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旅立ちの日に
助ける代わりに
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とりあえずこれほどヘロヘロのおじさん達だとまともに戦っても負ける気もしないし、穏便に穏便に。
「とりあえずおじさん達を朝にゴウリ村まで連れてくよ、そこでもし盗みをやってたなら正直に白状して村で盗んだ分だけ働いて返せばいいよ」
「他のぶんはどうするんだよ?」
「それは知らない、自分で言いに行くにしてもまずゴウリ村や周辺の村で悪さした分を償ってからだね」
各自に任せるわ、とだけ伝えて私も焚火の傍に座る。やがて恐る恐るといった様子のおじさん達は先ほどと同じように焚火を囲み始めた。
「お、お嬢ちゃん・・・見かけによらず度胸あるな」
「ん?何が?」
尋ねるとリーダー格らしいおじさんはあきれたように私を見る。な、なんだよう。
「仮にも無法者相手にそういった説得ができるのもそうだし、なんでそう当たり前のように俺たちの輪の中に入ってんだ?」
「そ、そうだぜ・・・俺たち犯罪者だぜ?」
「そうだよ、泥棒とかだぜ?」
口口にそう言うおじさん達。そう言われてもなー。怖くないし、抵抗もできるし。
「私悪意には敏感なんだよね、おじさん達そういうのが希薄っていうか・・・おじさん達ってホントに王都で悪さしてた人達なの?」
「まぁな・・・確かに金持ちから盗んで貧民街にバラまいたり、借金の証文に火をつけたり色々はしたけどな」
「盗んだ金貨を全部鋳溶かして紙みたく薄く延ばして流行りの娯楽本にしたりして図書館に寄贈してやったりしたんだよ。ありゃ傑作だったなぁ・・・」
なにそれちょっとみたい。バカバカしいけど金でできた本っていうのはちょっと気になる。
「おじさん達は義賊ってワケだね」
「そう言ってくれると嬉しいがね・・・実際はただの意地さ、金持ち相手に本来なら俺たちなんか束になったってなにもできっこない・・・それが悔しくてね」
思い出話に花が咲いたがそれでもおじさん達は最期には自分達のしでかした事を深く反省し、もうしないし、したくてももうできないと嘆いていた。
「貴族連中から巻き上げた金をいくらばらまいても・・・貧民街の連中は豊かにはならなかった」
「そうだなぁ・・・俺たちはそれまでずっと貴族達が巻き上げるからだとそう思っていたんだが」
歳をとって周囲が良く見えるようになったのだろうか。彼らは自分達のしていた事の無意味さ、無力さに打ちひしがれ、どんどんと下火になっていったそうだ。
「でもさ、活動を縮小していったのならどうして逃げて来たの?身分を隠せばどうにでもなったんじゃ?」
「俺たちはこう見えて王都じゃ有名人になっちまってたのさ、それで、同業者と一緒に王都を追われ、郊外で細々と暮らしていた」
匿ってくれる支援者に負担になるからとおじさん達は仲間と共に自作農の真似をしつつも王都の郊外で小物を商いつつ兼業農家でやっていっていたそうだ。しかしそれから少しして同じく王都から逃れて来た山賊メンバーが新たに加わったことで話が変わってきたそうだ。
「最初は俺たちと同じ脛に傷をもってた連中かと思ってたが俺たちと違って札付きでなぁ。俺たちにも凶事の片棒を担げとせまってきたのさぁ」
大所帯になり、農業だけでは生活できなくなってしまい新参のはずの彼らが腕っぷしに任せて山賊としての活動をさらに拡大しようと言い出したのだとか。しかしそれでは王都から離れた意味がなくなってしまうし、彼らが言うには王都で最近山賊を討伐しようという動きが出始めたという噂も少なからずあった為におじさん達は乗り気じゃなかったそうだ。
しかし、それからというものの新参の山賊達はおじさん達を無視して凶行を繰り返し、血の匂いを纏わせるのが当たり前になっていた。
「このままじゃマズいと思い、俺たちも行動に移そうとしたんだ」
そう言うとおじさんは腰の剣を抜いた。やや曇ってはいたがそれでも綺麗な刃はこれまで血を吸ったことのない、無垢な輝きのようだった。
「しかしな、そうだなぁ・・・俺たちがなにかするまでもなく天罰が下ったんだ。神様がきっと奴らを裁く天使様を遣わしたんだぜ」
そう言うとおじさん達はブルッと体を大きく震わせた。
「天使様・・・か、王都の冒険者や兵士ではないの?」
規模は分からないがゴウリ村や私がいた町よりも冒険者や騎士のレベルも高いかとおもうけど。しかしそんな私の問いかけに彼らは一様に首を横に振った。
「確かに凄腕の連中は見たこともあるし、相手に戦意がなかったとはいえ大捕り物の最中に追っかけられたこともあるから俺たちも知っている奴は多かったぜ。だがあんな奴は・・・」
「どんな奴だったの?」
「ああ・・・ソイツは身長が高くて、それでいて鎧なんかは身に着けてなかった。ちょうど狩人って感じで・・・うん、着ていた服もアンタと同じような革製のコートだったかな。王都でも見た事ないデザインだった」
