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旅立ちの日に
は?やだよ!
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山賊に手酷くやられ、私達が討伐したとわかるまで引きこもっていたらしいが安全と聞いてここまで来たのだろう。
今までの経験則からして労いの言葉が戴けるのかすら怪しいものだが一体全体どういうご用向きなんだろう。
「その運んでいる男の死体は山賊のものだな?」
確認するような問いかけに私はギルドの職員さんをちらと見ると視線がぶつかった。どうしたものかと思うが彼らに情報を渡す義理すらない。
「いえ、それをギルドに戻って調べるところで」
「隠さなくてもいいではないか、大儀であったぞ」
おや、意外にも労いの言葉が飛び出してきた。しかしその笑顔の裏になにがあるのやら。そんな事を勘繰る暇もなく彼らが口を開いた。
「死体の処理など我らに任せるがいいだろう、其方らは帰ってゆっくりと休むがいい」
「いえいえ、そちらのお手を煩わせるつもりもありませんよ」
なるへそ、そう言う事ね。せこいヤツらだ。手柄を独り占めしたいと・・・そうは問屋が卸さないね。
「・・・」
「・・・さ、もどろーもどろー」
譲る気なんかない、そもそも手柄の前にアンタら死んだ身内の心配でもしなさいな。僧侶さんも怒ってるからまともな葬儀なんかしてくれないかもよ?
そう思いつつ全員で通り抜けようとすると私の行く手を遮るように槍がぬうっと伸びた。
「これ以上は言わぬぞ」
「これが騎士のやり口?狡い上に無法ね、此処には法律がないのかしら?」
「平民風情にこれ以上の譲歩はいらん」
余りの無法に私はもちろん、ギルド職員も呆然としている。無能なのはわかってたけどまさかここまで阿呆とまでは思わなかった。選民思想って怖いわー。
「あっそ、それが騎士団の総意なワケ?」
私が譲る気がないと判断したのか騎士団の連中は私を囲むように半円形を描いて隊列を組む。ギルドの職員たちは自分達が足手まといになると判断したのかそそくさとグルードの遺体を担いで門をくぐっていった。必然的にここには騎士団と私達が残った訳だけど・・・。
「言っとくけど、これはあなた方が売ってきた喧嘩よ?ひどい目にあっても泣き言は言わないでね」
おじさんは私の殺気を感じ取ったのか持ち歩いていたマトックを構え、ジェイナは何処からか取り出した手斧を遊ばせている。
「たった三人で何ができる!」
「貴方達が倒せなかった山賊を仕留めたけど?」
その一言が引き金になったのだろうか、彼らが一斉に私に槍を突き出した。私はその槍の穂先に乗ってゆらゆらと揺れてみる。
「あは、こういう軽業ってやってみたかったのよね」
「貴様ッ!」
馬上から限定される槍の一撃は大したことなかった。そもそも馬の突進力を乗せて使うものだろうにこんな目の前でバカみたいに突き出してなんの役にたつのか。槍を持ってオタオタしている騎士を蹴り飛ばして落馬させると馬のお尻を叩いて明後日の方向へと走らせる。
「まず一人だ、次は?」
私がそう言うとさすがに馬上の不利を悟ったのか次々と馬を下りて剣を抜いた。
「無礼討ちにしろ!騎士に歯向かう愚か者を討て!」
「ガッハッハ!お嬢ちゃんに手柄を取られた腹いせとは言え情けねえな!」
「がっはっはー、ばーかばーか」
それを見ておじさんが大笑いし、ジェイナが真似するように笑う。そしてジェイナが手斧を投げ、器用に刃の部分以外を直撃させて騎士を数人昏倒させる。
「やるじゃねえか、俺も負けていられねえな!」
「「「うひゃあっ!?」」」
「わー、おもしろそう!真似する!」
「「「「ぎゃあああ!」」」」
おじさんもマトックを横に倒して致命傷を与えないように振り抜いては騎士達を数人纏めて吹き飛ばした。伊達にベテランの冒険者じゃないね。そしてそれを見たジェイナが真似をして槍を奪い取ってはバットのように振り回して騎士達を吹き飛ばしていく。
「さぁ、残りは僅かよ?ここいらで大将が出張るもんじゃないの?」
結局私が蹴飛ばした一人以外皆が勝手に暴れたので殆どがノックアウト状態だ。っていうかこいつら弱っ、何人かがリッキーの撒いた油を踏んで転倒している。鎧が重いせいか起き上がるのにも苦労している様子だ。
「うぐぐ・・・貴様ら何故我らを恐れないのだ・・・」
残りの騎士達は狼狽した様子というか、得体のしれないものを見るような目で私達を見ている。えー、なんでっていわれても。
「王都から離れた場所で、へっぽこ騎士が王都でしか通じない権威を振りかざして誰がビビるってんだ?」
あらかた騎士を片付けたフェルグスおじさんが小指で耳をほじりながら言う。さりげなく真似しようとしたジェイナの手を叩いておく。体格が似てるからかなんでも真似しようとするのね。
「それにその騎士の紋章ってあれだろ?レンナルト騎士団のだろ、王都近衛隊の紋章背負って揉め事起こしたらどうなるかわかりそうなもんだがなぁ」
「・・・」
そして身バレである。そういえばおじさんは貴族の人と親交あったんだっけ。
「バレストーラ辺境伯が聞いたら嘆くぜ?」
最後の一言が決めてになったのか騎士団たちのざわめきが酷くなった。
今までの経験則からして労いの言葉が戴けるのかすら怪しいものだが一体全体どういうご用向きなんだろう。
「その運んでいる男の死体は山賊のものだな?」
確認するような問いかけに私はギルドの職員さんをちらと見ると視線がぶつかった。どうしたものかと思うが彼らに情報を渡す義理すらない。
「いえ、それをギルドに戻って調べるところで」
「隠さなくてもいいではないか、大儀であったぞ」
おや、意外にも労いの言葉が飛び出してきた。しかしその笑顔の裏になにがあるのやら。そんな事を勘繰る暇もなく彼らが口を開いた。
「死体の処理など我らに任せるがいいだろう、其方らは帰ってゆっくりと休むがいい」
「いえいえ、そちらのお手を煩わせるつもりもありませんよ」
なるへそ、そう言う事ね。せこいヤツらだ。手柄を独り占めしたいと・・・そうは問屋が卸さないね。
「・・・」
「・・・さ、もどろーもどろー」
譲る気なんかない、そもそも手柄の前にアンタら死んだ身内の心配でもしなさいな。僧侶さんも怒ってるからまともな葬儀なんかしてくれないかもよ?
