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僕と大地の女神様
誤魔化せ!
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なんか凄く挙動不審な感じだ。そわそわしてる。
「・・・」
この屋敷は基本的に男所帯だからかもしれない。ちらちらと僕の体を見てるのがわかる。相手が冷静じゃない内に移動しよう。
「えっと、僕は行くから・・・練習頑張ってね」
「は、はい!」
声!凄い上ずってる!こっちの方が恥ずかしいからやめて!
「ふぅー・・・やっぱり僕だと思われてない感じなのかな?」
訓練場を抜けて本館前の庭でこっそりと休憩。正門につながるこの庭は広くて行軍の訓練にも使われる場所だ。まだ時間が早いので人はいないけど訓練場に人が来た事を考えるとここにもじきに人が来るかもしれない。
ぼんやりしながら僕は空を見上げていた。
「あれは誰だろう・・・」
訓練場にいつもは一番にやって来ていた少年はぼんやりと井戸端に立ち尽くしていた。
「リゲル様の親戚か?」
この屋敷には騎士や戦士見習いの宿舎があり、屋敷の本館には使用人もいるが基本的に長く仕える壮年から老年の男ばかり。
女性もいるにはいるが大抵がこちらも中年から老年の女性ばかり。若い人も既婚者か、屋敷の主人に仕える騎士や戦士の関係者ばかりで大人ばかり。
美しさに目を奪われてはいたものの少年も騎士を志している。おおよそではあるが相手の特徴を把握していた。
「あんな若い人が訓練場に何の用事があるんだろう・・・」
自分と似た年格好と思われる少女に戸惑っていたが冷静に考えると不思議なものだった。
「そういえばヨナ坊っちゃんにどことなく似ていたような・・・?」
少年は少し考えてみたものの結局何もわからないので早朝の自主連に頭を切り替える事にし、壊れたカカシに気付いて泣く泣く修理する羽目になった。
「ちょっとお腹空いてきたかも・・・」
食べたばっかりなのになんだかお腹が空いてきた。うう、どうしよう、朝ごはんに謝りついでにいくべきだろうか。
行くべきなんだろうけど、どうにも踏ん切りがつかない。
父さん怒るだろうか?
そう思いながらふと屋敷に目をやると窓の近くに父さんがいるのが見えた。となりにはカーソンもいる。
「どうしたんだろ?」
二人はなにやら話し合っている。カーソンがちょっと怒ってるような・・・。あ、父さんが目線を逸らした。
父さんは悩むと目線を逸らして考え込むことがある。身振りが割りと大げさなので家族にはよく分かるのだ。
「っ・・・」
目が合った。が、そのまま父は何もリアクションせずにカーソンと向かい合った。
僕だとわからなかったのだろうか。それとも・・・
「・・・!」
昨日の事が過り、視界がぼやける。そうだ、僕は性別が変わってしまったけどその他は何も変わっていないのだ。
実力が伴っていないこと、実績が何もないこと。
父に期待されていないこと。
「学校にいかなきゃ・・・」
まだ薄暗かった外ももう明るい。父さんとカーソンが何を話していたか気になるけどしょうがない。
「おはようございます」
「おはようございます、ヨナ君・・・だよね?」
「そうです、髪が伸びたので・・・」
校門に立っていた先生が不思議そうに挨拶を返してくれる。
まぁ同じ先生に毎日会うわけじゃないけど二、三日で姿が変わってたら流石に変だよね。
この国の学校は様々な学問に加えて剣技や戦術のような実技まで幅広く学べる大学のような場所である。一般人が就職の為に技術を学びにくる事もあり、学生の年齢も様々である。
大学の規定として卒業には座学と実技を一定量履修する義務があるが在籍期限があって無いような状況なので何年も在籍している生徒もいる。
「実技の試験っていつだったかな」
新入生は剣の授業から始めて、基礎を修めてから専門の武器術を扱う授業へ行く。その中で僕はこの基礎の剣の授業を半年掛けても突破できないでいた。
同時期に入学した生徒はもう専門の授業を受けているにも関わらずだ。入学試験も座学で突破したのでさらに肩身が狭い。
学者を目指したら?
と先生に言われた事もある。でもそれでは意味がない。僕はフォルキン家の男なのだ。
「あった、今日じゃん」
疎らな掲示板に張りだされた実技試験の項目を見つけた。
実技試験は先生の予定にも左右されるので早目の受講が肝要だ。
剣の授業は一番小さい運動場で行われる。設備もなにもないが新入生が駆け足で済ませる授業らしいししょうがない。
「おはようございます」
「おはようございます、新入生かな?早いのに感心感心」
運動場には若い先生が立っていた。前にも会った筈なんだけどな。
「せっかくだし実技試験受けるかい?今なら誰もいないし、不合格でも練習にしといてあげるよ」
「やった、じゃあお願いします!」
籠に無造作に入っている木剣を取って向かい合うと先生もおなじ
ように木剣を取って向かい合う。
「試験内容はわかってるかな?」
「はい、受け流しを試合形式で三回することと一回有効打をとることです」
「その通りだね、それじゃあいくよ!」
「・・・」
この屋敷は基本的に男所帯だからかもしれない。ちらちらと僕の体を見てるのがわかる。相手が冷静じゃない内に移動しよう。
「えっと、僕は行くから・・・練習頑張ってね」
「は、はい!」
声!凄い上ずってる!こっちの方が恥ずかしいからやめて!
「ふぅー・・・やっぱり僕だと思われてない感じなのかな?」
訓練場を抜けて本館前の庭でこっそりと休憩。正門につながるこの庭は広くて行軍の訓練にも使われる場所だ。まだ時間が早いので人はいないけど訓練場に人が来た事を考えるとここにもじきに人が来るかもしれない。
ぼんやりしながら僕は空を見上げていた。
「あれは誰だろう・・・」
訓練場にいつもは一番にやって来ていた少年はぼんやりと井戸端に立ち尽くしていた。
「リゲル様の親戚か?」
この屋敷には騎士や戦士見習いの宿舎があり、屋敷の本館には使用人もいるが基本的に長く仕える壮年から老年の男ばかり。
女性もいるにはいるが大抵がこちらも中年から老年の女性ばかり。若い人も既婚者か、屋敷の主人に仕える騎士や戦士の関係者ばかりで大人ばかり。
美しさに目を奪われてはいたものの少年も騎士を志している。おおよそではあるが相手の特徴を把握していた。
「あんな若い人が訓練場に何の用事があるんだろう・・・」
自分と似た年格好と思われる少女に戸惑っていたが冷静に考えると不思議なものだった。
「そういえばヨナ坊っちゃんにどことなく似ていたような・・・?」
少年は少し考えてみたものの結局何もわからないので早朝の自主連に頭を切り替える事にし、壊れたカカシに気付いて泣く泣く修理する羽目になった。
「ちょっとお腹空いてきたかも・・・」
食べたばっかりなのになんだかお腹が空いてきた。うう、どうしよう、朝ごはんに謝りついでにいくべきだろうか。
行くべきなんだろうけど、どうにも踏ん切りがつかない。
父さん怒るだろうか?
そう思いながらふと屋敷に目をやると窓の近くに父さんがいるのが見えた。となりにはカーソンもいる。
「どうしたんだろ?」
二人はなにやら話し合っている。カーソンがちょっと怒ってるような・・・。あ、父さんが目線を逸らした。
父さんは悩むと目線を逸らして考え込むことがある。身振りが割りと大げさなので家族にはよく分かるのだ。
「っ・・・」
目が合った。が、そのまま父は何もリアクションせずにカーソンと向かい合った。
僕だとわからなかったのだろうか。それとも・・・
「・・・!」
昨日の事が過り、視界がぼやける。そうだ、僕は性別が変わってしまったけどその他は何も変わっていないのだ。
実力が伴っていないこと、実績が何もないこと。
父に期待されていないこと。
「学校にいかなきゃ・・・」
まだ薄暗かった外ももう明るい。父さんとカーソンが何を話していたか気になるけどしょうがない。
「おはようございます」
「おはようございます、ヨナ君・・・だよね?」
「そうです、髪が伸びたので・・・」
校門に立っていた先生が不思議そうに挨拶を返してくれる。
まぁ同じ先生に毎日会うわけじゃないけど二、三日で姿が変わってたら流石に変だよね。
この国の学校は様々な学問に加えて剣技や戦術のような実技まで幅広く学べる大学のような場所である。一般人が就職の為に技術を学びにくる事もあり、学生の年齢も様々である。
大学の規定として卒業には座学と実技を一定量履修する義務があるが在籍期限があって無いような状況なので何年も在籍している生徒もいる。
「実技の試験っていつだったかな」
新入生は剣の授業から始めて、基礎を修めてから専門の武器術を扱う授業へ行く。その中で僕はこの基礎の剣の授業を半年掛けても突破できないでいた。
同時期に入学した生徒はもう専門の授業を受けているにも関わらずだ。入学試験も座学で突破したのでさらに肩身が狭い。
学者を目指したら?
と先生に言われた事もある。でもそれでは意味がない。僕はフォルキン家の男なのだ。
「あった、今日じゃん」
疎らな掲示板に張りだされた実技試験の項目を見つけた。
実技試験は先生の予定にも左右されるので早目の受講が肝要だ。
剣の授業は一番小さい運動場で行われる。設備もなにもないが新入生が駆け足で済ませる授業らしいししょうがない。
「おはようございます」
「おはようございます、新入生かな?早いのに感心感心」
運動場には若い先生が立っていた。前にも会った筈なんだけどな。
「せっかくだし実技試験受けるかい?今なら誰もいないし、不合格でも練習にしといてあげるよ」
「やった、じゃあお願いします!」
籠に無造作に入っている木剣を取って向かい合うと先生もおなじ
ように木剣を取って向かい合う。
「試験内容はわかってるかな?」
「はい、受け流しを試合形式で三回することと一回有効打をとることです」
「その通りだね、それじゃあいくよ!」
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