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―短編集―1

ある日の午後

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――僕は美岬に手を強く引っ張られる形で、誰もいない基地の屋上に連れてかれた。 

「美岬、痛いよ! ねぇ、手がもげる~!!」

『うるさい、バカ!』

 そう言って振り向いて怒鳴ると、僕の手を急に離してそこで黙って立ち止まった。美岬は背中を向けたまま少し歩くと急に地面にしゃがんでそのまま仰向けに寝そべった。僕は強く掴まれた手首を摩りながら彼の方を見た。
 
「嘘つき。全然、体調よくないじゃないか……」

僕は彼の身体を心配するとその場で指摘した。 

「ああ、超最悪だよ!」

美岬はそう言って空を見上げながら目を閉じた。ツンとした態度に僕は困った顔をすると、すこし離れた場所から話しかけた。

「ねぇ、良くないなら医務室に戻ったら……?」

「面倒だからいい」

 僕の心配をよそに美岬はそう言うと、一点張りに話を聞こうとはしなかった。どこか素っ気ない態度に剥きになると、思わず意地悪を言った。

「そう。なら知らないよ、また倒れても……!」

そう言って意地悪を言うと彼の反応を見た。でも美岬は僕の方を見る事もなく。寝そべって黙ったままだった。そんな冷たい態度に呆れるとヘソを曲げて屋上から黙って出ようとした。
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