12 / 193
第2章―戦いの砲火―
3
しおりを挟む「何ッ!? 地球本部のあいつらは、一体こんな時に何をやっているんだ!?」
冴嶋は眉間にシワを寄せながら、苦悶の表情を浮かべた。
「今からゼノア宇宙連合の奴らに救助の要請と、急いで援軍を回すように手配しろ。この際どんな手段を使っても構わん、なんとしてもこの基地は大軍事帝国の奴らには渡してはならない!」
冴嶋は気迫の籠った言葉を動揺し続ける本部の部下達に強く言い放った。彼の緊迫した言葉に、彼らはそこで改めて気を引き締めると、それぞれが自分達の持ち場でベストを尽くそうとした。
そこにいた全員は最後までアザゼルとの戦いを諦めずにいた。彼は映し出された大型のモニター画面の前で外の激しい戦場の光景を見ると一段と険しい表情を浮かべて睨んだ。そんな彼の元に、1人の男が近づいた。その男は長身で知性的で凛々しい顔立ちをした小さな鼻眼鏡をかけた銀髪の青年だった。
彼はゼノア地球連合第7拠点基地エデンの少年兵を全て束ねる少年兵副総揮官でもあり。最新型の精鋭艦エヴァリアの艦長でもある男、グラギウスという名前の青年だった。彼は耳元で話した。
「冴嶋総司令官。もしこの宇宙コロニーが、敵に奪取された場合わかっていますよね?」
冴嶋は彼の質問に一言『ああ』と返事をした。
「ソロモンのシステムを起動して、ここもろとも破壊してやるまでだ。だが、ただてはやらせん。あいつらアザゼルを1人でも多く道連れにして、塵となってやるまでだ…――!」
冴嶋のその表情は険しさと鋭さが増していた。
「わかりました。それが貴方の出した答えですね――」
冴嶋はその言葉に無言で押し通した。グラギウスは彼に一礼するとその場を去って行った。冴嶋は彼がいなくなると椅子から無言で立ち上がった。そして直ぐに後を追って指令室から出て行った。慌ただしく走ると、少し離れた廊下で一人歩いていた彼を見つけた。そこで後ろから声をかけた。
「待て、グラギウス…――!」
冴嶋の呼びかけに彼は後ろを振り向いた。
「冴嶋総司令官、何ですか……?」
彼は沈痛気味の表情でグラギウスの右手を黙って掴んだ。
「もし本当にソロモンのシステムを起動する事態になったら、例の機体をお前の戦艦エヴァリアに乗せてここの基地から今すぐ脱出しろ! これはラケシス宇宙基地の代表としての命令でもあり、総司令官としての命令でもあるが。これは個人の頼みでもある……!」
冴嶋はそう言うと、グラギウスの瞳を黙って見つめた。
「ええ、わかってます。あの機体は私がこの命に変えても必ず守って見せます! あの機体は我々にとっての最後の希望の光ですから…――!」
そう言うと険しい表情を見せた。冴嶋も、彼の覚悟を黙って悟った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
麦畑の見える丘で
平木明日香
SF
辺境の星、ガルドープに住んでいた少女ミトと老婦アリスは、血の繋がっていない者たちだった。
戦争で母を亡くしたミトを引き取ったアリスは、10年間、彼女が独り立ちできるように、「星の子」としての教えを説いていた。
いつか、誰もが星を旅立つ日が来る。
戦争で焼き尽くされる野原が目の前にあっても、私たちはいつか、星と決別する日が来る。
だから畑に野菜や穀物を植えて、雨が降る日を待ちなさい。
アリスは言うのだった。
私たちは誰もが完璧ではないのだと。
「言葉」はいずれ形を失い、銀河星雲の星屑の中に消えていく。
運命の砂時計はすでに落ち始めている。
時間の経過の中で絶えず物事は変化し、昨日まであったものは、流れ星となって消えていく。
ミトは願っていた。
いつか星を旅立つ日が来たとしても、2人で過ごしていた時間が、世界のどこかで残っていくこと。
いずれ星と決別する日が来るとしても、アリスに伝えたかった想いが、——「言葉」が、闇の中に閉ざされてしまわないことを。
基本中の基本
黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。
もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
星間の旅人たち
阪口克
SF
空を覆い尽くすほどに巨大な星間移民船マザー。今から数千年の昔、多くの人々をその胎内に抱え、マザーは母星を旅立った。
未知の移住星を求めて彷徨う巨大な移民船。この船を護り未知の移住星を開拓するため、マザーセントラルには強大な力を持った護衛軍が存在する。
護衛軍探索部第3課に所属するハイダ・トール軍曹は、ある星での”事件”をきっかけに、出航時刻に間に合わなくなってしまう。 飛び立つマザーを必死に追いかけるハイダ軍曹は、指揮官の助言に従い、船の最末端部から内部へと侵入することに成功した。 しかしそこは、護衛軍の力の及ばない未知の領域だった。
マザー本体から伸びる長大な柱……その内部はセントラルの管理が及ばない世界。何千年もの歴史を積み重ねた、移民たちによる異文明が支配する地であった。 セントラルへの帰還を目指すハイダ軍曹は、移民世界での試練と人々との邂逅の中、巧みな交渉力や戦闘技術を駆使し苦難の旅路を行く。しかし、マザー中心部への道のりは険しく遠い。 果たして、ハイダ・トール軍曹は無事帰還を果たすことができるのだろうか。
GIGA・BITE
鵤牙之郷
SF
「鷹海市にはゾンビがいる」 2034年、海沿いののどかな町で囁かれる奇妙な都市伝説。 ごく普通の青年・綾小路 メロは、ある日ゾンビのように変貌した市民の乱闘に遭遇し、重傷を負う。そんな彼を救ったのは1人の科学者。彼はメロに人体改造を施し、【超獣】として蘇生させる。改造人間となったメロを待っていたのは、1つの町を巻き込む邪悪な陰謀だった…。
※2024年4月より他サイトにて連載、既に完結した作品を加筆・修正したものです。
ライトニング・エクリプス
suepi2007
SF
chatGPTとともに細かい設定を考えました。大まかな設定や主人公の能力設定は自身のイメージで作っています。
「未来の地球で、光と闇の力が交錯する中、18歳の青年が唯一無二の能力を駆使して運命に立ち向かう。彼の名は氷霧碧(ひぎりあおい)。敵対勢力『ルナティック・クラン』との壮絶な戦いが、今始まる…」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる