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次の町 モリッツ

おじさんの友人を尋ねて

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モノクロ配達員の切手を使う事態ともなると急ぎの用事であることが多い。相手の返事をまたず、先に相手が用件を理解したかどうかを確認するというサービスを利用するのだから当然だろうか。

「とりあえずマックのいる町に出かけなきゃならん」
「町ってどこの?」
「モリッツっていう場所でな、民営の冒険者ギルドが立ってる場所なんだが・・・」

モリッツとは。王都から東に進んだところにある町でアンパラチア大山脈から流れる広大な河が流れる場所であり、そこからもたらされた豊かな自然の恵みと材木の加工で活発な町だ。元は開拓団の一団が築いた町であり、一定の税金を当時の代表者が納めた事で正式に国の一部として認められた経緯がある。

「ギルドって民営とかあるんだね」
「ん?ああ、お嬢ちゃんは知らんのか」

冒険者ギルドには国に影響力のある公営のギルドと開拓地や僻地で運営される小規模な民営のギルドがある。
公営といっても必ずしも貴族や国に帰属しているわけではなく、あくまで規模や権力的な意味合いだ。この町のギルドもそういった意味では公営と言える。それほどの規模となると経営には貴族や騎士、教会の意向が絡んだりするのでそういった意味で公営となるのだが基本ギルドは冒険者目線で運営されているそうだ。

「というわけでツテと実力があればだれでもギルドは運営できる。まあ、それが商人でやっていけるくらいの実力と販路の確保は求められるがな」
「マックさんはその中でギルドを運営してるんだ?」
「ああ、特に奴は薬草とかの見識があるから採集クエストを売りにしたギルドをやってたはずだがどうにも上手くいっていってねえみたいだ」

慌ただしく旅路仕度を始めるおじさんに私も荷物をまとめてホールに運び出しておく。

「ところでなんでお嬢ちゃんも出かけ準備してるんだよ」
「え、私も行くから当然でしょ?」
「いや、これは俺の用事でだな・・・」
「リッキーも連れて行くからそっちの準備もしてくる」
「ちょ、ちょっとまて!どうしてそうなる!」

おじさんがそう言って引き留めるけどわかってるのかな。

「誰がその義足のメンテナンスをするの?町でならともかく、行き道や帰り道で壊れたらおじさんは片足で帰ってこないといけないんだよ?」
「・・・」

言われてみれば、って顔だ。それに私が付いていったらたぶんジェイナもついてくる。そうするとリッキーがひとりぼっちになっちゃうじゃない。

「それにリッキーを残していくのは可哀想だし」
「・・・仕方ねえか・・・そこまで言われちゃあな」

おじさんは観念したようにドアを開けると旅仕度を済ませたリッキーといつも通りのジェイナが立っていた。

「おめえ達なにやってんだ?」
「マックおじさんのところ行くんでしょ?手紙に書いてあるし」
「いつの間に!手癖の悪い奴だ!」

リッキーはひらひらと手紙を揺らしながらおじさんをすり抜けて私の後ろに隠れる。どうやら何時の間にかリッキーも読んでいたらしい。

「お出かけなら俺も行きたいしなー」
「お出かけってオマエな・・・好きにしろ」

おじさんはそう言うと旅支度の準備に戻った。普段出かける事の少ない分、おじさんが一番時間がかかってしまった。

「ったく、一番親父が遅いじゃないか」
「うるせえ!」
「いってぇ!うぅぅ・・・親父が殴った」
「リッキー、人を悪く言うのはよくない」

逃げ込んだジェイナにまでそう言われてしまいちぇっ、と拗ねた様子ながらすこし楽しげにリッキーは背負ったリュックを気にした。普段、採集物を詰め込んでいたリュックに入っているのは旅支度に必要な物資。
かつて父がしたであろう冒険の一端に自分も加わることが楽しみなようだった。

「遊び感覚かよ・・・」
「まあまあ、おじさんと一緒にどこかに行けるのが嬉しいんだから・・・ね?」
「ふん・・・!」

素っ気ない様子だがおじさんもどことなくソワソワしている。おじさんも一緒ってことかな。和気藹々とした様子で私達は四人で近所の乗り合い馬車の停留所を目指して歩いていく。

「さて、モリッツ行きの馬車はどこかな」
「金はあんましかけたくねえしなぁ・・・かといってそこまで遅くなると困る」

少し歩くと大通りに面した場所でいくつか馬車が停まっているのが見えた。地面に引かれたラインに沿って停まる馬車を見ながら私とおじさん、それにジェイナとリッキーは周囲を見渡した。乗り合いだと割安だが時間はバラバラ、一台分借りると当然高いがすぐに出発できる。個人的には後者が目的には沿うかと思われる。

「モリッツ行きの馬車をお探しかい?」

おじさんがどうしたものかと悩んでいるのをぼうっと眺めていると突然声をかけられた。

「誰?」
「あ、自分・・・モリッツで商売やってるもんですが・・・」

振り返ってみるとなにやら特徴の掴めない感じの地味な男性が。うだつの上がらなそうな感じが滲みでており、なんとはなしに困った様子だ。
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