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第2章―戦いの砲火―

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 整備士の人と一緒に部屋を出て行った彼の後を追う為、僕も部屋から飛び出して急いで走った。息があがって苦しいけど必死で後を追いかけた。 

「美岬、待って……!」

僕は走りながら彼の名前を必死で呼んだ。曲がり角を曲がると、広い通路には黒煙が舞い上がっていた。所々に火災の燃えた跡があり、その時に慌てて誰かが使った消火器が足下に幾つも散乱して転がっていた。そして、チリチリとした残り火が空気に触れて舞っていた。

煙が舞う中で僕は美岬の姿を無我夢中で探した。きっと見失ったらもう二度と会えない気がした。すると遠くの方で誰かの人影が見えた。

『美岬っ!!』

 その場で見つけると大きな声で名前を呼んだ。美岬は整備士の人と一緒にパイロット専用のエレベーターのドアの前で、佇んでいるのが見えた。僕は彼に向かって走りながら叫び続けた。

『ダメ、美岬いかないでぇっ!!』

 その瞬間、彼は遠くから僕の声に気がついた。そして、振り向くと美岬は少し悲しく笑った顔を見せた。僕は堪らずに心から叫んだ。

「待って美岬! 僕も、僕も一緒に…――!」

 その瞬間、天井の一部が熱さでボロボロと剥がれ落ちてきた。轟音と共にそれは崩れ落ちると、美岬と僕の間に瓦礫の山が出来た。そして、それは目の前の進路を塞いでしまった。

 僕は一瞬、目の前の光景に唖然となり、そこで立ち止まった。でも、今の僕には考えている暇も心の余裕も無かった。頭の中でA―33アビス格納庫にどうやって行ったらいいのかを必死で、次のルートを考えた。

 美岬は絶対に死なせない!

 その気持ちと強い想いが今の自分を突き動かしていた。そして、目の前を塞いだ瓦礫の向う側に居るであろう彼に大きな声で叫んだ。

「待ってて、美岬! 僕も直ぐに行くから、必ず行くから待ってて……!」

 そう言って彼に話し掛けると、不安な気持ちを振り払うようにその場を走り去った。
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