共鳴のヴァルキュリア （全話再編集完)

第5章―生と死の輪舞―（ロンド）

19

「お前が奪った命の数にくらべたら、そんなのは大したことはない。そんなことよりも自分の心配でもしたらどうだ？」

「なっ、なんだと…――！？」

「お前がハマったのは、うちの最新兵器の罠だ。まだ全部の基地には配備されてないが、その兵器は機体を一時的に動かせなくさせる効果がある。機体の外部からは直接ダメージは与えられないが、機体内部の電力源である『クロート･コア』を一時的にショートさせる事ができる。つまり、お前を八つ裂きにするには十分ってことだ！」

「クッ……！」

　カインは敵側からそのことを告げられると、額から冷や汗が流れ落ちた。彼は冷静な口調で話しながらも狡猾な部分を見せつけた。司令室にいた冴嶋は、彼の戦略家としての素質を目の当たりにすると誰もが彼に注目した。

「――東美岬。やはり彼にはパイロットとしての天才的な素質があるようだ」

「ええ、そうですね冴嶋司令官……。なぜ彼が、我が軍の最新兵器を知っているかは疑問ですが。あの最新兵器を上手い具合に使いこなすなんて、只者じゃありません。彼は戦略家としての素質にも長けています。出来れば彼みたいな優秀なパイロットは、我が基地にも欲しいくらいですね」

オペレーターのディックはそう話すと、息を呑みながら画面に魅入った。行動不能に陥ったアレスを前に、美岬はインフェルノブレイカーを彼に向けて言い放った。

「今ならお前をコレで一発で仕留めてやる。悪くおもうなよ、この基地に殴り込みに来たお前らが悪いんだ！」

「チィッ……！」

カインは操縦席の前で舌打ちをすると再起動までのゲージを確認した。そんなことに気をとられていると、美岬はインフェルノブレイカーを構えて突撃した。

『ハァアアアアアーーッ！！』

「クソッ、動かねぇ！　早く動け、畜生っ！！」

　カインは操縦不能に陥った操縦桿を無我夢中で握って焦りの色を顔に浮かべた。

「クソッタレ……！」

　インフェルノブレイカーを構えて突撃しに来たアビスをアレスは咄嗟に盾で防ごうとした。するとクレイオスシールドは、機体の影響で防御力は低下していた。

　盾としての機能が衰えると相手のヒート攻撃を防ぐことは出来なかった。ただの使えない鈍らになると無力化した盾をインフェルノブレイカーが鋭く貫いた。その瞬間、カインは驚愕した。