風貌から聞くにそれほど変な格好でもないようだったが、問題は此処からだった。
「とりあえずおじさん達を朝にゴウリ村まで連れてくよ、そこでもし盗みをやってたなら正直に白状して村で盗んだ分だけ働いて返せばいいよ」
「他のぶんはどうするんだよ?」
「それは知らない、自分で言いに行くにしてもまずゴウリ村や周辺の村で悪さした分を償ってからだね」
各自に任せるわ、とだけ伝えて私も焚火の傍に座る。やがて恐る恐るといった様子のおじさん達は先ほどと同じように焚火を囲み始めた。
「お、お嬢ちゃん・・・見かけによらず度胸あるな」
「ん?何が?」
尋ねるとリーダー格らしいおじさんはあきれたように私を見る。な、なんだよう。
「仮にも無法者相手にそういった説得ができるのもそうだし、なんでそう当たり前のように俺たちの輪の中に入ってんだ?」
「そ、そうだぜ・・・俺たち犯罪者だぜ?」
「そうだよ、泥棒とかだぜ?」
口口にそう言うおじさん達。そう言われてもなー。怖くないし、抵抗もできるし。
「私悪意には敏感なんだよね、おじさん達そういうのが希薄っていうか・・・おじさん達ってホントに王都で悪さしてた人達なの?」
「まぁな・・・確かに金持ちから盗んで貧民街にバラまいたり、借金の証文に火をつけたり色々はしたけどな」
「盗んだ金貨を全部鋳溶かして紙みたく薄く延ばして流行りの娯楽本にしたりして図書館に寄贈してやったりしたんだよ。ありゃ傑作だったなぁ・・・」
なにそれちょっとみたい。バカバカしいけど金でできた本っていうのはちょっと気になる。
「おじさん達は義賊ってワケだね」
「そう言ってくれると嬉しいがね・・・実際はただの意地さ、金持ち相手に本来なら俺たちなんか束になったってなにもできっこない・・・それが悔しくてね」
思い出話に花が咲いたがそれでもおじさん達は最期には自分達のしでかした事を深く反省し、もうしないし、したくてももうできないと嘆いていた。
「貴族連中から巻き上げた金をいくらばらまいても・・・貧民街の連中は豊かにはならなかった」
「そうだなぁ・・・俺たちはそれまでずっと貴族達が巻き上げるからだとそう思っていたんだが」
歳をとって周囲が良く見えるようになったのだろうか。彼らは自分達のしていた事の無意味さ、無力さに打ちひしがれ、どんどんと下火になっていったそうだ。
「でもさ、活動を縮小していったのならどうして逃げて来たの?身分を隠せばどうにでもなったんじゃ?」
「俺たちはこう見えて王都じゃ有名人になっちまってたのさ、それで、同業者と一緒に王都を追われ、郊外で細々と暮らしていた」
匿ってくれる支援者に負担になるからとおじさん達は仲間と共に自作農の真似をしつつも王都の郊外で小物を商いつつ兼業農家でやっていっていたそうだ。しかしそれから少しして同じく王都から逃れて来た山賊メンバーが新たに加わったことで話が変わってきたそうだ。
「最初は俺たちと同じ脛に傷をもってた連中かと思ってたが俺たちと違って札付きでなぁ。俺たちにも凶事の片棒を担げとせまってきたのさぁ」
大所帯になり、農業だけでは生活できなくなってしまい新参のはずの彼らが腕っぷしに任せて山賊としての活動をさらに拡大しようと言い出したのだとか。しかしそれでは王都から離れた意味がなくなってしまうし、彼らが言うには王都で最近山賊を討伐しようという動きが出始めたという噂も少なからずあった為におじさん達は乗り気じゃなかったそうだ。
しかし、それからというものの新参の山賊達はおじさん達を無視して凶行を繰り返し、血の匂いを纏わせるのが当たり前になっていた。
「このままじゃマズいと思い、俺たちも行動に移そうとしたんだ」
そう言うとおじさんは腰の剣を抜いた。やや曇ってはいたがそれでも綺麗な刃はこれまで血を吸ったことのない、無垢な輝きのようだった。
「しかしな、そうだなぁ・・・俺たちがなにかするまでもなく天罰が下ったんだ。神様がきっと奴らを裁く天使様を遣わしたんだぜ」
そう言うとおじさん達はブルッと体を大きく震わせた。
「天使様・・・か、王都の冒険者や兵士ではないの?」
規模は分からないがゴウリ村や私がいた町よりも冒険者や騎士のレベルも高いかとおもうけど。しかしそんな私の問いかけに彼らは一様に首を横に振った。
「確かに凄腕の連中は見たこともあるし、相手に戦意がなかったとはいえ大捕り物の最中に追っかけられたこともあるから俺たちも知っている奴は多かったぜ。だがあんな奴は・・・」
「どんな奴だったの?」
「ああ・・・ソイツは身長が高くて、それでいて鎧なんかは身に着けてなかった。ちょうど狩人って感じで・・・うん、着ていた服もアンタと同じような革製のコートだったかな。王都でも見た事ないデザインだった」
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