そう思いつつ全員で通り抜けようとすると私の行く手を遮るように槍がぬうっと伸びた。
「これ以上は言わぬぞ」
「これが騎士のやり口?狡い上に無法ね、此処には法律がないのかしら?」
「平民風情にこれ以上の譲歩はいらん」
余りの無法に私はもちろん、ギルド職員も呆然としている。無能なのはわかってたけどまさかここまで阿呆とまでは思わなかった。選民思想って怖いわー。
「あっそ、それが騎士団の総意なワケ?」
私が譲る気がないと判断したのか騎士団の連中は私を囲むように半円形を描いて隊列を組む。ギルドの職員たちは自分達が足手まといになると判断したのかそそくさとグルードの遺体を担いで門をくぐっていった。必然的にここには騎士団と私達が残った訳だけど・・・。
「言っとくけど、これはあなた方が売ってきた喧嘩よ?ひどい目にあっても泣き言は言わないでね」
おじさんは私の殺気を感じ取ったのか持ち歩いていたマトックを構え、ジェイナは何処からか取り出した手斧を遊ばせている。
「たった三人で何ができる!」
「貴方達が倒せなかった山賊を仕留めたけど?」
その一言が引き金になったのだろうか、彼らが一斉に私に槍を突き出した。私はその槍の穂先に乗ってゆらゆらと揺れてみる。
「あは、こういう軽業ってやってみたかったのよね」
「貴様ッ!」
馬上から限定される槍の一撃は大したことなかった。そもそも馬の突進力を乗せて使うものだろうにこんな目の前でバカみたいに突き出してなんの役にたつのか。槍を持ってオタオタしている騎士を蹴り飛ばして落馬させると馬のお尻を叩いて明後日の方向へと走らせる。
「まず一人だ、次は?」
私がそう言うとさすがに馬上の不利を悟ったのか次々と馬を下りて剣を抜いた。
「無礼討ちにしろ!騎士に歯向かう愚か者を討て!」
「ガッハッハ!お嬢ちゃんに手柄を取られた腹いせとは言え情けねえな!」
「がっはっはー、ばーかばーか」
それを見ておじさんが大笑いし、ジェイナが真似するように笑う。そしてジェイナが手斧を投げ、器用に刃の部分以外を直撃させて騎士を数人昏倒させる。
「やるじゃねえか、俺も負けていられねえな!」
「「「うひゃあっ!?」」」
「わー、おもしろそう!真似する!」
「「「「ぎゃあああ!」」」」
おじさんもマトックを横に倒して致命傷を与えないように振り抜いては騎士達を数人纏めて吹き飛ばした。伊達にベテランの冒険者じゃないね。そしてそれを見たジェイナが真似をして槍を奪い取ってはバットのように振り回して騎士達を吹き飛ばしていく。
「さぁ、残りは僅かよ?ここいらで大将が出張るもんじゃないの?」
結局私が蹴飛ばした一人以外皆が勝手に暴れたので殆どがノックアウト状態だ。っていうかこいつら弱っ、何人かがリッキーの撒いた油を踏んで転倒している。鎧が重いせいか起き上がるのにも苦労している様子だ。
「うぐぐ・・・貴様ら何故我らを恐れないのだ・・・」
残りの騎士達は狼狽した様子というか、得体のしれないものを見るような目で私達を見ている。えー、なんでっていわれても。
「王都から離れた場所で、へっぽこ騎士が王都でしか通じない権威を振りかざして誰がビビるってんだ?」
あらかた騎士を片付けたフェルグスおじさんが小指で耳をほじりながら言う。さりげなく真似しようとしたジェイナの手を叩いておく。体格が似てるからかなんでも真似しようとするのね。
「それにその騎士の紋章ってあれだろ?レンナルト騎士団のだろ、王都近衛隊の紋章背負って揉め事起こしたらどうなるかわかりそうなもんだがなぁ」
「・・・」
そして身バレである。そういえばおじさんは貴族の人と親交あったんだっけ。
「バレストーラ辺境伯が聞いたら嘆くぜ?」
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