共鳴のヴァルキュリア （全話再編集完)

第4章―舞い降りた翼―

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　もう一人のアビスのパイロットは、ゲルマンに向かってビームライフルを撃つと体当たりした。しかし、彼の機体は体当たりされても、ビクともしなかった。

狂戦士覚醒装置バーサーカーシステムの力により、彼の機体は通常よりも防御力が何倍にも上がっていた。ゲルマンは、そこで不気味にニヤリと笑い。もう一人のアビスのパイロットを右足で軽々と蹴り飛ばした。

「ガッハッハッハッハッ！　思い知ったか雑魚が、これがバーサーカーシステムの驚異の力だ！　この装置を使うことでアークⅡの力と防御は何倍もの威力で増すのだ！　それこそお前らが使う能力覚醒装置レゾナシステムなど、この狂戦士覚醒装置バーサーカーシステムには敵うまい！　力の差を思い知り、恐怖にひれ伏せ！」

そう言って自らが殺意と狂気に溺れた。そして、両手の力をフルパワーで出した。その瞬間、少年は最後の抵抗をしてみせた。腕に装備されていたナイフを取り出すと、それを首元に思いきり突き刺して叫んだ。

『死んだ仲間や隊長の恨みだぁあああーーっ！！　お前なんか、お前なんかぁあああああっつ！！』

少年は魂の叫び声を上げながら、真上からナイフをアークの首元に深く突き立てた。強烈な攻撃にゲルマンは一瞬怯んで、呻き声を上げると怒りは最高潮に達した。

『ぐおっ！　己ぇ……！　よっ、よくもやったな虫けらめぇえええええーっ！！』

ゲルマンは激怒すると次の瞬間、両手の力をフルパワーで上げた。そして、頭の真上に持ち上げたアビスの背中を力技で真っ二つにへし折って破壊した。

その残酷な光景に、そこにいた誰もが一瞬で凍りついた。パイロットのステータス画面が急に赤く点滅すると次の瞬間『ロスト』と言う文字が表示された。

　オペレーターのディックはそこで愕然となって凍りついた。そして、息を呑み込むと震えた声で冴嶋に状況を報告した。

「きっ、機体ロスト……！　ルイス･レイモンとの通信が途絶えました！　彼からの反応はありません…――！」

　彼は震えた声で報告すると顔を青ざめさせた。司令室に少年の死が重く伸し掛かり、そこにいた誰もが彼の残酷な死を目の当たりにした。

司令室には静まり返るような長い沈黙と、誰かの悲しみで啜り泣く声がした。そして、そこに居た誰もがモニター画面から目を背けた。冴嶋は表情を変えずに画面の前に立ち続けると残酷な現実を静かに受け止めた。そして、誰もが凍りつく中、彼はオペレーターのディックに声をかけた。

「続けろ！」

「むっ、無理です……。応答はありません……」

「いいから続けろ！」

「無理です、彼からの応答はありません……！」

ディックは自分の唇を強く噛み締めると、震えた声でそう告げると涙した。

「そうか…――」

　彼らの心に深い悲しみと絶望が波のように打ち寄せた。逆巻くような嘆きに、人はその悲しみの意味に答えを見つけようとする。

　彼らがその日見たのは、残酷な現実と仲間の死だった。敵に無惨にも破壊された機体は、もはやそこには原型など残っていなかった。ゲルマンは少年が乗っていた機体を真っ二つにへし折ると、破壊の限りを尽くしてズタズタにした。そして、アビスのパイロットを一人撃破すると彼は狂ったように高笑いしたのだった。