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旅立ちの日に
翌朝
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「ん・・・」
翌朝、私は少し眠い目を擦りながら目を覚ました。やっぱりベッドが変わると寝にくいのかな。
上着を羽織って部屋を出ると厨房に向かい、食事の準備を始める。井戸から水を汲んで、昨日使った分を補充してついでに自分の顔も洗う。うー、冷たい。
「昨日の残りのスープを温めて・・・ジャガイモはもうないか・・・」
燻製肉を水で戻し、ありあわせの菜っ葉や根菜と一緒に炒める。香りづけにハーブを入れるのも忘れずに。
水に柑橘を果汁を絞って入れて、残りはコトコト煮こんでジャムにでも。皮も余すところなく使って無駄もなし。
スープが煮立ったら黒パンを焼いて・・・さらに私はこのお宿でとんでもないお宝を見つけていたのだ。
「ふふ、酵母が手に入るなんてラッキーだよねぇ」
パンを作るのに必要な酵母、それを作るためには砂糖とフルーツが必要なんだけど・・・ここのお宿ではそれがあったのだ。時間の経過を停める金庫と共に沢山の種類の酵母が瓶の中にたっぷり!かなりお金をかけたのだろうし、
そして奥様は大変な料理の愛好家だったのだろう。ありがたく使わせていただきます。
「古びた黒パンも処理できるし一石二鳥のいい案がある。おじさんはお酒好きだしいいよね」
私が朝食の次いでに作るのはクワスと呼ばれる先生直伝のお酒。沸かしたお湯に黒パンを細かくして入れ、40度くらいまで冷まし、酵母を砂糖と一緒に入れる。そして日が暮れるくらいまで放っておけば発酵はよどみなく進むはず。
「さて、黒パンも良く焼けたし二人を起こすか」
厨房に入る時に確認したがおじさんはまだ夢の中だった。借りたエプロンをつけたまま私がエントランスに戻ると眠そうなリッキーの姿があった。
「おはようリッキー、顔は洗ってらっしゃいな」
「うん・・・おかあさん」
寝ぼけた様子のリッキーに思わず吹き出しそうになるがぐっとこらえる。これくらいだとまだお母さんは恋しいよね。そしてフラフラとこちらに歩み寄ってくるので何事かと思うと私に抱き着いてぐりぐりし始めた。
「う・・・むー」
「まだ寝ぼけてるの?」
「だって・・・眠いよ・・・」
自分で起きて来たはずなのに誰かに起こされたような言い方で言うと甘えるように私に甘えてくる。正気に戻ったら悶絶しそうだけど・・・ま、言わぬが華ってやつよね。朝くらいいい気分でいさせてあげよう。
「眠いなら顔洗ってきなさい、もうご飯できてるから」
「はぁ~い」
すこしばかり蛇行しながらリッキーはドアを開けて裏庭の井戸へと向かう。孤児院でもあんな子は多かったな、案外普段はしっかりした子ほどこういう時に素がでるものだ。
「何から何まで・・・すまねえな」
おじさんの声に目を向けると器用に目を開けたままいびきをかいていた。どうやら寝たふりだったようだ。
「リッキーがあんな・・・年相応顔みせるなんてな」
「ふふ、お父さんが大好きだから心配させたくないんですよ」
「そうかな」
すこし申し訳なさそうに、そして少し嬉しそうにおじさんは頭を掻いた。悩むのは真面目に取り組んでる証拠だから・・・もっと自信もっていいと思うよ。リッキーもおじさんがそんなだからいい子になったんだろうしね。
「う・・・うぅぅぅっぅぅ」
配膳を済ませてリッキーを待っていると正気に戻ったらしいリッキーが顔を真っ赤にして戻ってきた。
「あらリッキー、目が覚めた?それともまだ足りない?」
「うぅぅ、やっぱり夢じゃなかった・・・」
私が両手を突き出して抱っこしてあげようか?と続けるとリッキーの顔がリンゴみたく真っ赤になり、顔を両手で覆いながら席についた。
「は、恥ずかしい・・・」
「なんでぇ、子供の特権じゃねえか」
がはは、と笑うおじさんに対して二人で呆れつつも三人で食卓を囲む。厨房はあらかた綺麗になったから今日はエントランスでも綺麗にしようかしらね。
「しかし手慣れたもんだな、アンタ冒険者ギルドから来たらしいが・・・前は何処にいたんだ?」
「孤児院よ、私孤児だったからね」
「そうか・・・苦労したんだな」
「そうでもない、先生は良い人だったし」
ちゃんとしているのかどうかは本当の親子なんてもの知らないから言えないけど、先生は良く構ってくれたし甘えさせてもくれた。ただ自分でできる事が増えるほどに逆に面倒を見る機会が増えたからいつの間にか甘えられる側になっていただけだ。それに不満もなにもない。孤児院の子供たちも可愛かったし。
「それと、勝手にで悪いんだけど厨房の地下にあった酵母を使わせてもらってますよ」
「ああ、金庫のあれか。事後承諾だが構わねえよ、カミさんが良く作ってたんで傷まねえようにあの金庫に入れたんだ。古くならねえようにな」
時知らずの金庫は物が傷まない不思議な金庫だ。あれに入れておけば物の時間は止まる。物の基準は私にはわからないが菌が死なないのはどういうことなんだろう?人間は入れないし確かめようがないけども。
