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次の町 モリッツ
ギルドの本性
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男性は色々と酷い目にあったのだろう、時折顔をしかめたり拳を握ったりと落ち着かない様子で言葉に詰まる。
「誰も可笑しいとは思わなかったのか?」
「確かに最初は違約金の高さに驚いた奴もいたがギルドにはたくさん人がいて誰も疑わなかった・・・せいぜい夜逃げとか、そう言うのを防ぐためなんだろうって」
他の人がたくさんいて、上手くいっているなら自分達でも大丈夫だろう。そう思い男性や他の新米冒険者たちはどんどんと規約に承諾して冒険者登録を始めたそうだ。
「けど・・・最初の討伐クエストで俺たちが甘かったことに気づかされた」
丁寧な説明に隠された悪意が初心者の冒険者に襲い掛かったのは野ウサギの魔物、ウィードラビットの次に取り掛かったパラライイーターに出会った時。
「紫と黒っぽい色のまだらのトカゲみたいな魔物と戦った時でした・・・」
「パラライイーターだな、向こうさんはどう書いてたか知らんが」
「依頼書ではツリーイーターと・・・見た目が違いましたけどただの色違いと」
依頼書ではツリーイーターと紹介されていたそうだ。見た目は近いが彼らはまったくの別物で森林を食い荒らす害獣だが動きは鈍く、樹皮や木の幹をバリバリと齧ってしまう牙にさえ気を付ければ簡単に倒せるがパラライイーターは毒草を好んで食べる厄介な魔物で距離が離れていても体内に貯めた毒を噴射して相手を麻痺させたり毒にかけたりする上に草や野草を刈り取って食べる特性上牙は鋭く噛まれると重傷になりやすい厄介な敵だ。
しかも地方に自生する毒草の生態によってパラライという名前にそぐわない強烈な毒を使ったりもする為ベテランでも苦戦することもなる経験者泣かせな面もある。
「まさか毒があるとは思わず全員で取り囲むようにして・・・」
「悲惨だな・・・」
パラライイーターは毒漬けの体そのものが身を護る武器だ。そして汗のように微量の毒を噴射して毒の霧を発生させたりもする。なので知らずに取り囲んだりしようものなら・・・。
「全員が眩暈や吐き気を覚えて・・・退治どころじゃありませんでした・・・」
「だろうな、毒の霧にやられたんだな・・・風下の奴はもっとひどかったろう」
全員が近づいた途端に体調不良に襲われて攻撃どころではなくなってしまったそうだ。そしてフェルグスの指摘どおり程度に差はあったものの風下に立っていた仲間が立てないほどの不調を訴えた。
「そこから吐きながらどうにか隣の奴を引きずって逃げたんですが・・・正面に立った奴が・・・」
「運が悪かったな・・・パラライイーターは獲物を狩らない、だからどこを噛めば仕留められるか知らないんだ」
パラライイーターは草食であるため人や獣は食べない。だがそれ故に仕留め方をしらない。致命傷を与える為に彼らは執拗に敵を攻撃する獰猛さでも知られる。
「足や手をひたすら噛まれて・・・肘と膝だけになるまで・・・」
思い出したのか男性は肩を抱いて青い顔をした。パラライイーターの牙も当然ながら猛毒に浸されている。霧や噴射する毒とはけた違いの量が体内に入り込むのだ。
「そのあと肌が真っ青から紫になりだしたところで皆必死で・・・ううぅ」
どうなるか知っているだけにフェルグスも思わず顔をしかめた。毒消しが無意味になる量の毒を浴びた人間の肌がパラライイーターの魔力と毒に負けて紫色に変色する。そしてそれは動物たちによって処理されることもなくアンデッドになっている可能性が高い。
「それから俺たちはギルドに逃げ帰って・・・」
「依頼失敗の通知を下された・・・か」
「それからは奴隷同然でした・・・いつの間にか家族の居場所まで知られて、働き過ぎて死んだ奴も」
その後は依頼失敗の補填の為にギルドの下請けとして低賃金で肉体労働など様々な労働を科されたという。
「抗議はしなかったのか?」
「毒で朦朧としている間に色んな薬を使ったからその代金も払えと言われて・・・そういえば他のメンバーが何人か抗議に行ったはずなんですが・・・」
「多分消されたな」
フェルグスがそう言うと男性は再び顔を青くした。
「な、なぜ・・・?」
「お前さん、自分がどんな目にあったか覚えてねえのか?都合の悪いヤツを生かしとくつもりはねえんだろうさ」
「しかし・・・じゃあ死体は?」
「それこそ今から立つ建物の下に埋めちまうなりお前さんよりも切羽詰まったヤツなりに処理させればいいだろうが」
例え怪しくとも他人の家を調べるのは難しい。それが疑惑程度となるとさらにである。もしくは獣の多い人気のない場所に装備品をはぎ取って捨てておけば勝手に処理されていく。
フェルグスは自分で言っておきながらその予想がはずれてくれることをなんとなく思っていた。
「汚い世界に触れるのは初めてじゃあねえが・・・あまり嬢ちゃんとリッキーを触れさせたくねえな」
