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次の町 モリッツ
朝食とこれから
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なんだか昨日助けた女性の中の一人の視線が妙に気になる。熱っぽいというかなんというか。
「とりあえず全員揃った?」
ギルドの二人も座らせて食事の席につかせる。受付の人はまだこっくりこっくりとしているがそれでも一応全員が席についた。
「一日の始まりは朝ごはんから、ってなわけで・・・皆手を合わせてー」
先生が教えてくれた食事の前の挨拶を此処でも行ってみようとおもう。習慣をつけて、みんなで連帯感を持ってもらおう。意味としてもいいものがあるし。
「?」
「えっと・・・」
ジェイナとおじさんとリッキーは知っているのでよどみなく、他の人たちもそれを真似するようにして全員が手を合わせる。
「これは食事の前に全ての食材と、作った人に感謝を告げる意味合いがあるから。皆で食事をするときはもちろん、個人で食べる時もできるだけしてみてね」
私がそう言うと皆は感心したように声をもらし、全員が改めて合わせた手を見つめる。
「最後にこう一言言うの。『いただきます』ってね。それじゃあいただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
皆が一斉に言い、それから自分達のお皿の料理を食べ始める。全員が思い思いのペースで食べ進め、お皿はどんどんと空になっていった。
「全員ちゃんと食べられた?それじゃあ始まりの挨拶があるのならもちろん、終わりの挨拶もあります」
頃合いを見て立ち、再び全員の注目を集めてから言う。全員がちゃんと聞いてくれているようでうれしい。
「最初と同じように両手を合わせて、こう言うの、『ご馳走様でした』ってね」
私がそう言って再び手を合わせると全員が同じように手を合わせる。
「それじゃあ、『ご馳走様でした』!」
「「「「「ご馳走さまでしたーっ」」」」」」
子供たちは笑顔で、そしてそれを見守る大人たちも笑顔。とてもよろしい。こういった何気ない習慣こそが幸せの第一歩なのだろう。先生に、そして孤児院の皆で覚えた大切な事。穏やかで、優しいこと。
「お嬢ちゃんは面白い事をしってるんだな」
マックさんがそう言うと髭をいじって笑う。そんな彼の顔には素直に感心した様子で、なんだかむずがゆくなる。
「そうかな、教わったことばかりだけど」
「あたりめえだろ、そうじゃなきゃお前さんが出まかせ言ってることになるぞ」
おじさんが隣から笑いながら言うとマックさんも笑う。豪快な二人が笑うと机が揺れるような感覚に陥るくらいだ。
「学ぶ機会があって、それを良いなと思う感覚があるならそれは素直にいいことじゃねえか」
「知識と知恵の違いに似てるってもんだ」
二人はやはり長い間パーティを組んでいたからか呼吸がぴったり合っている。そんな二人に褒められるとなんとなく気恥ずかしくなってプイとそっぽを向いた。すると再び件の女性と目があった。
「貴女は・・・?」
「ファティナと申します、自己紹介が遅れてしまって申し訳ありません」
ファティナと名乗った女性は捕まっていた女性たちの中でも飛びぬけて美しく、一晩の休息ではまだまだくたびれた様子が抜けきってはいないもののそれでも目を見張るものだ。
「ファティナさん、貴女は・・・」
「そんな、呼び捨てでかまいません」
「えっと・・・それじゃあファティナ、貴女達にはこれからこのギルドで働いてもらうわけなんだけどそれは大丈夫?」
「何をするのでしょうか?」
そう言う彼女に私は少し考える。彼女達はしばらくは此処で仕事をしてと言いたいがそもそもこのギルドは閑古鳥が鳴いている状態なのだ。まあその分仕事を教える時間もたくさんあるという事でもあるのだけど。
「ここでは本来近所の人から依頼をもらって、それをこのギルドに所属する人に斡旋してあげて、その手間賃で生計を建てるものなんだけど・・・」
思わずため息が漏れ、私が考える事が少しわかったのか彼女も少し苦笑する。そう、仕事がないのだ。雇う余裕というより雇っても回せる仕事がない。という現実がある。
「現状はそれも厳しい、とりあえず私が薬草の目利きと調合が出来るからそこからかな。リッキー・・・えっと小さい子達と年の近い子がいるんだけどその子に薬草の種類や簡単な調合なんかを教えていくつもりだからゆくゆくはその子と私で調合と目利き、貴女達にそれの受付とかをやってもらえたらいいかも」
「わかりました、皆とも相談はしますが・・・概ねの了承はすぐにでも取れるでしょう。文字は少し苦労はしますが私は理解できます、仕事が軌道に乗るまでには皆にも教えておきましょう」
ファティナはそう言うとほほ笑んだ。身なりは粗末なのだがどうにも気品というか、身のこなしに知性が感じられる。いいとこの出なのだろうか。
「そう言う事なら任せるわ、とりあえず私達は手に付けた仕事をこなさないといけないから」
そう言うと私はジェイナを連れてギルドを出る事にした。今日はあそこの店に行って、みんなの分の稼ぎを捻出しなければならないからだ。ジェイナは店に属するから良いとして、私は客商売だから何かしらの工夫や知識が必要になるかな・・・不安だ。
