共鳴のヴァルキュリア （全話再編集完)

第4章―舞い降りた翼―

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『司令、大変です……！　たった今、第8エリアの最終防衛ラインを突破されました！』

「何っ！？」

「それだけじゃありません、アハティ部隊のサブリーダーまでも敵に撃破されました！　これでは部隊を指揮する者がいません！」

司令本部のオペレーターが、緊迫した口調で冴嶋に報告した。すると彼は拳を振り下ろして椅子の上で叩いた。

「クソっ、やはり無理だったか…――！」

　その言葉に周りも思わず息を呑んだ。彼は直ぐに指示を出した。

「第8エリアに居る残りのパイロット達に、後退するように命じろ！　これ以上の被害を出してはならない！」

　彼の出した指示にオペレーターは血相を変えて伝えた。

「それが上手くパイロットとの通信回線が繋がりません、恐らく強力なジャミング効果の影響かと思われます！」

「ええい、またしてもか！」

「司令、これではさらに混乱が広がります！」

「やはりアレを使うしかないのか……！」

　ラケシスの司令本部が混乱する中で、敵は手を休める事もなく次々に第8エリアに侵入すると、そこでアハティ部隊との戦闘を繰り広げた。

本部からの司令が無く。アビスのパイロット達も混乱した。その状況を逆手に取るように敵は次々と敵の機体を撃破して破壊の限りを尽した。

第8エリアを突破した彼らは先の奥へと進んだ。もはや、敵の勢いは衰える事もなく更に増した。向かって来る者すべてを倒すと、そこで圧倒的な強さを見せつけた。

　あまりの力の差を思い知ると、アハティ部隊の少年達は敵を前にして全身が震え上がり。絶望の淵に立たされた。

　ミストラル部隊の中で一際目立つ、赤い機体に乗っている者がいた。名はカインと呼ばれる少年で、彼は『ZDT―Aresゼットディーティーアレス』と呼ばれる特殊な機体を自由自在に使いこなしていた。その姿は金髪にウルフヘアの、唇と片耳に長いチェーンのピアスを付けた青い瞳をしていた。

アレスの性能は他のドールアームズよりも遥かに力が勝っていた。その機体を使いこなせるのは、彼しかいなかった。カインはパイロットとしての天才的な類まれな才能を持っていた。まさに戦う為に生まれてきた戦士そのものだった。