フェルグスもマックも、そしておそらくオーガンもそれなりに経験はしているだろうが彼にとってまだ年若いリーシュやリッキーにこんな世界を知ってほしくなかった。
「誰も可笑しいとは思わなかったのか?」
「確かに最初は違約金の高さに驚いた奴もいたがギルドにはたくさん人がいて誰も疑わなかった・・・せいぜい夜逃げとか、そう言うのを防ぐためなんだろうって」
他の人がたくさんいて、上手くいっているなら自分達でも大丈夫だろう。そう思い男性や他の新米冒険者たちはどんどんと規約に承諾して冒険者登録を始めたそうだ。
「けど・・・最初の討伐クエストで俺たちが甘かったことに気づかされた」
丁寧な説明に隠された悪意が初心者の冒険者に襲い掛かったのは野ウサギの魔物、ウィードラビットの次に取り掛かったパラライイーターに出会った時。
「紫と黒っぽい色のまだらのトカゲみたいな魔物と戦った時でした・・・」
「パラライイーターだな、向こうさんはどう書いてたか知らんが」
「依頼書ではツリーイーターと・・・見た目が違いましたけどただの色違いと」
依頼書ではツリーイーターと紹介されていたそうだ。見た目は近いが彼らはまったくの別物で森林を食い荒らす害獣だが動きは鈍く、樹皮や木の幹をバリバリと齧ってしまう牙にさえ気を付ければ簡単に倒せるがパラライイーターは毒草を好んで食べる厄介な魔物で距離が離れていても体内に貯めた毒を噴射して相手を麻痺させたり毒にかけたりする上に草や野草を刈り取って食べる特性上牙は鋭く噛まれると重傷になりやすい厄介な敵だ。
しかも地方に自生する毒草の生態によってパラライという名前にそぐわない強烈な毒を使ったりもする為ベテランでも苦戦することもなる経験者泣かせな面もある。
「まさか毒があるとは思わず全員で取り囲むようにして・・・」
「悲惨だな・・・」
パラライイーターは毒漬けの体そのものが身を護る武器だ。そして汗のように微量の毒を噴射して毒の霧を発生させたりもする。なので知らずに取り囲んだりしようものなら・・・。
「全員が眩暈や吐き気を覚えて・・・退治どころじゃありませんでした・・・」
「だろうな、毒の霧にやられたんだな・・・風下の奴はもっとひどかったろう」
全員が近づいた途端に体調不良に襲われて攻撃どころではなくなってしまったそうだ。そしてフェルグスの指摘どおり程度に差はあったものの風下に立っていた仲間が立てないほどの不調を訴えた。
「そこから吐きながらどうにか隣の奴を引きずって逃げたんですが・・・正面に立った奴が・・・」
「運が悪かったな・・・パラライイーターは獲物を狩らない、だからどこを噛めば仕留められるか知らないんだ」
パラライイーターは草食であるため人や獣は食べない。だがそれ故に仕留め方をしらない。致命傷を与える為に彼らは執拗に敵を攻撃する獰猛さでも知られる。
「足や手をひたすら噛まれて・・・肘と膝だけになるまで・・・」
思い出したのか男性は肩を抱いて青い顔をした。パラライイーターの牙も当然ながら猛毒に浸されている。霧や噴射する毒とはけた違いの量が体内に入り込むのだ。
「そのあと肌が真っ青から紫になりだしたところで皆必死で・・・ううぅ」
どうなるか知っているだけにフェルグスも思わず顔をしかめた。毒消しが無意味になる量の毒を浴びた人間の肌がパラライイーターの魔力と毒に負けて紫色に変色する。そしてそれは動物たちによって処理されることもなくアンデッドになっている可能性が高い。
「それから俺たちはギルドに逃げ帰って・・・」
「依頼失敗の通知を下された・・・か」
「それからは奴隷同然でした・・・いつの間にか家族の居場所まで知られて、働き過ぎて死んだ奴も」
その後は依頼失敗の補填の為にギルドの下請けとして低賃金で肉体労働など様々な労働を科されたという。
「抗議はしなかったのか?」
「毒で朦朧としている間に色んな薬を使ったからその代金も払えと言われて・・・そういえば他のメンバーが何人か抗議に行ったはずなんですが・・・」
「多分消されたな」
フェルグスがそう言うと男性は再び顔を青くした。
「な、なぜ・・・?」
「お前さん、自分がどんな目にあったか覚えてねえのか?都合の悪いヤツを生かしとくつもりはねえんだろうさ」
「しかし・・・じゃあ死体は?」
「それこそ今から立つ建物の下に埋めちまうなりお前さんよりも切羽詰まったヤツなりに処理させればいいだろうが」
例え怪しくとも他人の家を調べるのは難しい。それが疑惑程度となるとさらにである。もしくは獣の多い人気のない場所に装備品をはぎ取って捨てておけば勝手に処理されていく。
フェルグスは自分で言っておきながらその予想がはずれてくれることをなんとなく思っていた。
「汚い世界に触れるのは初めてじゃあねえが・・・あまり嬢ちゃんとリッキーを触れさせたくねえな」
フェルグスもマックも、そしておそらくオーガンもそれなりに経験はしているだろうが彼にとってまだ年若いリーシュやリッキーにこんな世界を知ってほしくなかった。
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