31 / 76
髪飾り
7
しおりを挟む
「ボク、ローゼフの役にたてたかな?」
「ああ、もちろんだ。ピノは私の自慢の愛玩ドールだ!」
「ほ、本当に……!? 嬉しい……! 大好きローゼフ!」
ピノは無邪気に彼に抱きつくと、とても幸せそうな顔を見せた。そしてローゼフも幸せな気持ちになるとピノを自分の腕の中にぎゅっと抱き締めたのだった――。
――そして翌日、ローゼフはピノを連れて母親の部屋に訪れた。久しぶりに入る部屋は、そこだけ時間が止まってるように生前のままだった。2人は壁に掛けられている大きな肖像画を見上げるとローゼフはピノと繋いだ手を握って話始めた。
「私の母上はマリアンヌと言って、とても綺麗で美しい女性だった。そして清らかで優しくて、愛に溢れた暖かい女性だった。母は私を愛してくれた。父以上に私のことを大事に育ててくれた…――」
「ローゼフ……?」
「でも、父は私を心から愛してはいなかった。たまに愛してくれる時もあったが、それは小さな思い出の一つにしか過ぎない……。私が10歳の頃、2人は事故で亡くなった。幼かった私は2人を亡くしたあと、深い悲しみに暮れながら毎日を過ごした。そして、時おりこの部屋に訪れたりもした。きっと死んだ母上が戻ってくるんじゃないかと、そんなおとぎ話でさえ心の中に描いていたんだ――。でも、いくら待っても母上は戻っては来なかった。私は両親を恋しがり、もう一度2人に会いたいと思ったばかりに、世界中から霊的な物を集めた。しかしどれもまやかし物ばかりで、亡くなった父と母に会えることはなかった。それが嘘でも、私は心のどこかでそれを信じていたかったのかも知れない…――」
「ローゼフ…――」
ピノはローゼフの悲しい過去を聞かされると、切ない表情で彼の手をぎゅっと握り返した。
「――でも、そんな時にお前と出会った。お前と出会って私の心は随分と癒された。きっと母上が私にピノを引きあわせてくれたのかも知れない。私はもう孤独ではない、お前がいるから……」
ローゼフは初めて自分の思いを誰かに打ち明けると、ピノの顔をジッと見つめた。
「うん、ボクがローゼフの寂しい心を埋めてあげる! ボクにもわかるよ、ローゼフの寂しい気持ち。ボクもずっとひとりぼっちで寂しかったからわかるんだ…――!」
「ピノ、お前は本当に優しいな……」
ローゼフはそう話すと、不意に優しげに微笑んだ。
「この髪飾りを母上の宝石箱に納めよう。きっと、母上の魂も安心するかも知れない…――」
「そうだね、ローゼフ!」
彼は化粧台の上に置いてあるアクセサリーが納められてるガラスケースを開いた。そしてそこに髪飾りを納めた。
「よかったね、ローゼフ。これでお母さんも安心する……あれ? ローゼフ顔から涙が出てるよ?」
ピノはそう言って彼の顔を覗くと、ローゼフは瞳から涙を流していた。
「おかしいな……。私としたことが不意に涙を流すとは、不思議なことに母上を今そばで感じた。そして、私にありがとうと聞こえたような気がした」
「ローゼフ、きっとそれは気のせいじゃないかも知れないよ。ボクにも感じたよ?」
「そうか、ならそれでいい…――」
彼はそう言って返事をすると、宝石が入っているガラスケースの箱を静かに閉じたのだった。
「ああ、もちろんだ。ピノは私の自慢の愛玩ドールだ!」
「ほ、本当に……!? 嬉しい……! 大好きローゼフ!」
ピノは無邪気に彼に抱きつくと、とても幸せそうな顔を見せた。そしてローゼフも幸せな気持ちになるとピノを自分の腕の中にぎゅっと抱き締めたのだった――。
――そして翌日、ローゼフはピノを連れて母親の部屋に訪れた。久しぶりに入る部屋は、そこだけ時間が止まってるように生前のままだった。2人は壁に掛けられている大きな肖像画を見上げるとローゼフはピノと繋いだ手を握って話始めた。
「私の母上はマリアンヌと言って、とても綺麗で美しい女性だった。そして清らかで優しくて、愛に溢れた暖かい女性だった。母は私を愛してくれた。父以上に私のことを大事に育ててくれた…――」
「ローゼフ……?」
「でも、父は私を心から愛してはいなかった。たまに愛してくれる時もあったが、それは小さな思い出の一つにしか過ぎない……。私が10歳の頃、2人は事故で亡くなった。幼かった私は2人を亡くしたあと、深い悲しみに暮れながら毎日を過ごした。そして、時おりこの部屋に訪れたりもした。きっと死んだ母上が戻ってくるんじゃないかと、そんなおとぎ話でさえ心の中に描いていたんだ――。でも、いくら待っても母上は戻っては来なかった。私は両親を恋しがり、もう一度2人に会いたいと思ったばかりに、世界中から霊的な物を集めた。しかしどれもまやかし物ばかりで、亡くなった父と母に会えることはなかった。それが嘘でも、私は心のどこかでそれを信じていたかったのかも知れない…――」
「ローゼフ…――」
ピノはローゼフの悲しい過去を聞かされると、切ない表情で彼の手をぎゅっと握り返した。
「――でも、そんな時にお前と出会った。お前と出会って私の心は随分と癒された。きっと母上が私にピノを引きあわせてくれたのかも知れない。私はもう孤独ではない、お前がいるから……」
ローゼフは初めて自分の思いを誰かに打ち明けると、ピノの顔をジッと見つめた。
「うん、ボクがローゼフの寂しい心を埋めてあげる! ボクにもわかるよ、ローゼフの寂しい気持ち。ボクもずっとひとりぼっちで寂しかったからわかるんだ…――!」
「ピノ、お前は本当に優しいな……」
ローゼフはそう話すと、不意に優しげに微笑んだ。
「この髪飾りを母上の宝石箱に納めよう。きっと、母上の魂も安心するかも知れない…――」
「そうだね、ローゼフ!」
彼は化粧台の上に置いてあるアクセサリーが納められてるガラスケースを開いた。そしてそこに髪飾りを納めた。
「よかったね、ローゼフ。これでお母さんも安心する……あれ? ローゼフ顔から涙が出てるよ?」
ピノはそう言って彼の顔を覗くと、ローゼフは瞳から涙を流していた。
「おかしいな……。私としたことが不意に涙を流すとは、不思議なことに母上を今そばで感じた。そして、私にありがとうと聞こえたような気がした」
「ローゼフ、きっとそれは気のせいじゃないかも知れないよ。ボクにも感じたよ?」
「そうか、ならそれでいい…――」
彼はそう言って返事をすると、宝石が入っているガラスケースの箱を静かに閉じたのだった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる