共鳴のヴァルキュリア （全話再編集完)

第5章―生と死の輪舞―（ロンド）

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――助けに行く寸前に、目の前で仲間を無惨にも殺されると美岬は激しい怒りを感じると同時に、心に精神的なショックを受けた。

「ああ…あああっ…――！」

　彼の脳裏にはかつての戦いで、亡くなった仲間達の死に直面した時の場面が一瞬にして蘇った。心の奥底にしまい込んでいた古い記憶が突然蘇ると、彼の精神は大きく乱れた。

『わぁああああああああああああーーっ！！』

「あのパイロットはどうした！？」

「わかりません！　ですが、脳波に大きな乱れが生じています！　あと心拍数ともに乱れてます！　このままでは、戦闘不能に陥ります…――！」

オペレーターのディックは美岬の様子をモニター画面で見ながら的確に状況を伝えた。

「あのパイロットとコンタクトをとれ、呼び掛けるんだ！」

「りょっ、了解しました……！」

冴嶋に指示を出されると、ディックは直ぐに命令に従った。司令室に緊張感が走る中、美岬の苦しそうな声がモニター画面から響いた。

『ああああああああああっ！！』

『わぁあああああああああああーーっ！！』

　美岬は操縦席の前で激しく心を取り乱すと、頭を両手に抱えて喚いた。彼の心と精神は臨界点を突破していた。

　脳裏には、かつて死んでいった仲間達の記憶がフラッシュバックのように蘇っていた。アビスに乗っていたパイロットの少年が自分の前で殺されたのを見てしまった事により。心の奥に閉まっていた記憶がそれをきっかけに呼び覚まされた。

　そこには冷静だった時の姿はなかった。美岬は操縦席の前で喚き続けた。結人はそんな彼の悲痛な声を走ってる最中に、咄嗟に体で感じた。

「――ッ、美岬……！？」

彼の声が不意に聞こえたように感じると、結人は廊下で足を止めて宙を見た。それは嫌な胸騒ぎの予感だった。言い知れぬ不安感が突如、胸の奥でざわめくと、結人はその不安感を振り払うように再び走り出した。

「はやくA―33の格納庫に行かなくちゃ……！　美岬待ってて、今行くから…――！」

　結人は走りながら彼の事を強く思った。不安を抱えたまま、A―33のアビス格納庫に到着すると急いで中に入った。

「だっ、誰かいませんか……！？　誰か……！」

結人は中に入ると大きな声で呼び掛けた。すると中から誰かが歩きながら声をかけてきた。

「き、君は……！？」

「あっ、さっきの整備士さん……！　美岬は！？　美岬は無事ですか……！？　美岬はここにいるんですか…――！？」

　青ざめた表情で彼に詰め寄ると、整備士は何も言わずに結人の手を引いて奥の部屋に案内した。