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異世界は愉しい
呪術の実践
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鬱蒼とした森の中で私は当てもなくさまよう。どれだけの生き物がいるのか、どんな生き物なのか。
それすらもわからないがどうとでもなるだろうという何の根拠もない自信で歩いていた。
「生き物なんて居ない・・・か」
正確にはいるんだろうが出会う事もなく・・・。こういう場合ってすぐさまピンチになるのが相場では?なんて考えていると念願が叶ったのか茂みから三匹の豚面の人間?が現れた。
「ピギッ?!」
「ピギャ、ギャウ」
「ギャウギャウ!」
それぞれが弓、槍、剣を携えておりサイズがちょっとおかしいが金属製の鎧を纏っている。先頭の豚が一瞬驚いた様子だったが私が一人で、なおかつ手ぶらなのを見て残る二人と同様に落ち着きを取り戻して武器を構えた。どうやら私を捕まえるか、それとも殺して狩りの獲物にしたいのかのどちらかのようだ。
「ギャウゥ!」
私がぼっとしているのを恐怖で動けないと勘違いしたのか剣を携えた一人が近づいてくる。携えた剣はところどころが欠けたり錆びていたりと扱いの悪さを物語っている。おそらくだが買ったものではない、というか正規の手段で手に入れたモノではないのだろう。
「さて、それじゃあ呪術の生き試しとまいりましょうか」
体格は大きく力は強そうだ。魔法とかがあるのかは分からないが通常の人間では抵抗すら難しいのではないだろうか。呪術が効いてくれればいいが。
「まずは、『鬼一口』・・・あーん、はむっ」
口を開け、剣を振り上げる豚人間を前に開いた口を閉じる。間抜けな動作であったが効果は覿面だった。
「ピギャ?!」
「ウギャ?!ギャウ!!」
目の前の豚人間が消滅し、何かを飲み込む感触が。どうやらこれが鬼一口の効果らしい。
「見た目はアレだけど・・・美味しいわぁ」
噛んでいないのに伝わる肉の味。極上とはいいがたいが十分に良質な肉の感触。そしてお腹に僅かとはいえ広がる満足感に思わず笑みが浮かぶ。
「うふふ、それじゃあ残りも美味しくいただきましょか」
「ピギッ?!」
目の前の獲物が虎とは思わなかったのだろうか。恐怖で動けない様子の豚人間二人、私は一足飛びに近づくと・・・
「あーん、はむっ」
今度は二匹同時に美味しくいただいた。どうやら一人だけというわけでは無さそうだ。これなら多数の相手でも大丈夫だな。今はそれよりも・・・。
ぐぅぅぅ・・・。
「中途半端に食べたせいで余計にお腹が・・・」
大男三人分にも関わらず三口にすぎない量にしか感じない。鬼の胃袋というのは本当に恐ろしい。しかしこのままだと食べたばかりだというのに餓死しそうなほどの焦燥感だ。ああ、なにか食べたい。
そう思いながら当てどもなく歩いていると何かが匂った。
「これは・・・さっきの豚人間の」
複数が集まっているのだろうか。先ほどよりも強い臭いに思わず喉が鳴る。そのまま私は臭いに釣られるようにふらふらと歩いていく。
「おお・・・食料が一杯」
そこにあったのは豚人間の集落だった。何匹居るのだろう。たくさん、それも食いでがありそうな大人ばかりだ。
「あはぁ・・・どれから・・・迷うぅ」
思わずよだれが零れそうになる。まるで飲食店で注文を決めあぐねているような気分。とてもいい気分だ。
どいつもこいつも太っていたり、筋肉質だったり、そして・・・ん?人らしきものがいるぞ。
「人間・・・?共存しているわけでは無さそうだね」
ボロボロになった服を纏って女性ばかりが縄につながれて歩かされている。あれか、捕虜かなにかか。
「くん・・・良い質の肉の匂い・・・」
筋肉質、それでいて柔軟性のある肉の匂いに再びよだれが零れそうになる。あの女性たちの中にいる色白の女性の一人が特上の肉質をしているのが匂いだけで分かった。
「あは、もう頭の中まで人間辞めちゃったかな」
この体は人間を早くも食料と認識してしまっている。困ったものだ。しかもそれでいて罪悪感とかは微塵もない。
どうやって彼らを食べるかで頭はいっぱいだ。できる事なら食べ残しはしたくない。
「呪術で・・・やっちゃうか?」
高台に登って集落を見下ろすとこれがただの集落ではないことに気が付いた。全員がちぐはぐの防具とは言え武装しているのだ。先ほどの連中もそうだったがどうやら彼らは軍隊か、それに類する集団のようで隊列を組んで行動している。
「とりあえずあの集団からやっちゃうか」
集落から結構な数の集団が隊列を組んで出発するようだ。よし、彼らから食べちゃおう。私は一旦集落から離れて彼らを尾行する事にした。
「なーにをーするのかなーっと」