翌朝、私は少し眠い目を擦りながら目を覚ました。やっぱりベッドが変わると寝にくいのかな。
上着を羽織って部屋を出ると厨房に向かい、食事の準備を始める。井戸から水を汲んで、昨日使った分を補充してついでに自分の顔も洗う。うー、冷たい。
「昨日の残りのスープを温めて・・・ジャガイモはもうないか・・・」
燻製肉を水で戻し、ありあわせの菜っ葉や根菜と一緒に炒める。香りづけにハーブを入れるのも忘れずに。
水に柑橘を果汁を絞って入れて、残りはコトコト煮こんでジャムにでも。皮も余すところなく使って無駄もなし。
スープが煮立ったら黒パンを焼いて・・・さらに私はこのお宿でとんでもないお宝を見つけていたのだ。
「ふふ、酵母が手に入るなんてラッキーだよねぇ」
パンを作るのに必要な酵母、それを作るためには砂糖とフルーツが必要なんだけど・・・ここのお宿ではそれがあったのだ。時間の経過を停める金庫と共に沢山の種類の酵母が瓶の中にたっぷり!かなりお金をかけたのだろうし、
そして奥様は大変な料理の愛好家だったのだろう。ありがたく使わせていただきます。
「古びた黒パンも処理できるし一石二鳥のいい案がある。おじさんはお酒好きだしいいよね」
私が朝食の次いでに作るのはクワスと呼ばれる先生直伝のお酒。沸かしたお湯に黒パンを細かくして入れ、40度くらいまで冷まし、酵母を砂糖と一緒に入れる。そして日が暮れるくらいまで放っておけば発酵はよどみなく進むはず。
「さて、黒パンも良く焼けたし二人を起こすか」
厨房に入る時に確認したがおじさんはまだ夢の中だった。借りたエプロンをつけたまま私がエントランスに戻ると眠そうなリッキーの姿があった。
「おはようリッキー、顔は洗ってらっしゃいな」
「うん・・・おかあさん」
寝ぼけた様子のリッキーに思わず吹き出しそうになるがぐっとこらえる。これくらいだとまだお母さんは恋しいよね。そしてフラフラとこちらに歩み寄ってくるので何事かと思うと私に抱き着いてぐりぐりし始めた。
「う・・・むー」
「まだ寝ぼけてるの?」
「だって・・・眠いよ・・・」
自分で起きて来たはずなのに誰かに起こされたような言い方で言うと甘えるように私に甘えてくる。正気に戻ったら悶絶しそうだけど・・・ま、言わぬが華ってやつよね。朝くらいいい気分でいさせてあげよう。
「眠いなら顔洗ってきなさい、もうご飯できてるから」
「はぁ~い」
すこしばかり蛇行しながらリッキーはドアを開けて裏庭の井戸へと向かう。孤児院でもあんな子は多かったな、案外普段はしっかりした子ほどこういう時に素がでるものだ。
「何から何まで・・・すまねえな」
おじさんの声に目を向けると器用に目を開けたままいびきをかいていた。どうやら寝たふりだったようだ。
「リッキーがあんな・・・年相応顔みせるなんてな」
「ふふ、お父さんが大好きだから心配させたくないんですよ」
「そうかな」
すこし申し訳なさそうに、そして少し嬉しそうにおじさんは頭を掻いた。悩むのは真面目に取り組んでる証拠だから・・・もっと自信もっていいと思うよ。リッキーもおじさんがそんなだからいい子になったんだろうしね。
「う・・・うぅぅぅっぅぅ」
配膳を済ませてリッキーを待っていると正気に戻ったらしいリッキーが顔を真っ赤にして戻ってきた。
「あらリッキー、目が覚めた?それともまだ足りない?」
「うぅぅ、やっぱり夢じゃなかった・・・」
私が両手を突き出して抱っこしてあげようか?と続けるとリッキーの顔がリンゴみたく真っ赤になり、顔を両手で覆いながら席についた。
「は、恥ずかしい・・・」
「なんでぇ、子供の特権じゃねえか」
がはは、と笑うおじさんに対して二人で呆れつつも三人で食卓を囲む。厨房はあらかた綺麗になったから今日はエントランスでも綺麗にしようかしらね。
「しかし手慣れたもんだな、アンタ冒険者ギルドから来たらしいが・・・前は何処にいたんだ?」
「孤児院よ、私孤児だったからね」
「そうか・・・苦労したんだな」
「そうでもない、先生は良い人だったし」
ちゃんとしているのかどうかは本当の親子なんてもの知らないから言えないけど、先生は良く構ってくれたし甘えさせてもくれた。ただ自分でできる事が増えるほどに逆に面倒を見る機会が増えたからいつの間にか甘えられる側になっていただけだ。それに不満もなにもない。孤児院の子供たちも可愛かったし。
「それと、勝手にで悪いんだけど厨房の地下にあった酵母を使わせてもらってますよ」
「ああ、金庫のあれか。事後承諾だが構わねえよ、カミさんが良く作ってたんで傷まねえようにあの金庫に入れたんだ。古くならねえようにな」
時知らずの金庫は物が傷まない不思議な金庫だ。あれに入れておけば物の時間は止まる。物の基準は私にはわからないが菌が死なないのはどういうことなんだろう?人間は入れないし確かめようがないけども。
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