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次の町 モリッツ
夜の一幕
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四人になったが次に欠伸を漏らしたのはオーガンだった。もともと体力的には自信のなさそうな彼だけに順当な順番だろうか。
「お前さんも寝ちまえ、何かあったときにお前さんが起きててもしょうがねえ」
「そう・・・ですね、そうさせていただきます」
私を含む四人の中で咄嗟の動作でどれを取っても一般人レベルであろう彼はそそくさと御者の場所へと陣取ると毛布をかぶって寝息を立て始めた。
「お嬢ちゃんたちは平気なのか?」
「赤ちゃんの面倒を見てたこともたくさんあるから夜中は平気」
「狩人は夜が本番」
ジェイナの瞳が焚火に照らされているにも関わらずすうっと小さくなった。それに伴って数匹の獣が焚火を囲むように現れる。
「いつの間に!」
「静かに、私の友達」
おじさんが立ち上がろうとするのを宥めてジェイナが亜空間倉庫から取り出した肉の塊を口で引きちぎって投げた。
「何してるんだ?」
「縄張りを抜ける為に対価を支払う、そうすると獣と出くわさなくなる。」
わざわざ口で引きちぎるのは非効率かもしれないが意味があるのだろうか。
「口で千切るのはどういう意味があるの?」
「毒の有無と誰がくれたかを臭いで証明する」
鳶色の瞳が私達を見つめている。焚火に照らし出された獣たちはおそらく狼系統なのだろう、遠吠えと共に肉を受け取ると影のように音もたてず消えて行くと再び遠吠えが聞こえた。
「ここらへんは通ったことがあるから狼も熊も知り合い、今みたいに食料を分ければ無事に通れる」
「テイマーとも違う・・・が、お嬢ちゃんの能力ってんなら心配しなくていいってことなんだな」
冒険者の流儀として他人の能力を詮索しないという暗黙のルールがある。それ故におじさんもとにかく安全かどうかという確認だけしてごろりと横になった。獣避けどころか危険な肉食の獣と話が通じるなら恐れるものはない。
見張りは獣がやってくれるし、ジェイナと私、それに影に紛れて焚火に当たっているジョンが居ればそうそう奇襲は受けないだろうし。
「あ、でもお願いもされた」
「お願い?」
「子供を見といて欲しいって」
そう言うと影からぴょこぴょこと二十匹くらいの小さな狼の子供が飛び出してくると私達の傍で丸くなった。
「面倒は構わないけどどうして?」
「私達を中心に縄張りを作るから子供たちを守れなくなるって・・・だから一か所に集めて私達ごと守るって」
「なるほど」
子供たちはジェイナにまったく怯える素振りも無く、焚火から適度に距離をとって暖をとりつつうとうとしている。
すごく可愛い。私のところにも何匹か来たがさすがにおじさんのところには来なかった。ジェイナの臭いが私に移っているからだろうか。
「オーガンたちが驚かないといいけど」
「心配ない、明け方には居なくなる」
ジェイナはそう言っているがオーガンが心なしか震えている気がする。あれ気づいて寝たふりしてるんじゃないかな。そう思いつつも私は座った態勢のまま少し目を閉じた。
「はぁ、昨日は怖い夢を見ました」
翌朝、オーガンはそんなことを言った。
「怖い夢ってなによ?」
「狼に囲まれる夢を見ましたよ、臭いも凄いリアルで・・・」
「あ、そう・・・」
昨晩はただうなされていただけのようだ。可哀想な事をした気もするが私にはどうしようもないし、ジェイナの言う通り明け方、おじさんが起きる頃には居なくなっていたのでわざわざ怖がらせる事もないだろう。
「さて、朝ごはん食べたら移動しましょうか」
昨日のスープを温めなおし、パンを軽く焼いてから朝食を簡単に済ませると私達は早々に出発した。
「見えてきました・・・、あれがモリッツです」
残り二日はなんてことはなく、無事に通り過ぎる事ができた。そうして私達が訪れた町は前回の町やゴウリ村より遥かに大規模な町で、もはや街といった方がいいのでは?といった様子だ。王都に行ったことはないけど王都のような大都市といって過言ではないのでは無いだろうか。
「ここが・・・モリッツ?とても王都から離れた場所にあるとは思えないわ」
「王都に次ぐ第二の都市ともいわれております・・・」
「マックは此処で働いてやがんのか・・・」
自分が都会に住んでいるとは思ってもいなかったがなんとなく居心地の悪さを感じる。田舎者だからかな。
近づくにつれて町よりも遥かに大きな壁と大勢の兵士達がモリッツを訪れる人々に対し検問を行っている。
「検問か、私達の身分証とか大丈夫?」
「ええ、私の護衛という事で許可が出るはずです・・・」
長い列だ。まさに長蛇の列いった様相だがのんびりと馬車に揺られているだけなのでオーガンと違い気楽だ。
順番が来るまで待てばいい。
「すごい列だね」
「出入りの量はこれでも少ない見てえだぞ、すれ違った商人連中がボヤいてた」
「へー、そうなんだ」
手持無沙汰なので私は馬車の中で薬草の調合でもすることにした。
「お前さんも寝ちまえ、何かあったときにお前さんが起きててもしょうがねえ」
「そう・・・ですね、そうさせていただきます」
私を含む四人の中で咄嗟の動作でどれを取っても一般人レベルであろう彼はそそくさと御者の場所へと陣取ると毛布をかぶって寝息を立て始めた。
「お嬢ちゃんたちは平気なのか?」
「赤ちゃんの面倒を見てたこともたくさんあるから夜中は平気」
「狩人は夜が本番」
ジェイナの瞳が焚火に照らされているにも関わらずすうっと小さくなった。それに伴って数匹の獣が焚火を囲むように現れる。
「いつの間に!」
「静かに、私の友達」
おじさんが立ち上がろうとするのを宥めてジェイナが亜空間倉庫から取り出した肉の塊を口で引きちぎって投げた。
「何してるんだ?」
「縄張りを抜ける為に対価を支払う、そうすると獣と出くわさなくなる。」
わざわざ口で引きちぎるのは非効率かもしれないが意味があるのだろうか。
「口で千切るのはどういう意味があるの?」
「毒の有無と誰がくれたかを臭いで証明する」
鳶色の瞳が私達を見つめている。焚火に照らし出された獣たちはおそらく狼系統なのだろう、遠吠えと共に肉を受け取ると影のように音もたてず消えて行くと再び遠吠えが聞こえた。
「ここらへんは通ったことがあるから狼も熊も知り合い、今みたいに食料を分ければ無事に通れる」
「テイマーとも違う・・・が、お嬢ちゃんの能力ってんなら心配しなくていいってことなんだな」
冒険者の流儀として他人の能力を詮索しないという暗黙のルールがある。それ故におじさんもとにかく安全かどうかという確認だけしてごろりと横になった。獣避けどころか危険な肉食の獣と話が通じるなら恐れるものはない。
見張りは獣がやってくれるし、ジェイナと私、それに影に紛れて焚火に当たっているジョンが居ればそうそう奇襲は受けないだろうし。
「あ、でもお願いもされた」
「お願い?」
「子供を見といて欲しいって」
そう言うと影からぴょこぴょこと二十匹くらいの小さな狼の子供が飛び出してくると私達の傍で丸くなった。
「面倒は構わないけどどうして?」
「私達を中心に縄張りを作るから子供たちを守れなくなるって・・・だから一か所に集めて私達ごと守るって」
「なるほど」
子供たちはジェイナにまったく怯える素振りも無く、焚火から適度に距離をとって暖をとりつつうとうとしている。
すごく可愛い。私のところにも何匹か来たがさすがにおじさんのところには来なかった。ジェイナの臭いが私に移っているからだろうか。
「オーガンたちが驚かないといいけど」
「心配ない、明け方には居なくなる」
ジェイナはそう言っているがオーガンが心なしか震えている気がする。あれ気づいて寝たふりしてるんじゃないかな。そう思いつつも私は座った態勢のまま少し目を閉じた。
「はぁ、昨日は怖い夢を見ました」
翌朝、オーガンはそんなことを言った。
「怖い夢ってなによ?」
「狼に囲まれる夢を見ましたよ、臭いも凄いリアルで・・・」
「あ、そう・・・」
昨晩はただうなされていただけのようだ。可哀想な事をした気もするが私にはどうしようもないし、ジェイナの言う通り明け方、おじさんが起きる頃には居なくなっていたのでわざわざ怖がらせる事もないだろう。
「さて、朝ごはん食べたら移動しましょうか」
昨日のスープを温めなおし、パンを軽く焼いてから朝食を簡単に済ませると私達は早々に出発した。
「見えてきました・・・、あれがモリッツです」
残り二日はなんてことはなく、無事に通り過ぎる事ができた。そうして私達が訪れた町は前回の町やゴウリ村より遥かに大規模な町で、もはや街といった方がいいのでは?といった様子だ。王都に行ったことはないけど王都のような大都市といって過言ではないのでは無いだろうか。
「ここが・・・モリッツ?とても王都から離れた場所にあるとは思えないわ」
「王都に次ぐ第二の都市ともいわれております・・・」
「マックは此処で働いてやがんのか・・・」
自分が都会に住んでいるとは思ってもいなかったがなんとなく居心地の悪さを感じる。田舎者だからかな。
近づくにつれて町よりも遥かに大きな壁と大勢の兵士達がモリッツを訪れる人々に対し検問を行っている。
「検問か、私達の身分証とか大丈夫?」
「ええ、私の護衛という事で許可が出るはずです・・・」
長い列だ。まさに長蛇の列いった様相だがのんびりと馬車に揺られているだけなのでオーガンと違い気楽だ。
順番が来るまで待てばいい。
「すごい列だね」
「出入りの量はこれでも少ない見てえだぞ、すれ違った商人連中がボヤいてた」
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