上 下
27 / 193
第2章―戦いの砲火―

18

しおりを挟む
――一方、その頃。地下のフロアの待機室にいた隼人は、募る苛立ちを隠せないでいた。拳で壁を力任せに叩いた。そして、苛立ちを募らせた言葉が口からこぼれた。

「くっ……! 俺はウィクトリア部隊の隊長だと言うのに美岬君も結人君も何て自分勝手なんだ、隊長の言う事が聞けないのかあの2人は!?」

 隼人は隊長でありながら、同じ隊員である2人の自分勝手な行動に不満を愚痴にした。そして、自分の中で葛藤をはじめた。

「軍事命令も軍事規則さえも、軍人なら絶対だと言うのに俺は一体どうしたらいいんだ……!?」

そう言って困り果てると、椅子に座り込み自分の頭を両手で抱え込んだ。

「こんな時にグラギウス艦長は一体どこに行ってしまわれたんだ!?」

 隼人は自分の唇を噛み締めると、段々と口数も無くなり、苛立ちの口調へと段々と変わた。遥か地上では今だに激戦が繰り広げられていた。

 轟音が地上から地下まで響き渡った。その中で自分の焦る気持ちと感情を押し殺した。そして、冷静さを装うようにその場で自分は軍人だと心に何度も言い聞かせた。

 命令違反は重罪だ! 

 除隊も十分あり得る……!

 俺はどうしたら…――!?

焦る一方で軍人マニュアルに頭を抱えた。そして眉間にシワを寄せて苦悶の表情を浮かべながら、その場で真剣な表情で考えていた。

 命令無視で自分もこの場を去るか? 

 軍事マニュアルに則り、このままここで艦長が来るのを待つか? 彼の頭の中は、迷いや葛藤がグルグルと渦巻いていた。そして、ついに苛立ちを隠せないでいると、自分の頭の髪を両手でかきむしって思いっきり叫んだ。

『あぁぁあああああああああああーーっ!!』

 大きな声を上げると両手でグシャグシャと頭をかきむしった。そして、不意に冷静さを取り戻すと、そこで叫ぶの止めて黙り込んだ。誰も居ない部屋の中で不意に何かをおもいつめると勢い良くベンチから立ち上がった。

「くそっ、畜生……! この際、命令違反なんてクソくらえだ! 俺はウィクトリア部隊の隊長で2人の隊長だ! こんな所で2人の仲間を死なせる訳には絶対いかないんだ。俺が必ず2人を守ってみせる…――!」

 そう言って自分に向かって強く言い聞かせると、グラギウス艦長の命令を無視してその場からすぐに離れた。パイロットの待機室から勢い良く表に出ると廊下を一気に走り出した。そして、一度も振り返らずに前だけを見て突っ走った。その時、初めて彼の中で僅かに気持ちに変化が目覚めたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

基本中の基本

黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。 もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。

ベル・エポック

しんたろう
SF
この作品は自然界でこれからの自分のいい進歩の理想を考えてみました。 これからこの理想、目指してほしいですね。これから個人的通してほしい法案とかもです。 21世紀でこれからにも負けていないよさのある時代を考えてみました。 負けたほうの仕事しかない人とか奥さんもいない人の人生の人もいるから、 そうゆう人でも幸せになれる社会を考えました。 力学や科学の進歩でもない、 人間的に素晴らしい文化の、障害者とかもいない、 僕の考える、人間の要項を満たしたこれからの時代をテーマに、 負の事がない、僕の考えた21世紀やこれからの個人的に目指したい素晴らしい時代の現実でできると思う想像の理想の日常です。 約束のグリーンランドは競争も格差もない人間の向いている世界の理想。 21世紀民主ルネサンス作品とか(笑) もうありませんがおためし投稿版のサイトで小泉総理か福田総理の頃のだいぶん前に書いた作品ですが、修正で保存もかねて載せました。

麦畑の見える丘で

平木明日香
SF
辺境の星、ガルドープに住んでいた少女ミトと老婦アリスは、血の繋がっていない者たちだった。 戦争で母を亡くしたミトを引き取ったアリスは、10年間、彼女が独り立ちできるように、「星の子」としての教えを説いていた。 いつか、誰もが星を旅立つ日が来る。 戦争で焼き尽くされる野原が目の前にあっても、私たちはいつか、星と決別する日が来る。 だから畑に野菜や穀物を植えて、雨が降る日を待ちなさい。 アリスは言うのだった。 私たちは誰もが完璧ではないのだと。 「言葉」はいずれ形を失い、銀河星雲の星屑の中に消えていく。 運命の砂時計はすでに落ち始めている。 時間の経過の中で絶えず物事は変化し、昨日まであったものは、流れ星となって消えていく。 ミトは願っていた。 いつか星を旅立つ日が来たとしても、2人で過ごしていた時間が、世界のどこかで残っていくこと。 いずれ星と決別する日が来るとしても、アリスに伝えたかった想いが、——「言葉」が、闇の中に閉ざされてしまわないことを。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

深淵の星々

Semper Supra
SF
物語「深淵の星々」は、ケイロン-7という惑星を舞台にしたSFホラーの大作です。物語は2998年、銀河系全体に広がる人類文明が、ケイロン-7で謎の異常現象に遭遇するところから始まります。科学者リサ・グレイソンと異星生物学者ジョナサン・クインが、この異常現象の謎を解明しようとする中で、影のような未知の脅威に直面します。 物語は、リサとジョナサンが影の源を探し出し、それを消し去るために命を懸けた戦いを描きます。彼らの犠牲によって影の脅威は消滅しますが、物語はそれで終わりません。ケイロン-7に潜む真の謎が明らかになり、この惑星自体が知的存在であることが示唆されます。 ケイロン-7の守護者たちが姿を現し、彼らが人類との共存を求めて接触を試みる中で、エミリー・カーペンター博士がその対話に挑みます。エミリーは、守護者たちが脅威ではなく、共に生きるための調和を求めていることを知り、人類がこの惑星で新たな未来を築くための道を模索することを決意します。 物語は、恐怖と希望、未知の存在との共存というテーマを描きながら、登場人物たちが絶望を乗り越え、未知の未来に向かって歩む姿を追います。エミリーたちは、ケイロン-7の守護者たちとの共存のために調和を探り、新たな挑戦と希望に満ちた未来を築こうとするところで物語は展開していきます。

処理中です...