彼女を御者に任せて俺は一先ずロバと大八車を預け、一路実家を目指した。
「ただいまー、ちょいとヤボ用で帰ったぜー」
屋敷の裏口から入ると甲冑姿の親父とヴァルターが兵士達と話している最中だった。
「ヴォルカン!帰っていたのか?」
「ああ、ついさっきな。軍団がどうこう言ってたんで加勢に来た」
俺がそう言って首の関節を鳴らすと兵士達の気分が上向いたようだ。なんだかんだ言って頼りにされてるんだなぁ・・・俺。
「おお、若がいるなら心強い!」
「そんで軍団の内容は?」
「前回のゴブリン共が軍団化したようです」
「なるほどな、十年で力をつけたんで逆に侵攻を掛け様って腹か」
あの時の失敗、苦い思い出が蘇る。力が不完全で人間レベルだった為ゴブリンエリートの奇襲を受けて敗走したあの忌々しい思い出だ。
「ったく、大人しくしてりゃあいいモンを・・・」
ドラゴンになってからは蟻ん子みたいなモンだったがそろそろ引導を渡してやるか・・・。
「とりあえず適当に間引くわ、親父、俺今フィゼラー大森林の中腹で開拓やってるから余裕があったら来てくれよな」
「間引くって・・・それに大森林の中腹で開拓だと?!聞いてないぞ!おい!」
「言ってなかったからな、じゃあまたひと段落着いたらもう一回くるから!ヴァルター、お前も体に気をつけろよ!」
すばやくそれだけ言うと俺は急いで屋敷を飛び出した。今は仕事モードでまじめだったが親父に捕まると厄介だからな。素に戻られる前に逃げるが吉だ。
ちゃんとした帰郷にはアウロラ達を連れて帰りたいしもう少し後にしよう。
「ゴブリン共!今度という今度は貴様等を許さんぞ!」
木材売って儲けるつもりがいらん手間ばっかり増えるんだもんな。こうなったらスカッとするまでとことん付き合ってもらう!
「おい!馬鹿息子!・・・逃げおった・・・」
嵐のように帰ってきてまた居なくなった兄を前に呆れた様子の父さんと皆。兄さんらしいと言えばらしいんだけどね。
「ったく!まあ、おらん奴をアテにしても始まらん、出兵は計画通りだ」
「若が助力してくださるなら我々の邪魔になることは間違ってもありますまい、これは10年前の雪辱を果たせるかもしれませんな」
兄が顔を出しただけでこの騒ぎ様、これだけで兄が10年前より以前にどれだけ領民の為に走り回っていたのかが窺える。僕はそんな兄に代わって将来この領地を治めていけるだろうか?
「ヴァルター、お前はあんなハチャメチャな奴にならんでくれよ?ワシの身がもたないから」
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