最後尾にしれっと紛れ込んで、時折こちらに気づいた奴をつまみ食いしながら私はゆっくりと彼らを追いかけることにした。
それすらもわからないがどうとでもなるだろうという何の根拠もない自信で歩いていた。
「生き物なんて居ない・・・か」
正確にはいるんだろうが出会う事もなく・・・。こういう場合ってすぐさまピンチになるのが相場では?なんて考えていると念願が叶ったのか茂みから三匹の豚面の人間?が現れた。
「ピギッ?!」
「ピギャ、ギャウ」
「ギャウギャウ!」
それぞれが弓、槍、剣を携えておりサイズがちょっとおかしいが金属製の鎧を纏っている。先頭の豚が一瞬驚いた様子だったが私が一人で、なおかつ手ぶらなのを見て残る二人と同様に落ち着きを取り戻して武器を構えた。どうやら私を捕まえるか、それとも殺して狩りの獲物にしたいのかのどちらかのようだ。
「ギャウゥ!」
私がぼっとしているのを恐怖で動けないと勘違いしたのか剣を携えた一人が近づいてくる。携えた剣はところどころが欠けたり錆びていたりと扱いの悪さを物語っている。おそらくだが買ったものではない、というか正規の手段で手に入れたモノではないのだろう。
「さて、それじゃあ呪術の生き試しとまいりましょうか」
体格は大きく力は強そうだ。魔法とかがあるのかは分からないが通常の人間では抵抗すら難しいのではないだろうか。呪術が効いてくれればいいが。
「まずは、『鬼一口』・・・あーん、はむっ」
口を開け、剣を振り上げる豚人間を前に開いた口を閉じる。間抜けな動作であったが効果は覿面だった。
「ピギャ?!」
「ウギャ?!ギャウ!!」
目の前の豚人間が消滅し、何かを飲み込む感触が。どうやらこれが鬼一口の効果らしい。
「見た目はアレだけど・・・美味しいわぁ」
噛んでいないのに伝わる肉の味。極上とはいいがたいが十分に良質な肉の感触。そしてお腹に僅かとはいえ広がる満足感に思わず笑みが浮かぶ。
「うふふ、それじゃあ残りも美味しくいただきましょか」
「ピギッ?!」
目の前の獲物が虎とは思わなかったのだろうか。恐怖で動けない様子の豚人間二人、私は一足飛びに近づくと・・・
「あーん、はむっ」
今度は二匹同時に美味しくいただいた。どうやら一人だけというわけでは無さそうだ。これなら多数の相手でも大丈夫だな。今はそれよりも・・・。
ぐぅぅぅ・・・。
「中途半端に食べたせいで余計にお腹が・・・」
大男三人分にも関わらず三口にすぎない量にしか感じない。鬼の胃袋というのは本当に恐ろしい。しかしこのままだと食べたばかりだというのに餓死しそうなほどの焦燥感だ。ああ、なにか食べたい。
そう思いながら当てどもなく歩いていると何かが匂った。
「これは・・・さっきの豚人間の」
複数が集まっているのだろうか。先ほどよりも強い臭いに思わず喉が鳴る。そのまま私は臭いに釣られるようにふらふらと歩いていく。
「おお・・・食料が一杯」
そこにあったのは豚人間の集落だった。何匹居るのだろう。たくさん、それも食いでがありそうな大人ばかりだ。
「あはぁ・・・どれから・・・迷うぅ」
思わずよだれが零れそうになる。まるで飲食店で注文を決めあぐねているような気分。とてもいい気分だ。
どいつもこいつも太っていたり、筋肉質だったり、そして・・・ん?人らしきものがいるぞ。
「人間・・・?共存しているわけでは無さそうだね」
ボロボロになった服を纏って女性ばかりが縄につながれて歩かされている。あれか、捕虜かなにかか。
「くん・・・良い質の肉の匂い・・・」
筋肉質、それでいて柔軟性のある肉の匂いに再びよだれが零れそうになる。あの女性たちの中にいる色白の女性の一人が特上の肉質をしているのが匂いだけで分かった。
「あは、もう頭の中まで人間辞めちゃったかな」
この体は人間を早くも食料と認識してしまっている。困ったものだ。しかもそれでいて罪悪感とかは微塵もない。
どうやって彼らを食べるかで頭はいっぱいだ。できる事なら食べ残しはしたくない。
「呪術で・・・やっちゃうか?」
高台に登って集落を見下ろすとこれがただの集落ではないことに気が付いた。全員がちぐはぐの防具とは言え武装しているのだ。先ほどの連中もそうだったがどうやら彼らは軍隊か、それに類する集団のようで隊列を組んで行動している。
「とりあえずあの集団からやっちゃうか」
集落から結構な数の集団が隊列を組んで出発するようだ。よし、彼らから食べちゃおう。私は一旦集落から離れて彼らを尾行する事にした。
「なーにをーするのかなーっと」
最後尾にしれっと紛れ込んで、時折こちらに気づいた奴をつまみ食いしながら私はゆっくりと彼らを追いかけることにした。
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