「とりあえず全員揃った?」
ギルドの二人も座らせて食事の席につかせる。受付の人はまだこっくりこっくりとしているがそれでも一応全員が席についた。
「一日の始まりは朝ごはんから、ってなわけで・・・皆手を合わせてー」
先生が教えてくれた食事の前の挨拶を此処でも行ってみようとおもう。習慣をつけて、みんなで連帯感を持ってもらおう。意味としてもいいものがあるし。
「?」
「えっと・・・」
ジェイナとおじさんとリッキーは知っているのでよどみなく、他の人たちもそれを真似するようにして全員が手を合わせる。
「これは食事の前に全ての食材と、作った人に感謝を告げる意味合いがあるから。皆で食事をするときはもちろん、個人で食べる時もできるだけしてみてね」
私がそう言うと皆は感心したように声をもらし、全員が改めて合わせた手を見つめる。
「最後にこう一言言うの。『いただきます』ってね。それじゃあいただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
皆が一斉に言い、それから自分達のお皿の料理を食べ始める。全員が思い思いのペースで食べ進め、お皿はどんどんと空になっていった。
「全員ちゃんと食べられた?それじゃあ始まりの挨拶があるのならもちろん、終わりの挨拶もあります」
頃合いを見て立ち、再び全員の注目を集めてから言う。全員がちゃんと聞いてくれているようでうれしい。
「最初と同じように両手を合わせて、こう言うの、『ご馳走様でした』ってね」
私がそう言って再び手を合わせると全員が同じように手を合わせる。
「それじゃあ、『ご馳走様でした』!」
「「「「「ご馳走さまでしたーっ」」」」」」
子供たちは笑顔で、そしてそれを見守る大人たちも笑顔。とてもよろしい。こういった何気ない習慣こそが幸せの第一歩なのだろう。先生に、そして孤児院の皆で覚えた大切な事。穏やかで、優しいこと。
「お嬢ちゃんは面白い事をしってるんだな」
マックさんがそう言うと髭をいじって笑う。そんな彼の顔には素直に感心した様子で、なんだかむずがゆくなる。
「そうかな、教わったことばかりだけど」
「あたりめえだろ、そうじゃなきゃお前さんが出まかせ言ってることになるぞ」
おじさんが隣から笑いながら言うとマックさんも笑う。豪快な二人が笑うと机が揺れるような感覚に陥るくらいだ。
「学ぶ機会があって、それを良いなと思う感覚があるならそれは素直にいいことじゃねえか」
「知識と知恵の違いに似てるってもんだ」
二人はやはり長い間パーティを組んでいたからか呼吸がぴったり合っている。そんな二人に褒められるとなんとなく気恥ずかしくなってプイとそっぽを向いた。すると再び件の女性と目があった。
「貴女は・・・?」
「ファティナと申します、自己紹介が遅れてしまって申し訳ありません」
ファティナと名乗った女性は捕まっていた女性たちの中でも飛びぬけて美しく、一晩の休息ではまだまだくたびれた様子が抜けきってはいないもののそれでも目を見張るものだ。
「ファティナさん、貴女は・・・」
「そんな、呼び捨てでかまいません」
「えっと・・・それじゃあファティナ、貴女達にはこれからこのギルドで働いてもらうわけなんだけどそれは大丈夫?」
「何をするのでしょうか?」
そう言う彼女に私は少し考える。彼女達はしばらくは此処で仕事をしてと言いたいがそもそもこのギルドは閑古鳥が鳴いている状態なのだ。まあその分仕事を教える時間もたくさんあるという事でもあるのだけど。
「ここでは本来近所の人から依頼をもらって、それをこのギルドに所属する人に斡旋してあげて、その手間賃で生計を建てるものなんだけど・・・」
思わずため息が漏れ、私が考える事が少しわかったのか彼女も少し苦笑する。そう、仕事がないのだ。雇う余裕というより雇っても回せる仕事がない。という現実がある。
「現状はそれも厳しい、とりあえず私が薬草の目利きと調合が出来るからそこからかな。リッキー・・・えっと小さい子達と年の近い子がいるんだけどその子に薬草の種類や簡単な調合なんかを教えていくつもりだからゆくゆくはその子と私で調合と目利き、貴女達にそれの受付とかをやってもらえたらいいかも」
「わかりました、皆とも相談はしますが・・・概ねの了承はすぐにでも取れるでしょう。文字は少し苦労はしますが私は理解できます、仕事が軌道に乗るまでには皆にも教えておきましょう」
ファティナはそう言うとほほ笑んだ。身なりは粗末なのだがどうにも気品というか、身のこなしに知性が感じられる。いいとこの出なのだろうか。
「そう言う事なら任せるわ、とりあえず私達は手に付けた仕事をこなさないといけないから」
そう言うと私はジェイナを連れてギルドを出る事にした。今日はあそこの店に行って、みんなの分の稼ぎを捻出しなければならないからだ。ジェイナは店に属するから良いとして、私は客商売だから何かしらの工夫や知識が必要になるかな・・・不安だ。
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